辺り一面真っ白な空間。

ただただ何も無い。

いや、その空間に異が二つ。

「………………なんだよ………」

「いや、家出なんて可い神様もいたもんだね」

蒼月の後ろでからかう神がいた。

「そういうあんたも大概だけどな。こんなやつに構うなんて」

自気味に蒼月は吐いた。

そして『知の神』は笑った。

「あはは、私が可いか………。君はやっぱり人から上り詰めた神だ。言う事が違う」

「可いって意味で言ったんじゃ無いんだが………」

「………………」

「おい？」

「いや、なんでもないよ。では、私は行くね。迎えが來たみたいだ」

「？」

そうして面白そうに笑い、姿を消した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

立ち去った神は早足で神界を歩く。

自室。

あらゆる叡智が詰まった自らの部屋に向かう。

「おい待て」

途中、すれ違い様に呼び止められた。

「どうしたんだい？」

『知の神』はピタリと足を止めたが後ろにいる神に振り返りなどしない。

背を向けている。

「今、この世界で何が起きている？」

呼び止めた『戦の神』はそう尋ねた。

「解らない」

『知の神』はそうはっきりと言った。

そして付け加える。

「だからこそ、何か面白い」

そして、その足がまたく。

「そうか………」

誰にも聞こえないような聲で『戦の神』は呟いた。

「イムテーナー＝コアトル『知の神』よ。その叡智でもってすがいい。

これが同族からの祝福だ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時はしばかり遡り、とある山の中。

「なんかってるんだけど」

月は山のっている空間に興味を示した。

「月様」

突然呼ばれ、振り向くとそこにはイムがいた。

「イムさん？　貴もやっぱりアレを見たの？」

「ええ、それよりもコレは一？」

(呼ばれなくてもやってくる！　本気と書いてマジと読む！　完璧最強天才！　橫文字嫌いのツクヨミちゃんとはウチのことやでぇ　︎)

の中から騒がしい聲で現れたのは月の脳隣人だった。

(なあに固まっちゃってんの？　あ、インパクトなさすぎてご不満なじですか？)

「違うよ！　インパクトありすぎたんだよ」

月がツッコむ。

(失敬失敬。あの後輩野郎の居場所が分かったんだけど。下界とどう繋げるか分からなくて、いいじの・を見つけたから繋げてやったぜ☆)

「つまり？」

(このは繋がってるよ)

(さあて、お嬢さん方？　迷える仔羊ちゃんを正しき道にしばいてあげて。びっくり箱は開けなきゃただの箱なんだよ)

道は開いた。

ならあとは簡単だ。

もう二度と失わないと決めた一人のは挑戦する。

一番近くて、一番遠くにいた人間に。

憧れのヒーローに。

たった一人の兄に。