《創の転生者〜最強魔導師の転生記〜》プロローグ
その昔、人間と魔族の間では戦爭が絶えなかった。晝夜問わず、爭い、奪い、そして殺し合い・・・そんな世界だった。
すでに300年は続いている戦爭。いつ終わるのかわからない、戦士たちは疲弊しきっているのに戦い続ける。
どちらかの種族が滅びるまで終わらない。誰もがそう思っていた。
そんな戦爭は、とある男の手によって終わった。
「私はこの戦爭を終わらせにきた者だ!」
その男は一夜にして戦爭を終わらせた。
傷ついた戦士を癒し
戦士たちを自らの國へと送り返し
人間界と魔界の中間に深いを作った
もうどちらからも、戦爭を仕掛けることができないようにと
その景を見たものは、男を神と稱え、後世の者たちはこう呼ぶ
【救世の魔導師】
この男の名は瞬く間に知れ渡り、なんとか素を知ろうとする者たちが眼になり探したが、見つかることはなかったのだ
男は後世の者たちに語り継がれ、伝説となる
◇
その男のを知る者がいた。それは魔族のであり、極一部の権威を持つ者たちである。
そして、この男の正・・・
「ふぅ。流石にしだけ疲れたね」
男はソファに深く腰掛け、疲れを癒していた。魔法で瞬間的に癒してもいいのだが、魔法の疲れを魔法でとるのはあまり好きではないのだ。
「お疲れのようですね。エリアス」
男の名を呼ぶ者がいる。振り返ると白銀の長髪を持つしいが微笑みを浮かべながら立っていた。
彼の名前はミラエル=ルシフェル。この魔界の長である魔王の娘であり、この男、エリアス=ロードヴルの婚約者であるである。
白銀の長髪を下ろし、覚のようにびる部分を片方三つ編みにしている髪型をしている。目はサファイアのようにしい碧眼、長はエリアスよりし低く、スレンダーな型をしている。
本人はもうしがあればと思い悩んでいるようだが・・・
「あぁ。ただいまミラ。ちょっと疲れたから休憩中だよ」
「あれだけの魔法を使っておいてちょっとの休憩でいいだなんて・・・相変わらず規格外ですね」
エリアスは先の戦爭を終わらせるため、多大な魔法を行使したのだ。並の魔導師なら、1000人が命をかけてもできないような魔法を、1人でやってのけたのだ。それを休憩で回復させるというのはどれほどのことか。
本人はあまり自覚がないのである。
「別に僕が規格外でもなんでもいいよ。今回は戦爭が終わった。それでいいじゃないか」
隣に座ったミラを抱き寄せながら言う。300年続いた戦爭が終わったのだ。今はそれでいい。ミラは頰を赤く染めながらエリアスのにを預ける。
「そうですね。こうしていられる時間が増えたのはとても嬉しいです」
エリアスとしても、ミラと一緒にいる時間が増えるのはとてもうれしいことだ。
自らの白髪はくはつをいじりながらし照れている。婚約者とはいえ、そのようなことを言われるのは照れくさいのである。
「そういえばエリアス。お父様が呼んでらっしゃいましたよ?なんでも今回の褒がどうとか」
「褒とか特にらないんだけどな〜」
魔王からの呼び出しは褒のことらしい。だが正直しいものはない。
「僕としてはもうミラを貰ってるからこれ以上しいものはないんだよね」
「と、突然そんなことを言うのはやめてください・・・///」
ミラがエリアスのに顔を埋めてしまう。本音だったんだが、本音だからこそ恥ずかしいと言うのもあるのだろう。
「とりあえずクラウの所に行こうか」
魔王の名前はクラウ=ルシフェル。
ミラの父であるが、エリアスは呼び捨てで呼んでいる。魔王から盟友として気安く呼ぶようにと言われているである。エリアスはミラの背中をポンポンと軽く叩き、魔王の部屋へと向かった
◇
魔王の部屋にった途端、魔王からお禮を言われた。
「エリアス!今回は本當に禮を言うぞ!おかぜで戦爭を止めることができた!本當にありがとう!」
「いや、戦爭がうっとおしくてミラとのんびり過ごせないから終わらせただけだからさ」
これがエリアスの戦爭を終わらせた理由である。実は両者をこれ以上死なせないとかそんな理由はなかったのだ。なにがあってもミラが第一というのがエリアスのモットーである。
