《魔がない世界で魔を使って世界最強》世界で一番幸せな瞬間
お互いに威圧をぶつけあい向き合う二人はお互いに相手の行の探り合いをしながら一歩もかない。
彌一は改めてリカードを見る。リカードは両手に指先から肘まで覆う籠手を裝備している。それ以外には最低限の當て用鎧と脛當て用裝備を付けているくらいだ、裝備からして格闘の超近距離戦闘を仕掛けてくると思われる。籠手は右手には紅い寶石、左手には碧の寶石が裝飾されており寶石から魔力の反応がみられる。
(寶石の魔力からしておそらくあの籠手王城にあった國寶武みたいなアーティファクトだろう。てことはうかつに飛び込むのは危険か。)
アーティファクトとは固有の能力を持った武のことで王國にあった國寶武はこのアーティファクトである。彌一の魔導とは違い、彌一の魔導は科學技を魔で強化したもので。アーティファクトは武に魔を付與したものだ。アーティファクトにはそれ専用の魔が仕込まれているため使う固有能力は強力である。
そんなことを考え彌一は【蒼羽】の柄に手を掛け右足を前に出し、抜刀の構えをとる。リカードも拳を握り構えをとっている。
構える雰囲気からリカードの強者としての雰囲気が窺える。あの時のリカードの戦いぶりをから相當な強者であるとは思っていたがいざ対峙してみると認識を一段上に改める。
「かないのか?」
「そっちこそどうなんです?」
そういってお互いに小さな駆け引きをする。
「ならばこちらから行かせてもらおう」
瞬間、リカードの足元が発し、気づけば目の前にいる。彌一の目はそのきをギリギリでとらえており【蒼羽】を抜刀する。そして【蒼羽】がリカードに吸い込まれ・・・消えた。
(なに!ぐっ!)
リカードが消えたと思ったら腹に衝撃が奔り二、三メートル飛ばされる。【蒼羽】がリカードに吸い込まれそうになった瞬間、リカードは前のめりに屈み彌一の視界から消え、その隙に握った右拳を腹にれたのである。
たいしたダメージはないが攻撃に気づけなかったことに驚愕する。リカードは靜かにふーっと息を吐き突き出した右手をおろし姿勢を元に戻す。
「さすがですねリカードさん。全く反応できなかった・・・」
「それはこちらの臺詞だよ、あの攻撃で全くダメージがないとは」
そういって再び構えるが、今度は【蒼羽】を抜刀した狀態で構え先制攻撃をする。同じく地面を発させながら距離を詰め【蒼羽】で橫一文字に斬る。その攻撃にリカードは籠手で防ぎ、その斬撃を逸らす。
すぐに引き戻し今度は鋭い突きを放つ。普通は防ぎにくい突き攻撃を剣の腹に拳を當ててまたもや逸らす。その後も続けて攻撃を仕掛けるがすべて防がれるか逸らされる。彌一は【蒼羽】による攻撃は有効ではないと判斷し、地面を強く踏み込み塵を巻き上げ、リカードから瞬時に離れる。
距離をとって【蒼羽】を収める。そしてレルバーホークを発砲。発された弾丸は【度弾】、込めた魔力によって度を調節できる弾丸は度をゴムのようにらかくして、制圧用ゴム弾になっている。そして弾丸が塵の中に突っ込む。塵が晴れるとそこには何事もなかったようにリカードが佇んでいた。
「やっぱり効きませんか」
「確かに彌一君の剣技は目を見張るものがあったが、これでも昔はそれなりの拳闘師でね。」
「なるほど。確かにそれじゃ四、五年剣やっただけの付け焼刃じゃ効きませんね」
彌一が剣を學んだのは甲明が居なくなってからの五年間なので、昔から何十年と戦ってきた武人であるリカードにはやはり技量の面で劣ってしまう。
それでも諦めない、人の父親に負けるわけにはいかないのだ。それに彌一は剣士ではない、魔師だ。
