「おっ、ここが次のフロアへのり口かな？」

扉のない小部屋にり見えてきたのは螺旋狀の階段。

そこまで深くまで続いているわけではなく、人も縦に２列ずつくらいしか通れないほど規模が小さい。

ただ、今まで歩いてきて、下に降りることができるものが見つかったのはここだけだから、おそらくこれが次のフロアへのり口ってことだろう。

このダンジョンは上層、中層、下層、最下層の４層構で、それぞれが5フロアの合計20フロアだ。

つまり、俺が今から行くのは2フロア目。

今まで探索してたのが1フロア目ってことだな。

ちなみに冒険者の手により探索されたのは14フロア、最下層の2フロア前までだ。

話によると、14フロアの魔が13フロアより大幅に強くて、當時最前線の冒険者パーティのメンバーが1人死亡してからダンジョン攻略の勢いが弱まり、それ以來14フロアを超えることができていないらしい。

確かに下層攻略は厳しいだろうな。

俺が武創造クリエイトウェポンをぶんどったダークゴブリンファイターは、下層の魔だった。

上層に上がってきたはぐれだったから數こそはなかったが、それでも十分強い力を持っていた。

あんな魔が大量に生息する下層を突破するのは至難だろう。

グギャ！

螺旋階段を降り、フロア間移のための小部屋を抜けたところで、聞き覚えのある鳴き聲のようなものが聞こえてきた。

振り返り、視界にったのは普通よりもし大柄なゴブリンが4匹。

なるほど、ゴブリンの鳴き聲だったんだな。

そりゃ聞き覚えがあるわけだわ。

すぐにゴブリンだってわからなかったのは聲が若干野太かったからか？

し大柄だからな。

聲もそれに合わせて太くなってるんだろう。

それにしても大柄か。

ゴブリンファイターのようなものかな？

パッと見て普通のゴブリンよりも魔力量が多いみたいだし。

大柄なゴブリンたちはそれぞれが剣、杖、弓、槍と別々の武を持っている。

なんだか戦隊みたいだな。

ゴブリン戦隊アラスンジャー！

…………打ち切り確定だな。

このゴブリンたちはどうやら俺に攻撃を仕掛けようとしているみたいで、剣と槍が前、弓と杖が後ろに並んだ。

結構頭いいな、この魔たち。

今まで會った魔は隊列なんて組まなかったぞ。

まあ、でも――

「――暗黒魔法を使ったら隊列なんて関係ないんだけどな」

一瞬でゴブリンたちの両腕が吹き飛ぶ。

使ったのは暗黒魔法だが、いつものように大きい塊を前方に放つだけではない。

散弾のように細かい暗黒魔法の粒にホーミング能を持たせて、一度に複數発したのだ。

発された粒はそれぞれに設定された目標に弧を描きながら飛ぶ。

今回で言えば目標はゴブリンたちの両腕だ。

目標は俺が頭で想像するだけで決められるから、簡単だし手軽だ。

さらに、それぞれの粒に魔力をしだけ多めに持たせているため、あまり大きくなくても速度と合わせて威力は抑えめだがでている。

ちょうど良い威力に調整できているってわけだ。

もちろん頭に目標を定めたり、一粒あたりの魔力量を多くしたり、一粒を大きくすれば威力を上げることはできる。

この魔法は複數相手に有利だ。

この魔法のために、1フロアにいる間ずっと研究をすることになったが、これだけ上手く倒せるようになったらの字だろう。

瀕死の狀態で倒れ込むゴブリンたちに魂喰ソウルイーターを発する。

數秒もしないうちにゴブリンたちは全てかなくなった。

吸収が終わったようだ。

よし、これでまた一歩前進だな。

どんどん探索していこうか。

そう思って歩きだそうとしたときだった。

グギャァァア！！

前方から更に大きな鳴き聲、いや、び聲に近いか？

聲質はゴブリンのそれだ。

ただ、いま吸収したゴブリンのものよりもずっと太く、低い聲。

反的に構える。

そして、そのまま油斷なく前を凝視した。

あれは…………って、でかいな！

強化した視力で捉えたのは、このフロアの真っすぐびる通路を占有しつつ、こちらに向かって走ってくる4足歩行のゴブリン。

眼は赤く、通常のゴブリンとは違い、多の、知も見られない。

涎を垂らし、何かに飢えているように見えるその風貌はまるで獣のよう。

