教會という建の質上、そこには老若男問わず人々が訪れます。

それは半吸鬼デミヴァンプに乗っ取られた今でも変わらず、彼らは何も知らずにやって來るのです。

リリーナ・レングランド。

私よりもずっと年下の気なも、そのうちの1人でした。

しかし彼の場合、教會に來るようになったのはつい最近のこと。

理由はわかりませんがやけに私に懐いていて、どうやら私に會うためだけに通っているようです。

來る度に私に「遊んで遊んで」とせがむ、とても元気がいいの子で、私も悪い気はしないのでよく一緒に遊んでいます。

膝の上に乗せて一緒に本を読んだり、追いかけっこして抱きついたり、手を繋いでみたりと――それはもう、無邪気に。

「おねえちゃん、あーそぼっ！」

そして今日も今日とて、リリーナは教會にやって來ます。

私もそれを、心の底からの笑顔で迎えました。

◇◇◇

リリーナはとっくに私にとって特別でしたので、遊ぶのは外でも無ければ禮拝堂でもなく、その奧にある部屋でした。

部屋にるなり、彼は駆け出してジャンプし、ふかふかのベッドに飛び込みます。

私はそんな様子を溫かい視線で見守りながら、ベッドの傍らに腰掛けました。

こうしてリリーナを部屋に連れ込むようになったのはここ數日のことです。

最初こそ張していたようでしたが、今では見ての通り、自分の部屋のようにくつろいでいます。

私は手をばして、ベッドで橫になる彼の頭をでました。

そう親しくない相手に頭をられるのは嫌なものです。

だから私はこの行為を――魅了の深度を確かめるためのテストとして行っていました。

リリーナは拒みません。

それどころか、私が癖のある髪を絡めるようにれると、貓のようにふにゃりと甘えた表を見せます。

しかし、彼は最初から私に懐いていましたし、この表が魅了によるものなのか本心から來るものなのかは、実を言うとあまりわからなかったりします。

とは言え、すでにれ合いを始めてから結構な日數が過ぎているはず。

いくら會える時間が限られているとは言え、そろそろ、いい加減にに私の魔力が満ちているはずなのですが。

「リリーナ」

名前を呼ぶと、彼はじっと私の目を見ました。

そのまま小さなに顔を寄せ――鼻先をくっつけても、まるで金縛りにあったかのようにリリーナはきません。

ですがふっくらとした頬は赤く染めていて、私がしようとしたことの意味は理解しているようでした。

「ちゅー、するの？」

「嫌だったら嫌って言ってくださいね」

リリーナは顔を小さく左右に振ります。

「リリーナも、してみたいと思ってたから……でもほんとは、ちょっと恥ずかしい」

半ば告白めいた言葉を聞いて、我慢がきく私ではありません。

その恥じらいもむしろ私を後押しする材料にしかなりませんでした。

し顔を傾けると、今度こそのその小さなに、私は自らのを重ねました。

「んっ……」

リリーナは強く目を瞑りながら、を突き出します。

その初心な仕草にを刺激され、躙したくなる気持ちを抑え、私は顔を離しました。

「……おねえちゃんと、ちゅーしちゃった」

惚けながらそうつぶやくリリーナの手を握ると、「えへへ」と私だけを見ながらはにかみます。

「これで、おねえちゃんと好き同士、ってことだよね。こいびとになったんだよね？」

「んー……それはどうでしょうね。確かに私はリリーナのことが好きではありますが」

「まだ、なにかあるの？」

「ええ、まだ足りないんです、人になるには」

背徳は快楽を増幅させるためのスパイス。

人間のモラルなど半吸鬼デミヴァンプには関係ありません。

「キスよりももっと深く、繋がらなければなりません」

「それって……もしかして、えっちなことじゃ？」

「そういうことになりますね」

それは知っているんですね、予想外でした。

「えっちなことはダメ、なんだよ」

「なぜダメなのか知ってますか？」

「ううん、ダメだって誰かから聞いただけ」

「それはですね、好きな人のために取っておくためなんです」

「そう、なの？」

「はい、ですから好き同士なら何も問題はありません」

「……おねえちゃんがそう言うなら、そうなのかな」

間違ったことは言ってません。

それに私は、別にリリーナのだけが目當てではありませんから。

だけでなく心も、心だけでなく魂も、全てを自分のものにしてしまいたい、そう思っています。

「でもリリーナ、えっちなこと、どうするのか知らないかも……おねえちゃんは知ってる？」

