《やっと封印が解けた大魔神は、正を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~》まさかこの歳で學園とは思いもよらない

大魔神の大膽なる宣戦布告から、一週間が経った。

と人間の癒著。

この事実は世界中の生を震えあがらせた。

だが、それゆえに現実を遠ざけている側面もあった。

人間と魔の爭いは歴史における常識であり、まさかそのトップ同士が裏で手を繋いでいるとは誰も思わない。

大きな戦爭には発展しないまでも、世界のどこかでは必ず、息をするように両者の闘いが繰り広げられている。

その《常識》を、いきなり大魔神を名乗る者が否定してきた……

こんなものをほいほい信じられるほど、魔も人間も単純ではない。

しかしながら。

側のトップ――魔王。

人間側のトップ――國王。

両者は大魔神の表明に対し、肯定も否定もしなかった。「事実確認を調査中」と回答をぼかしているのが現狀である。

両者とも、大魔神をかなり警戒している。それゆえ、思い切った否定がしきれないというのが心境だった。 

その曖昧あいまいさが、さらに一般人の疑念に拍車をかけてしまっている。噂好きな者はどこの世界にも存在するものだ。

世論が揺れくなかで、魔王と國王は部下たちの信頼をしずつ失いつつある。

大魔神エルの登場により、世界の勢は一気に不安定なものとなった。

「え、學園?」

僕は目を見張った。

コトネの母親が思いもよらない発言をしたからだ。 

「そ。あなたたちの年齢くらいだとね、學園に通うのが普通なの」

「マ、マジかい……?」

おかしいな。

母親には僕が十代に見えるのだろうか。

あれから一週間。

僕はコトネの家に住まわせてもらっていた。

だって住むところがないからね。

神殿に戻ろうとも思ったんだけど、ぶっ壊されていた。

おおかた魔王たちの仕業だろうけど、かなりタチが悪い。

次會ったときは半殺しにしてやろう。

ちなみに、コトネと話し合った結果、魔王への復讐は《いまのところ》行わない予定である。

僕が言えたことではないけど、いまは世界の勢が不安定である。

そこで魔王を殺してしまったら、一気に人間軍が襲ってきて魔全滅――ってことになりかねない。

そんな結末はんでないからね。

まあ、當分は魔王もこちらを襲う余裕はないはずだから大丈夫だと思う。

大魔神に挑める者がそうそういるわけないし。

それを狙ってあの表明をしたんだけどね。

……ということで。

僕はいま、コトネと、その母親とで朝ご飯を食べていた。 

父親はご苦労にも出勤しているらしい。

いやあサラリーマンって大変だね。

食卓には、変な匂いがするサラダ、ブタの塩焼きが並んでいる。朝食としては充分なボリュームだ。

「ということで、コトネ。あなたも學園に行くのよ?」

「わ、私も? う、うーん……」

黃緑の菜っぱをくわえながら、コトネは困ったような顔をする。

「あんまり気乗りはしないかな。だって、人と関わるの苦手だし……」

「だからこそよ。せっかく元気になったんだし、社會復帰してもらわないと。それにあなたには、エルくんがいるじゃない? ね?」

そこで僕を見られても困るよ……

……しかし、學園か。

正直なところ、興味はあった。僕は一般の常識には明るくないし、人付き合いの経験も淺い。ここいらでそれらを學ぶのも悪くない。

それに。

十年前にはなかったはずの要素――ステータス。 

僕には違和しかないが、ニルヴァ市の住民はこれを當然のものとしてれている。

僕が眠らされていた間に、世界のあらゆることが変更されている可能がある。

それを學習するためにも、學園に行くのは悪くない選択といえた。

「コトネ。お母さんもああ言ってるし……行ってみようよ?」 

「え……う、うーん。エルくんがそう言うなら……」

「よし、決まりね!」

母親が嬉しそうに両手を叩いた。

「じゃあ、まずは學試験の用意ね! 魔王様が面接してくださるんだから、きっちり準備しなさいよ?」

「……え?」

僕とコトネは大きく目を見開き、顔を見合わせた。

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