《ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件》強気の説得
「コボルト達を僕の仲間にしたいんだ!」
僕はみんなに向かってそう言った。
「コボルトを仲間に……? ルシエル、お前はドラゴン系統しかテイムできないんじゃないのか?」
そう、僕はドラゴンテイマーだ。
だからドラゴン系統以外のモンスターはテイムすることができない。
そもそもレベルも1のままだから、ドラゴンテイマーのスキルは何も持っていない。
テイムに必要な「テイム」のスキルすらない。
「確かにテイムすることはできないよ……でも、協力関係なら築けると思うんだ」
別にテイムをしなくても、互いに協力しあうことはできるはずだ。
僕にはコボルトと言葉をわせる力があるのだから。
「協力関係って言ってもなぁ……」
アレスおじさんは、困ったようにバロンの方を見る。
「坊ちゃんがこういうのです。何か策があるのでしょう……?」
バロンは期待したような目で僕を見る。
「うん。アレスおじさんとバロンが心配しているのは、コボルト達に認められるほどの力はあるのか? コボルト達が言うことを聞くのか? 仲間にしたコボルト達をどこに匿うのか? 辺りじゃないのかな?」
僕は2人に問いかける。
「そうだな」
「はい。おっしゃる通りです」
「でもそれは全部解決できるんだ。そう、僕が授かったテイマーの力ならね」
僕はにしていたサブスキルのことを2人に説明する。
リーチェも僕の力に興味があるようで、橫に並んで聞いている。
「僕が授かった力は、鞭、言語翻訳、異次元牧場の3つ。それで、それぞれのスキルレベルは10なんだ……」
「レベル10だって?! そんなバカな! そんなの伝説の勇者や賢者の領域だぞ!」
アレスおじさんが驚愕する。
「それもレベル10のスキルを3つとは……これは隠しておいた方がよさそうですね……」
そのバロンの意見にアレスおじさんも頷いた。
「この3つのスキルならさっき心配してたことも全部カバーできると思うんだ」
鞭で僕が戦えることを証明して、コボルト達に力を認めてもらう。
言語翻訳でコボルト達と話し合って、僕のお願いを聞いてもらう。
異次元牧場の中で、仲間にしたコボルト達を匿う。
僕ならそれができるはずだ。
それと……
「アレスおじさん。……僕には聞こえたんだ。コボルトの子供が、お父さん助けてって泣きんでたのが……」
「っ!? ……今までは気にしなかったが、そう言われると心にくるな……一応、俺も父親だし」
アレスおじさんが複雑な顔でそう言った。
「もしコボルト達を仲間にできたら、僕が困ったときに助けてくれると思うんだ。だから2人ともお願い! 僕にコボルト達を仲間にするチャンスをください!」
僕は2人に深く頭を下げる。
「はぁ、しょうがないな……」
「私は坊ちゃんのやりたいことを応援します。ただ、危なければ阻止しますが……」
「ああ、バロンの言う通りだ。もし危なくなったらコボルト達を仕留めるぞ。いいな?」
僕は2人に頷いた。
もし聞いてもらえなかったら、そのときは仕方がない……
「でも大丈夫なのか? 俺はこいつらの親玉を殺してしまったぞ?」
まじですか、アレスおじさん……
「……とりあえず話してみるよ」
僕はリーチェの方を向く。
「リーチェ、コボルト達を起こして貰えないかな?」
僕の目の前には、豪華な裝備のコボルト達が倒れている。
その數は8。
見たじ、このコボルト達は群れの中での発言力を持っているような気がする。
この8を説得出來たら、他のコボルト達も説得しやすくなるはずだ。
「ええ。いいわよ」
リーチェは右手を上げて、フィンガースナップを決める。
パチンと良い音が鳴り響く。
指パッチンで魔法使うのかっこいいな……
僕も魔法を使えるようになったら練習しよ。
リーチェの魔法が効いたのか、コボルト達が次々と目を覚ます。
「ん? 我々は何を……」
「そうだっ! 侵者は?!」
「後ろだ! 人間達に攻め込まれてるぞ!」
「子供達は無事かっ?!」
「みんな構えろ! たとえ勝てない相手だろうが、我らはあきらめない! 行くぞッ!」
「「「「「「「了解ッ!」」」」」」」
そう言ってコボルト達は、武を手にして立ち上がる。
「いや、待て待て待て! 落ち著けコボルト達! 僕達はもう戦うつもりはない。子供達も全員無事だ!」
すぐにでも襲い掛かってきそうだったので、慌ててコボルト達に靜止を促す。
「みんな。この人間の子供は、我々の言葉を話しているのか?」
「はい。隊長、自分にも聞き取れました。子供達も全員無事だと言っていました」
「本當か?」
コボルト達が僕の言葉を聞いて戸っている。
今がチャンスだ! 僕が話の主導権を握るんだ。
なめられないように偉そうに強気でいく。
「本當だよ。死んだのは君達の親玉だけだ。他は全員生きている。……僕達に君達をだます理由なんてない。何かするなら君達が寢ている間にやってるさ」
僕は隊長と呼ばれたコボルトに向かって話しかける。
「確かにな。……それで、我々を生かしてどうするつもりだ?」
隊長コボルトは、僕の目をじっと見返して問う。
「僕の願いは1つだけだ。僕の仲間となってほしい」
僕がそう言うと、コボルト達はポカンとしてた。
隊長コボルトはすぐさま正気に戻る。
