《ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~》第六十七話 ボス

ミルドレッドはリギルにたいして拷問したようだ。

恐ろしい行為ではあるが、そのおかげでいくつか報を得ることが出來た。

1.ボスは常にリギルを連れて大陸を日替わりで移している。

2.ボスは警戒心が強く、リギルですらマスク越しでしか會ったことがない。

3.もっている召喚に関しては不明

「うーん、元々知っている報か、役に立たない報しかないな」

俺はすこしがっかりしてしまう。もっとボスの機嫌を取れるような報があれば潛も楽になるんだけどな。

「いや、かなり重要な報を得ることが出來たじゃないか」

ミルドレッドが目元を抑えながら考え込んでしまっている。

「どういうことだ?」

「このままいくとユートの潛任務は失敗するってことだ、警戒心の強いヘルヘイムのボスが素直に外に出てきてくれると思うか?」

「そ、それは……」

確かに顔すら人に見せない人が、いくら側近に言われたからと言ってホイホイと外に出てくるとは思えない。

「作戦変更の必要に迫られたって訳か」

「そういうことだ。ただし潛に関しては予定通りやってもらう。外に連れ出すんじゃなくてその場で取り押さえてくれ。こちらからは『ミ=ゴ』で逐一連絡するからきのあった時には狀況を知らせてくれ」

「了解。ただこの任務一つ大きな問題が――俺の召喚の弾がもう殘ってない」

オーディンの効果はもう時期切れてしまう。サルガタナスだって長くは持たない。

に使うケリドウェンだけでボスを取り押さえる自信は正直ない。

「お前、ケリドウェンを使ったことはないのか?」

「一応あるよ、一瞬だけエリーに変したことが」

「その時メドゥーサは使ってみたか?」

「――えっ!?」

もしかしてケリドウェンって変した相手の召喚まで使えるのか?

Bランク召喚とは思えないチート召喚じゃないか!

「よし、時間もないから練習も含めて早くリギルになってみろ」

「わかった」

俺はリギルの手にれ、ケリドウェンを召喚して変した。

「これでリギルの召喚が使えるのか?」

俺はリギルの姿になったうえでミルドレッドに聞いてみた。それにしてもこの召喚は使うと凄く違和がある。

に変化したときは勿論だが、同に変化したとしても聲が変わるってのがとてもくすぐったい。

「ケリドウェンは相手が召喚を発しているときに限りその能力を真似ることが出來る。今リギルはエンリルとシルフを召喚していて、まだ持続時間もあるからその二つが使えるはずだ」

「よし、早速試してみよ」

俺は目の前にある巖に向かってエンリルの竜巻を発させた。

しかし起こした竜巻はリギルが使っていたような竜巻とは似ても似つかない、つむじ風とすら言えないようなしょぼいものだった。

「なんか使いこなせないんだけど……」

「いや、それでいいんだ。ケリドウェンによるコピーは十分の一か二十分の一くらいまでに出力が落ちると言われている」

「そうなんだ、でもないよりましか。みんながくるまで取り押さえる程度でいいんだしな」

「うん、そのポジティブさ私は好きだぞ。といっても無茶はするなよ。無理そうだったら退卻するように」

ミルドレッドは腕を組みながら俺に諭す。

「了解、最善を盡くすよ」

俺はヘルヘイムのボスがいるログハウスのほうをじっと見つめる。

リギルの話によると、洩を気にするあまり見張りすらいないらしい。つまりあの家の中にいるのはボス只一人だ。

「私とエリーがり口を、アデルとエリシアは裏口で待機しておく。ユート、健闘を祈る」

「はい!!」

俺は覚悟を決めてログハウスのり口まで向かった。

――――――――――――――――――――

――コンコンッ

俺はり口のドアを叩くと同時に合言葉を言う。

どうやらり口は魔法で開けられないようにしてあるらしいので、この手順が必要なのだ。

「に、虹!」

「オーブ」

「ぬ、盜む!」

オーブと言ったのがボスだが、聲はくぐもっていて聞き取りずらい。聲の印象は年配の男のようだった。

俺はり口のドアノブをそっと回してドアを押し開ける。

合言葉が正しかったので、ボスがり口にかけてあった封印の魔法を解除してくれたようだ。

「ボ、ボス! 侵者は全員排除しておきました」

リギルのボスへの呼稱や、しどもり気味の喋り方などはきっちりと勉強してきた。

怪しまれたら終わりだから、こういうところは念には念をれる必要がある。

「それでその侵者の中にミルドレッドとオーディン使いはいたか?」

「は、はい! 両者ともかまいたちで切り刻んでやりました」

「フフッ、それは朗報だな。リギルよ、余は今機嫌が良い、部屋まで來るがよい」

「はい! 上がらせていただきます」

かなり順調に進んでいる。これでボスの部屋が特定できたら待機しているみんなを呼ぼう。

待機組はり口を強引に壊してることになるだろうから、その間ボスが逃げないように俺が取り押さえる。それが今回の作戦だ。

俺はボスの聲がする部屋の前に立つとノックをした。

れ」

「は、はい。失禮します」

扉を開けると、驚くことにそこには長いサラサラの銀髪を持つ釣り目のがいた。

「ボ、ボス――なのか!?」

「ふん、驚くのも無理はない。いつもはヴルトゥームで姿を変えているからな。余の本當の姿はこのの姿、今日は異端審問機関との戦爭に勝利した記念として特別に余を見ることを許可しよう」

「は! ありがたき幸せ!」

こいつは何歳なんだ? この落ち著いた雰囲気、とてものものとは思えない。

何かがありそうだ。俺は警戒を怠らずボスの部屋に足を踏みれた。

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