「安心してください、ちゃあんと教えてあげますから。さあ、まずは私の膝の上に座ってください」

リリーナはいい子ですから、私の指示通り膝の上に座ろうとしました。

ですが向きが違います。

私は彼の腰を摑むと、こちらを向いて座るように促しました。

「うぅ、これ、おねえちゃんの顔が近いよお」

「これぐらいで恥ずかしがっていては人にはなれませんよ」

「こいびと……なりたいから、頑張る」

「いい子ですね、リリーナは」

再び頭をでてやると、しだけリリーナのから力が抜けました。

これなら、問題なく次のステップに進めそうです。

「それでは……まずは私がして・・あげますね。舌をべーってしてもらってもいいですか？」

「ほふ？」

「ありがとうございます。じゃあ始めますね。何があっても、舌はそのまま出したままでお願いします」

私は垂れ下がる、平均よりはし長めなリリーナの舌にを近づけると、まずは「ちゅ」と軽く口付けました。

「はひゃ！？」

「逃げないでくださいね、これが”人同士のキス”なんですから」

人同士という部分を強調してやると、彼は大人しく従います。

子供というのはしやすく、だからこそおしさも増すというものです。

私はさらに大膽に舌に二、三度口付けると、「はむ」と咥え込みました。

そして吸い上げ、で挾み、さらに極めつけに歯で甘噛みをしてみせました。

「は、はへっ……へ、ひあ……っ」

その度にリリーナのは未知の覚に震えました。

しかし、私の言葉をしっかりと守って、逃げることはしません。

従順なリリーナを褒めるように頭をでながら、私はさらに深く口付け、舌を含みます。

私の口できが取れない狀態になったリリーナの舌を、吸い上げるだけでなく、舌で絡め取ると――

「ん、んんんーっ！」

ひときわ大きな反応を見せてくれます。

私は小さく溫かいを強く抱きしめながら、リリーナの舌のあらゆる部分に自らの唾をまぶし、彼の反応が薄れ、表が虛ろになるまでそれを続けました。

ちゅぱ――キスを終えると、唾が糸を引き、一瞬だけ私と彼の間をつなぎます。

私はぐったりと倒れそうになるリリーナのを支え、自分の方に抱き寄せました。

彼は私のにもたれかかりながら、「はー、はー」と荒い呼吸を繰り返しました。

「どうでしたか、人のキスは」

私が耳元で囁くと、リリーナは律儀に呼吸を整えてから答えます。

「……きもち、かった」

何も知らない純真なの口からその言葉が出させたことに、私は満足していました。

ここで嫌がられてしまっては、元も子も無いですからね。

「、ぴりぴりして……頭、ちかちかして……すごかったよ」

「気にっていただけたみたいでよかった。し休んだら、もう1回しましょうか」

「もう、いっかい……」

「今度はリリーナの番ですよ、私を気持ちよくしてください」

「……ん、わかった。リリーナ、がんばるね」

こんな狀況でも素直に”がんばる”と言ってくれるなんて、なんと健気なのでしょうか。

彼からの奉仕を心待ちにしながら、私は背中をさすり、リリーナの力が戻るのを待ちました。

そして「もうだいじょうぶ」と彼が言うと、私は人間の頃よりし長くなった舌を見せつけるように出します。

リリーナは張した面持ちで私の舌に口を近づけると――ちゅう、と最初に私がしたように、軽く口付けました。

「んっ」

ただそれだけで、電流のような快楽が走り、私は思わず聲をらしてしまいます。

「リリーナのやり方、何かおかしかった？」

「いえ、上手でしたよ。今のは気持ちよくて聲が出ただけですから。そのまま続けてください」

褒められたのが嬉しかったのか、リリーナは先ほどよりも明るい表で、さらに大膽に口づけ――そしてついに、私の舌を小さな口で咥えこんでしまいました。

そのまま奧まで吸い込み、で挾みながら外に出す。

顔を前後させながら、數回それを繰り返します。

舌に纏わりついた唾がこそぎ落とされていくようなこそばゆい覚に、私はを震わせました。

リリーナはちらちらと不安そうに私の反応を見ていますが、何も心配は必要ありません。

とっくに私は、あなたのに夢中ですから。

「ちゅぱ……ちゅる、にゅぷ……んぱっ、はぁ……はぷっ……んくっ……」

彼のい口かららな水音が出ていることに言い知れない後ろめたさをじつつ、私は彼に全てを任せて、その様子を見守ります。

私にできることと言えば、リリーナに流し込む唾の量を増やすことぐらいで。

