《魔がない世界で魔を使って世界最強》鬼神の英雄
「........ゆうにぃ、もう行っちゃうの.....?」
抱き著いてくるケーティアの涙に、雄也は「ぐっ......!」とを締め付けられる。
今はちょうど晝ごろ。彌一たちはいよいよ本來の目的地である、コーネリア國に向かうべく、旅立とうとしていたのである。
1週間程度の滯在だったが、集落の人々は優しく、全員後ろ髪を引かれる思いだった。だが、一番引かれているのはケーティアのようで、今こうして別れる寂しさの為、見送りで集まっている大勢の前で雄也に抱き著いているのだ。
そして雄也も雄也で、抱き著いて必死に涙を堪えながら、もうしいてほしいというケーティアの願いに頭を悩ませているところ。
「ごめんねケティ。でもそろそろ行かなきゃ。ほら、ケティにスマホ渡したでしょ?」
そう、ケーティアには彌一製のスマホを渡してある。もし集落に何かあった時のためということで渡してあるが、本當はケーティアと雄也の連絡のためだ。
魔王を討伐して迎えにくるとは行ったが、それがいつになるかわからない。いつかの日を待ち続け、ずっと會えないのは可哀想ということで、彌一が夜なべして作ったものだ。
「これがあればケティとお話出來るから」
「........いつでもケティとお話してくれる?」
「もちろん。毎日は流石に無理かもだけど、3日に一度とかならお話出來るから。だから、ね?」
「.........うん」
背中をポンポンと叩くと、そう言って頷くケーティア。雄也も安心したようで「ほっ」と息を吐く。
「絶対だよ?絶対だかね、ゆうにぃ」
「うん。それじゃあ、いつ電話するか決めようか?」
「うん!」
雄也との約束事にケーティアは嬉しそうに笑って、雄也もそんなケーティアにつられて嬉しそうに微笑む。
そんなまるで熱々カップルのような二人の姿を眺めながら、離れたとこから見ていた彌一たちはニヤニヤと含みのある笑みをこぼす。
「ありゃもう惚れてるな」
「ああ。ケティの雄也を見る目がする乙のそれだ」
「うん。それに雄也がケティを見る目も前とし違う」
「雄也も案外素直じゃないところもあるから無自覚なのかもね」
「そうそう、ねぇ聞いてやいくん。ケティちゃん、雄也くんに綺麗な自分をみせたいからって言って、化粧教えてしいって言ってきたんだよ〜」
その言葉の通り、今日のケーティアは薄く化粧がされており、ちょっとの化粧にもかかわらず可さがぐんと引き立てられている。現に、今朝數名の男の子はケーティアを見て顔を真っ赤にし、雄也もし放心したほどだ。
「私のところには料理を教えてしいって來た。雄也が迎えに來た時に、一番に味しいご飯を食べさせたいんだって。」
「ほぉ〜う、もう完全に惚れたな」
自分のいない間に次々とを暴されていくケーティア。仲良く隣り合って座るケーティアと雄也は、お似合いだった。
「マスター。そろそろ出発しなければ、今晩中に山を越えられません」
「それもそうだな。ケティは可哀想だが仕方ないな。雄也〜!そろそろ出発だ〜!」
楽しそうに話す二人に忍びない気持ちで聲をかける。ケーティアも寂しそうな顔をするが、でも連絡をできるとわかってすぐに笑う。
「それじゃあケティ。しの間お別れだけど、連絡は欠かさないから。それに近くに來るときは寄るから」
「ほんと!?」
「うん。だからまたね」
一度ケーティアの頭をでて立ち上がると、彌一たちのところへ向かう。
「それではジキルさん。お世話になりました」
「なんのなんの。孫娘やカネーシアとカーネを救っていただいた恩人方じゃ。いくらでもいていただいても構わんのですぞ?」
「そういうわけにはいきませんよ。ここは居心地よくてもうしいたいけどそろそろ行かないと」
「ホッホッホ、冗談じゃ冗談。でも、本當にみなさんには謝しておる。ありがとう」
