《シスコン&ブラコンの天才兄妹は異世界でもその天賦の才を振るいます》天才兄妹vsS級魔
地球のギリシャ神話でもミノス王が発明家ダイダロスに造らせた迷宮の奧深くへと追いやられたと記されていた事から此方の神話と地球の神話は同じ神界を題材としているのかもしれない。
前までの俺ならそんな妄想、鼻で笑っていたが実際に神に會うと現実味が増すな。
「──グルアアアアアアアアアッ!」
金に輝く魔アクマは空気を震撼させる程の雄びを上げると、手に握っている大剣を俺達に向かって降り下ろしてくる。
チッ!考え事に浸らせる暇もくれないのか。
「雫は部屋の奧まで下がっていろ!」
「了解」
俺は雫を相手の剣の間合いの外まで退卻させると、黒鵞の柄を強く握り締め、雫の退避までの時間を稼ぐために相手の剣撃を真正面からけ止める。
──ズゴォォォン!
魔の剣を降り下ろした力で俺の足が地面にめり込み大きく陥沒する。
流石に人間の力パワーとは話が違うか!
勿論、太自も人外な筋力を持っているが、長15メートルはある化が繰り出した剣の重さに地面が耐えきれなかったようだ。
俺はけ止めた剣撃を刀を傾けることでけ流して、相手の攻撃を捌く。
「お兄ちゃん。相手の名前は“金剛王ダイヤモンドロードミノタウロス”、ステータスは平均で8000程度。特に魔力が特化していて、スキルに“空間魔力吸収エアー・ドレイン”を持ってる」
雫が鑑定で視た報を伝えてくれる。
雫の聲は、けして大聲ではないが、戦場の中でもき通るように聴こえてくる。
あの図で筋力特化じゃないのかよ!
相手の見た目と能力との裏腹さに心の中で突っ込んでいると、ミノタウロスの持つ剣が金のを帯始める。
俺は並外れた戦闘経験で先程の攻撃と違うことを直する。
「──グルオオオオオッ!」
ミノタウロスが鼓を破れそうな程の雄びを上げると、周囲の空間に黃金のの粒が発現する。
すると、の粒はミノタウロスの剣に集まっていき、剣が帯びたが更に増大していくと同時に、周囲の空間の魔力が薄くなっていく。
太は天賦の才能により、この世界に來て數日でや空間の魔力を探知することが出來るようになっていた。
明らかに奴の周囲の魔力が、あの大剣に吸収されていっているのが分かる。
恐らくあれが奴のスキル、“空間魔力吸収エアー・ドレイン”なのだろう。
しかし、あれはし不味いかな…
奴のステータスは俺の四分の一程度しかないので、直撃しても俺は問題なく済むと思うが、迷宮があの攻撃に耐えられるとは思えない。
そうなれば雫を擔いでこの迷宮ダンジョンを出しなければいけなくなる。
俺のでは、このボス部屋から出口までは約1㎞。
俺の足では約32秒掛かる計算になる。
32秒もこの迷宮が瓦礫の崩壊に持ち堪えられるとは思えない。
何よりここで逃げ出したら、雫の武錬に必要な素材が手にらなくなる。
兄としては妹の為にを張らなくてどうする!
