《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第三十四話 ほろ酔いパーティー!
「はぁ……。何たる不運、悲しいなあ……」
教會からの帰り道、俺はローザに愚癡を言う。
「いやいや、あの召喚すごいじゃない。わたしがしいくらいよ」
今はローザと召喚の儀の結果について話しているところである。
殘念なことに、異端審問機関への所屬と引き換えに得られた召喚はなんとも微妙なものだったのだ。
「そりゃローザは好きだからいいけどさ、俺は別にそこまで好きじゃないし……」
「まあまあ、そんなに落ち込まないの! 帰ってパーッと宴會でもやるわよ! パーっとね! 上級冒険者昇格も決まったわけだし」
神父は教會から帰る直前に、ついでだからといって俺・アリサ・シルヴィアの三人の上級冒険者任命式が明日に決まったことを知らせたのだ。
「わかったよ。パーッとやるのには賛だ。まだ家にみんないるよな? みんなが出かける前にスケジュールを抑えるぞ! 急ごう!」
俺はそう言って、小走りに歩き出した。
「ちょっと、ユート君、待ちなさいよ~」
ローザも慌てて俺を追いかけ、二人一緒に小走りで家まで向かった。
――――――――――――――――――――
俺はギルドに戻るなり、ロビーでフライパンを叩いて音を鳴らした。
――カーンカーンカーン
微妙にくぐもった金屬音がギルドに響き渡る。最初に姿を現したのはアリサだった。
「――あんたなにしてんのよ! 休みの日だってのに迷かけることしか考えてないんだから、まったく」
よし、一名確保。
「……ユート? ……どうしたの?」
「――なにごとであるか!?」
シルヴィアとレイチェルも部屋からでてきた。うん、全員そろってるな。
「えー、実はだな。明日、俺とアリサとシルヴィアの上級冒険者任命式があるらしい。想定ではあったけど、なんにせよめでたいことなので、これから打ち上げをしようと思います!」
「……打ち上げ? 宴會をしたいってこと? 家に食材ならあるとは思うけど、お酒がないので用意しなきゃいけないわね」
アリサはもう段取りを考えている。結構乗り気のようだ。
「……フッ、お酒なら任せてくれ。誰か空のグラスを持ってきてくれないか?」
「……うん……取ってくる」
シルヴィアが空のグラスを持ってきて俺の目の前にあるテーブルに置いてくれた。
「それではみなさんグラスに注目! ――いくぜー、スラーデーヴィー!」
俺が召喚すると、神が顕現する。
次に俺はグラスに両手を向けて念を込めた。
すると、みるみるうちにグラスの中に薄ピンクのが流れ出し、あふれる程いっぱいになった。
「――な、なに!? これあんたの新しい召喚なの!?」
「……さっきローザと教會に行ったときに手にれたのさ。召喚で生み出したこのは、どうやら飲めるらしいぜ!」
俺はみんなに、さあ飲んでくださいと手で促した。
「むう……。でもなんかこの怪しいのである」
レイチェルは警戒しているようだ。ローザ以外の他のみんなも苦々しい顔をしてグラスを見ている。
「――ほら、大丈夫だって。これ見てみろよ」
俺がみんなの前でルーペを取り出すと、みんなは覗き込んでスラーデーヴィーのほうを見た。
『Cランク召喚獣 スラーデーヴィー』 ●〇〇〇〇
天地創造の際に生まれた神で、スラー酒というソーマに匹敵する
効能を持つお酒を管理している。スラー酒を飲んだものは、
えも言われぬ幸福をじると云われている。
スラーデーヴィーの加護をけたものは、スラー酒を生み出す力を得る。
【召喚持続時間:三時間】
「……えも言われぬ幸福であるか」
レイチェルはゴクリとつばを飲み込みグラスの前に近づくと、スラー酒を口に流し込んだ。
「――これは!! とてもおいしいのである! ユートよ、もっともっと作るのだ!」
「――待て待て、料理の準備をしてから続きはやろう」
俺はレイチェルをなだめた。
「……今日はローザお姉さんが本気で腕を振るっちゃおうかなー!」
「わたしも手伝うわよ!」
和気あいあいと、みんなで食事の支度にとりかかった。
――――――――――――――――――――
「いやー、こりゃすごいな」
テーブルにはチキンの丸焼き、シチューに海鮮サラダ、それにパエリアのようなものが並べてあり、見るだけでもおなか一杯になりそうだ。
「――そして仕上げは、俺の出番だ!」
テーブルにいくつも置いてある空のグラス全部に念を込めると、たちまちすべてのグラスがピンクの――スラー酒で満たされる。
「さあ、宴の始まりだー!」
「いえーい、飲んで食べて飲んで飲みまくるわよー!」
俺とローザが宴會の始まりを告げる。
「う~ん、今日の料理は一段とうまいな!」
俺が夢中になって料理を食べていると、レイチェルが俺の橫に座りぴったりとを寄せてきた。
「……ユートよ。……が熱いのである。お主のからだで、わたしの熱を冷ましてはくれぬか?」
「――なっ!? 何言ってるんだレイチェル!?」
レイチェルは俺のに手をばしてまさぐってくる。
「あ、ちょっ、そこはやめろ! っておい! なにやってるんだ!? そんなことしてると料理冷めちゃうぞ!」
俺はレイチェルを突き放して立ち上がると、今度はシルヴィアが橫から抱きつき耳元で囁いてきた。
「……ユート……シルヴィアのこと……好き?」
シルヴィアの目はとろんとしていて、顔は熱を帯びている。……もしかしてもう酔っぱらってるのか?