「本當にありがとうございます。皆さん」
「あの時はすまなかった。いきなり襲いかかったりして。今は謝しかない」
ジキルに続いてカネーシアとグレバスもお禮を言ってきた。そして3人と同じくして集落の人も一様に「ありがとう!」や「またいつでも來てくれ!」といった聲が上がる。
そんな言葉を気恥ずかしくじつつ、彌一たちはいよいよ旅立つ。
「待ってゆうにぃ!」
「ケティ?」
と、歩き出した雄也の裾を握ってケーティアが止める。ケーティアと目線を合わせる。
「どうしたの?」
「え、えっと........あのね.......」
だがケーティアは雄也と目を合わせようとせず、赤い顔でモジモジと指を合わせる。
だが意を決したのか、雄也に一歩近づき、
ちゅっ
頬に小さなを軽く押し當てた。
「............っ!?」
突然のキスに雄也は顔を赤くし、頬をでる。
キスをしたケーティアも、まるでれたリンゴのように顔を真っ赤にする。
でも目を逸らすことなく、雄也の目を見て、この場の誰よりも綺麗な笑顔で言った。
「いってらっしゃい!」
「おーい、雄也〜」
「.........はっ。ごめんごめん」
集落を出て數時間後。一行はへカートで山を越えているところ。
健と雄也は暇つぶしでチェスをやっていたのだが、雄也はこのように先程からほうける事があった。
理由は言わずもがな。
「良かったなゆうにぃ?あんなに可い嫁が出來て」
「うるさい。.......チェックメイト」
「え!?あっ!噓だろ!?」
おちょくる健に、若干頬を赤くしながらもしっかりチェックメイトをかける。惚けることはあっても決めるところはしっかり決めてくるスーパーグランドマスターである。
「..........ロリコン」
「今なんて言った健!僕はロリコンじゃない!負けたからって見苦しいぞ!」
「うるせぇ!この、にキスされて顔赤くして惚けるロリコンめ!知ってんだぞ!お前のスマホのホームがケティちゃんとのツーショットの畫像なことを!こうなったらこの事実裁判所に送りつけてやる!」
「卑怯者!!そんなことになったら死刑どころじゃ済まされないぞ!?それにホームはケティにお願いされたからで自分でやったわけじゃない!!........って、どうして知ってるんだ!?」
「彌一に頼んでちょちょいっ、と」
「彌一ぃいいいいいいいいいいいいいいいーー!!」
離れてユノと遊んでいた彌一に向かって雄也がんだ。
當の彌一はすでに眠っているユノに膝枕していて「しーっ」と指をに當てている。ちゃっかりユノに遮音の結界を張って。
「仕方ない。そんな哀れな雄也にはこれをプレゼントしよう」
そう言ってポチポチとスマホを作すると、雄也のスマホに著信がる。開いてみるとそれは一枚の寫真だった。
ケティが雄也の頬にキスをしているシーンの
「あ、間違えた。すまんすまん」
「待てーーーッ!!なにこの寫真!いつの間に撮ったの!?」
「ほんとはこっち」
「おい!!」
慌てふためく雄也など構い無しに、またしても雄也のスマホに著信がる。恐る恐るそれを開くと、またしても一枚の寫真だった。
健と彩が夜の広場で座ってお互いに頭を預けているシーンの
「待てーーーッ!!なんだこの寫真!!いつの間に撮りやがった!?」
「セナと散歩してたら偶然見かけたからついパシャリと」
「パシャリとじゃねぇよ!?雄也今すぐそれを消せ!!」
「え〜、どうしよっかな〜」
「くっ!わかった、裁判所へ報告するのは取り下げる。だから大人しくその寫真を消すんだっ!」
そんなやりとりをしていると、突然車が停止する。
「どうしたエル?」
『前方に罠の魔法が設置されているのを確認しました。それにどうやら複數の敵が森に紛れているようです』
エルの言葉で探索魔を使うと、たしかに複數の人が森に潛んでいる。しかも中には周りの人間より魔力が高いものが數十人いる。おそらく魔法師だろう。