「ここからは本當の俺、魔師日伊月彌一として勝負と行きましょう」
そういって右手を高らかに掲げ指を鳴らす。
すると彌一の後ろにり輝く魔陣が出現する。十、二十と増えていき最終的に百にもおよぶ魔陣が彌一の背景を埋め盡くす。
「《一斉発》!」
「くっ!!」
そう唱えた瞬間魔陣から一斉にのレーザーともいうべき攻撃がリカードに襲いかかる。リカードはそんな常識はずれの攻撃に目を見張りつつもすぐさま回避行をとる。地面を発させながら著弾する弾丸は全く衰えることもなくコロシアムの地面をぜさせる。やがて永遠に続くかと思われた攻撃がやみ、煙が立ち込める。
煙とともに靜寂がコロシアム全を包み込むが彌一は警戒を緩めない。そして予想道理に煙の向こうからリカードが飛び出す。流石に無事ではなかったのかに付けた武にひびがっている、籠手は全くの無傷のようだがそれでも消耗はしているようだ。
彌一は向かってくるリカードに向けて右手の平に紅い魔陣を展開し炎弾を飛ばす。リカードはその攻撃に避けるかと思われたが、右腕の籠手を盾にしながら突っ込んでくる。すると炎弾が籠手にれた瞬間、炎が籠手の寶石に吸い込まれる。
「なっ!」
吸い込まれた炎は籠手に纏わりつき、リカードは彌一に薄し踏み込む。踏み込んだ力を地面にそのまま伝え、落とした腰をひねり正拳突きを放つ。放った拳と同時に拳に纏わりついた炎が指向を持って襲いくる。
彌一はとっさに即席で障壁を展開、明に輝く障壁が展開するが、繰り出された拳の威力と炎が障壁を破壊し余波が彌一を襲う。
「ぐはぁ!!」
余波によって飛ばされた彌一は腕を使って跳ね起きて膝を著き、右手を突き出して指を鳴らす。
指を鳴らすとリカードの周りの空間が連鎖的に発する。
「ぐっ!!」
発によってリカードも飛ばされる。
お互いの一歩も譲らない戦いに観客は皆呆然としている。観客が黙って見守る中、彌一が起き上がる。
「くっそ、いくら即席とはいえ【金剛障壁】を貫通してくるとかいったいどれだけの威力だよ」
威力を防げず彌一は左腕を押さえながら立ち上がる。
【金剛障壁】とは彌一が使う防魔の一種で、防魔の中でも高い理防能力を有し、魔力の消費もないので彌一が昔よく好んで使っていた魔だ。【金剛障壁】は戦車の大砲すら防ぐのだが、その【金剛障壁】を突破する威力に彌一は驚愕する。
そんな彌一に続いてリカードが完全に予想外の一撃で衝撃を殺せず、頭からを流して膝を支えにして起き上がる。
「くっ、今のは完全に予想外だったよ」
「そっちこそ、なんです?その籠手」
「この籠手は【アルメディアの紅眼・碧眼】という寶石が嵌め込まれた籠手でね。右腕の紅眼は炎の魔法を吸収し、左腕の碧眼は風の魔法を吸収する。吸収した魔法を炎なら攻撃威力強化に、風なら移速度を上昇させる籠手型のアーティファクトだ。吸収した魔法そのものを放つこともできる。ただし強力すぎる魔法は吸収できないがね」
「はは、なんだそりゃ」
そういって自的な笑みを溢す。吸収できる魔法には限度があるがそれでも十分に強力なアーティファクトといえる。
そんな彌一にリカードは言う。
「どうした彌一君。確かに私は負傷したがそれでも完全に戦闘不能なわけではない。まだ終わっていないよ」
再度拳闘の構えをして、左腕を押さえながら佇む彌一に言う。そんな彌一は口元に笑みを浮かべる。
「いいや。ここで終わりだ」
そして詠唱をする。
「《その輝きは全てを縛る。あまねく星々の鎖はすべてをこの世に留める。そのすべてをこの世に縛り、戒める。》」
