《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第二十三話 氷の食卓
「大丈夫? 気持ち悪いなら無理して食べなくていいのよ?」
「いえ、し休んだら回復しました! こんなに旨い食事を目の前にして食べないなんて、そのほうが無理ですよ!」
俺とアリサは食卓に戻ると、何事もなかったかのように食事を続けた。……俺はしっかりとアリサの婚約者を演じることが出來るだろうか。
「……ところでユート君。アリサとはうまくやっているのかね?」
「え、ええ! 勿論ですよ! な、なあアリサ?」
俺はきょどりながら返事をする。
「あんたね、もうちょっと自然に話しなさいよ!」
アリサは小聲で俺に耳打ちする。
わかってる……わかってるけど張してしまう。
「休みの日にはどこか二人で出かけたりしているのか?」
なおもアリサ父の質問攻めは続く。
考えてみたらアリサと二人で出かけたことってないな。
「えっと、か、買いに行ったりしてるよな!」
俺はそっとアリサに目配せをする。
「え!? あ、そうね! この前ウィル・オ・ウィスプ商店街に二人で行ったわよね!」
アリサもしどろもどろに返事をする。おい、お前も全然自然じゃないぞ。
アリサの橫ではシルヴィアがすました表で紅茶をすすっている。そういえばシルヴィアはこのことについてどう思っているのだろうか?
「先週には俺とアリサとシルヴィアでピクニックにも行ったよな! いやー、將來の家族になるわけだからみんな仲良くしないとな!」
アリサも俺もこんな調子なので、シルヴィアに助けを求めてみる。
「……ピクニック? ……わたし……行ってないよ? ……でも……行ってみたい」
――し、しまった! もしかしてシルヴィアには話が通ってないのか? 俺はアリサのほうをみると、アリサは鬼のような形相で俺をにらんでいる。
「あ・ん・た・ね! 余計なことはしないで頂戴!」
アリサは小聲で言っているつもりだろうが聲を殺しきれていない。それ以上やると怪しまれるぞ! 俺はアリサを落ち著かせるために、両手を前に向けてジェスチャーを送る。
「む……? それで結局ピクニックには行ったのかね? 行ってないのかね?」
「あれ、一緒に行ったのはローザだったかなー? あははっ……」
俺はごまかすつもりでいったがこれは失敗だった。
「誰だ! そのローザというやつは! まさか浮気じゃないだろうな!! 詳しく聞かせなさい!!」
アリサの父親は激昂してテーブルを叩くと、立ち上がって俺に聞いてきた。まずいな、優しそうだと思って油斷していたけどこの父親はやばい人かもしれない!
助けて、アリサ! 俺はアリサに目で何回もヘルプの合図を送った。
「――ローザはわたしたちのギルドの仲間よ。その場にはわたしも一緒にいたから、パパの心配するようなことはないから安心して」
「……なんだ。それならそうと早く言いなさい」
ふぅ……。ひとまず落ち著いてくれたようだ。
「ところで、ユート君はシルヴィアに新しい召喚をプレゼントしてくれたそうね? わたしからも謝を言わせてもらうわ」
アリサの母親はテテュスのお禮を言った。
「あー、あれはローザと二人でじゃんけん大會で取ったものだから、そんなに気にしな――」
ここまで喋ってから、地雷を踏んでしまった事に気付いた。
「あら? そのローザという方とはやけに仲がいいようね?」
アリサの母親は口調こそ穏やかだが、周囲が凍り付くかのような雰囲気を漂わせている。……いや、雰囲気だけじゃない! ――これ、実際に凍ってるじゃないか!
みると食卓に並べてある食事は全てが冷凍食品になっていた。部屋の溫度も氷點下まで下がっているのは確実だ……これは召喚のしわざか!?
