《シスコン&ブラコンの天才兄妹は異世界でもその天賦の才を振るいます》ロリコン予備軍
今の狀況を説明しよう。
迷宮ダンジョン突→迷宮探索→ボス部屋発見
→ボス討伐→ロリ発見
──いやいや、可笑しいよ!?最後最後!
誰か突っ込んでよ!
はっ!まさか遂に趣味ロリコンを拗らせて幻覚が…
俺がボス部屋とというミスマッチな景に頭を悩ませて、更には自分の思考回路すら心配してしまう(雫もな事は頭にない)
「お兄ちゃん?」
俺が頭を抱えているのを不思議に思ったのか、雫が心配そうに俺の顔を見上げて訊いてくる。
「い、いや大丈夫だ」
雫の聲で我に戻った俺は、心慌てて冷靜な表で雫に返答する。
ふー、危ない危ない…危うく自分が趣味ロリコンだと認めてしまうところだった。
取り敢えず、あのが何者かを聞き出さないことには始まらないな。
そう決めた俺はの近くへと歩み寄る。
ダンジョンは暗くて遠目にはよく分からなかったが、は赤を基調とした軍服とマントを羽織っている。髪は薄暗いダンジョンの中でも目立つようなき通る綺麗な翡翠エメラルドをしており、そのしく長い髪を後ろで一つに纏めていた。瞳はその神の髪を引き立たせる様な黃金の瞳をしており、その小さな目が今現在、俺達兄妹の姿を捉えていた。
…正直、コスプレをしている子供にしか見えん。
「えっと、君は誰かな?お母さんはどうしたの?」
俺はを警戒させないよう膝を折って、と目線の高さを同じにし、優しい聲で話し掛ける。
ふっ、どうだ。これが俺のに付けた処世その一、上手い子供の扱い方!
えっ、処世をに付けている奴がぼっちな訳がない?それはほら、機會に恵まれなかったと言いますか…。
すると段々、の頬が紅みを帯びていき、をプルプルと震え出す。
「だ、誰が…だーーーっ!」
は聲を荒くしてそう大聲でび出す。
分かってる分かってるって。
この子のような年頃のの子は子供扱いされるのが嫌なんだよな。
「大丈夫、お兄ちゃんがお母さんの元に無事帰してやるからな」
「だ、だから子供扱いするな!私は500歳だぞ!お前達より年上なんだからな!」
俺のめが気に食わなかったのか、は再び聲を荒くしてそんな事をぶ。
は?500歳だって?いやいや、噓付くにしても500歳はないよ、お嬢ちゃん。
の言葉に心の中で突っ込むが、これ以上何かを言ってもを刺激してしまうので心の中で留める。
「全く…子供扱いするなと言っているのに…」
は下を向きブツブツと文句を呟いていると、突然顔を上げてボス部屋に居るべき存在が見當たらない事に気付き出す。
「ん?そういえば、S級魔の姿が見付からないが…何処だ?」
は辺りを見渡しながらそんな事を呟く。
そういえば、さっきもそんな事を言っていたな。
「お前達、S級の魔を見掛けなかったか?」
は首をコテッと傾げながら訊いてくるが、見なかったよな?
S級の魔と言えば、上から3番目に強い魔だろ?俺が戦ったので一番強かったのが先程のミノタウロスだが、S級があんなに弱いとは思わないし…
の言うS級の魔に該當する敵と戦った覚えがない俺は頭を悩ませる。
「いや、この部屋に居たのは大きいミノタウロスだけだったよ」
「そうか、ミノタウロスか。じゃあ違う…ん?」
俺の返答を聞いて納得したように頭を上下に振っていただったが、突然言葉の途中できを止める。
どうしたんだろ?
俺がの行に訝しんでいると、徐々にのが震え始めだす。
「い、今何て?」
はその小さなから絞り出すように言葉を呟く。
「いや、だからミノタウロスなら倒したって」
「ミ、ミノタウロスを倒したって…?」
「あぁ」
俺はの疑問に短く返答するが、何をそんなに震えているのだろうか?
