《魔がない世界で魔を使って世界最強》戦う理由は怖いから
決闘があった翌日、彌一たち勇者は王の間に集められていた。ここで今日は王様と謁見をおこないその後、王様から國に向けて勇者の事が伝えられる。
「やいくん張するね。」
「そうか?俺は別にそうでもないけど」
「え、そうなの?」
これよりもの張や威圧などにさらされてきた彌一にとってこれくらいの張など張のにらないのである。
「それでは皆さんおりください。」
そうして近衛兵が扉を開けアーリアを先頭にっていく。
そこは彌一たちが召喚された大聖堂よりも広く所々が金で裝飾された壁や柱があり、扉から奧の王座まで質のよい大きな赤いカーペットが続いておりその王座には溫厚な雰囲気ながらも相手を萎させるような威厳を放つ男が座っており、その周りにはお淑やかな雰囲気のにロジャー騎士団長やバーリア最高司祭、ヘンリやメイ、數人の騎士が立っていた。
「お父様。勇者様一同お連れいたしました」
「うむ。ご苦労」
そういって男が王座から立ち上がった。
「私はアーセラム聖堂王國國王のヴィディル・バース・アーセラムである。勇者殿たちにはこの度の戦爭への參加、國を代表して謝する。」
ヴィディルは國王でありながら昔は世界屈指の槍の戦士としても有名であり、自ら戦爭に參加し最前線で指揮を取りながら多くの敵を倒し戦爭を勝利に導くことから”戦王”と呼ばれるようになりその姿から國民からの信頼は絶大であり戦士を引退してからもヴィディルの信頼は変わらずである。
そんなヴィディルは勇者に謝を述べると頭を下げた。
一國の王が勇者とはいえ頭を下げるということに周りの騎士などはもちろん彌一も驚いている。國を預かる王が頭を下げるなど國王としては有り得ない事なのだが、ヴィディルは國王であるが人としての禮儀を優先し謝を込めて頭をさげたことから人としての良さが窺える。彼のそんなどんな相手でも人としての禮儀を忘れず傲慢ではない態度も人気の一つである。そんな心彌一が心しているなか、
「頭を上げてください、國王様。僕たちの戦爭參加は自分たちで決めたことです、禮を言われるようなことではありまあせん。」
自分で決めたことだから禮は必要ないと我らが英雄相川が前に進み出てくる。
「もしや貴殿が”英雄”の勇者か?」
「はい。僕が”英雄”相川雄也です」
「英雄は世界が危機になると必ず現れ世界を救うと聞く、貴殿には大いに期待しているぞ。」
「はい。必ずや世界を救ってみせます。」
「うむ。ほかの勇者殿たちも大いに期待しているぞ。さてそれでは勇者殿たちよ、これから君たちのお披目として國民に挨拶をと思うのだがよいだろうか?」
彌一たちは特に迷うことなく頷く
「そうか。それではついてきてくれ」
そうして王座の奧の扉に向かおうとした瞬間、彌一は一瞬ヴィディルからの視線をじた気がしたが特に気にすることもなく奧の扉に続いていった。
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そこは100人でも余裕がありそうな大きなテラスだった、そしてテラスの下には王城の中庭がありそこは多くの國民が所狹しと集まっており、勇者が現れるのを今か今かと待ちんでいた。
そんななか、ヴィディルはテラスに設置された演臺に立ちよく通る聲を響かせる。
「諸君!今日は集まってくれて謝する!今日まで我が國は魔王軍との戦爭を行ってきた、しかし長くの直狀態が続き消耗し続けている。そんな狀態に多くの民は不安がっていることだろう、だがそれも今日までだ!この事態に我が國は勇者を召喚し、強力な力を持った勇者たちが魔王軍との戦爭に參加してくれることとなった!!勇者たちが必ずや世界を救ってくれる、だから諸君よ安心してまっていてしい!!勇者たちが世界を救うその日まで!!」
その瞬間、中庭中いや國中が歓喜と聲援に包まれ誰もがこれで世界が救われると喜び、これから戦う勇者に激勵をこめて拍手を送る。
「すごい熱気だねやいくん」
「あぁ。そうだな」
「いまさらだけどこれから戦うことになると思うとなんだか怖くなってきたよ」
「これから訓練をしっかりやっていくんだから大丈夫だって」
「やいくんはすごいね、そんなに勇気があるんだもん。私は怖くて戦う勇気がもてないなぁ。」
そんな凜緒に彌一は
「そんなわけないだろ。俺だって戦うのは怖い、多くの戦いを経験した俺だからこそより凜緒たちより戦いの怖さを知ってる。それに勇気だけで人は戦えない」
「え?じゃあどうしてやいくんは戦えるの?」
「怖いからさ」
「え?」
「怖いから・・・大切な人、大切な何かを失うのが怖いから俺は戦う」
「失うのが、怖いから?」
「父さんを失ったとき俺も母さんも、とても悲しかった辛かったそして何より・・・怖かった。何もしなければ、戦わなければ失うと思うと。」
「・・・!」
「俺は魔を學んで守る。大切な人を、大切な何かをそれを失わないように。だから俺は戦える」
「・・・そっか」
そうして彌一と凜緒が話している間に勇者お披目の幕は閉じていった。
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月明かりが靜かな夜を照らすなか、彌一は部屋のテラスで夜空を見上げていた。
「怖い、か・・・」
お披目の際凜緒に話したことで彌一は父親の事を考えていた。
彌一の両親は、父親は世界最高峰の攻撃・生産系魔師で【魔王】の稱號をもつ魔師で、母親も世界最高峰の防・回復の支援系魔師で【神】の稱號を持つ魔師であり、彌一はそんな二人の世界最高峰の魔師の背中を見て育った。彌一は二人に憧れいつか二人を超える最高の魔師、最強の魔師となるべく二人から多くの魔を學んでいった。
しかしそんな時間は長くは続かなかった。
5年前、神級危険生である神獣”ルバディアドラゴン”の討伐で彌一と父親で最後の止めを刺そうとした瞬間、謎の発によって父親は消え彌一は右目を失った。彌一は今まで學んだ魔を使って父親と一緒に同じ戦場で戦えることが誇らしかったが、その時初めて戦う怖さを覚えた。
その後彌一は右目を失い攻撃系魔が使えなくなり、父親が殘した魔道の開発を行うようになった。
「父さん、あれからいろんなことがあったよ。父さんが殘した魔を父さんほどではないけど研究したり、魔が使えないなら魔以外でも戦えるようにと思ってあの【剣聖】のじいさんや【狙撃王】のオウラさんのところで剣とかの武や撃の訓練をしたりもした。そしてなにより・・・異世界に召喚されて、魔師の道ももう一度歩めることができるようになった。」
これまであった事を今は無き父親に向けて語り、最後に
「父さん、俺は最高の、最強の魔師になれるかな・・・」
そんな彌一のつぶやきは靜かな夜の中に消えていった。
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