《召喚チート付きで異世界に飛ばされたので、とりあえず俺を転移させた神さまを召喚することにしました》第30話 異世界言語を學ぶ 第一回
「それじゃあ、よろしく頼む」
「はい。任せてください!」
俺が深々と頭を下げると、フィンはえっへんとを張った。
かわいい。
夕食と公衆浴場での浴を終えて、俺たちは宿の部屋に戻ってきていた。
魔晶石の淡いが、薄暗い部屋の中の唯一の源だ。
フィンの家は魔晶石もふんだんに使用してあったが、さすがにお値段控えめな宿なだけあって、々と控えめなところが多いようだ。
これはこれで異世界緒があっていいものだ。うん。
ちなみにルナはもう寢ている。
おそらく、魔法をかなり使っていたから疲れたのだろう。
単純にまだ下界に慣れていないせいもあるかもしれない。
明日からは、ルナにはサポートに回ってもらい、主に俺とフィンで魔を倒していくのがいいだろう。
既にある程度の実力があることがわかったルナよりも、恥ずかしいことにこの中で一番弱い俺と、俺よりは強いがルナほどではないフィンがしでも鍛えたほうがいい。
そんなわけで、今起きているのは俺とフィンだけだ。
部屋に備え付けのテーブルと椅子に、二人並んで腰掛けている。
俺たちがなぜまだ起きているのかというと、
「字が読めない書けないっていうのは、々と不便だからな……」
今夜は、フィンからこの世界の文字を教えてもらうことにしたのだ。
數日この異世界で生活してみて実したのだが、文字が読めないせいで困ることはかなり多い。
道端にある店の看板、商品の名前、冒険者ギルドの張り紙や依頼書など、何が書いてあるのかわからない、ではお話にならないものもザラにある。
これは早急に対策を打たなければならない。
「ソーマさんならきっと大丈夫ですよ。こうやってお話することはできてるわけですし」
「どうだろうな……。話すのと読んだり書いたりするのは、また違った難しさがあるような気もするが」
そうは言うものの、あまり悩んでいてもしょうがない。
文字を覚えないと困るなら、覚えるしかないのだ。
「それにしても、まさかこれがあるとは」
テーブルの上には近くの店で買ってきた紙と、筆と小さなインクれが置いてある。
そう、筆があるのだ。
驚いたことに、この世界の一般的な筆記は筆らしい。
前の世界で見たことのあるものと比べると、全のはし薄く、細い気がする。
力をれたら結構簡単に折れてしまいそうなじだ。
「ソーマさんは、筆のことはご存知なんですね」
「ああ。し形が違うような気もするが、俺が知っているのとほとんど同じだな」
さすがにインクとセットになって置いてある以上、そこまで使い方に差はないだろう。
ちなみにインクれはガラス製で、フィンの私だ。
この世界のガラス製品は貴重な気もするのだが。
普段飲食店で出てくるのはコップなども含めてすべて木製か石製なので、おそらく割ってしまうと今の俺では買えないレベルだと思われる。
「筆にも、使われる素材によって種類があるんですよ。大きく分けると単純に文字を書くためのものと、魔法使いの方が紙に魔法陣を描いたりするのに使うためのものの二種類がありますね」
「魔法陣を描くこともあるのか」
「あるみたいですね。魔法陣を描くことで、より複雑な魔法が使えたり、魔法の発までの時間が短できたりするらしいです」
「なるほど」
イメージとしては、簡単なプログラミングのようなものだろうか。
量産するのは難しそうだが、いざという時の切り札的な意味で持っておくのはよさそうだ。
「魔法陣を描くのに適したのは、やはり魔力を流しやすい魔法生の素材ですから、ユニコーンやペガサスのでできた筆が、たぶん一番高いですね」
「聞いただけでも高そうだな」
そんなものを買う機會は訪れないだろうが。
それで召喚陣とか描いたら、いい裝備が出てきたりしないだろうか。
たぶんしないと思うが。
というか、召喚のメカニズムが俺自にもわかっていない以上、何を描けばいいのかもわからないしな。
でも、一応頭の片隅には置いておこう。
「まずは、數字から始めましょうか」
「ああ。よろしく頼む」
「はい、お願いされました」
何がおかしいのか、フィンは花が咲いたような笑顔だ。
俺のような、右も左もわからない異世界言語の超初心者を相手にしてもその余裕、やはり天使か。
「ソーマさんは數自は數えられるんですよね? それなら數字はすぐ終わると思いますよ。どれだけ大きな數でも、0から9までの數字の組み合わせで表現できますから」
そう言ってフィンが俺の前に出したのは、謎の文字が十個書かれた紙だ。
それを指差しながら、フィンは左から順にどれがどの數字を示しているのかを説明してくれる。
もちろん、それが示しているのは0から9までの數字だった。
「……なるほど。やっぱり10進數だな」
「ん? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
ほとんど形は違うが、元の世界の10進數と同じだ。
文字も十種類しかないので、數字はまだ覚えやすい方だろう。
なぜか0だけは同じような形だったが、偶然の産だろうか。
とはいえ、全く未知の文字列を覚えるのは、なかなかに苦行だ。
アルファベットなどで、ある程度日常的にれる機會があった英語を勉強するのとは全く違う。
これは未知の難しさだな……。
聲に出しながら、筆で紙に文字を書いて覚えていく。
紙は前の世界にあったような白いものではなく、し茶っぽくて表面がちょっとザラザラしている。
向こうの世界とは製法が違うようだが、紙自は比較的安価で手にるので、多練習に使ってしまっても問題はない。
「數字は他にはないのか? えーっと、単位が大きくなったときの、他の書き方とか」
「あるにはありますが、他のは數え方や読み方が難しいせいで、ほとんど使われていないですね」
「なるほど」
十や百のような特殊な表記方法も、あるのはあるようだ。
とはいえ、日常生活で使用されているレベルの文字を覚えていれば、だいたいはなんとかなるのだろう。
無理に覚える必要はないか。
いつでも見直せるように、0から9までの異世界數字の上に、前の世界での數字も書いておく。
これで忘れたときも安心だ。
「それじゃあ次は、文字のほうをお願いするか」
「はい! 任されました!」
フィンはそう言うと、二枚目の紙をテーブルの上に広げた。
當たり前だが、一枚目とは比べものにならないほどぎっしりと文字が書き詰められている。
「すごいな……これだけ書くのは大変だっただろ。ありがとな、フィン」
「いえいえ! 大したことじゃないですし」
「そんなことはない。とても助かってるよ」
「そ、そうですか? それならよかったです……」
正直、謎の文字列は見ただけで辟易としてくるが、これをわざわざ俺のために用意してくれたフィンには心の底から謝している。
「量が多いので、今日は『あいうえお』から始めていきましょう」
「ああ、頼む」
そうしてフィンの説明を聞き始めた俺だったが、すぐにあることに気がついた。
それは、この世界の一番基本的な文字列が、日本語をローマ字に変換したものに近いということだ。
一部例外はあるのだが、母音と子音の関係はほぼ一緒だった。
たとえば、『あ』だと謎の母音らしい一文字で表記され、『か』だと謎の子音らしい一文字と『あ』と同じ謎の母音らしい一文字の組み合わせで表記されるようだ。
文字がどういうり立ち方をしているのかがわかれば、それなりに時間はかかるだろうが、簡単な文ぐらいは読めるようになるだろう。
とりあえず今日はこの世界の數字と、母音の種類をマスターすることができた。
明日からも頑張ろう。
ちなみに、今日合計九回ほど行った召喚結果は、すべて木の棒だったことをここに記しておく。
悪魔の証明 R2
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