《手違いダンジョンマスター~げられた魔達の楽園を作りたいと思います~》迷子の子ゴブリン
顔の埋まったホブゴブリン母に顔をあげさせて何事か訪ねる。
「息子が迷子になりました! 目を離すなと言われていたのにスミマセン!」
「完全に目を離すななんて事は出來ないし、こんなこともある。それよりも探そう」
「ご、ご迷をかけます、ここは私だけで!」
……デコピン。
「え?」
「同じダンジョンの仲間でしょ、マスターの俺を信用しなさい」
呆然としているホブゴブリン母をそのままに、メニューから位置を確認する。
メニューには、マスタールームにある
モニターの様にダンジョンの様子を見ることが出來る。
ただ、ゴブリン達や、ゾンビ達はダンジョンの僕にはなってないからエネミー扱いだ。
このままモニターを見ると畫面が真っ赤になるんだよなぁ。
まぁ、今回は浮き出ている子ゴブリンを見つけるだけなので大丈夫だろう。
「お、居たな……口!? バカかアイツは!」
「スミマセンスミマセン!」
「よし、貴はここで待機! ラビィ、お前は一緒に居てあげろ!」
「クロトは!?」
「子ゴブリンの捕獲だ」
「でも自分で行くと危なくない?」
「ユキムラ達呼ぼうにも時間かかるからな。仕方ない」
そう言ってさっさと行くことにした。
うん、きっと危険になる前に捕まえてダッシュで戻れば大丈夫だ! 多分!
きっとラビィがポンコツなせいでダンジョンに不合が起きてるだけだ、そうであってくださいお願いします!
それに捕まえた瞬間に階層を移してしまえば問題ないと思うし。
まぁ、魔と移したこと無いから分かんないけど!
「居た!」
「げっ、マスター」
げっ、て何だよ。
一先ず拳骨、そしてヘッドロックからの退散!
「いたっ! ちょ、マスター、離せって!」
「バカタレ、親さんから離れんなって言ったのに離れた罰だ」
「俺はもう子供じゃ無いんだよ!」
「うるせぇ! 人にハナクソ付けてくるはガキじゃ!」
くそ、必死に抵抗してきやがる。
ここは多分危ないと言うのに……分からず屋め!
──ズザッ
「「へ?」」
なんだ? 今の音……。
──ズザザッ
「マスター、何の音!?」
「知らん。この辺りは異常が発生しているからお前らに注意換気したんだ。寄り付かないようにな、それなのにお前と來たら……」
「マスター怒ってる?」
「そりゃな。帰ったら覚えとけよお前」
まずはこの狀況を打破することが先決だ。
お仕置きなら後で幾らでも出來るからな。
どんな狀況になっているかは俺もわからないけど。
転移したいところだけど権限を持っていない魔はそういう移のしかたは出來ないらしい。
ならコイツに権限を與えるかと言われれば答えはNOだ。何をしでかすか分かったもんじゃないからな。
……敵の位置が全く分からないな、モニター使って見てみたけどマーカーは出ている。
だけど視認が出來ないのは痛い、これは本格的に明なのだろうか。
モニターをちらちらと見つつも後退しているが、同じように何かを引きずる様な音と共に著いてきているので背中を見せて逃げようにも無理だ。
見えない敵なら他のホブゴブリンやユキムラ達を呼んでも効果は薄そうだし。
いっそのこと大魔法的なスキルとかでこの辺りを焼くとか出來ないかなぁ。
あ、めっちゃDPかかんじゃん、卻下卻下、普通に足りん。
今の俺にできるのは……。
なんて考えているとソイツは姿を表した。
……大量の砂が地面から飛び出し空中から降り注ぐように落下してくる。
「うわ、なにコレ。あ、【扇風】」
そこはすっかり存在を忘れていた、最下級風魔法のそよ風を出す程度の魔法スキル、【扇風】を発。
真正面からだと対抗できなさそうなので橫凪ぎに吹かせると風に乗った砂は著地點からずれて地面に到達。
「マスター、すげぇ! まほーだ、まほー!」
「……最下級だけどな」
敵の正は砂か……何故に砂? 魔法的な何かだろうか、そんな恨まれるようなことはしたことないし人間に會ったことも無いんだけどな。
あれか、大分前に來た冒険者達の仕業か。
うむ、あのとき始末した方が良かったか。
その後も諦めない謎の砂と何度かぶつかり合う。
俺は避けてるだけだが。
ふふ、きが実に単純よ、突撃しているだけじゃ俺は當たらないぜ!
あー、脇腹が痛い。
それにしても同じようなきしかしない様だし、子ゴブリンへの興味は無いのか?
それともくものに対して追尾するのだろうか。
それなら……。
「おい! 今のに逃げて他の奴等と一緒に村エリアまで戻れ!」
「マスターはどうするんだよ!」
「俺が引き付ける、宛はあるから心配するな。行け!」
「っ!」
子ゴブリンは森林エリアの奧へと走っていく。
なんかシリアスだけど、今はそれどころでは無い。
俺は謎の砂の突進を避けながら、1番近いダンジョンのり口へと向かい外に出る。
転移することも考えたがまだ子ゴブリンがすぐ近くにいたので、狙われては困る。
……一応友好関係を結んでいる魔の子供だからな、見殺しにして反されては俺が死ねる。
◇
數十分位走ったかな、後ろを振り返るとズルズルと大きさは1メートル程の砂の塊が著いてきている。
非常にホラーな展開だ。
何処かで撒きたい所なんだがメチャクチャに走り回ると迷う自信がある。
なのでひたすら真っ直ぐだ、そんな狀況で撒ける筈もなく無駄な鬼ごっこをしている訳だ。
「よし、これはもうアイツを避けてダンジョンに戻る。そこから転移で逃げ切ろう。そうしよう」
もうし前に気がつけた筈だが咄嗟に出ない辺り、俺にそんな才能はないと気づいて軽くショックです。
踵を返し、砂の塊に突進する。
砂の塊はダンジョンでの攻防を學んでいないのか、飛び掛かってくるだけだ。
そんな飛んだおで出來た下のスペースにスライディングの要領で潛り抜け、そのままの勢いで走る。
「ふははは! これで俺の勝ちだ、アディオス、アミーゴ!」
砂の方を向いてグッバイサインをしていると、隣の茂みがガサゴソと。
そしてそのまま走り抜ければ良いものを、思わず立ち止まってしまった。
「グルルルル……」
「うわ、また出た。しつこいなコイツ」
そう、何度か出くわした熊野郎だ。
まだ生きてやがったのか、おい、威嚇すんなよ、お前この間果やったじゃん。
謝して見逃すとかしろよ、涎を垂らすんじゃないよ!
「グルルルルァァァア!!」
「俺、ゲームオーバー」
二足歩行した熊はその巨腕を俺の頭部目掛けて放つ。
思えばここまで良くやったぜ、あの世に行ったらあの神は毆る。
「……!」
「グルァ!?」
するとどうだろうか、さっきまで追いかけっこをしていた砂の塊が拳の様な形になり、さらけ出されている熊の腹部へ華麗なボディブローを決めた。
毆られた熊は面食らって逃げ出した。
うん、アイツあるよなぁ……【魔化】使って配下にしようかな。
はて【魔化】……なんか引っ掛かるな。
 砂はなんか知らんが熊を追っていったので、今のにとんずらすることにした。
……こりゃ帰ったらミストにでも相談するかな。
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