《ドラゴンテイマーにジョブチェンジしたら転生してた件》助けを求める聲

休憩部屋を抜けると、また土壁の通路が続いていた。

だが、ここまでの通路とは違って、照明の結晶が多くなっているようだ。

通路の明るさは十分にあり、先の方まで見渡すことができる。

第1階層の後半は、前半とは違って明るいようだ。

このまま最後まで明るいままだと助かるんだけどな……

「じゃあ、隊列を組んで進もうか。通路は明るくなったけど、気を抜かずに行こう」

リュークとリューネは、僕の聲に頷いて前に出た。

リーチェは僕達の後ろをついてくる。

その隊列で、僕達は通路を進んでいく。

ここからは新しい魔が出てくるのだろうか?

第1階層の前半では、ジャイアントラットとゴブリンファイター、ゴブリンアーチャー、ゴブリンリーダーが出てきた。

リュークの話だと、後半からはゴブリンメイジが出るらしい。

魔法を使われるのは厄介だから、出會ったら早めに処理していきたいところだ。

しばらく歩いたところで、リュークが武を構えた。

「リューネ、リーダー……ゴブリンです」

リュークが指差した方を見てみる。

僕達から20から30メートルほど離れた場所には、5のゴブリンがいた。

その中には、杖を持ったゴブリン……ゴブリンメイジだ。

そのゴブリンメイジが2と、ゴブリンファイターが2とゴブリンリーダーが1だ。

相手側も僕達に気付いたようで、隊列を整えようとしている。

「まずい! メイジがいる! 突撃するぞ!」

「了解!」

「わ、わかりました!」

僕達は武を構えたまま走る。

その間にゴブリン達も隊列を整えて、僕達へと向かってくる。

ゴブリンリーダーを中心として、前衛にゴブリンファイターが2、後衛にゴブリンメイジが2といったじだ。

ゴブリンファイター達とリュークとリューネが、各々おのおのの武を振るう。

リュークは、大剣でゴブリンファイターの剣を吹っ飛ばして、そのままゴブリンファイターへと大剣を叩きつける。

リューネは、盾でゴブリンファイターの剣を防いだ後、そのお返しと言わんばかりに槍を突き出す。

僕はその橫を通り抜けて、ゴブリンリメイジ達へとロープを叩きつける。

ヒュン! ヒュン!

「ギャッ?!」

「ギャギャ!」

それにより、ゴブリンリメイジが形していた火の玉が蒸散する。

火の玉の魔法をキャンセルできてよかった。

ファイターやリーダーを相手にしながら、魔法を対処するのは面倒だからね。

「ギャギャギャ!」

「おっと!」

ゴブリンリーダーが切りかかってきたので、僕はを翻して下がる。

慌てずにロープから槍に持ちかえて、ゴブリンリーダーを迎え撃つ。

ガンッ!

僕の振るった槍が、ゴブリンリーダーの兜を強打する。

「ギャッ!」

ゴブリンリーダーはその場でよろめく。

「くらえッ!」

がら空きの部分。

そこに向かって僕は槍を突き刺す。

を槍に貫かれたゴブリンリーダーは、力した後に消滅した。

そのタイミングで、2つの火の玉が僕へと飛んでくる。

大きさは直徑30cmほどで、速度は矢と比べると遅いが、それでもなかなかに速いといった合だ。

イメージとしては、シュートされたサッカーボールがこっちに向かって飛んできているじだ。

それも炎を纏った必殺技的なやつが2つ。

「くっ!」

攻撃直後の勢だと回避できそうにない。

槍で防ぐにしても、火の玉は槍を通り抜けて僕に直撃する気がする。

氷や土とかの質だったら、槍で叩き落とすこともできただろうけど……

僕は火の玉をけ止めることにした。

羽織っているシャドウコートで、顔を覆うようにして火の玉を防ぐ。

この通路がもっと暗ければ、シャドウコートの効果で姿を隠すこともできたんだけどな……

直後、火が僕の周りを通り過ぎたような覚があった。

火の玉が當たった衝撃はあまりなかったが、火の熱は風に乗って伝わってきた。

に火が燃え移るといったこともなくて良かった。

「リーダー! 大丈夫ですか?!」

リュークの聲が聞こえてくる。

「大丈夫!」

僕はシャドウコートから顔を出して、ゴブリンメイジのほうを見る。

その視界には、ゴブリンメイジ達に向かっていくリュークが映り込む。

「こいつッ!」

リュークが片方のゴブリンメイジへと大剣を振り下ろす。

「ギャギャッ!」

大剣を防ぐ手段がないゴブリンメイジは、あっさりと倒されて消滅した。

もう片方のゴブリンメイジには、槍を構えたリューネが突撃しにいった。

「リーダー! 火の玉が直撃してましたがご無事でしたか?」

心配そうな顔をしたリュークが、僕のもとに駆け寄ってくる。

「ちょっと熱い程度だったから大丈夫だよ。このコートが強すぎるだけかもしれないけど……」

「ルシエル君、兄さん、ゴブリンメイジを倒しました!」

「今回はちょっと危なかったわね。はい、ファイターとリーダーの魔石よ」

魔石を手にしたリューネとリーチェが、僕達のもとへと寄ってきた。

リューネがゴブリンメイジの魔石、リーチェが殘りの魔石を拾ってくれていたようだ。

ゴブリンメイジの魔石は、他の魔石と同様に明だった。

火の魔法が使えるから、火屬を示す赤になる思ったんだけどな……

「ありがとう。助かるよ!」

僕は魔石をけ取って、腰にぶら下げた袋の中にしまう。

魔石も多くなってきたためか、ぶら下げている袋もかさばってきた。

そろそろ冒険者ギルドに売りに行こうかな?