全部で合計100近く。これほどの人數で森に潛んでいるとなると
「山賊か。はぁ〜、またなのか?」
「なんか私たちが旅立とうとすると事あるごとに山賊が出てくるね?」
そう言って霊の里を出たときを思い出す。他にもこの間の銀狼族の集落から出てきたときといい、山賊と何かしらの因縁でもあるのかと思うセナだった。
「おい!大人しくその馬車から出て來い!」
そんな中、外から山賊の聲が聞こえてきた。
『どうしますかマスター?』
「俺たちで出るからエルは中で待機しててくれ。いざとなったら振り切れ」
『了解』
ユノをベットに寢かせて、彌一、セナ、凜緒、雄也、健、彩、の6人だけが外に出る。外に出ると道のど真ん中に20人ほどが出ていている。殘りは隠れている。
「うひょー!頭!極上のでっせ!」
「なんだよ、変な馬車に乗ってるから警戒してみれば、たった6人じゃねぇかよ!」
「これなら楽勝だぜ!」
セナたちが出てくるなり、男共が汚い目でセナたちを見てくる。その舐るような視線にセナたちは腕をさすって彌一たちの後ろに隠れる。
そんなセナたちを見て「あぁ?」と殺気を発させようとする彌一。それを「待て!落ち著け!」となだめる健と雄也。
「チッ.......それで、一なんのようだ」
「はぁ?今のこの狀況が理解できてねぇのかテメェ?お前たちはこれから殺されるんだよ!!!俺たち新生バファリン山賊団になぁ!!」
『え!?』
「ぎゃはははは!!俺たちの名前を聞いて恐れおののいたか!!でももう遅いんだよ!!」
聞いたことのある名前に思わず聲を出して驚く彌一たち。それを恐怖で聲を上げたと勘違いした様子のバファリン山賊団は笑い聲をあげる。
「なぁ、彌一。確かあの半分は優しさで出來てる山賊達ってこの間リーダーを拘束したんじゃなかったっけ?」
「ああ。けど、どうやら殘ってたメンバーで新たにリーダーを選んで新生バファリン山賊団として始し始めたんだろうよ。だけど」
「うん。運が悪いね」
「おい!お前ら何コソコソと話してやがんだ!!」
コソコソ話す彌一達に怒鳴る新生バファリン山賊団のリーダー。森に味方が潛んでいるからなのか含みのある笑みを浮かべる。
「にしても俺たちも運がいいぜ。これから銀狼族を攫いに行くってときにこんな上玉に出くわすなんて」
「そうだな!!」
その言葉に一瞬彌一達は直する。どうやらこの連中、この間のケティやカーネ、カネーシアの拐現場から、銀狼族の集落の目星をつけ、これから集落を襲う予定だったらしい。
さらに山賊の會話は続く。
「そういやぁお頭。この前偶然森で捕まえたあの銀狼族のガキもなかなかのもんでしたぜ」
「そういやぁそうだな。けど俺はガキには興味ねぇよ。もうし大人だったら相手してやらねぇでもないが」
「でも、あんなガキみたいになかなかのがいるんじゃありません?」
「そうだな。こりゃ張り切らねぇとなぁ!」
余裕の狀況で口が軽くなったのか、聞いていないことまでベラベラと喋り出す山賊たち。
だがそれが山賊達の運命を決めた。
「ーーーいま、なんて言った?」
その靜かな言葉の直後、溢れる魔力が周囲を走った。その魔力を発していたのは雄也だった。
「な、何だこいつ........っ!」
「いまなんて言ったって聞いてるんだ」
山賊達に一歩踏み出す雄也。その表は前髪に遮られ伺えないが、中から溢れる闘気がその心を語っている。
溢れ出る神聖をイメージさせる黃金の魔力は、今や禍々しく、れればそれだけで命を持っていかれそうな危うい印象を與える。
彌一やセナほどではないにしろ、雄也も余裕で一般の魔法師の魔力容量を超える魔力を持っている。その魔力を発させて雄也は続ける。
「そうか、お前達がケティを攫った実行犯か。そして一度だけでは飽き足らず、二度もケティを攫おう、と」