あっ、もしかしてトイレかな?迷宮でするのは抵抗があるだろうしな。
「お花なら摘みに行っていいぞ」
「トイレじゃないわ!」
俺が善意で提案するがに一喝されてしまう。
うむむ、解せぬ。
それと隣の雫の「お兄ちゃん…デリカシー無さすぎ」みたいな冷たい視線が突き刺さるが、何が悪いか全く分からない俺は首を捻るしかない。
「本當にミノタウロスを倒したのか?」
俺が先程の臺詞の改善點を考えていると、が此方の顔を見上げて問いただしてくる。
「そうだけど。証拠ならあるぞ」
俺はそう言いながら、空間収納の中に手をれ、収納から先程の討伐品の中から、拳一つ分程の大きさの魔石の欠片を取り出す。
「なっ!く、空間収納所持者…いや、それにこの魔石、まさか本當に…」
空間収納を発させたことに驚きながらも、俺の取り出した魔石を有り得ないようなを見るように凝視する。
「お前達、ランクはFだよな?」
「あ、あぁ。そうだけど…」
なぜそんな事を訊いてくるのだろうか?
そんな俺の疑問を他所に、は話を続ける。
「お前達には今から私の部屋に來て貰う」
は?今何て?このの部屋に行く?
の要領を得ない言葉に首を捻っていると、一つの答えに辿り著く。
「仕掛けならもうちょっと大きくなってからの方が、いいんじゃないか?」
「違うわ!そういう、やましい理由で來てしい訳じゃなくてだな…説明が面倒臭いから、取り敢えず行くぞ!」
はそう言いながら強引に俺の腕を摑んで引っ張っていこうとする。
うおっ!ていうか、コイツ意外と力があるぞ!
だがそれは平均的に見てなので、人外をも越える力を持つ太には誤差の範中にしか収まらない。
その為、結果的に
「うおっ!な、何で引っ張れないんだ!?お、お前…何て力をしてやがる!」
の手は俺の腕からすり抜けて、は前のめりに倒れそうになってしまう。
「うわっ!」
「おっと、危ない」
流石に他人が転ぶのを見て楽しむ趣味は無いので、俺はの腕を摑んで、その華奢なをに抱き寄せて転倒を防ぐ。
「大丈夫か?」
「あ、あぁ…へ、平気だ」
と俺の顔との距離は10㎝にも満たないほどの至近距離まで近づく。
するとその事実に気付いたは急速に顔を赤らめる。
おぉ…ここまで人間は顔を赤く出來るものなのか。
というか近くで見るとマジで髪サラサラだな。
それに子供のくせに鼻腔をくすぐるような匂いが…これがホルモンというモノなのか?
俺がの予想外の魅力に引き寄せられていると
──ゲシッ
「痛っ!」
俺の後ろに居る雫に膝を的確に足蹴りされてしまった。
いくらする妹の行とはいえ、妹に蹴られて興するような癖は持ち合わしていないので文句を言う。
「急にどうしたんだよ?」
「別にっ!」
──ゲシッゲシッ
雫は言葉とは裏腹に的確に俺の膝を狙ってくる。
痛い痛いって!
いくら俺のステータスが高くても、流石に膝を何十回も蹴られ続けたら痛いのだ。
だが幸いというか何というか、雫の介によりの妙な魅力から解けた俺は、抱いていたを自分の足で立たせて手を離す。
「あっ…」
「どうかしたか?」
「な、何でもない…」
手を離す瞬間、が名殘惜しそうだったのは気のせいだろう。
を離したら雫の攻撃も止まってくれたので良かったが、未だに何故攻撃されたのかは謎だ。
◇
その後、この雰囲気から逃げ出したかった俺は素直にの命令通りに、後を付いて行く事にした。
いや、だって雫がめっちゃの事を睨んでるんですもん…正直空気が重い。
そんな殺伐とした空気の元兇であるに連れられて、俺達は再び王都に戻ってきていた。
國する際に門番の騎士達がに敬禮をしていたが、この國の騎士は趣味ロリコンなのだろうか?
そんな疑問を抱きながら歩いていると、視界に見慣れた建が飛び込んできた。
…って、ここギルド會館じゃん。
彼の部屋に行くんじゃなかったのだろうか?
そんな俺の疑問を他所にはギルド會館の中に、まるで自分の家に上がり込んでいくようにって行く。
俺達もに遅れないようにギルドにっていくと、出発した時と変わらない景が広がって…ん?
