――明人間。

つまり、相手に気づかれないように背後を取ったり、々なことに使える能力を手にしたことを知らされた。

この能力さえあれば、湯や子トイレにもバレずにることができる……と思ったが、今のぼくはの子なのだから、わざわざ能力を使う必要もないか。

だとしたら、ぼくが元々男だったという事実を知っているユズに対してのみ、隠蔽化を発して々することにしよう。うむ。

「……なんか目つきが嫌らしい気がするのは、気のせいですか」

「気のせいだよ。そういうユズの目つきは鋭い気がするんだけど、気のせいかな」

「……それは気のせいじゃないです」

いくらぼくだからって、そんなに毎回毎回エロいことばかり考えているわけじゃないのに。心外だ。

そんなぼくとユズのやり取りに割り込むように、付のお姉さんは口を開く。

「それでは、能力値の項目を一つ一つ解説していきますね」

「あ、はい、ありがとうございます」

何とも丁寧な付である。

ある程度ゲームをしていれば、どのステータスが何に影響するのかといったことは大分かるが、わざわざ親切な申し出を斷る理由なんてない。

もしかしたら、ぼくが知っているのとはし異なるものかもしれないし。

「まずは、筋力。そのまま、力の強さを意味します。戦闘面では、相手に與えるダメージ、威力の強さが數値に表れています」

RPGで言う、攻撃力のことだ。

ぼくの數値は９０だったから、結構低いほうだろう。でも今はの子なのだし、男だったときと比べて筋力が下がったのも仕方ない。

それに、きっと異世界〈レスペイス〉での平均が高すぎるのだと思う。

魔とかがいる世界なら、筋力が高くなるのは當然とも言えるけど。

「耐久。これは、相手からけた攻撃を、如何に耐えられるか、という數値です。この數値が低い人は、弱小モンスターにも深手を負ってしまうかもしれません」

つまり、防力か。

痛いのは嫌だし、もし強そうな魔と遭遇した場合は隠蔽化を使用してやり過ごそう。

そんなときが來るのか、定かじゃないが。

「敏捷は、足の速さ、回避の速度です。この數値が高ければ高いほど、相手をきで翻弄することが可能でしょう」

素早さだ。

意外にも、全ステータスの中で敏捷が一番高かった。

そこまで足が速いわけでもないだろうから、他の能力が低すぎるだけなのかな。

「力とは、俗に言う疲れやすいか否かということです。敏捷と力の両方が高ければ、長時間高速で走り続けることもできます」

この能力は、一番早めに上げておきたいかもしれない。

力というのは、戦闘中だけでなく普段の生活でもかなり大事だろうし。

「魔力。魔法を放つ際の威力、効果範囲、必要な詠唱速度、そして相手の魔法をけたときのダメージ……それら全てが影響します」

魔法、か。やはり異世界というだけあって、魔法も存在するらしい。

たとえそれでも魔法の使い方なんて分からないし、魔力が低いのは當然だ。

むしろ、逆に３９もあったことがビックリである。

「最後に、知力。これは頭の良さです」

これだけ異様にシンプルだった。

知力、６１……何だか遠まわしに馬鹿だと言われたような気分だ。

「以上です。何か質問はありますか？」

「いえ、大丈夫です」

「でしたら、今日からあなた様は冒険者の仲間りとなります。おめでとうございます。あちらの掲示板にってある依頼を見て、できそうだと思ったものを注して解決すれば、依頼者から報酬が貰えます。これからの冒険者生活、大事な命を亡くしてしまわないよう気をつけてくださいませ」

さらっと怖いこと言わないでほしい。

これでも、一応の程は弁えているつもりだ。あまり危険な依頼はけないようにして、できるだけ平和に暮らしていこう。

無駄な殺生は避けるに越したことはないのです。

自分のステータスが書いてあるカードをけ取り、ぼくはユズと一緒にギルドを後にする。

今は、まだ依頼をけなくてもいいだろう。金が本格的になくなったときや、異常なくらい暇なときでいいか。

「そういや、ユズの能力ってどんなじ？」

「わたしですか？　わたしは……これです」

答え、ユズは一枚のカードを見せてくる。

そこには、書かれていた。

筋力：４５

耐久：１５７６３

敏捷：９６６７

力：５４５８

魔力：５９４７６

知力：２５７８０

固有スキル：太

という、尋常じゃない能力値が。

「高っ……い、けど、筋力だけめちゃくちゃ低いっ！」

「力仕事は苦手です……。そういうのは男の人に任せたいと思います。お願いしますね」

「いや、今はぼくもなんだけど」

どうしよう。ユズが、一向にぼくのことをと思ってくれない。

ユズにとっては、いくら容姿がでも中が男だったら、その人は男だという認識なのかな。

せっかく転換したのに、ちょっと悲しい。

「それにしても、ユズ強すぎない？　チートじゃん」

「いいんです。ほら、わたし神ですしっ」

「あ、卑怯だ。はい、ずる。ずるい」

「う、うっさいですっ！」

「固有スキルの太っていうのは、どんな技なの？」

「大抵の傷は、わたしが手を翳すだけであっという間に再生することができます。を止めることもできますし、痛みを止めることもできます」

「やっぱりチートじゃん。ほら、ずる」

「だ、だからチートでもずるでもないですよっ！　わたしの立場だったら、これくらい當然なんですっ！」

「うわ、不平等だ。悪神だ」

「……だ、黙ってください。わたしと一緒にいることでライムさんの傷も治してあげられるんですから、しは謝するべきだと思うんですけどっ！？」

「はいはい、ありがと」

「もっとを込めてくださいよ～っ！」

何はともあれ。

そんな明るくも騒がしい會話を繰り広げながら、ぼくたちは帰路につく。

こうして、ぼくの冒険者としての生活が始まるのだった。

ぼくはまだ、ずっと平和なままでいられると思っていた。

これから先に、どんな恐ろしいことが自分たちのに降りかかるかも知らずに。

なんて、本當に何が起こるのかは分かるわけないけど、ちょっと格好よく言ってみた。

まるで漫畫のモノローグとかライトノベルの地の文みたいで、それっぽくなった気がする。

しだけ満足し、ぼくは自分のを一みした。