《ただの世界最強の村人と雙子の弟子》第114話 侵
===ユウキ視點========================
「ぎゃあぁぁっ!」「ぐぎゃぁっ!」
(タッ、タッ、タッ)
い地面を踏み締め、走り回る足音が斷末魔を搔き消すように鳴る。
緑1つない巖とほぼ同じような地面に赤い水と片が転がり、地獄絵図と化したこの薄暗い場所で、俺はただ1人走る。
「ぐぇぇっ!!」「がぎゃぁっ!!」
いくら走っても先回りしたかのように現れるそれらを斬り伏せながら、ずっと奧に見える扉を目指す。
背後に転がっていたであろう片たちはとうに暗闇へと消えた。左右には遠く離れているのに天井近くが見えないほどのただ大きな壁しか見えない。もちろん、上を見てもただの暗闇しかない。
(これは空間魔法の応用でしょうね…)
俺の家で畑を作るのに利用していた魔法の応用というのは分かったが、それよりもーー
「あいつらは何処行きやがった!!」
気持ちの悪いやつらを斬り伏せながら、屆きもしないだろうびをあげた………。
「よーし、これから攻め込むぞ」
朝日が昇り始めたまだ間もない時間。まだ空は薄い群青で、気溫もし低めのこの時間帯。
まだ眠そうに背中を丸めておぼろげに立っている我が弟子とシャキッと気持ちをれ替えて背筋良く立っているシャルティ達。
見た目がほぼ同じでもイアの妹だと言うアイですら、しっかりと立っている。
それだというのに、リリは眠そうに目をり、欠をしまくり、ルルに至っては寢ているようにしか見えない。
「じゃあ、確認するぞ。シャルティ達は《アブァス》にて向こうが張っている認識阻害と転移を含んだ結界のすぐ近くの所で待機。急時にはティフィラに渡した『転移石』を使ってって來い」
ティフィラは手に持っている緑の手の平に収まる程度の魔法石を握り締める。その顔には余裕が無く、張や不安に押し潰されそうになっている。
まあそこら辺は自分で乗り越えてもらおう。
『転移石』は登録した人の所に1回限り転移出來る魔法石だ。一度も《魔神の砦》に行った事の無いティフィラ達を転移させるには必要だったので、急いで技姫に作ってもらった。
「そ し て」(ゴチン!ゴチン!)
「痛ッ!」「………痛い…!」
いつまでも寢ているリリとルルに拳骨を食らわせる。
2人は頭を抑え、涙目で俺を見てくるが無視して話す。
「俺とお前達で中に居る神どもを1人殘さず殺す。それで今回の件は解決だ」
し騒な言い方になったが、相手を殺すつもりでいかないと確実に負けるだろう。そこで殺し損ねたら、捕獲なり拷問なりすれば良い。
リリ達にはしキツイ話になるが、仕方ないだろう。遅かれいつかはそういう事態になる事があるのがこの世界だ。
「……分かってます、私達は既に何人もの神の命を奪ってますから、大丈夫です」
そう言うリリの顔は既に覚悟の決まっている顔だった。隣のルルも同じような顔になっている。
「……よし、行くか」
俺はリリとルルの肩を摑み、ふとティフィラ達のいる方へ振り返る。
ティフィラは不安そうで、エルガは別に心配していないようだ。イアはただ信じきった目で見ていて、まだ會って日の淺いアイはティフィラと同じで不安そうだ。
そんな中、シャルティだけは祈るように俺を見ていた。……きっと、シャルティにはこれから起きる事が見えているんだろう。だが、それを敢えて言わず、祈っているような様子から、きっと良い未來では無いだろう。
「……未來を変えるのはそう容易では無いだろうけど、やってやるよ」
シャルティに聞こえるかどうかも分からない聲量で呟いた後、転移した………。
「………よーし、著いたな………は?」
無事に何事も無く転移したと思いきや、この場には俺1人しかおらず、薄暗く、遠くに小さいが扉が見える。
そして、《アブェル》に押しかけてきたあの正不明な奴らが俺を囲っていた。
「「「「「「「「「排除します」」」」」」」」」
「………マジかよ……」
俺はすぐさま"ブレイド"で剣を作り出すと一斉に襲って來た奴らの中でも、扉側の奴らの方へ向かっていった………。
「…………はぁ~あ、神的に疲れた…」
び聲をあげてから數分後、漸く辿り著いた扉の向こう側にあった、本來の《魔神の砦》でも実際に有った石レンガの廊下を歩いている。
人2人程度の幅の廊下は左側には換気目的ぐらいの小さな鉄格子が窓のように並び、右側には何処かの部屋に繋がる扉がある程度の間隔を空けて並んでいる。
恐らくここは1階の裏口の扉に繋がっている廊下だろう。なら、ここから上に行く階段もあるはずだから、取り敢えず上を目指す事にした。
(……リリとかはどうすんだ?)
まあ、あいつらなら何とかなるだろう。
(…それもそうだな)
あの程度の數だけの連中を相手にあいつらが遅れを取るとは思えないし、あいつらを待っている時間も惜しいし、あいつらだって上を目指すだろうからそのうち合流できるだろ。
(面倒くさいのか、リリ達を信じているのかよく分かりませんよ?)
何言ってんだ、どっちもに決まってるだろ?
(………なるほど)
(そんな事より、我が主人)
ん?何だ?
(今回は使うのですか?)
………ああ、使うさ。もうあんなギリギリな戦いをするのは嫌だからな。
まあ、使ってもギリギリになる可能の方が大きいけどな。
守姫と技姫と話していたら、いつ間にか階段前に來ていた。
俺は右手にある剣を軽く構えながらもゆっくりと階段を昇り、2階へと著いた。
ここは侵者対策として、一階一階に階段の場所が別になっているから、別の所に探さないといけない。そして、2階はーー
(大量の部屋がありますね)
目の前には橫に並ぶ數々の扉がある。ここはあの時も面倒くさいなと思ったが、あの時は手っ取り早く扉全てを破壊した。
「……まあ、別に困らないだろ。『殲滅武』"剣・一刀斬破"」
一筋の斬撃が扉とそれに隣接していた壁ごと破壊する。そして、破壊された所からし離れた所に現れたのは大量の何かの容と資料、機械が置かれた空間。結局、どの扉を開けてもそこに繋がったみたいだ。何かの研究室に。
「………はあ、扉があるのに壊さないでくれるかな?一応これらはあまり人に見られたくないんでね」
若そうだが、頭の堅そうな男の聲が足音と共に聞こえてくる。
俺はもはや部屋では無いと思うが、研究室に足を踏みれ、さっきまで使っていた剣を投げつけるのと同時に右手に攻武、左手に守姫を権限させる。
「………危ないじゃないか、もうそろそろで脳に當たりそうだっただろ?」
奧から現れたのは、を剣で貫かれても平気に立っている科學者がよく羽織る白をに纏った男。その男は俺がライフルに変形した技姫で頭を狙い撃った男にソックリだった。
「……お前、あの時に撃たれたのに生きているって事は、あれは分か兄弟か?」
頭を撃った事から生き返ったというにはあり得ないと思う。よって、分か瓜二つの兄弟かという予想をしたが、男は拍手をするだけで何も言わない。
「……おい、どうなんだ?」
「ふっ、なら教えてやる。アレは俺のクローン。俺は『研神』、お前達の強化兵計畫の創案者であり、実行者だ」
『研神』とやらはとんでもない事を暴した………。
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