《最強転生者は無限の魔力で世界を征服することにしました ~勘違い魔王による魔の國再興記~》その67 魔王さま、思い出す
エントランスから階段を登り、迷いなく廊下を進んでいく。
「この道で合っているのか?」
「たぶんね」
「ディクトゥーラの気配をじ取っておるということか」
「そういうわけじゃないんだけど……」
僕は不思議と城の中で迷うことはなかった。
まるで最初からこの城を知っているかのように。
……いや、知ってるんだ、たぶん。
なぜか、まではまだ思い出せないけれど、僕は確かにこの城の中に踏み込んだことがある。
廊下に飾られた絵畫、敷き詰められたカーペットに、天井からぶら下がった高級そうなランプ。
どれも見覚えのあるものばかりだ。
「マオ様、急がねば破壊神が目覚めてしまうかもしれんぞ?」
「うん……」
けれど気になることが多すぎて、僕は思わず足を止めた。
「どうしたのだ、一」
「なんかさ……この廊下、何回も歩いたことがあるような気がして」
デジャビュ、というやつだろうか。
「何を言っておるのだ、帝國領にったのは今回が初めてなのだろう?」
「それは間違いない。けど僕は、この城の中を知ってるんだ」
「それも”予”というやつか?」
「あの時は予と呼ぶしか無かったけど、今は違う。もっと明確な――夢や予知なんかじゃない、記憶って言った方が正しいと思う」
「未來のことを覚えているとでも言うのか?」
ニーズヘッグは馬鹿げているとでも言いたそうだ。
けれど城に踏み込んで以降、記憶が湧き水のように溢れてくる。
今までは予としか呼べなかった曖昧な覚が、形を得ているのがわかる。
あの時は確か――1人で――いや、ニーズヘッグが一緒? あるいはグリムが、ザガンが、ヴィトニルが、フォラスが、とにかくんな人たちと一緒にこの場所に來た気がする。
何度も? いや、一度きりだ。
さすがに何度もこの場所にやってくる時間的余裕はない、はず。
「例えば世界が滅びたとして。僕が1人だけ生き殘ったら、どうすると思う?」
「確かにマオ様の力があれば、破壊神を倒せないにしろ生き殘ることはできるかもしれんな。だがそれが今の狀況とどう関係があるのだ? まあ、もしそんな世界が存在したとしたら、マオ様は私が居なくなって、寂しくて泣いておるかもしれんな」
それは十分有り得る。
僕はみんなを支えとして生きている、1人でも失えばもちろん涙を流すだろうし、する人を失えば膝から崩れ落ちるだろうから。
「涙が枯れるまで泣いて、そのあとにさ。誰も居なくなって無価値になった世界で、死者も蘇らせられない僕は一何をするんだろうと思って」
「泣くのは否定せんのだな」
「否定できないから。絶対泣くってば」
「そうか……泣いてくれるのか。泣くほど悲しんでくれるのなら、マオ様はどうにか私たちを蘇らせるための屁理屈・・・を探すのではないか? なくともそこで諦めるとは思えんな」
屁理屈、要は抜け道。
死者は蘇らない、なら蘇らせずに取り戻す、そのための方法を探し出す。
「屁理屈って、どういう方法があると思う?」
「なかなか思いつかないから屁理屈なのではないか。そうだな……例えば、時間を巻き戻すとか。いや、だめか。それでも死者は蘇らないのであったな」
時間を巻き戻す。
いや、それは無理だ、巻き戻した所でが戻ってくるだけで命は戻らず、死がそこに転がるだけ。
もっと別の方法を考えなくちゃならない。
例えば、巻き戻すのではなく――巻き戻るんだったら、どうだろう。
その世界で失われた命が戻らないというのなら、僕が命がまだあった時間にまで戻ればいい。
僕だけが過去に戻り、そしてまたやり直す。
タイムリープ。
ありがちな手段だ、けれど筋が通っている。
エイシャの仕掛けた弾にしても。
ファルゴのマオへの攻撃にしても。
カーリスのディアボリカへの襲撃にしても。
なぜ予が的中したのか。
風のアーティファクトが首都カストラを浮上させたことも、カストラ城の部に見覚えがあることも、全て一度見たことがあると考えれば辻褄が合う。