大きさは頭が天井に屆くほどであり、俺の長の4倍はあるだろう。

《魔：ゴブリン【変異種：狼】　ゴブリンの突然変異個。Bランク相當の力を持つ。常時酷い飢に襲われ、それによって理を無くしている場合が多い》

突然変異したのか。

まあ確かにこんな魔が2フロアにゾロゾロいたらたまったもんじゃないだろうな。

仮にも初心者用ダンジョンなわけだし。

というか俺、フロアに見合わない強い魔にばかり遭遇してるな。

運がいいのやら悪いのやら。

魂喰ソウルイーターがあるから一概に悪いとは言えないんだよな。

まあそんなことはどうでもいい。

せっかく目の前に強めの魔が出てきたんだ。

俺の練習相手になってもらおう。

頭の中で自の能力の低下を意識する。

自分の能力とスキルに制限をかけているのだ。

能力は救世主メシア化したロシュの2、3倍くらい。

スキルは剣LV５、各上位互換魔法封印、各魔法LV５だ。

自分の力を制限する理由は単純だ。

対等な実力の相手との戦いの経験を積むため。

俺に決定的に足りないものだしな。

ちょうどいい練習相手だ。

防力は制限してないし、気兼ねなく攻撃をけながら戦うことができる。

正直、リディルとの戦いで俺の戦闘センスが高ければあんなに防主な戦いになることは無かったと思う。

結構悔しかったから、次會うときにはあっと驚かせるくらい強くなりたいのだ。

「よし…………行くぞっ！！」

階段のある小部屋から出たばかりの一本道。

その道を蹴り、走る。

がいつもと比べて重く、周りの風景のきの遅さにし違和を覚えるが、仕方ないことだろう。

今までのが凄すぎたのだ。

獣型ゴブリンとの衝突まで後約150メートル。

制限された視力でも薄っすらとシルエットが見えてきた。

迫力がすごいな。

なんだろうか。

この異形は本能的な恐怖心を掻き立ててくる。

奇怪というか歪というか……とりあえず俺がけ付けないグロテスクな見た目をしている。

だが、そんなことで怖気づいていたらダメだ。

制限を解除してそのまま倒したほうがいいんじゃないか、と思う心を押し殺し、足をかして戦に備える。

よし、距離がまってきた。

後100メートル……！

50……、30……――

「――いまだっ！！」

跳躍。

そして、拳に火魔法を纏い、獣型のゴブリンの顔面を毆りつけ――

「なっ！？」

――しゃがむことで攻撃を回避された。

それどころか、前進の勢いを一瞬で消し、力を込めてこちらに頭突きを繰り出してきた。

咄嗟に拳に纏わせていた火魔法を自の斜め上に放ち、その反で地上へと戻ることでこちらも頭突きを回避する。

十分でない勢からの著地。

に負擔がかかり、足がズキズキと痛む。

こいつの機力は高い。

いきなり急所を狙っても避けられるだろう。

ならば足だ。

まずは小さな攻撃で機力を奪おう。

「暗黒剣……！」

勢い良く暗黒剣を抜く。

制限をかけているため、剣の質で言えば特殊級ユニークの真ん中くらいだろう。

今の俺くらいの強さの冒険者がよく持っているくらいのものだ。

暗黒剣を構えながら駆ける。

目標は獣型ゴブリンの足だ。

ズザァア！

ゴブリンが爪を使って薙ぎ払ってくる。

それを飛び上がって回避し、そのまま空中でを捻り、攻撃してきた腕を斬りつける。

鮮が舞う。

上手く攻撃できたようだ。

よし、このまま著地して次の攻撃に――

ドスッ！

「――うぐっ！？」

俺が斬った方を含めた前足２本で薙ぎ払われる。

側腹部に命中し、壁に吹き飛ばされた。

幸い防を制限していないことでダメージは小さいが、もし防を制限していなければやられてた。

攻撃をけてしまった原因は２つ。

１つ目は油斷。

攻撃を與えたことで慢心し、反撃が來ることを考えていなかった。

２つ目は位置。

空中にいたことできがままならず、回避を行うことができなかった。

よし、學習した。

もう一回だ！

再び駆け出す。

狙いは同じく足。

機力を奪うことが最優先だ。

相手の足の攻撃がる間合いにる。

獣型ゴブリンは先ほどと同じように爪で攻撃してきた。

それを、前に進みながら橫にステップを踏むことで回避。