ゆらりゆらりと近づいていく。その重圧と魔力に山賊達が慄き、一歩後ずさる。
「なんだお前!!止まれ!止まれって言ってんだよ!!くそっ!魔法師!魔法を放て!!」
頭がそうんだ後、四方の森から様々な屬の魔法が雄也目掛け飛んでくる。
「おいおい、無粋な真似すんじゃねぇよ」
パチンッとフィンガースナップ。瞬く間に黃金の障壁が雄也を守るように四方に展開。魔法と障壁が衝突した。
結果はもちろん無傷。砂煙が晴れ、そこには眩いを放つ聖剣を持った雄也が佇んでいる。
「ありがとう彌一」
「払いは任せな。お前は目の前に集中してろ」
「ああ」
振り向くことなく雄也は頭に向かって歩き出す。
「集落の人達を.......ケティを、攫うだって?ーーーふざけるな外道共」
前髪から覗いたギンッと鋭い眼が頭を抜く。その眼には烈火の如き怒りが垣間見え、一目で雄也がブチ切れているのがわかる。
溢れる魔力に乗って殺気も漂ってきて、山賊達は恐怖に震える。
「い、行け!お前ら!あいつをぶっ殺せ!!數じゃあこっちが上だ!囲んで始末しろ!!」
恐怖でどうにかなった頭が部下にそう命令すると、一瞬の迷いがあったが、「あああああああああああ!!!!」と唸り聲をあげて突撃してくる。
「.........お前たちみたいな汚い手で、僕のケティにれるなッ!!!!」
ぜるように駆け出した雄也。既にルナ・エルームに炎を纏っている。
「「「おらぁああああ!!!」」」
向かってきた雄也目掛け、複數の山賊が一斉に武を振り下ろす。しかし雄也はすべての攻撃をルナ・エルームだけでけ止める。
ギリギリと拮抗するが、次の瞬間雄也は一歩下がると武の衝突地點をずらす。そうして前のめりに崩れた山賊にぜた炎が直撃。
「地!!」
『ぐわぁああああああああああーーっ!!!』
炎に包めれた山賊に目もくれず、地を使って今度は別の集団に突撃して剣を振るう。その剣筋に迷いはなく、今の雄也に慈悲という言葉はない。
矢が飛んでくれば斬り飛ばし、発地點に向けてお返しとばかりに魔法を撃ち込む。
果敢にも斬りかかってくれば、時にいなし、時に正面から力でねじ伏せる。
一振りで數人もの山賊を屠っていく。そのきはまるで鬼神の如くどこまでも暴力的。
「かかってこい外道。ケティはもう、誰にも渡さない」
【限界突破】と【強化】を使って能力をさらに底上げする。それによりさらに存在が増し、放出する魔力量も桁違いになった。
再び駆け出す雄也。その勢いは衰えることなく、次々と山賊を吹き飛ばしていく。
そんな景を彌一たちはし離れたところから見ていた。
「すげぇ勢いだな。てか雄也でもブチ切れるんだな」
「當たり前だろ。とゆうか雄也がやらなかったら俺がやってるところだ。俺の嫁に汚い目を向けやがって」
「それにしてもすごいわね。前の大戦とき並みじゃないかしら?」
「てゆうかさっき雄也くん「僕のケティに〜」って言ってたよね?」
「うん。雄也もどうやらケティに惚れてるみたい」
「素直じゃねぇな〜。いや、雄也の場合無自覚なだけか」
前で鬼神の闘を見せる雄也を眺めながら、そんなのんびりとした會話している。
ちなみに彌一は解析眼で先ほどから録畫していたりする。もちろん雄也が「僕のケティにれるな!」と啖呵切ったシーンも録畫されていたりする。
これはケティにだけ送るかな、と考えながら雄也を無視してこちらにやってきた山賊たちの両足をレルバーホークで撃ち抜いていく。
「セナ。あの辺とあの辺とあの辺によろしく」
「うん。任せて。【プチ・風炎砲・散】!!」
炎を纏った風の矢を頭上に撃ち出す。すると矢は分裂し別々の位置に著弾。激しい炎がぜる。
『ぎゃああああああああああああああーーーーっ!?』