アリサの母親をキッと見つめると、その後ろには白裝束を著た黒髪の……雪が佇んでいた、やはり召喚か! 俺はルーペを構える。
『Sランク召喚獣 雪』 ●〇〇〇〇
白裝束をにまとう雪の妖怪で、出會う男に冷たい息を吹きかけて殺したり、
男のを吸いつくして殺す恐ろしい妖怪と云われている。
雪の加護により、召喚者は周囲のものを雪で氷漬けにできるようになる。
【召喚持続時間:三時間】
結構強そうな召喚だな……。
しかし今の俺の目的は戦闘じゃない。
落ち著いてもらうことが重要だ。
「お母さん! 俺とローザはそういう関係じゃないんです、ローザはシスターですから、なんてもってのほかなんですよ?」
ローザの場合はあまりそういうところは気にしていない気もするけど、説得するならこれでいいだろう。
「わからないわよ……。時にはの嫉妬は人をも殺すのよ。そのローザって子はユート君からアリサを引きはがそうと必死なのね……きっと」
「ママの言うことは一理あるな。どうだね、この際ここでアリサとの間に既事実を作らせるというのは」
既事実だって? 俺がそう思った瞬間、俺のにスプレー上の雪が飛んできて壁にり付けられる。
「――ぐっ!? お母さんもお父さんも落ち著いてください!」
俺は両手両足が氷漬けにされ、きが取れなくなる。この両親、ぱっと見の印象と違ってやばい人たちだった!
「ママもパパも落ち著いてよ! ユートの言っていることは本當よ。信じて!」
アリサは必死に父親と母親を説得する。
「……いいでしょう。でも今日の態度を見てわかったわ。あなた達、キスすらまだしていないでしょ。そんなんじゃだめよ? アリサのためにも、早く既事実を作れる狀況を用意してあげるから安心してね」
アリサの母親はそう言うと、俺を氷漬けのまま部屋まで運んでしまった。
「――ちょっと!? いくらなんでも無茶苦茶じゃありません?」
俺はアリサの母親に抗議をする。
「これはうちの家系とアリサのため、それに君の為でもあるのよ。聞けばユート君はギルドを開設したらしいじゃない、そこまできたらあとはを固めることが大事なのよ」
「…………」
ここで抗議したところで泥沼にしかなりそうにないので俺は沈黙を貫くことにした。
「今頃アリサはお風呂でを清めているところよ、あなたもその汚いのままじゃアリサのお相手はできないでしょ? 特別に私が拭いてあげるわ」
アリサの母親はきが取れない俺の、服を無理やりがせると、俺はパンツ一丁の姿にされてしまう。
「さ、いい子にしてるのよ。アリサと契りをわすならそれ相応のエチケットが必要だものね」
「……くっ」
俺はイフリートを召喚して拘束を解いて出する手も考えたが、できれば事を荒立てたくない。
アリサの母親は雪のパウダーを俺の全にふりかけ、それをアリサ母自の手でゴシゴシとって俺の汚れを落としている。――めっちゃ寒いんですけど。……これは拷問の一種だろうか。俺はぐったりとうなだれてしまった。
「こらっ! 寢ちゃだめよ。本當に死んじゃうかもしれないんだからね! それならこれでどう?」
「――うっ!?」
おれはビクっと震えた。のあたりを丹念にでられたのだ。
「あら、あなたはそこが敏なのね。――これはアリサにも教えなきゃいけないわ! ……さて、これくらい綺麗になればいいでしょう。アリサが來るのを楽しみに待っててね、ユート君」
アリサの母親はニヤリと笑うと、部屋のドアを閉めていなくなってしまった。その隙に俺は手と足の周りを拘束していた氷の枷をイフリートの炎で焼き払った。
――考えるんだ。下手に抵抗すれば、アリサとシルヴィアの家庭事を悪くさせてしまうし、言われるがままにしてしまうと俺とアリサの貞が危ない。
……エッチなことに興味がないってことは全くないけど、こんなやり方はおかしいだろ! アリサの気持ちもあるし。
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