その度にがこくんとき嚥下しているのを見て、私はさらに興を高めていくのです。

舌への奉仕を終えると、最後にリリーナは私に深く口付け、の奧で私の舌をけ止めました。

苦手な人はえづいてしまうはずなのですが、彼はそれを苦ともせず、むしろ奧をでられると気持ちよさそうに「んっ、んふっ」と聲をらします。

私は調子に乗り、リリーナの番ということも忘れ、彼の口の中を好き放題にでることにしました。

弱そうなを中心にして、頬の粘をり、舌の裏側、その付けを舌先で弄び――

「はふっ、ん、んぅ、くちゅ……ん、ぷふっ、ひあ、んんんんんーっ！」

果てに、リリーナはをひときわ大きく、びくんびくんと震わせてしまいました。

その表は先ほどのキスを終えたときよりもさらに虛ろで、我ながらやりすぎてしまったと、即座に反省し、抱きしめます。

「はふ……はあぁ……ぁ、ひゅ……」

息も絶え絶え、と言った様子で私のにしなだれかかるリリーナ。

今での嫌われてしまったらどうしよう、と不安がっている所で、彼はようやく意味のある言葉を口にします。

「ぅ……おね、ひゃ……すきぃ……」

そう言って、きゅっと修道服の布を摑むのです。

その仕草のなんとらしいことか。

このまま三度口づけをして、滅茶苦茶にしてしまいたいほどでした。

しかし、さすがにそれは許されません。

私は返事をするように、リリーナの耳元で囁きます。

「私も好きですよ、リリーナ」

「んへ……えへへぇ……」

彼は心底楽しげに笑うと、さらに私にを著させました。

そのまましばし、私とリリーナは、互いの溫をじ合いながら、ピロートークめいた甘い時間を過ごすのでした。

◇◇◇

まだい彼には、割と早い段階での門限が設定されています。

名殘惜しかったのですが、いくら信頼を得ているとは言え、それを破ってしまえば二度と會えなくなってしまうかもしれない。

仕方なく、私とリリーナは別れ際に軽く口付けると、お互いが見えなくなるまで手を振って、その日は別れました。

そして禮拝堂へと戻ると――そこには、私たちのやりとりを微笑ましく見守っていた、ナナリーの姿がありました。

「主さま、今回はあの子を半吸鬼デミヴァンプに変えてしまうのですか？」

彼の問いかけに、私は「もちろん」と首を縦に振りました。

「ふふ、白いキャンバスを絵ので塗りつぶす瞬間ほど至福の時はありません。主さまがそうしたがる気持ちはよくわかりますわ」

「ナナリーも子供に懐かれていましたよね？」

「チェルシーのことですね、彼はわたくしが今のになる前から通ってくれている子でして、出來ればこちらに引き込みたいのですが、殘念ながらわたくしにはその力がありませんので」

眷屬であるナナリーたちには、私ほどの力はありません。

しかし、みゃー姉には魅了の力も備わっているようで。

要するに人間だった頃にどれだけ大きな魔力を持っていたか、が大きく影響しているようです。

ですが、ナナリーに魅了の魔法が使えないか、と言われれば答えはノーでしょう。

簡単なことです、魔力が無いのなら與えてしまえばいいのですから。

「ナナリー、こっちに來てください」

手招きして彼を呼ぶと、ナナリーは首を傾げながらも私の指示に従いました。

そして近づき、程範囲に収まった彼のを抱きしめると、強引にを奪います。

無理矢理の方が好きなんですよね、ナナリーは。

「んはあぁっ……！」

慣れた様子で舌を絡め、ぎながら、ナナリーは私にを押し付けてきます。

満なが私のにふにゅりとぶつかりあいました。

私は口付けながら、唾と一緒に大量の魔力を彼の中に注ぎ込んでいきます。

これで、おまじないは完了です。

「ふはっ……」と口を離すと、ナナリーはし苦しそうに眉をひそめました。

「渡しすぎましたかね。ナナリー、頭痛はしませんか？」

「そこまででは……し、ふらつきますが、平気です。ですがこれは、一……」

「私の力の一部を渡したんです、それだけあれば1人ぐらいなら容易く魅了できるでしょう」

「あぁ、つまり……チェルシーを私の手で変えてしまえ、ということですのね」

ナナリーはチェルシーが変わり果て、完全に自分のになる未來を想像して、熱い吐息をらしました。

これ以上住人が増えるのなら、拠點を変えることも考えなければならない――

そんなことを考えながら、私は未だくすぶるの炎を解消するために、ナナリーと指を絡めながら寢室へと向かうのでした。