そして、勢いを殺さずに攻撃してきた方と逆の前足を斬りつける。

鮮が吹き出し、返りを浴びるが、気にせず後ろ足に向かって走り続ける。

獣型ゴブリンが俺が駆け出す前にいた位置に飛び、一度距離を離そうとするが、そんなことはさせない。

このまま俺のペースに持っていく！

「グギャアアアア！！」

獣型ゴブリンが前のめりに勢を崩す。

土魔法だ。

獣型ゴブリンが飛ぶために力をれた瞬間に前足２本の地點の地面を沈ませ、不安定な勢にした。

そして、できたスキを見逃さず後足２本を斬る。

さらにが舞い、痛みに耐えられないのか、獣型ゴブリンは大きくび聲を上げた。

相手には知がない。

無茶苦茶に暴れだしたら危険だ。

様子見をするべきだろう。

一度飛び、距離を離す。

獣型ゴブリンは振り返っていないため、俺が背後に立っている狀態だ。

さて、どうだ？

そう思い、獣型ゴブリンを凝視する。

予想通り、を無茶苦茶にかして暴れだした。

俺の判斷は間違っていなかったようだ。

剣での接近戦は危険。

ならば魔法だ。

闇魔法を構築する。

先程使った小さな粒を飛ばす魔法。

それを4足に當てる。

機力を完全に奪ってしまいたいのだ。

暴れている狀態では無闇に近づくことはできない。

だからといって普通の魔法では思った場所に命中させることはできない。

だから、この魔法を使う。

魔力を全て込める。

大きさもできる限り大きくする。

そして、速度を上げる。

中の力を集め、その上で集中を途切れさせない。

目標は敵の4足。

この一撃で致命傷を與える。

イメージを明確に。

放つ闇の弾の破壊力を想像するんだ。

よし、過程は終わった。

後は放つだけだ。

手のひらに想像、構築した魔力を集める。

そして――

「行けぇぇえ！」

――ありったけの力で放つ。

構築された4つの弾が暴れる足に向かって何度も軌道を変えながら迫る。

そして、命中。

「ギャアアアア！」

獣型ゴブリンが悲鳴を上げる。

それとともに崩れ落ち、きが止まった。

斬るなら今だ！

獣型ゴブリンのもとへ駆け、暴れまわっているうちに俺の方を向いていた顔面に向かって連続で剣を振るう。

右から左へ。

左から右へ。

上から下へ。

下から上へ。

高速で、なおかつ効率的に斬るためのきを選択していく。

剣LV5のため、LV9に比べるときは鋭いわけではなく、威力は劣るが、それは比べたときのこと。

十分な威力を持った一撃一撃は、著実にダメージを與える。

そして――

「きたっ！　魂喰ソウルイーター、発！」

敵が瀕死になり、発條件を満たした。

聲に出し、魂喰ソウルイーターを発させる。

獣型ゴブリンが悲鳴を上げる。

だが、それも數秒で止み、目の前であれだけ騒がしかった獣型ゴブリンはかなくなった。

倒したのだ。

「は、はぁ……倒せた……」

思わずへたり込んでしまう。

うーん、中々に強敵だった。

防力が無かったら最初の一発で致命傷だったろうな。

半神人デミゴッドで良かった。

っと、そうだそうだ。

ステータスを確認しよう。

潛り始めてからまだ1回も覗いてないし、結構びてるだろう。

名　前：イルム

種　族：半神人デミゴッド

稱　號：神喰ゴッドイーター

スキル：【魂喰ソウルイーター】

【絶対悪アンラマンユ】

∟【威圧】

∟【黒翼】

∟【黒霧】

∟【暗黒魔法】

∟【固有魔法：暗黒剣】

∟【固有魔法：暗黒結界】

【神聖魔法】

【炎魔法】

【水紋魔法】NEW

【雷鳴魔法】

【土塊魔法】

【氷結魔法】

【時空魔法】

【鑑定】

【叡智】

【狼】NEW

【頑丈】×4NEW

【水練】NEW

【武創造LV3】

【剣LV9→10】UP

【短剣LV2→7】UP

【大剣LV1→5】UP

【槍LV4→8】UP

【斧LV3→9】UP

【二刀流LV4→5】UP

【火魔法LV10】

【水魔法LV9→10】UP

【雷魔法LV10】

【土魔法LV10】

【氷魔法LV10】

【魔法LV10】

【闇魔法LV10】

おお、大分びてるな。