ギルドを見渡すために顔を180度回していた、俺の視界が固定される。
ギルドの冒険者達は出発した時と変わらず朝から飲んでいる奴や、掲示板前でクエストを選んでいる人がいたが、明らかに一人違う人が居た。
──システィラだ
いやいや、変わったってレベルじゃないだろ!?
まず、顔に生気が無い。
生きているか不安になるレベルだ。
そのせいで気味悪がって誰もシスティラの付の列に並ぼうとしていない。
次にシスティラの髪が白くしていた。
いや…一どんなショックをけたらあんな劇的に変わるんだか…
その為、俺達がギルドにってきたことも気付いていないようだった。
ショック療法試してみるか…
心配になった俺は影いでシスティラの背後に音もなく回り、肩を叩いて振り返ったシスティラのらかそうな頬っぺたを人差し指で突く。
「ただいま、システィラ」
「な、なにしゅるんでしゅか…ほぇ?」
力なく振り返ったシスティラは、頬っぺたを突かれながらも返答するが、言葉の最後の方で目を點にし始める。
「え…太さん?」
「他の誰に見えるんだよ…」
俺が厳ついオッサンに見えるとかなら、眼科に行くのをお勧めするところだ。
もっとも、この世界に眼科が在るかは定かではないが。
そんな下らないボケを考えていると、徐々にシスティラの瞼に涙が溜まり始める。
「だ、だいようざん…わだじ…わだじ」
システィラは顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら俺のに飛び込んでくるが、泣いている理由が分からない俺は取り敢えず、システィラが泣き止むまで背中をさすってやる事にする。
何時もなら文句の一つをれる雫も今回は、目の前の景に理解が追い付いていないようで困している様子だった。
數分後、目を赤くしながらも泣き止んだシスティラが顔を上げて俺を見上げる。
ちなみに髪も元通りの綺麗な紅碧そらに戻っている。
流石、異世界ファンタジー。
「よ、良かったです。太さんがS級魔の居る迷宮に行ったって知ったときは、もう…」
システィラは心底安心したように言葉を紡ぐが、話の容を聞いても理解が出來ていない。
「S級魔って何の事だ?」
「えっ?太さん達、迷宮に行ったんですよね?」
「あぁ」
予想外の返答だったのか驚くシスティラだが、肝心の俺は全くに覚えがない。
そういえば、先程のも同じ事を言っていたような気が───
俺がそこまで考えたところで、突然橫槍がる。
「その話は私の部屋でしよう。丁度良い。システィラ、お前も一緒に來い」
「は、はい!」
はそうシスティラに命令すると、付いて來いと言わんばかりに階段を上っていく。
ギルド職員に命令出來るとか、あの何者?
驚きつつも俺と雫は階段を上っていく。
雫が「つ、疲れた…」とか言っているが、たった數十段の階段だぞ…?
雫いもうとの健康狀態を心配しながらも2階に著いた俺達は階段を上がって、直ぐ隣にある部屋に案される。
が扉に備え付けられている魔石に魔力を注ぐと、ガチャ、と音を立てて扉の鍵ロックが外れる。
こんな所にも魔法が使用されているのか…
「さぁ、中にってくれ」
の促す通りに室すると、そこには10畳程の広さの部屋だった。
室には奧の壁際に仕事機が一つ置かれており、その手前にソファーが二つ並べられているだけの最低限のインテリアしか置かれていなかった。
ただ、機の上には數え切れない程の書類で溢れ返っており、一目でここが誰かの仕事場な事が分かる。
もしかしなくても此処って…
俺がそんな最悪の予をじながらも冷や汗を流しているのを橫目に、は部屋の奧にある仕事機に向かって行く。
あー…これはあれですか。
ラノベを読んでて、異世界に行っていきなり王族と仲良くなったり、無敵能力チートを駆使して突然ギルド長と対面とか、あり得ないと思っていた時期が俺にもありましたよ…
そんな俺のを目には明らかにの丈に合っていない大きさの椅子にちょこん、と座る。
「ようこそ、二人共。私がこの國のギルドマスターをやっている、メーヤ・グリビアだ。宜しく」
改め、メーヤは椅子に座りながら自慢気な顔でそう告げるが、今の俺の頭の中にはこの言葉しか浮かばなかった。
──これが噂のお約束テンプレか…
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