《ただの世界最強の村人と雙子の弟子》第0話の13 同類として
===ユウキ視點========================
朝日が村中を照らし、ほとんどの村人が農業を生業なりわいとしているので、朝から村には人が世間話をしながら楽しそうに畑を耕している景が広がる。
そこを通ると、必ず村人たちは挨拶をしてくるので、俺は軽く返しながら村からしだけ離れた牢へ向かう。
昨日、俺は村人たちを説得する為に無茶をしてしまい、ぶっ倒れてしまった。
朝起きてふと枕元を見たら、ミウが突っ伏していたのは驚いたが、ゆっくりとミウを布団に寢かしつけてやった。
(私にがあれば私がご主人様のお世話をしてあげられたのに!)
まあそう大聲を出すなよ。それくらいどうでもーー
(よくないです!!)(よくありません!!)
ええー。
俺は守姫だけでなく、技姫まで否定されたのにショックをけながら、歩いていると、牢がある小屋が見えた。その小屋の扉のすぐ隣には村人の中でも腕が立つ村人が見張っていた。
「……あ!ユウキ様っ!!もうは大丈夫なんですか!?」
「ああ、大丈夫だ。それよりーー」
「ええ、分かってます」と俺の言葉を遮った後、隣にあった扉を開けた。
「自分はるのは遠慮するので、ごゆっくり……」
「……ん?ああ」
俺はやけにソワソワというか、よそよそしい村人に疑問を抱いたが、彼の方が気になったので、扉の奧へと足を踏みれた。
この小屋には牢が一つだけある。小屋の奧側から半分よりない程度に牢があり、扉側には機が一つ。この機は取り締まりとかをするためだけのものだが。
とは言っても、この村に犯罪者が生まれた事も、盜賊や罪人が來た事も無いので一度も使われた事が無かったので、彼が気絶した後に急いで掃除したそうだ。
その証拠にこの小屋には埃一つ無く、過ごしやすそうだ。……まあ、牢屋だが。
そんな牢に一人の。どうやら気絶していた間にを洗ったようで、初めて會った時とは見違えていた。
銀に輝く髪は腰まであり、緑の目は若葉のように純さをじる。は大きめで、尖った耳はエルフ族という事を強調していた。
「………どうだ調は?」
「……あ、あなたね」
さっきまでへたり込み、項垂れていた彼は目に濃いクマを作っていた。
「…起きたらね、この村の人たちがあなたの事を教えてくれたわ。隨分と善い行いばかりしているようね」
「………まあな。俺は一応用心棒という名の居候なんでな」
俺が軽口を言うと、彼は微笑んだ。それも、狂ったようなものでは無く、純粋な笑み。
俺が呆気に取られているうちに、彼は立ち上がり、牢の格子へもたれて背中越しで言う。
「私はね、ここに來るまでに何個もの村を潰して生きてきたの。助けを求める人も、命乞いをする人も、小さくて無垢な子も。みんな……みんな」
彼は淡々と言った。
きっと、後悔や反省はしてないんだろう。だって、ついこないだまで人を憎んでいたのだ。そして、今も恨んでいるのかもしれない。
俺は奴らを恨みはしなかった。ただ、ムカついただけ。奴らが居なくなった時にはもう怒りは無かった。
でも、彼は俺よりも酷い事をされたのだろう。
(はい。エルフ族は皆、例外無く緑の髪と目、先の尖った耳を持ちます。耳と目は緑ですが、髪が銀になったのはきっと、過度なストレスや苦痛によってと思われます)
技姫が解説してくれた事が本當に起こったかどうかは、あの時の彼の尋常じゃない憎しみを見れば分かるだろう。
だから、俺は彼を救ってやりたい。同じ境遇を持つ同類として。
「なあ、お前の名前は?」
「……ティフィラ」
「…なあ、ティフィラさえ良ければここで一緒に暮らさないか?」
「へ?」
彼……ティフィラは、格子から離れて俺の方へと振り返り、間の抜けた聲を出して固まってしまった。
俺は聞いていると勝手に判斷して続ける。
「ここで暮らして見てしいんだ、人を。もちろん、世の中には嫌な奴がいっぱいがいる。だが、それを上回ると言っても良いほど良い奴も居るんだ」
チラッと見てみると、今度は固まっておらず、真剣に俺の話を聞いている。俺は更に続ける。
「ティフィラにはこの世界の人たちを恨んでいてしくない。だから、俺がティフィラに危害を加える奴から守ってやる。ティフィラの側にいて、いつだってティフィラの味方でいてやる」
正直恥ずかしかったが、どうしても伝えたかったし、何より安心させたかった。
彼は実力では強い。だが、心はか弱いの子なんだと思う。
だから、俺がティフィラがこの世界にいる人たちを恨まなくなるようにしてやりたい。
ティフィラは顔を真っ赤にさせ、一度その場にうずくまった。
一度聲をかけようと思ったが、すすり泣く聲が聞こえたので、そっと格子越しから頭をでてやった。
俺にはこんな事しか思いつかないが、せめてこんな事でも良いからやってやりたかった。
(……それは反則だと思います)(同じく)
え?それってどういう意味?
やけに不機嫌な2人は、俺の質問を無視して黙り込んでしまった。後で機嫌取りしないとな。
「……ねぇ、あなたの名前は?」
未だ鼻をすする音が聞こえ、聲も潤んでいるが、俺の名前を聞くという事は一緒に暮らしてくれるという事だろう。
しかも、俺の名前は恐らく村人たちがティフィラに言っているだろうに、聞いてくるという事は、もう完全にそうだろう。
俺は彼の頭から手を離し、機の上に置いてあった鍵を使って牢の鍵を開けて中にる。
そして手を差し出し、言った。
「俺の名前はユウキ。よろしくな、ティフィラ」
ティフィラは涙を流している顔を上げ、俺の手を見た後、嬉しそうに微笑み、俺の手を摑んだ。
「……よろしくねっ、ユウキっ」
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