頑丈は巖の蓄積が溜まって上位互換になったのかな？

水練もおそらく水泳が変化したのだろう。

武系統のスキルはゴブリンや武持ちのリザードマンとかを吸収したからだな。

剣はとうとうLV10になった。

そして、魔法。

水魔法の上位互換を習得したな。

これで魔法は全種類獲得したんじゃないか？

もうLVも上がらないわけだし。

最後に、おそらく獣型ゴブリンから吸収したであろう狼。

効果はなんだろうか。

《スキル：狼　敵と認識したものを殺すたびに一時的に全能力上昇。戦闘終了後元に戻る》

おお、字面だけで強そう。

イメージ的には、敵を喰らって飢を凌ぐことで力を増していく、みたいなじかな？

さすがに人間の俺はを喰らう必要は無いみたいだが。

これでさらに集団戦に強くなったな。

どんどん力がついてきて嬉しい限りだ。

思わずガッツポーズをとってしまった。

と、そんなじで喜んでいたときだった。

《叡智及び魔法を全種類獲得しました。統合します》

え？

統合？

魔法をまとめるのか？

えーっと、統合して用貧乏とかになったりしないよな？

変に弱化したら困るんだが……。

《統合完了。魔導王を獲得しました。更に、半神人デミゴッドの特典により複數の固有魔法及びスキルを獲得しました》

俺が混していると、すぐに統合が終わった。

魔導王って言うのと、いくつかの魔法か。

確認してみよう。

名　前：イルム

種　族：半神人デミゴッド

稱　號：神喰ゴッドイーター

スキル：【魂喰ソウルイーター】

【絶対悪アンラマンユ】

∟【威圧】

∟【黒翼】

∟【黒霧】

【魔導王】

∟【炎魔法】

∟【固有魔法：炎獄】NEW

∟【水紋魔法】

∟【固有魔法：嵐壁】NEW

∟【雷鳴魔法】

∟【固有魔法：雷穿】NEW

∟【土塊魔法】

∟【固有魔法：土崩】NEW

∟【氷結魔法】

∟【固有魔法：凍壊】NEW

∟【神聖魔法】

∟【固有魔法：聖治】NEW

∟【暗黒魔法】

∟【固有魔法：闇葬】NEW

∟【固有魔法：暗黒剣】

∟【固有魔法：暗黒結界】

∟【時空魔法】

∟【魔法付與】NEW

∟【魔幻】NEW

【鑑定】

【狼】

【頑丈】×4

【水練】

【武創造LV3】

【剣LV10】

【短剣LV7】

【大剣LV5】

【槍LV8】

【斧LV9】

【二刀流LV5】

って、なんだこれ！？

めちゃくちゃ騒な名前の魔法増えてんだけど！？

というか、確か固有魔法って創った人だけスキル欄に載るんだよな？

だったらこれ全部俺のオリジナルってこと！？

試しに炎獄を鑑定してみるか。

《固有魔法：炎獄　原點オリジン：イルム　魔導王獲得時に半神人デミゴッド：イルムのイメージにより自生された魔法。広範囲を超高溫度の炎が襲う》

うわぁ、本當に俺が原點オリジンになってる……。

なんだろう、いきなり増えすぎて混してる。

さっき用貧乏とか言ったけど全く違うわ。

これ完全に上位互換だわ。

《スキル：魔導王　全屬魔法の威力を上昇、規模を拡大させる。また、所有者の魔力を大幅上昇》

《スキル：魔法付與　道に魔法効果を付與することができる。付與することができる魔法は使用者の所有魔法スキルによる》

《スキル：魔幻　全屬魔法の威力を大幅上昇。また、魔法使用時の魔力消費の大幅低下》

凄すぎて言葉も出ないな。

だけど。

今はこの新しい力に謝だ。

すぐに戦いがあるからな。

力があるに越したことはない。

……々強すぎる気がするけども。

そんなこんなで強大な力を手にした俺。

次の1日も同じように魔を吸収し続けた。

魔導王ほどの果は無かったが、魔が付けていた良質な防を手にれ、スキルも強化されてそこそこ強くなったつもりだ。

そして、今日は出征の日。

いよいよ、魔との戦いが幕をあける。

まだ朝日の昇る前、王都の大通りを歩き王城前に向かう。

鋭に參加することになった以上、失敗は許されない。

何がなんでも魔を統べる者を倒さなければならない。

この戦いに勝たなければならない。

やってやる。

絶対に勝ってやる。

待ってろ、統べるもの。