この風炎砲、実は見た目こそ派手だが、殺傷能力は大したことないレベルに設定されている、広範囲制圧魔法だ。だからプチなのである。山賊たちも軽い火傷程度で、発の衝撃で気絶したこと以外は特に外傷はない。
「さて、魔法師の方はあらかた片付いたかな?」
「はい。森の敵も數ですし、雄也様の妨げにはならないかとーーー」
「お前らくんじゃねぇ!!!」
一喝する頭の方を見ると、拳サイズの赤い寶石を頭上に掲げていた。
「こいつは魔法石だ!!これ以上くんならこいつに込められた【炎破】の魔法を発させるぞ!!」
「エル。魔法石って?」
「最上級火魔法の【炎破】が込められた寶石です」
エルの言う通り、山賊の頭が掲げているのは最上級魔法が込められた寶石だ。寶石は魔法石と呼ばれ、魔法を込めることができる貴重な石だ。中でも最上級魔法が込められた魔法石はとても貴重で、戦場ではそれ一つで戦況を変えることもあるほどの威力を誇る。
「おまけに寶石そのものに魔法干渉を阻害する効果があるので、解するには一流の火魔法師と解師が複數必要です」
「その通りだ。へっへっへっ、こんなところでこいつを使うのは惜しいが、これでそこのどもと銀狼族が手にるなら充分......ーーー」
「《霧散せよ。解呪ディスペル》」
パキンッと寶石にヒビがった。
「え、ええええええええええええーーーっ!?!?バカな!?こいつは一流の魔法師が複數揃ってやっと解できるもんだぞ!?」
「ディスペルに対する式を組んでない魔法なんか壊すのは簡単だ。式をや巻スクロールに刻む際にアンチ・ディスペルの式を組んでないと、簡単に干渉されて分解されるか反されるのがオチだ。それと、いつまでもそれを持ってていいのか?」
そう言うと彌一は人差し指と親指をくっつけて、頭に向ける。
「解放リリース」
パチンッとフィンガースナップ。
その瞬間、握っていた寶石が眩い赤いを放ち、大量の魔力を発させた。
「ぐぬぉおおおおおおおおおーーーっ!?」
大きな魔力の瞬間的な発は一時的に周囲の魔法則、理法則をし、それが衝撃波となって周囲を駆ける。
その魔力衝撃波をすぐそばでけた、頭は吹き飛び木に衝突する。
「な、なんだ今のは........ッ!!」
「寶石に包されていた魔力を解放しただけだ。式を破壊しただけで魔力は霧散させてないしな」
通常の解は式をしずつ解いて行きながら、同時に魔力もしずつ外に放出して抜いて行くものだ。魔力を一気に放出してしまうと式が暴走してしまうので、しずつ抜いて行く必要があるため、解に時間がかかるのである。
だが彌一は魔力を制する式だけを殘し、さらにそれを強化する式を新たに加えた為、一度に素早く解することができたのだ。
もちろんこれは現代魔理論を知っていなければできないので、この世界で再現することはできない。
そして今の発はその制していた式を壊し、包されていた魔力を一気に解放したのだ。
頭はそれを聞いて理解はできていないが、彌一がとんでもない技を扱う魔師だとは理解したようで、「そ、そんなバカな......」と戦意消失している。
雄也の方を見るも、未だ鬼神の如き戦闘を繰り広げる姿を見て、絶的な顔をした。
「さて、面倒なもんは潰したし、あとは雄也に任せて先に戻るか。お〜い雄也〜先戻ってるぞ〜」
「はぁああああああああああーーッ!!」
『ぎぃいいいいやああああああああああああああああああーーーーッ!?』
「うん。聞こえてないな」
大空を舞う山賊に目もくれず彌一たちはそくさとトレーラーの中に戻る。戻っても相変わらず外から発音と山賊の悲鳴が聞こえる。
「彌一晩飯はどうする?外で作る?」
「う〜ん。いや、雄也が山賊片付けたら止まらずに進む。エル、すまんが今日は代で運転してもらえるか?」
「はい、お任せを。ですが仮眠の際はユノ様と添い寢の権利を」
「任せろ」
「じゃあ簡単に食べれるものにするね?」
「あ、セナ私も手伝うわよ」