「どういうことだ? 我々を仲間にして何になる。何をさせるつもりだ?!」
「君達を仲間にして僕が困っているときに助けてもらいたいだけだよ。……それに僕も君達のみを葉えよう。お互いにメリットのある取引だ」
「我々のみだと……?」
「そうだよ。僕の予想があっていればだけど、君達はウルフの群れに押され気味なんじゃないのかい?」
「なっ、なぜそれを!」
「ウルフの群れに統率が出てきたと聞いたからね。ウルフの上位種でも生まれたんだろう。ウルフはコボルトの天敵だと本でも見たしね。……それで、君達は危険が脅かされることがない安全な住処はしくないかい?」
僕の問いに隊長コボルトが食いつく。
「そんな場所があるならしいに決まっている! 無茶ばかり言って何もしない王、天敵のウルフ達、怪我で倒れていく仲間達、そしてお前ら人間……我々には滅びが迫っている……」
隊長コボルトは苦い顔をして僕を睨む。
「僕は、君達を討伐する人間達と違うから安心してくれていい。……君達が見ての通り、僕には君達と言葉をわせる力がある。人間の中で、僕だけが君達のことを理解してあげられる。だからこそお互いにメリットがある取引をしたい」
隊長コボルトの鋭い視線が、若干和らいだ気がする。
「……続けてくれ」
僕は隊長コボルトの目を真っすぐ見つめる。
「僕は君達が安全に暮らせる場所を提供しよう。だから、君達は僕が困っているときに助けてほしい。……もちろん無茶なことは頼まないし、戦えないコボルト達を危険な目にあわせることもないと誓う。……どうだろう、僕と一緒に來ないかい?」
隊長コボルトは悩む。
「一つだけ聞かせてくれ。なぜそうまでして我々を助けるのだ?」
真剣な目をした隊長コボルト。
僕はその目をジッと見て理由を答える。
「君達の子供が助けてって泣きんでたからだよ」
最初に聞いたその聲がなければ、僕は中にってコボルトを助けたりしなかったはずだ。
……それに僕は決めたんだ。
父様のように人々を助けるドラゴンテイマーになると。
その助ける人々の中には、分かり合える魔達も含まれていいはずだ。
隊長コボルトが他のコボルトの方へと振り向く。
「みんなどうだろう? 自分はこの者のことを信じてもいいと思っている。このままここで滅びを待つよりは希がある」
コボルト達は隊長に頷く。
それを確認した隊長コボルトは、こちらに振り返って僕の目を見る。
「我々コボルトは、貴殿のことを信じる。他の者たちも我らが必ず説得してみせる。だから……どうか、我々を助けてくれないか……?」
コボルト隊長、他のコボルト達は頭を下げる。
「わかった。これからよろしく頼むよ。……あっ、そうだ。怪我をしている仲間は何人いるんだい?」
僕がそう言うと、コボルト達の肩が震える。
「全員合わせて12名、そのでけないものが7名となる……どうか、ける5名は見捨てないでもらえないだろうか?」
ん? どういうことだ?
……あっ、もしかして怪我しているコボルトは置いていかれると勘違いしているのか?
ただ治してあげようと思っただけなんだけどな……
「大丈夫だよ。君達の仲間を治してあげようと思っただけだ」
僕はインベントリから、マックスライフポーションを12個取り出す。
さすがに一気に取り出すのは難しいので、1本ずつコボルト達に手渡していった。
それでもマックスライフポーションの在庫はまだまだある。
「そのポーションは、君達の仲間の怪我を完治させるだろう。早く使ってあげるといい」
その言葉を聞いて、隊長コボルトの目が見開く。
「本當か!? その言葉信じるぞ!」
隊長コボルトはすぐさま、他のコボルトに指示を出す。
指示をけたコボルト達は全力で建の奧へと消えていく。
し間が空いて、コボルト達が消えた方向から大きな聲が聞こえてくる。
その聲は歓喜に近い聲だった。
「隊長! みんなが! みんなの傷が全部治りました! 隊長の奧さんの足も! 俺の娘の腕も! 全部元通りに治ったんです!」
戻ってきたコボルトの1人が、涙を流しながら隊長コボルトへと報告した。
「ほ、本當なのか……! ……よかった! ……本當によかったっ!!」
隊長コボルトは僕の方を向いて、地面に膝をついて頭を下げる。
戻ってきた他のコボルト達も、隊長コボルトと同様に地面に膝をついて頭を下げる。
その様は、先ほどとは異なり、主君に頭を垂れる騎士のような振る舞いだった。
「先ほどまでの無禮をどうかお許しください! 我々はあなたに恩を返すまで、忠誠を誓い続けます! 我らにできることがあれば何でもおっしゃってください!」
軽い気持ちで治してあげようとしただけなのにこんなに謝されるとは……
まあ、終わり良ければすべて良しっていうし別にいっか。
僕がアレスおじさん達の方に振り返る。
アレスおじさんは驚愕とした顔。
バロンは何やら真剣に考え込むような顔。
リーチェは期待通りというような満足した顔。
それぞれがそんな顔をして僕のことを見ていた。
「ふぅ……」
一息ついて気持ちを切り替える。
コボルトの説得は一段落ついたな……
偉そうな強気のキャラなんて合わないよ。
できるならもうやりたくないなぁ……
こうして、僕のコボルトの説得は上手くいき、コボルト達を仲間へと引きれることに功したのだった。
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