《シスコン&ブラコンの天才兄妹は異世界でもその天賦の才を振るいます》不相応
俺達3人(喧嘩をしているのは2人)が言い爭っている最中に大きな音がしたので振り返り、その音源を辿ってみると、勢いよく開かれた扉から大柄な1人の男がギルドにってくる。
「俺はBランクだぞ!萬年Cランク止まりのお前達とは格が違うんだぞ。大人しく道を開けろ!」
男は周囲の冒険者達に大聲でわめき散らかして、真っ直ぐ俺達の方向へ向かってくる。
「おい。あいつ最近Bランクに上がったギルだろ」
「なんでもパーティーメンバーの獲を橫取りしてランクを上げたっていう噂があるらしいぜ」
「なんであんな奴がBランクに…」
周りの冒険者達がコソコソと男に対しての不満のようなものを呟いているのが聞き取れた。
というかあの男、俺達の方向に來てるんですけど。いや、絶対にこれ面倒くさいことになるパターンだよな?
だが俺と雫はこの世界に來たばかりで知り合いなんて勿論いないので、俺たちが目當ての線は薄いだろう。となると、あとここにいるのは付のということになるが…
そう考えの表を見ると、あからさまにあの男に対して、嫌そうなが読み取れた。
る程。お目當ては彼か。
本來なら俺達は逃げた方が面倒事から回避できるのだが、彼の表を見るとそうも言っていられない気持ちになる。
確実に面倒事に巻き込まれる未來に溜め息をついていると、男が俺達の目の前まで來る。
男は俺と雫には目もくれずに真っ直ぐに付のの前に來て、下心が丸見えな下賎な目付きを向ける。
「おい、システィラちゃんよ。そろそろ俺のになる気にはなったか?」
「ですから何度も言っているではありませんか。ここはギルドであって、そういう店ではないのでお引き取りください」
「おいおい。このBランク冒険者のギル様がってやってるんだぞ。は大人しく俺のになっておけばいいんだよ!」
男は聲を荒くすると、背中に背負っている雫の長と同じ程の大きさをした斧を手に持って構える。
このままじゃ大事になると判斷し、と男の間にって仲介しようと試みる。
「おい、流石にギルドで事件沙汰は不味いだろ。ランク降格になっても知らないぞ」
「ああん?何だお前?」
男は初めて俺を認識したかのような反応を見せると、俺の持っていたギルドカードに目を落とす。
「はっ、お前、Fランクの初心者じゃねぇか。Bランクの俺様に口答えしてんじゃねえぞ!」
男は大笑いすると、俺の方に斧を向けてくる。
「いいぜ。お前で俺の強さを見せつけてやる!そうすれば、システィラちゃんも俺に惹かれるだろうよ」
やっぱりこうなったか。まあ、介すると決めていたから覚悟はしていたがな。
だが俺自はこいつに恨みはないので、気絶させる程度で済ませてやろうと思っていたが、次の男の臺詞でその考えは180度反転する。
「何だ?お前、良い連れてるじゃねぇか!々、ガキだが俺が可がってやるよ」
は?こいつは今何と言った?
雫を奪う?この俺から?
この俺のする雫を奪うと言ったのか?
その瞬間、太の心の中での人間に対する慈悲という概念が消え失せた。
「お前、面白いことを言うな。いいだろう。お前という雑魚は俺が処理してやるよ」
男や付の、周囲の人間は俺の変貌っぷりに戸っていたが、雫だけは羨の眼差しで見ていた。
「お兄ちゃん、カッコいいー!流石、雫の夫!」
こんな狀況で世迷い言を言っている雫に心の中で突っ込んでおき、ゆっくりと男の方へ歩きだす。
男は雰囲気が変わった俺に驚いているようで、俺が一歩足を踏み出すと、男は一歩後退していく。
「な、何だよ!ちょっと雰囲気が変わっただけじゃねぇか!お、俺はBランクだぞ!Fランクが喧嘩売ろうってのか!?」
男は挑発するような言葉を発しながらも、言葉の端々には揺が読み取れる。
手始めに男に恐怖を與えるために、殺気の強さをlevel6にまで引き上げる。
すると男は俺の殺気に當てられて強さの差に気付いたのか、足を震わせて腰を抜かしていた。
周囲の人々も俺の殺気の効果範囲にいたおかげで、腰を抜かして立てなくなっている人や、中には泡を吹いて気絶している人もいた。
ちなみに雫の周りだけは殺気の影響を與えないようにしているので、雫が気絶することはない。
「本來なら雫に手を出そうとした人間は死を與えるのだが、冒険者になって數分でギルドで殺人事件を起こして問題になるのも気が引ける。よってお前はデコピンで許してやるよ」
デコピンと聞いた男は安心したのか、安堵の表を浮かべていた。
周囲の人々も俺がどんな恐ろしいことをやるのか恐怖していたが、デコピンと聞いてその程度なら、と安堵していた。
俺は男の額に曲げた中指を突きつけ、勢いよく指を弾く。
───バシィィン
すると男は、とてもデコピンによって引き起こされた音とは思えない音を出して、目にも止まらない速さでギルドの石壁にめり込んだ。
「「「「「「はあ!?」」」」」」
周りの冒険者はめり込んでいる男を見て皆、唖然としていた。口を開けたまま固まっている奴もいる。
「ふー、ブッ飛ばしたらスッキリしたわ」
俺はブッ飛ばした男を一瞥すると付のの方へ向き直る。