詠うのは大魔。詠いだすと青黒い夜のの魔陣が頭上に展開。魔陣が徐々にを通り右足で留まる。そして最後の詠唱。
「《さぁ、すべてをここに留めよ。縛れ。星々の輝きと共に》」
そう詠い、右足の踵で地面を踏む。踏むと同時に右足を中心とした巨大な青黒い魔陣が展開。瞬時にリカードも包み込み魔陣から白の鎖がリカードを捕えるべく殺到する。
とっさにリカードは魔陣から逃れようと駆けだすが。
「な!重い!!」
リカードのに重圧がかかりきを阻害する。そして白の鎖がリカードを拘束した。【強化】で強引に鎖を破壊しようとするが、鎖はどれだけ力を込めてもびくともしない。
「無駄ですよ。その星の鎖は全てを縛り、留める。それが不確定な霊的存在でも、それが神であろうとも。すべてを縛るのがこの鎖、【星団の鎖】」
霊的に実のない不確定なものや、神などの高次元の存在を現世に縛り留めておくのがこの大魔【星団の鎖】である。
「まさかそんな隠し玉があるとはね・・・」
「それでどうします?」
そういって【蒼羽】を突きつける。そしてこんな現狀に勝ち目などなく。
「降參だ。負けたよ彌一君」
そういってリカードは降參する。リカードの宣言をけて彌一は鎖を解く。
「いい勝負だったよ彌一君」
「こちらこそ勉強になりました。ありがとうございます」
そういって握手をわす。すると圧倒されていた観客がしずつ拍手を起こし、コロシアム全が拍手と歓聲に包まれた。
そんな観客の歓聲に驚きつつ照れくさくなって、セナはどうだろう?と思いそちらを向くと、観客席から飛び出しこちらに向かって走ってく來る。
「彌一~~!!」
そして近くまで來ると彌一のに飛び込んでくる。
「大丈夫彌一!?そんなに怪我して!もう無茶しすぎ!!」
「ごめんセナ。これくらいしないと勝てなかったから。」
そういってセナの頭を優しくでる。セナは顔を赤くし彌一のにより一層顔をうずめる。そしてしばらくそうしていると、リカードが聲を掛ける。
「安心したよ。これだけの力なら娘を任せられる。彌一君、うちの娘をどうかよろしく頼むよ」
リカードが真剣な表で手を差し出してくる。その手を彌一は強く握る。
「わかりました。必ずセナを守ってみせます」
「ああ、よろしく頼む」
こうして観客の歓聲が響く中、娘を掛けた決闘は終わった。
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夜空に輝く星々がうっすらと辺りを照らし辺りの森から靜かに蟲の聲が聞こえてくる。彌一とセナは今、里にある森の頂上で星を見上げていた。
彌一はセナに膝枕をしてもらいながらその輝く星を見る。
「おつかれさま、彌一」
「ああ、今日は本當に疲れたよ」
「あんな無茶するからだよ。」
「人の父親に負けるのは男として恥ずかしいからな」
「もう・・・」
嬉しそうに頬を赤く染め彌一の髪を優しくで、二人の間に心地よい靜寂が流れる。そんな靜寂の中おもむろに彌一が穏やかに聞いてくる。
「なぁ、セナは今、幸せか?」
そんな彌一の言葉にセナは彌一の顔を覗き込みほほ笑む。
「私は今一番幸せだよ。お父さんとお母さんに會えて、故郷に戻れて、失った十年間を取り戻せて。本當に幸せ。それに・・・」
彌一の瞳を見つめ続きの言葉を紡ぐ。
「こうして彌一と一緒にいられる今が一番幸せ」
そういって彌一のにを重ねて幸せを行で表す。を離しお互いに見つめあう。
「彌一はどう?幸せ?」
「當たり前だろ?魔師としての力を取り戻して、父さんについての事もわかって。それにこんなに可い人もできて、本當に幸せだ」
「・・・んっ」