「……ああ、好きだよ。當たり前だろ」
俺がシルヴィアの頭をでると、シルヴィアは嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「……じゃあ……わたしの……全部……あげる……ね」
シルヴィアはそう言って、ワンピースの肩ひもを下ろした。……彼はまだブラジャーをしていないので、しだけ膨らんでいるが出されており、俺のを煽る。……ってしまおうか。悪魔のささやきが俺の頭をかすめる。
……いや、ダメだろダメだろ!? 俺は手をばしたいという求をグッと抑えながら後ずさると、今度はアリサが俺の右腕をギュッと抱きしめる形でつかんでくる。
「……ア、アリサ!? ……む、が當たってるぞ!?」
「……ふふっ、あんたは本當におっぱいが好きなのね。むならもっと當ててあげるわよ」
アリサはそう言ってを押し當ててきた。……むにゅっとしたが心地よい。――しかし一全どうなってるんだ!? みんな酔っぱらっているのか? いや、酔っぱらってるにしてもおかしいだろ! 前に酒場で飲んだ時はここまでの悪酔いはしてなかったぞ。
「あら、その程度のおっぱいじゃユート君を満足させてあげられないわよ。……お姉さんがユート君にお・と・なの味を教えてあげる」
今度はローザが左側から抱き著いてきて、俺の左半はローザのおっぱいに包まれる。……あ~、暖かい、幸せ。……はっ!? まずい、この狀況に流されてしまってはいけない。このままだと酔いがさめたときにどうなるかわかったもんじゃないし、一旦止めなくては……。
「お、おい――」
俺が止めようと聲を出すと、かき消すようにアリサがんだ。
「――ローザ! 何言ってるのよ! は大きさじゃないわ! ユートはうちの実家でわたしのをんだ時に、それはもう気持ちよさそうな顔をしていたのよ!」
「ぶっ――!!」
俺は噴き出してしまった。あの時の事を言うか、しかもこの場所で。
「……あ、あのね、アリサさん? ちょっと落ち著いて向こうで話でもしません?」
「――ユート君!? アリサちゃんの家では何もなかったって言ってたじゃない!? これはどういうことなの! 詳しく話を聞かせなさいよ!」
ローザがゴシップ大好きモードにってしまった。……これはもう収集付かないな。――かくなるうえは、逃走しかない!
「――オーディン!!」
俺はオーディンを召喚すると、ダッシュで自分の部屋にって鍵をかけた。
――――――――――――――――――――
暫くの間俺の部屋の前では、まるでデモのように「ドアを開けろ」とみんながんでいたが、今は落ち著いたのか聲は聞こえてこない。
「そろそろロビーに戻ってみるか……怖いけど」
俺はおそるおそる部屋のドアをあけロビーを確認すると、アリサとローザが落ち著いた様子で席に座っているのが見えた。……良かった、正気に戻ってるみたいだ。
「や、やあみんな、調子はどうだい……?」
俺はぎこちなく挨拶をして、先程自分が座っていた席に著いた。
「う、頭が痛い……このお酒なんか普通じゃないわね……」
ローザは苦しそうに頭を押さえている。
「……わたしもさっきまでの記憶がないのよ、ユートは何か覚えてない?」
「え、いやあ? 俺の方が先にダウンして部屋で寢てたから何もわからないよ。すまないね、……ははっ」
俺は想笑いをしてごまかした。……さっきの癡態を忘れているなら、そのほうが本人も幸せだろう。
「……それにしても、わたしたち上級冒険者になるのよね」
アリサはしんみりとした表で俺に言った。
「そうだな。今まで頑張ってきたかいがあったよ。……思えばいろんなことをしてきたよな」
ヤヌアル神殿でのトロール討伐、海底窟でのクラーケン討伐、そしてギルドでのモガディシュ捕獲……それ以外にも日々のダンジョンやクエストでアリサたちと様々な場所を回ったことを思い出した。
「……あのさ、前にも言ったことがあるけど、わたし……ユートには謝しているから」
アリサはしはにかんで言った。
「……よせよ、照れるだろ。俺だってお前には謝してるんだぜ? 最初のころからずっと付き合ってくれてるんだからな。あ、でも最初は俺のパーティーにるの嫌がってたんだっけ?」
「――あの時はまだ、あんたのこと良くわかってなかったんだから……しかたないでしょ!」
アリサは頬を膨らませて言った。……アリサの怒った顔は最初こそ怖かったけど、今となってはおしい。
「……あの、お二人さん。うっぷ、いい雰囲気のところ申し訳ないんだけ……うっぷ。そろそろ片付けましょう。……あの子たちもあのままだと風邪ひいちゃうわ」
ローザは吐きそうになるのをこらえながら、シルヴィアとレイチェルを指さした。……二人はとても安らかな顔をして眠っている。
「……ユート……お姉ちゃん……ふふっ」
シルヴィアが寢言を言って笑った。……何か楽しい夢でも見てるんだろうな。
「――よし、ちゃっちゃと片づけを済ませて寢るとしますか!」
こうして楽しい打ち上げパーティーは幕を閉じ、それと同時に俺の中級冒険者としての最後の夜も終わったのだった。
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