「じゃあ私も......」
『ダメ』
「み、みんなして..........」
全員からの制止にいじける凜緒をセナが宥める。
外から聞こえてくる発音と悲鳴をBGMに、今日の晩ご飯に話を巡らせて行く平和な空間。
そうして待つこと15分。
気がつけば外から発音も山賊の悲鳴も聞こえなくなった。
終わったかな?と外に出てみると、案の定戦闘は終わったようで、山賊がまるでボロ雑巾のように一箇所に山積みにされていた。
「お疲れ雄也」
「あぁ、彌一。お疲れ。払いありがとう」
「別に気にすんな。それよりこいつらどうする?魔で自力で抜け出せないように縛っておこうか?」
「うん。もちろんそうするんだけど、........彌一例の薬まだある?ごめんけどそれくれる?」
例の薬とはあの息子が機能しなくな〜る薬のことである。もちろん大量にある上に、今はさらにバージョンアップして、針一刺しで息子には致命的だ。
それを雄也が凄い爽やかな笑顔で要求してくる。それはもう、不気味なくらい爽やかに。その笑みに流石の彌一も引き攣り顔で、あるだけの薬を渡す。
「あ、それと彌一。し待っててくれる?どうやらこの近くにこいつらのアジトがあるみたいなんだ。ついでだからちょっと行って潰してくる」
「お、おう。気をつけてなぁ〜」
クルッと回って、気絶していない山賊に向かう。回って背を向けた際、チラリと見えた橫顔は相変わらず爽やかな笑顔だったが、目だけがどこまでも冷徹で笑っていなかった。
アジトへの案役になってしまった哀れな山賊は『いやだ!いやだぁあああああ!!助けてくれ!助けてくださいお願いしますぅううううううう!!!ぎゃああああああああ!!』と彌一に手をばして必死に許しをこうが、雄也は構い無しに引きずって行ってしまった。
「なんつーか........悲しい事件だったな.......」
雄也が消えていった方を眺めし呆然とする。取り敢えず山賊をどうにかするべく、彌一は一人山賊をまとめて木にぶら下げるのだった。
それから數日後。
吹雪の中、真っ白な世界を抜けて、ようやく目的地が見えてきた。
高い城壁があっても見える山の上に立つ巨大な城。山の斜面に沿うようにも民家が立ち並ぶのが遠くからでも見える。そして城と一緒に目立つ煙突の數。
「ようやくついたな」
【技大國コーネリア】銀世界に突如現れた機械の國である。
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
8 11112ハロンの閑話道【書籍化】
拙作「12ハロンのチクショー道」の閑話集です。 本編をお読みで無い方はそちらからお読みいただけると幸いです。 完全に蛇足の話も含むので本編とは別けての投稿です。 2021/07/05 本編「12ハロンのチクショー道」が書籍化決定しました。詳細は追ってご報告いたします。 2021/12/12 本編が12/25日に書籍発売いたします。予約始まっているのでよかったら僕に馬券代恵んでください(切実) 公式hp→ https://over-lap.co.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=9784824000668&vid=&cat=NVL&swrd=
8 141地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、來訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝國を手に入れるべく暗躍する! 〜