小さな魔石といっても、これだけジャラジャラしているなら、結構な稼ぎとなるはずだ。

「魔石も多くなってきたし、明日ぐらいに冒険者ギルドに売りに行こう。一旦はインベントリにしまっておくね」

魔石を詰め込んだ袋をインベントリにしまう。

魔石単でインベントリにしまうと魔石の種類分の枠を取られてしまうけど、袋ごとれると1枠だけで済む。

なかなかに使い勝手が良い仕様で助かる。

魔石をしまったことを見たリーチェは口を開く。

「……さっきの戦闘で思ったことなのだけれど、ゴブリンメイジを意識し過ぎて突っ込み過ぎていたように思うわ」

確かに……

実際にゴブリンメイジと戦ってみたけど、そこまで危険ではないようにじた。

僕はシャドウコートで魔法を防ぐことができたし、リュークとリューネも大剣と盾で防ぐこともできるだろう。

冷靜に考えたら、リュークとリューネがゴブリンファイターを倒した時點で3対3の狀態になった。

そのまま戦っていたらもうし安全に対処できただろう。

……僕がゴブリンリーダーと戦う必要もなかったな。

あの時點で、2対2と1対3で分斷してしまって、僕が集中狙いされることになってしまった。

「そうだね。ゴブリンメイジを牽制けんせいした後は、ゴブリンリーダーとは戦わずにリュークとリューネのもとに戻ったほうが良かったのかもしれない。次は堅実に攻めていこう」

「了解です! 自分も早く駆けつけられるように頑張ります!」

「わ、私も頑張ります!」

「うん。みんなで力を合わせて頑張っていこう!」

ゴブリンメイジもなんとかなりそうで、ひとまずは安心した。

第1階層後半での初戦闘を終えた僕達は、気を引き締めて通路を歩み続ける。

今日で第1階層踏破を目指すぞ!

▽▽▽

「うわぁぁぁ! 助けてぇ!!」

順調に攻略を進めている僕達の前方でそんなび聲が聞こえてきた。

「リーダー、どうしますか?」

「行こう!」

僕達は助けを求める聲のもとへと駆ける。

進めば進むほど、助けを求める聲が大きくなり、聲の數も多くなってきた。

どの聲も子供の聲みたいだ。

休憩部屋でウィーグレンが連れていた子供の奴隷たちが頭をよぎる。

「リーダー! 扉です!」

「ルシエル君! この扉の向こうから悲鳴が聞こえてきます!」

2人が言っていた扉を見る。

そこにあったのは、鉄製の両開きの扉。

扉は閉まりきっておらず、よくある安っぽい剣が挾まっている。

そのため、中の聲が僕達まで屆いたのだろう。

「ちょっと中を覗いてみるよ」

そう言って、僕は扉の隙間から部屋の中を覗く。

そこで見えた景は、広い部屋にゴブリンの群れ。

それも、10や20ではなく、50以上はいた。

「ゴブリンの群れだ。數は50はいる」

リュークとリューネは僕の聲に驚愕する。

「50!? そんなに多いんですか……!」

「な、中の人は大丈夫なんですか?!」

中の様子を伺ってみると、ゴブリン以外にいているものが目にった。

派手な赤い裝備にを包んだ冒険者だ。

その冒険者は子供達を庇うようにして、傷だらけになりながらゴブリンと戦っている。

ゴブリンの群れに襲われているのは、奴隷となった子供の冒険者達……

そして、先ほど出會ったばかりのウィーグレンだった。

「……ウィーグレンだ。ゴブリンの群れに襲われているのは、ウィーグレンと奴隷の子供達だ」

「えっ……?」

「そ、そんなっ!」

僕は絶した顔をしたリュークとリューネに問いかける。

「君達とウィーグレンは仲が良くないのかもしれないけど、彼らを助けに行ってもいいかな?」

僕がそう言うと、2人は驚いた後に真剣な表となる。

「お願いします! ウィーグレンを助けたいです!」

「お、お願いします!」

「よし! じゃあ行こうか! 今回は例外としてリーチェもお願い!」

「ええ。任せて」

リーチェは優しく微笑んで、アステルをマフラーのように首に巻く。

アステルは起きているようだったが、めんどくさいのかリーチェにされるがままだ。

「ありがとう! よし、みんな! 突撃だ!」

僕はそう言って、扉に思いっきり押す。

そして、僕達はゴブリンの群れへと突っ込んでいった。

襲われているウィーグレン達を助けるために……

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