「だとしてもだ、今回のことは謝してもしきれないのだ。なにか褒をと思ってない・・・」
「じゃあミラともっといられるように計らってほしいよ。それが一番の褒だね」
なんとも無と思うが、エリアスはこれが何よりしかったのだ。ミラといられる時間はや権力には変えられない。ミラは嬉しそうにエリアスの腕に抱きついて顔を押し當てている。
「そーか・・・わかった!これからしばらくはお主らはこちらの事を考慮せずに行してくれ。ミラもそれで良いか?」
「ええ。問題ありません。とても嬉しいですよ」
ミラもエリアスに甘える時間がしかったのだろう。若干にやついてるようにみえる。そして部屋を出るとき、魔王がミラにこう言った。
「とてもいい伴をもったな」
「・・・はい!」
ミラにそう言ってもらえて嬉しい。エリアスはそう思い、これからのことを考えウキウキしていた。
◇
それから2人は思うままに行した。川へ行ったり、草原に行ったり、魔の狩へと赴いたり、2人で一緒に晝寢をしたりと、2人の時間を共にした。もちろん、夜も2人でし合ったりした。本當に充実した生活、そんな日々を謳歌していたのだ。
だが、二ヶ月ほど経った時、それは突然終わりを迎えた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「ミラ!しっかりしろミラ!」
ミラが謎の病を発病したのだ。普段なら病などにかからないのだがなぜ・・・
エリアスは悩むが、すぐに回復魔法をかける。
「【全快せよ】」
金のがミラを包む。最上級の回復魔法をかけたのだ。これですぐに良くなるはずなのだが・・・
バリンッ!!
「なッ!?」
魔法が弾かれた。これは普通の病ではない、相手のを蝕み、衰弱させる呪いの類!
「ミラ!大丈夫か!」
魔王が部屋に駆けつけてきた。すると魔王の後方からも幹部たちがってきた。
「ミラ様!」「病にかかられたと!?」「大丈夫なのですか!?」
これだけ心配されているとは。
「信頼されているんだな」
しみじみとそう思う。この時、エリアスは覚悟を決めていた。ミラを、婚約者を救う唯一の手を行使することを。
「來たばかりで申し訳ないが、クラウたちは部屋から出て行ってくれ」
「な、なぜだ!」
「いまから最上級の回復魔法を使う。他に誰かがいると集中できないんだ」
この時、エリアスは噓をついた。これから使うのは最上級の回復魔法ではない。もっと、殘酷なものなのだ・・・
「そ、そうか!わかった!それでミラは治るんだな!」
「ああ、治るよ・・・」
魔王たちに告げた途端、彼らの顔には安堵が見えた。エリアスなら大丈夫。きっとなんとかしてくれるという信頼だろう。
「では!ミラを頼んだぞ!私は外で待っている!」
部屋から彼らが出て行ったが、ミラは不安そうにエリアスを見つめる。
「エリアス、なにをする、つもりですか?」
これから使う魔法に、不安を覚えているのだろう。一なにをするのか、どうなってしまうのか、だがエリアスを信頼していないわけではないと、そういった顔だ。
と、突然エリアスは魔法を唱える。
「【時間よ緩やかに】」
周りの時間を遅くしたのだ。ただしエリアスとミラを除いて。
「ミラ、これから話すことをよく聞いてくれ」
「は、はい」
エリアスは続ける
「君が患っているのは、病ではない。呪いだ。それもかなり強力なものだ」
「なッ!呪い、です、か?」
途切れ途切れに答えを返してくる。とても辛いのがよくわかる。
「ああ、呪いだ。僕の解呪魔法も効かないんだ。おそらく、魔力そのものを無効にする呪いだ」
「・・・エリアス、なにを、するつも、りですか?」
不安なのだろう。心配なのだろう。怖いのだろう。いまからエリアスがすることがわかってしまったのかもしれない。
「魔力が効かないなら、魔力以外を使えばいいんだ」
続ける。
「僕はいまから、僕の全生命力、、、を使って、君の呪いを解く」
魔力ではなく、生命力を使用する。そんなことができるのはエリアスだけ。つまり、文字通り自らの命を賭して、ミラを救う。
「そ、んな・・・そんな!だめ、です!エリアス!」