「それじゃあ煩い奴も居なくなったんで、俺達は帰りますね。今日は有り難う座いました」
ギルドの説明も終わったので帰ろうとすると、付のがフリーズ狀態から立ち直る。
「いやいやいや。何ですか今の威力は!?デコピンのレベルじゃありませんよ!?」
デコピンじゃないと言われても俺が打ったのは、正真正銘のただのデコピンなので説明のしようがない。
「何って言っても普通のデコピンですよ?」
「デコピンで普通は人を吹っ飛ばせませんよ!?それに何ですか、あの殺気の強さは。元Aランクの私でも立っているのが限界でしたよ!?」
そういえばこのは俺の殺気をけても立っていられていたな。
元Aランクだったら納得だ。
「ふっ、これがお兄ちゃんの力。だから癡に教えて貰う事は何もない」
隣にいる雫がを張って自慢する。
雫よ。を張るのは良いが、お前がを張っても大した膨らみにはならんぞ。
「ん?お兄ちゃん、今失禮なこと考えた?」
「ソンナワケナイヨ」
何で雫は俺が考えていることが分かるんだよ…
太が冷や汗を掻いていると、付のが先程の景から立ち直ったのか落ち著いた表をしていた。
「太さん。私の名前はシスティラと言います」
「はい?」
「システィラです。これから宜しくお願いします」
「は、はあ。こちらこそ宜しくお願いします。システィラさん」
「さんは要りません。システィラとお呼びください」
「いや、いきなり呼び捨てはちょっと…。システィラさん」
「システィラです」
「システィラさ──」
「シ・ス・ティ・ラ・です!」
「し、システィラ…」
「はい、これから宜しくお願いします!」
システィラの強い要により呼び捨てすることになった。
どっちでも変わらんでしょ…
ふと、雫の方を見るとシスティラを殺すような目つきで睨んでいた。怖ぇ…
「お兄ちゃん。こんな癡のいる所にいると、お兄ちゃんまで穢れちゃうよ。早く宿に行こ」
「誰が癡ですか!貴方は太さんの妹さんのようですね?私は太さんと會話してるんです。貴方には関係ないでしょう」
「関係ある。私は妹だから」
「「ぐぬぬぬ…」」
再び喧嘩を始めてしまった2人に頭を悩ませていてもしょうがないので、さっさと宿に行くことにする。
「ほら、雫。宿を取りに行くぞ。システィラもまた明日」
「分かった。早く行こ、お兄ちゃん」
雫は俺の腕を摑むと、出口の方へ引っ張っていく。
「あっ!た、太さん。また明日來てくださいね!」
俺は雫に引っ張られながらシスティラの言葉に手を振って返すと、雫によってギルドの外に出ていった。
外に出ると雫が頬を膨らませて俺の顔を見上げていた。
「お兄ちゃん、デレデレしすぎ!」
「いや、別にデレデレはしてないよ」
「でも見てた」
「そ、それは…」
こ、困ったな…雫がここまで怒るのも珍しいし、どうしようか悩んでいると、先程まで激しく憤怒していた雫が急に顔を下に向ける。
「やっぱり、お兄ちゃんは雫みたいなは嫌い…?」
「そんなわけないだろ。雫は雫だろ。自分の妹を嫌いになるわけないだろ。何と言ったって俺はシスコンだからな。安心しろ」
そう言って太は雫の頭をでると、雫も安心したのか泣き止んでくれて、嬉しそうに顔を赤らめる。
「よし、それじゃあ宿を探しますか」
「うん!」
そうして俺達は宿を探すために、街を歩き回り始めるのだった。
◇
宿を探して數分後、俺達は木で作られている自然な趣のある宿に泊まることにした。
中にってみると、従業員らしきが1人付に立っていた。
「すみません。宿に2人分泊まりたいんですけど」
「いらっしゃいませ!1人部屋か2人部屋がありますけれど、どちらに致しましょうか?」
ここで普通の男2人なら1人部屋にするところだろうが、俺達は兄妹なので一緒の部屋でも問題はない。
「2人部屋で」
「はい、畏まりました。こちらが部屋の鍵になります。部屋は2階の一番奧になりますので、夜も安心ですよ」
はニヤニヤしながら言うが、けしてそんな事をするつもりはない。
後、そこの雫さん。と良くやった、みたいなアイコンタクトを取らないの。
「ご飯はどうされます?」
「じゃあ、朝食はお願いします」
「分かりました。料金は一泊銀貨2枚となっておりますので、お支払は帰りの際で大丈夫です」
「分かりました」
太は鍵をけとると2階へと上がっていき、部屋の鍵に鍵を差してドアを開ける。
部屋にると、俺は直ぐにベットに倒れる。
今日1日だけで々な事が有ったから、流石に神的に疲れた。
「お兄ちゃん。それで何時からする?」
「雫よ。予想はつくが、一応何をするかを聞いておこう」
「セック──」
「何となく察したわ」
「むぅ…」
「大、異世界來て初日で妹とセックスとか何てエロゲだよ…。それに慣れない土地で力を溫存しておくのを必要だぞ」
すると、雫も納得したのか大人しく自分のベットにっていった。
その日は疲れていたのか、はたまたお腹が減っていなかったのか、夕食を食べていない俺達は2人が起きるのは次の日の朝になるのだった。
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