いや、一度どころじゃない。
記憶は――なくとも數十パターンは存在しているように思えた。
ある時は、マルの國が攻められたという話を人づてに聞いた。
國を結ぼうという直前に國自が焼失し、膨大な數の犠牲者を出した。
そして続けざまに周辺諸國も燃え上がり、次々と國が消えていった。
救援に送る話ももちろん出たが、ディアボリカにも同時に攻撃が行われ、多數の死傷者を出してしまったためすぐに立ち消えてしまった。
あの時の――最初の犠牲者は――確か、グリムが兵の自をけて、死んで――その後次々と、みんなが――
だからその次は、失敗しないように先んじてマルへニーズヘッグを送り込んだ。
けれどニーズヘッグは火のアーティファクトの持ち主と相打ちになってしまい、戻ってくることは無かった。
そしてカーリスへの明確な対処法を持たなかった僕は、結局またディアボリカを救えず、多數の死傷者を出してしまう。
さらに、ほどなくして破壊神サルヴァが目覚めた。
サルヴァによって地表は焼き盡くされ、制裝置によって無事であるはずの宙に浮かぶカストラも破壊され、広い広い荒野の中で僕と破壊神は二人きりになった。
その時の僕は、彼/彼とどんな會話を――いや、そもそも會話があったのかどうかも、僕はよく覚えていない。
マルとディアボリカを救えるようになったのは、何度目のことだったっけ。
その後も、帝國への侵がうまく行かなかったり、マルではない別の場所が攻められるパターンもあったり。
最終的に全てのイベントを犠牲者ゼロで突破できるようになっても、結局最後には破壊神が目覚めて全員死んでしまう。
僕はそれを回避する方法を探して――
「マオ様、顔が悪いが大丈夫か?」
「あ、あぁ……うん、平気だよ」
平気と言いながらも、悪寒が止まらない。
そんな中、不意にとある言葉が脳に浮かび上がってきた。
――もう手遅れだ。
誰かが、あるいは過去の僕が、自分にそう告げているような気がする。
いや、”もう”と言うのは正しくない。
最初から、破壊神の目覚めに間に合う間に合わないの話ではない。
ああ、そう、そうだ……目覚めの準備は、すでに済んでいる・・・・・んだった。
これは、余興だ。
火とと風のアーティファクトによる時間稼ぎは、時間稼ぎの必要があるのだと勘違いさせるための茶番。
どれだけ急ごうと、どれだけ立ち止まろうと、結果は変わらない。
ディクトゥーラは、僕が到達したその瞬間に破壊神を目覚めさせてしまう。
それで、おしまい。
確か、僕は前回も同じ場所で立ち止まった。
あの時に僕の隣に居たのはヴィトニルで、彼は――『ここで立ち止まるなんて魔王サマらしくねえよ』と僕を勵ましてくれた。
彼に限った話じゃない。
隣に居た誰かは必ずこのタイミングで、似たような言葉で僕を勵ました。
そして、ニーズヘッグもまた――
「何を考えておるのかは知らぬが、ここで立ち止まるのはおぬしらしくないぞ」
そんな言葉で、僕を勵ましてくれる。
過程が変わらないのなら結果も変わらない。
何か無いのか、変化は、前回と違う要素は。
その時、僕は無意識のうちに聞かないようにしていた、耳障りな囁きの存在を思い出す。
『助けて……助けて……』
破壊神の助けを求める聲。
こんな聲……あったっけ。
前回も、前々回も、僕はサルヴァが助けを求める聲を聞いたことは無い気がする。
何が原因で生じたものなんだ? この世界では、僕は一度もサルヴァと接したことは無いはずなのに。
そういえば、僕の記憶にはまだうまく思い出せていない部分がある。
世界が滅びたあとの記憶だ。
僕と破壊神だけになった世界で、一僕は何をしたんだろう。
破壊神と語り合う?
相手はロボットだってのに、そんなことができるとは思えない。
けれど、こうして彼、あるいは彼の聲が聞こえているということは、意思疎通が出來るということ。
何か、あったんじゃないか? 何かを、話したんじゃないか?
