《最強になって異世界を楽しむ!》前座

「そこの転移者にも興味はあったのだがな」

最大級の警戒心を向けるハラルを気にもとめず、ラースはワタルを見ると、落膽したようにため息を吐いた。

「剣を合わせてみてじたが、論外だな。だがまあ、力を取り戻したハラルに加えて、神殺しもいる。ここに來たのもまったく意味がなかったわけではなさそうだ」

今のラースの関心は、5人の中でもハラルとレクシアにのみ向けられている。

「それはハラルとレクシア以外は、相手にもならないってこと?」

「正確にはお前達全員相手ではないが……そうだな。その2人以外は警戒に値しない」

誇るわけだもなく嘲笑するわけでもなく、さも當然と言わんばかりにラースはそう告げる。

「ハッタリではなさそうだな」

「実際、わしらの攻撃は通用するかわからんしのう」

それを聞いて、舐められていると怒りを覚えるかと思えば、エレナとマリーは実力差を理解した上で、冷靜に話す。

「でもやるんでしょ?」

「當たり前だ」

「もちろんじゃ」

「待ってください」

それでも戦うために武を構える3人を、ハラルが止める。

「癪ですが、ラースの言う通りまともに戦えるのは私とレクシアだけです。3人は私たちの援護を」

「斷る」

ハラルの言葉を、ワタルはきっぱりと斷った。

まさか途中で言葉を中斷されるとは思っていなかったハラルは、驚いたようにワタルを見る。

「……ワタル、さっきわかったでしょう。神を持ったあなたでも、ラースをかすことすら出來ませんでした」

「さっきはね」

「ワタルくん、ハラルちゃんすごく強くなってるんだよ。そんなハラルちゃんと同等以上の強さってことだから、言い難いんだけど……」

かなうわけながない。

そう言いたいであろうレクシアへ、ワタルは笑顔を向ける。

「大丈夫。俺達も強くなってるよ。2人はそこで見てて」

「ちょっと」

「ハラルちゃん」

慌てて止めようとするハラルを、レクシアが腕をギュッと摑んで引き止める。

「ワタルくんたちを信じようよ。仲間でしょ?」

「う……わかりました。ですが、私とレクシアも危ないと思ったら手を出しますからね」

「うん、ありがとう」

ワタルがそう言ってデュランダルを引き抜き、ラースの元へを向けると、その両隣にエレナとマリーが立つ。

「先陣はエレナ。マリーは魔法で援護をお願い」

「任せておけ」

「了解じゃ」

それぞれ武を構えるワタルたちに対して、ラースは心底つまらなそうに、一応モラルタを構える。

「何を話していたかと思えば……死にたがりか?」

「そうやって舐めてると痛い目見るよ」

「前座が……調子に乗るなよ」

ワタルの発言に苛立ちを覚えたラースは、表を引き締めて今度はしっかりとモラルタを構えた。

「さて……カプリースとの戦闘では不完全燃焼だったからな」

エレナは口に白夜を咥え、両手を地面につく。

その姿はカプリースとの戦闘の最後に見せたものであり、まるで四足歩行の獣のような出で立ちをしている。

「私の最速、捉えられるものなら捉えてみろ!」

地面が砕けるほどの力を四肢に込め、エレナが消えた。

エレナが瞬間移など使えるわけがないため、それは比喩表現でしかない。

比喩表現でしかでしかないはずなのに、それ以外の言葉では表せないほど、その場の誰もがエレナを視認できなかった。

「……は?」

片足に強い衝撃をけ、大きく勢を崩したラースは、何が起きたのか理解できないような聲を出す。

「片足を斬ったつもりだったのだが、刃が通らんな」

ラースの後方、武の間合いから既に離れていたエレナは、予想通りという冷靜な聲音でラースを見ていた。

「避けられなかったみたいだが、まさか前座のきが見えなかったわけではないだろう?」

「っ、貴様!」

笑みを浮かべ煽るエレナへ、殺意の篭もった眼差しを向けるラースだが、注意が散漫になるのは命取りとなる。

「レーヴァテイン」

ラースの前方に火柱が上がる。

いや、それは火柱ではなく、巨大な炎の剣だった。

「防いでみるとよい」

忌の力を使い、限界まで収束されたレーヴァテインを構えたマリーは、それをラースに向けて突く。

その瞬間に解放されたレーヴァテインは、ラースを貫かんと真っ直ぐに向かっていく。

「そんな炎ごとき!」

避けられないと悟ったラースは、闇の炎をマリーのレーヴァテインに向けて、相殺しようと放つ。

簡単に相殺、いや押し返せると踏んでいたラースの予想は、マリーの炎に包まれることで大いに裏切られた。

「バカなっ!?」

レーヴァテインの直撃をけたラースは炎にを焼かれ、ダメージをける。

しかし、それでもけた表面的なダメージだけであり、戦闘不能になるには程遠い。

「頑丈じゃな。全力で放ったつもりだったんじゃが」

の最大火力でのダメージが思ったよりもなかったマリーは、し不機嫌そうにそう言ってため息をつく。

「貴様ら程度で、俺に傷を付けられるわけがないだろうが!」

ラースは怒りと殺意を撒き散らしながら、2人にそうぶ。

ハラルとは違い、ラースは完全に神としてこの世界に降りてきている。

神のというのは生半可な攻撃ではダメージどころか、逆に攻撃した武が破壊されるほど頑丈だ。

「私たちでは無理だな」

「うむ。じゃが、わしらは援護が使命じゃからの」

ラースは2人に意識を向けすぎてしまい、ワタルの姿がないことに気付くのが遅れてた。

それがわかった頃には、ワタルは既に間合いまで距離を詰めていた。

「魔法剣・二重奏」

ワタルは既に魔法剣を発し、攻撃作にっている。

橫薙ぎに振られたその攻撃を、ラースは最初と同じようにモラルタで防ごうとする。

しかし、

「な……」

モラルタは大きく弾かれ、ラースは無防備なを曬すこととなった。

先程は難なく防げた。

大した障害ではなく、余裕で勝てる相手だと思っていた相手、そのことごとくに圧倒されたという事実に、ついにラースは言葉を失う。

「お前からは、信念も技量もじられないよ」

ワタルが振りかぶるデュランダルの刀が、深く蒼く染まっていく。

「やめっ」

「魔法剣・三重奏!」

そんな言葉になど耳を貸さず、ワタルはデュランダルを一閃する。

ラースのから、鮮が舞い上がった。

「そんなんじゃ、俺たちには勝てないよ」

「……すごい」

致命傷とはいかないまでも、神のに傷を付けた。

本來ならばありえない景を目の前にして、ハラルは嘆の言葉をらしていた。

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