※2022年9月現在 総合PV 150萬! 総合ポイント4500突破! 巨大な一つの大陸の他は、陸地の存在しない世界。 その大陸を統べるルーリアト帝國の皇女グーシュは、女好き、空想好きな放蕩皇族で、お付き騎士のミルシャと自由気ままに暮らす生活を送っていた。 そんなある日、突如伝説にしか存在しない海向こうの國が來訪し、交流を求めてくる。 空想さながらの展開に、好奇心に抗えず代表使節に立候補するグーシュ。 しかしその行動は、彼女を嫌う実の兄である皇太子とその取り巻きを刺激してしまう。 結果。 來訪者の元へと向かう途中、グーシュは馬車ごと荒れ狂う川へと落とされ、あえなく命を落とした……はずだった。 グーシュが目覚めると、そこは見た事もない建物。 そして目の前に現れたのは、見た事もない服裝の美少女たちと、甲冑を著込んだような妙な大男。 彼らは地球連邦という”星の海”を越えた場所にある國の者達で、その目的はルーリアトを穏便に制圧することだという。 想像を超えた出來事に興奮するグーシュ。 だが彼女は知らなかった。 目の前にいる大男にも、想像を超える物語があったことを。 これは破天荒な皇女様と、21世紀初頭にトラックに轢かれ、気が付いたら22世紀でサイボーグになっていた元サラリーマンが出會った事で巻き起こる、SF×ファンタジーの壯大な物語。
8 195豆腐メンタル! 無敵さん
【ジャンル】ライトノベル:日常系 「第三回エリュシオンライトノベルコンテスト(なろうコン)」一次通過作品(通過率6%) --------------------------------------------------- 高校に入學して最初のイベント「自己紹介」―― 「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ。生まれてきてごめんなさいーっ! もう、誰かあたしを殺してくださいーっ!」 そこで教室を凍りつかせたのは、そう叫んだ彼女――無敵睦美(むてきむつみ)だった。 自己紹介で自分自身を完全否定するという奇行に走った無敵さん。 ここから、豆腐のように崩れやすいメンタルの所持者、無敵さんと、俺、八月一日於菟(ほずみおと)との強制対話生活が始まるのだった―― 出口ナシ! 無敵さんの心迷宮に囚われた八月一日於菟くんは、今日も苦脳のトークバトルを繰り広げる! --------------------------------------------------- イラスト作成:瑞音様 備考:本作品に登場する名字は、全て実在のものです。
8 171アサシン
俺の名は加藤真司、表向きはどこにでもいる普通のサラリーマンだが裏の顔は腕利きの殺し屋だった。
8 168最強転生者は無限の魔力で世界を征服することにしました ~勘違い魔王による魔物の國再興記~
うっかりビルから落ちて死んだ男は、次に目を覚ますと、無限の魔力を持つ少年マオ・リンドブルムとして転生していた。 無限の魔力――それはどんな魔法でも詠唱せずに、頭でイメージするだけで使うことができる夢のような力。 この力さえあれば勝ち組人生は約束されたようなもの……と思いきや、マオはひょんなことから魔王と勘違いされ、人間の世界を追い出されてしまうことに。 マオは人間から逃げるうちに、かつて世界を恐怖に陥れた魔王の城へとたどり著く。 「お待ちしておりました、魔王さま」 そこで出會った魔物もまた、彼を魔王扱いしてくる。 開き直ったマオは自ら魔王となることを決め、無限の魔力を駆使して世界を支配することを決意した。 ただし、彼は戦爭もしなければ人間を滅ぼしたりもしない。 まずは汚い魔王城の掃除から、次はライフラインを復舊して、そのあとは畑を耕して―― こうして、変な魔導書や様々な魔物、可愛い女の子に囲まれながらの、新たな魔王による割と平和な世界征服は始まったのであった。
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