それが僕にとっての救いになるかどうかはわからないけれど――確かにニーズヘッグの言うとおり、ここで立ち止まるのは僕らしくない。
可能がゼロでないのなら、絶するにはまだ早い。
自信を持って行こう。
無限の魔力を持ち、仲間に恵まれた今の魔王に、出來ないことなんて無い。
「ごめん、もう大丈夫」
「ようやくらしい顔に戻ったな、それでこそマオ様だ」
ニーズヘッグの笑顔にさらに勇気をもらいながら、再び僕たちは進みだす。
そしてほどなくして、玉座の間の前まで到達する。
城のり口以上に豪華な扉を――
ボォンッ!
と炸裂する魔法で破壊し吹き飛ばすと、僕は偉そうに玉座に座るディクトゥーラと顔を合わせる。
玉座まで続く赤いカーペットをゆっくりと歩き玉座の前まで移すると、ディクトゥーラは顎髭をでながら右の口角を上げた。
「よく來たな、魔王よ。待っておったぞ」
まるで宿命のライバルでも迎えるように、ディクトゥーラは実に楽しそうだ。
それは勝利を確信した者の表。
苦難を乗り越えここまでたどり著いた僕に決定的な敗北を告げることで、絶に沈む姿を見たくて仕方ないと言った所か。
そんな茶番に付き合いたくはない。
「よくぞアーティファクトの使い手を乗り越えここまでやってきたな」
「託はいいから、早く要件を言ってよ。どうせ破壊神はいつでも復活できる狀態なんでしょ?」
「驚いたな、もう知っておったのか。はて、どこから報がれたのだろうな。しかし、それならば無駄と知りながらなぜここに來た? まさか我を殺すためか?」
「なんでだろうね、僕にもよくわからなくなってきた」
「おいおい、マオ様それはないだろう……」
「だってさ、破壊神が目覚めたら僕が勝てる可能はほぼゼロなんだよ? もう世界の崩壊は決まったようなものだ」
「はっはっはっ! 敗北を認めるか、魔王よ!」
ディクトゥーラが大聲で笑う。
正直言ってうるさい。
誰も負けを認めてなんかない、だから不思議なんだ。
認めようとしない僕自が。
「諦めがついているのなら、長々と話す必要もないな。予定よりは早いが――」
「あ、待ってよ。一つ聞きたいことがあったんだけどさ。仮に世界が滅びたとして、サルヴァ帝國はその後どうするつもりなの?」
「城の地下には魔法の才能に優れた者――いわゆる天才と呼ばれている人間たちが居る。彼らが新たな人類の祖となり、新たな歴史を刻む。今の世は阿呆で溢れている、一度浄化が必要だったのだ」
あ、やっぱり自分たちが滅ぼされるとは思ってなかったんだ。
つまり、制裝置は正常に作するはずだと信じ切っている。
……なんか、みじめだな。
理由はわからないけど、結局は制裝置がうまくかずに、帝國もろとも全て滅ぼされてしまうのに。
まあ、かわいそうだからそれは黙っておいてあげるけど。
「他に聞きたいことは?」
「特に無い」
「ならば目覚めさせようではないか、破壊神サルヴァを」
「お、おいマオ様っ、本當にいいのか!?」
「いいよ、どうせここでディクトゥーラを始末したって破壊神が目覚めることに変わりは無いし、それに……」
「それに?」
この部屋にってから、さらに記憶は戻りつつあった。
最期に、破壊神サルヴァと會話したときの記憶も。
なぜサルヴァが助けを求めていたのか。
その理由も、全てを思い出した。
だから――
「僕は負けない。というか最初から勝ってたんだよ、だから大丈夫」
カストル城が揺れている。
ディクトゥーラは笑い、僕も笑う。
各々が自分の勝利を確信して。
「ど、どういうことだ?」
「見てたらわかるよ。さ、外に出よう。サルヴァが待ってる」
僕は再びニーズヘッグの手を引いて玉座の間をあとにした。
かくして、破壊神サルヴァは鎖から解き放たれ、闇のアーティファクトという心臓を取り戻し、起するのだった。
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