《英雄様の非日常《エクストラオーディナリー》 舊)異世界から帰ってきた英雄》第30話 おじいちゃん
「おじいちゃん?」
目の前の老人はまみれになったナイフを片手に玖珂に歩み寄る。
「エ? いや、うそ」
その言葉に反応し、老人のが靄に包まれる。
モヤモヤした霊のような存在はその不安定な顔面の口でニターっと嗤った。
「うそだ……。噓だ噓だ噓だ!」
目の前に居るのは誰だ?
おじいちゃんは何処にいった?
「アアァァァア」
そんな疑問は捨てる。
もうどうでもいいや。
用のお札ふだを片手に目の前のモヤに突っ込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あれ? ホテル?」
嫌な夢を見た。
正確には夢ではない現実に起こったことだ。
時計は9時あたりを指していた。
「起きたか」
蒼月が隣で聲をかけた。
「のんちゃん? あっ……。あの、ごめんなさい」
「いや、大丈夫だよ。それより桃姉は大丈夫?」
「あ、うん大丈夫だよ」
に支障はないが、心が全く安定していない玖珂は反的に「大丈夫」と言ってしまった。
反的とはいえ、今の自分には何にも聞かないでほしいと思っていた玖珂は未だに鼓が速いままの心臓に手を當てた。
「そっか」
素っ気ない返事で蒼月は頷いた。
「そういえば、月ちゃん達は?」
「ん? ああ、それなら隣の部屋もとっておいたからってそっちにいる」
しばらく二人の間で沈黙が続いた後。
「え、えーと月のとこ行って桃姉が起きたこと伝えてくるわ。流石にまだ、寢てないだろ」
この時の蒼月は気まずい空気から逃れる為に月の部屋に行った。
そして、それは盛大なミスでもある。
ドアが開き、一人の玖珂の部屋に一人のがってきた。
「ご主人様。飲みを……、あっ……」
「えっと? 貴方は?」
イムがやってきた。
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