《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第十話 海の神
アリサとシルヴィアが地元に帰ってから、二日目の夜の事である。
俺とローザは宿のロビーで二人の帰りを待っていた。
傍らには袋に包んだ青のオーブを用意している。
二人が帰ってきたらすぐにプレゼントをして、驚かせてやろうという算段だ。
「今日中には帰ってくるって言ってたよな?」
俺は時計の針を見ながら言う。
時刻は夜の九時を回ったところだ。
「彼たちにとっては久しぶりの故郷なんだから、帰りが遅くなるのも仕方ないわよ。気長に待ちましょう」
ローザは紅茶を飲みながら答える。俺も何か飲みでも用意するかと思い立ち上がると、宿のり口から聲が聞こえてきた。
「ただいまー」
アリサの聲だ。り口に目をやると、アリサとシルヴィアが旅行用の鞄を持って歩いていた。二人は冒険をするときの格好とは違い、ひらひらのついた洋服を著ている。
「よ、おかえり。地元ではリフレッシュできたか?」
俺はオーブを見せびらかしたい気持ちを抑えて聞く。
「おかげさまでね。そっちはどう? ダンジョンには行ったのよね? 大丈夫だった?」
「ああ、俺もローザもこの通り。特に怪我もなく無事さ」
ローザは両手の拳を控えめに掲げてガッツポーズをとる。
「わたしたちにかかれば楽勝よ! 四人で行く時よりは大変だったけどね」
昨日はじゃんけん大會に參加しただけだが、今日は俺とローザでダンジョンを軽く探索したのだ。
トロール級のモンスターであるオークを一倒したくらいですぐに切り上げて帰ってはいるが、十分な果だろう。
「……ところでさ、お前たち二人に見せたいものがあるんだけど」
俺は青のオーブを持ち上げ、袋に包まれたままの狀態で二人の前に置いた。
「なになに、勿つけてないでみせなさいよ」
「見て驚くなよ! そりゃっ!」
俺は勢いよく包みをはずすと、き通るようなきれいな青をしたオーブが姿を現した。
「……こ、これ、青のオーブじゃない! どうやって手にれたのよ!?」
俺たちの持ち金は全部合わせても五十萬ソル程度。
普通なら買えるはずもないので、アリサが不思議に思うのも無理はない。
「ちょっとした武闘大會に參加してね、軽く優勝してきたらおまけでついてきたのさ」
かっこつけて事実とは異なることを言う俺。
「本當は商品目當てでじゃんけん大會に參加したら、ユート君が運よく優勝しちゃっただけなんだけどねー」
あっさりとばらすローザ。
うぅ、しはかっこつけさせてくださいよ。
「……あんたねぇ」
あきれたように俺を見ながらアリサは言う。
「でもま、よかったわね、おめでとう。これであんたの召喚何目……? とにかくすごい數になるわね」
「いや、これはシルヴィアにあげるよ」
「えっ!?」
驚いたようにアリサが俺を見る。
「前にシルヴィアがしそうにしてただろ? だから俺とローザはシルヴィアにプレゼントするために大會に參加したんだよ」
「……へぇ。案外いいところあるじゃない。ガチャしたいガチャしたいってずっと言い続けてたから、もっと深お化けだと思ってたわ」
おい、それ褒めてるつもりだろうけどめっちゃ傷つくんですけど。
「というわけでほら、シルヴィア。け取ってくれ」
俺はシルヴィアに青のオーブを手渡す。
「……ほんとうに……いいの?」
シルヴィアがおずおずと俺を上目遣いで見ながら言う。
「ああ、勿論」
俺はシルヴィアに微笑む。
「ユート……ありがと……」
シルヴィアは背びをして、俺の頬に口づけた。
何度してもらっても可い妹からのキスは嬉しいものである。いや、本當の妹じゃないけど。
「あ、あんた……」
それを見たアリサの顔が一瞬にして強張った。
「うちの妹になに手を出してくれちゃってるのよ!!」
アリサの蹴りが飛んできたので、俺は慌てて上半を逸らしてかわす。
「ちょっ、ちょっと待て! 落ち著けアリサ! 手を出したのは俺じゃないだろ!」
俺は及び腰で弁明する。
「――問答無用!! このロリコンがーー!!」
哀れ、俺はアリサの攻撃をよけきれずにノックダウンしてしまうのであった。
――――――――――――――――――――
「あら、お目覚めかしら? 大変だったわねー」
ローザの聲で目が覚める。……俺は、そうだ、アリサの蹴りをもろにけて気絶してしまったんだった。
アリサの方を見ると、まだ怒っているようだった。
「ごめんなさい、しやりすぎちゃったわ。ハ・ン・セ・イしてるわよ」
セリフを読み上げているような、ひどい棒読みでアリサは言った。
「とにかく誤解だって、シルヴィアと俺は別にそういう関係なわけじゃないからな?」
俺が必死に弁明すると、シルヴィアが割ってってきた。
「……ユートと……わたし。……そういう…かん――っ!?」
俺は慌ててシルヴィアの口をふさぐ。
「悪い、シルヴィア。頼むからこれ以上こじらせるようなことをしないでくれ」
シルヴィアの耳元でそっと伝えると、シルヴィアはうんうんと頷いた。
俺たち三人の様子をローザはにこにこしながら見ていたが、ふいに立ち上がり聲を発した。
「面白いからもうし見ていたい気もするけど、そろそろ召喚の儀をはじめるわよ」
そうだ、青のオーブが手にったんだから遂に念願のガチャタイムだ! ……シルヴィアのだけど。
「さ、シルヴィアちゃんこっちに來て」
シルヴィアはこくりと頷き、ローザの元に歩み寄る。
「それでは始めるわよ」
ローザはそう言ってから、オーブに両の掌を向けて召喚の口上を唱え始めた。
「オーブに住まいし水の霊よ。この者に力を與えたまえ……!!」
オーブとシルヴィアの間をが繋ぎ、召喚獣が姿を現した。……これはなんだ、神様か? 俺はルーペを取り出し覗き込んだ。
『Sランク召喚獣 テテュス』 ●〇〇〇〇
オケアノスの妻であり、海を司る神の一人。
海や泉に纏わる三千もの神の母と言われている。
テテュスの加護をけたものは、周囲三メートルがベールに包まれ、
その者と仲間たちを過酷な環境から守ることができるようになる。
【召喚持続時間:五時間】
「Sランク! これは當たりなんじゃないか!? やったなシルヴィア」
俺はシルヴィアに向けて親指を立てる。
「……うん、よかった」
シルヴィアは返事こそ控えめだが、顔には笑みがこぼれている。この笑顔が見れるなら、青のオーブをプレゼントした甲斐があったってものだ。
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
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