俺は小さく息を吐いて呼吸を整える。
「謝しろ、牛頭。今からお前に冥府への片道切符、くれてやるよ!」
俺は辺りを震撼させる程の大聲でそうぶと、流れるような作で刀を一旦鞘に収める。
「──ガルゥアアアアアッ!」
俺が戦うのを諦めたかと思ったのか、ミノタウロスは黃金に輝く大剣をその豪腕で降り下ろしてくる。
先ずは奴の攻撃を相殺する必要がある。
それには此方の力が強すぎても失敗に終わってしまう。
俺は目を瞑り相手の攻撃の威力、起を見るのではなく全を使いじる。
「──喰らえ」
俺は相手の攻撃が自分の刀の間合いに屆いた瞬間に刀を鞘から引き抜く
──ガキィィィンッ
刀と剣──金屬と金屬が差し耳を紡ぐような音が辺り一辺に鳴り響く。
音が鳴り止んだ時にはミノタウロスの大剣から黃金のは消え去っていた。
見事相殺することに功したのだ。
辺りを見渡してもダンジョンの巖壁には、亀裂一つもない。
「グガガァァ…」
ミノタウロスは、まさか自分の技が止められると思っていなかったのか、苦悶の聲を上げる。
──俺はその一瞬の隙を見逃さない。
刀を納刀した俺は、影いでミノタウロスの懐に潛り込むと、腰を落として手を平手にし、全をバネのように捻る。
「中々楽しかったぜ、お前との遊戯ころしあい」
俺は相手を稱賛する言葉を呟くと、相手の腹部に力強い掌打を打ち込む。
『──波紋はもん』
太が編み出した技の一つで、をバネのように捻った狀態から螺旋狀に掌打を打ち込むことで、掌打が弾丸に近い運エネルギーを得る。
それにより、通常の掌打はの表面上に打ち込んだ衝撃が広がっていくイメージだが、この技は弾丸の貫通力を得ることで相手の部から衝撃が広がっていく。
その衝撃は骨や臓、最終的には脳にも行き屆いていき、の細部まで砕することが可能な技だ。
所謂、発勁の派生系に該當する技だ。
その広がりかたが、まるで靜かな水面に一滴の雫が落ちた時に起こる波紋のような事から名付けられた。
「──グ、グガガァァ…」
波紋の衝撃がミノタウロスの強固な魔石の鎧を中心から徐々に打ち砕いていく。
すると、數秒後にはミノタウロスのにまで衝撃が屆いたのか、飛沫を上げると同時に魔石が割れ散る。
俺はミノタウロスの死亡を確認すると小さく安堵の息を吐く。
「どうやら無事倒せたようだな…」
「ん」
安全を確認した俺は雫を手招きで自分の近くに呼び寄せると、雫に怪我がないか確認する。
「雫にもしもの事があれば…考えただけで…」
「大丈夫、無事」
雫が無傷なことに安堵の息を吐いた俺はもう一つの目的を思い出す。
「そういえば雫、迷宮でしい素材が有ったんだろ?見つけたのか?」
「ん。ここに」
雫はそう言うと、足下に散らばっているミノタウロスの魔石の塊を指差す。
「だから、ミッションオールクリア」
「まさに一石二鳥だったって事か…」
この部屋には口以外に扉はないので、ここが迷宮の最深部なのだろう。
迷宮の報を纏めた俺達は、ミノタウロスの魔石を空間収納の中に放り込んでいく。
辺りを見回してみるが下へと続くような扉や階段が見當たらない。
此処で行き止まりか?
本來、迷宮には各階層に一ずつボスとなる魔が配置されており、その魔を討伐することで下層へと続く階段が開くはずなんだが…どうにもそれらしきものが見當たらない。
つまり、この迷宮は一階層までしか存在しない迷宮ということになる。
この迷宮、他の冒険者が向かっていたら確実に死人が出ていたぞ。
普通なら迷宮のボスは最下層へ近づいていくほど強さを増していく。
だからこそ冒険者達は自の実力に見合った階層が見つけられるのだ。
勝つのが厳しくなった階層で引き返せばいいからだ。
まあ、ごく稀に己の実力を過信した冒険者が潛りすぎて自滅する事案もあるようだが。
その場合は自業自得だ。
つまり俺が言いたいのは、この迷宮は最初から殺しにかかってきているということだ。
始めは簡単なボスが出てくると思った冒険者がこの迷宮にった途端、死を迎える。
RPGで例えるのなら、始まりの街に魔王幹部級の魔が襲ってくるようなモノだ。
とんだムリゲーだな。
続きがないことを確認した俺達が帰り道の一歩を踏み出そうとした、その瞬間だった──
「迷宮に生反応があるな。これは…人間か?」
念のため気配探知を強めてみると、今俺達の居るボス部屋の前に一つの生反応を探知する。
この迷宮に挑んできた冒険者か?
「お兄ちゃん、どうするの?」
俺がその人の気配を探っていると、雫が俺の顔を見上げて訊いてくる。
「冒険者全員が友好的だとは限らないしな…」
もしかしたら、俺達の討伐品を目的に絡んでくることも考えられる。
俺が顎に手を當てて考え込んでいると、その人は今まさにボス部屋の扉を押し開けようとしていた。
「一応、雫は俺の後ろに隠れていろ」
「了解」
雫は俺の言葉に頷くと俺の背中に張り付く。
そんなに著しなくてもいいのだが…
そんな事を考えていると、扉が完全に開き外からってきたのは──
「お前ら無事か!ここにはS級魔がいる!早く退避するんだ!」
──ロリだった
…迷子かな?
3分小説
一話完結の短編集です。
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