セナの首に手を回し顔を引き寄せ、今度はこちらからを重ねる。セナも積極的にを求めてくる。を離して起き上がりセナの橫に座る。セナはし名殘惜しそうな目で見てくるが彌一が髪をでると気持ちよさそうに目を細め手の平に頬をすり寄せてくる。
「セナは晝のリカードさんの言葉覚えてるか?」
「え?お晝の?・・・あっ」
唐突に彌一が聞いてくる。セナはうーんと首を傾げて答えに辿り著いたのかし顔を赤くする。
「も、もしかして、結婚のこと・・・?」
「あ、あぁ。それのことなんだが」
そういってポケットから小さな箱を取出しセナに見せる。中には銀のを放つ銀のリングに明な寶石が付いた指が二つ存在していた。
「うわぁ、綺麗・・・彌一この指は?」
指のしさにして聲をらし、彌一に指の意味を聞いてくる。彌一はし深呼吸をしてゆっくりと口にする。
「俺たちの世界ではプロポーズのとき、結婚指を左手の薬指に嵌めてプロポーズするんだ」
「え・・・?」
彌一はゆっくりとセナの左手を取り、その薬指に指を通し、真っ直ぐに真剣な眼差しでセナの目を見る。
「セナ、俺はこの先もずっとお前と居たい。昨日人になったばかりだけど・・・俺とこの先もずっと生きてくれないか?」
「・・・・・・っ!!」
セナは大きく揺し悶える。世界で一番の人からの最高の贈りに頭が追いつかなくなる。
それでも必死に頭を回し、この幸せを自分が出せる最高の笑顔で示す。
「はい!私もあなたと一緒にいつまでも居たい。」
涙は出てこなかった。こんなに幸せなで素敵な場面を涙のせいでよく見えないなんてもったいない。今この場にふさわしいのは幸福の笑顔だけ。
箱にあるもう一つの指を今度はセナが彌一の薬指に嵌める。その際、頬に軽いキスをすると彌一はし照れた様子で笑う。そんな彌一につられセナもくすくすと笑う。お互いに指を見せ合ったりしながら今このときの幸せを噛みしめる。
「彌一、さっきの今が一番幸せって言葉は噓。私は今この瞬間が人生の中で一番幸せ」
「なに言ってるんだ。今からもっと幸せを摑むんだろ?一番を決めるのはこれからだ」
「ふふ、そうだね。でも私の中ではこれが一番の幸せ。この幸せを超えることはないと思うよ?」
「じゃあ、その一番を超えれるくらいの幸せを作らないとな」
「うん!」
そう言って再び笑う二人。その景は今もなお、夜空に遍く星々の輝きや月の輝きよりもずっと大きく輝いている。
二人の笑い聲は靜かな夜の闇にに溶けては消えてゆき、夜空に浮かぶ月の輝きはそんな二人をいつまでを靜かにうっすらと照らしていた。
星の見守り人
如月 星(きさらぎ せい)はごく普通の宇宙好きな天文探査官だった。 彼は銀河連邦の公務員で有り、科學や宇宙が好きだったので、宇宙探査船に乗って、宇宙探査局の命令に従い、のんびりと宇宙探査をしていた。 辺境の宇宙を しかし彼の少々変わった才能と、ある非常に特殊な遺伝的體質のために、彼は極めて特殊な計畫「メトセラ計畫」に関わる事となった。 そのために彼は萬能宇宙基地とも言える宇宙巡洋艦を與えられて、部下のアンドロイドたちと共に、宇宙の探査にでる事となった。 そしてある時、オリオン座のα星ベテルギウスの超新星爆発の調査に出かけた時、彼のみならず、人類全體の歴史と運命を背負う事になってしまった・・・ これは科學や探検が好きな一人の人間が、宇宙探検をしながら、しかしのんびりと暮らしたいという矛盾した欲求を望んでいたら、気が遠くなるような遠回りをして、ようやくその願望を葉える話である!
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