ミラが涙を流しながらエリアスにしがみついてくる。する人がこれから死ぬのだ。それも自分のために。涙を流すのは必然だろう。
「ミラ、よく聞くんだ」
エリアスが力強く話す。まだ、話は終わっていないのだ。
「僕は自分の生命力の99%を使って君を救う。その時點で僕は生きられないだろう。だから、殘りの1%の生命力をつかって、僕は転生のを作り出し転生する」
ミラは涙を流し続けたまま、エリアスの話を聞いている。
「そしてこれから君にあるものを託す。それをけ取ってしいんだ」
エリアスは懐から蒼に輝く寶石を埋め込んだ指を差し出すし、ミラの薬指にはめた。婚約の指のように。
「この寶石の中に、僕の記憶と君への思いを封印する。そして、転生した後に僕がこの指にれた時、僕は君への思いと記憶を取り戻すだろう」
「思いを、封印?」
「そう、封印だ。君への思いはなくならない。そして記憶もだ。転生の時にけ継げるのは、僕の魔法と君に會うという使命だけだ。だから、ここに封印して再會の時に取り戻す。これをつけている間は、君のの時間は止まる。不老不死ってやつかな」
「それまで・・・私は、私は1人に、なって、しまいます!!」
ミラは泣きじゃくり、エリアスのに顔を押し付け嗚咽をもらす。耐えられないのだろう。エリアスのいない世界など、のない虹のようなものなのだろう。
「大丈夫。大丈夫、だか、ら」
エリアスも涙を流す。悲しいのだ。寂しいのだ。辛いのだ。彼のいない世界は。だが、それでもやるしかないのだ。覚悟を決め、解呪の魔法を唱える。
「【我の生命力を持って行使する 呪いよ 消え失せろ】!」
途端、ミラのをが覆い、顔にもが戻ってきた。彼はが収まると同時に、ベッドから飛び降り、エリアスを抱きしめる。
「いかないでエリアス! !まだしたいことやあなたとの思い出を作りたいの!だから、お願い・・・行かないで・・・」
再び涙を流し懇願するが、エリアスには時間がなかった。生命力が盡きるのだ。エリアスは最後にミラへと口付ける。
それは短い時間だったが、とてものある、深い口付けだった。
そして・・・
「【我の、生命力、を持って、行使する、廻転生】!」
エリアスの周囲に膨大な魔法陣が展開される。これでしばらくお別れだ。そう思うとひどく悲しい。これから、彼のいない世界で生きるのだ。同じ世界に転生するとはいえ、やはり寂しい。
ミラは涙を流している。それをみて、エリアスも一筋の涙を流した。
「じゃあねミラ。僕を、生まれ変わった僕を、またしてほしい。僕も、しているから」
そう伝えた瞬間、ミラが何かをんだが、エリアスには聞こえなかった。
そして、エリアスは意識を手放した。
〜それから1000年後〜
6/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
8 193【書籍化】これより良い物件はございません! ~東京・広尾 イマディール不動産の営業日誌~
◆第7回ネット小説大賞受賞作。寶島社文庫様より書籍発売中です◆ ◆書籍とWEB版はラストが大きく異なります◆ ──もっと自分に自信が持てたなら、あなたに好きだと伝えたい── 同棲していた社內戀愛の彼氏に振られて発作的に會社に辭表を出した美雪。そんな彼女が次に働き始めたのは日本有數の高級住宅地、広尾に店を構えるイマディールリアルエステート株式會社だった。 新天地で美雪は人と出會い、成長し、また新たな戀をする。 読者の皆さんも一緒に都心の街歩きをお楽しみ下さい! ※本作品に出る不動産の解説は、利益を保障するものではありません。 ※本作品に描寫される街並みは、一部が実際と異なる場合があります ※本作品に登場する人物・會社・団體などは全て架空であり、実在のものとの関係は一切ございません ※ノベマ!、セルバンテスにも掲載しています ※舊題「イマディール不動産へようこそ!~あなたの理想のおうち探し、お手伝いします~」
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