「今皆さんがいる國はフェルリンデン王國です。大國の１つになります」

今日も今日とて午前は座學。

今回は國に関してだから、重要ではある。

「我らの國、フェルリンデン王國の西側に大河があり、それの向こう側にルンドマルク帝國があります。そして、フェルリンデン王國の東側に樹海を挾み、エスカランテ王國があります」

フェルリンデン王國は勇者召喚が行われている大國。

ルンドマルク帝國は軍事力の高い大國。

エスカランテ王國は魔法に力をれている大國。

３大國同士は結構離れているが、その間や周囲には當然小國が沢山ある。

今現在、表立って戦爭している國は無い。

「そりゃあ……魔王がいるんだし戦爭何かしないだろう……」

「いやいや、そうも言い切れんぞ。最低でも１００年と言えば１世代変わるんだ。十分戦爭できるだろうよ。信じる神の違い、自國には無い資源で殺し合う人間達だぞ？　魔王なんて大した問題にはならんだろ」

なぜなら魔王と戦う勇者は別の世界から召喚すれば良いのだから。

毎日寢る前に魔力を込め、電池を定期的に変えるだけであら不思議！　別の世界から手軽に最強戦力がやってくる！

一方通行で帰れないのだから、召喚された勇者には選択肢がない。人は１人では生きて行けんのだ。國ぐるみで行われているのだから、反発すれば國が敵に回るのだ。下手したら世界規模が敵に回ることになる。

召喚した國じゃなくても、召喚された勇者を當てにしているのだから、勇者に戦って貰わねば困るのだ。

なんと勝手で、ふざけた話だろうか。自分達の世界の問題を、他者に……しかも選択肢がない狀態で押し付ける。

『我らの世界を救ってくれ、勇者よ』なんて口車に乗せられ喜ぶ者もいるだろうが、落ち著いて考えれば勇者召喚なんぞこんなものだろう。

まあ結局は召喚された本人が納得できるかどうかだ。喜んで勇者するのもそれはそれで良いんだろうが。

お晝を食べ、食後のティータイム。なお、他の者達は実技訓練中な模様。

「しかし流石に暇だな……仕事するか……」

１０番世界の分で、処理していない書類半分ほどを空間収納へと放り込む。

そして４番世界にいる本で取り出し、処理をする。

空間収納に関しては、創造神様の管轄である１～１０番世界なら場所が共通なので、世界を移しても共通である。

和ロリは１０番世界にいるベアテが作り、分がしまう。４番世界の本が取り出し、清家に渡したと。

ピシッと背筋をばしで書類を片付ける。橫でシロニャンはお菓子を抱えてポリポリしている。ヒルデは相変わらず背後で待機。

まさにお仕事である。勇者？　はぁ、私忙しいので。

何やら紙の束を取り出してそれを見始めた。

椅子に淺く座り、ピシッと背筋をばして紙と向き合うは非常に絵になるのだが……奇妙なことがある。

あのはいつも目を閉じているのだ。開いているところを見たことがない。

にも関わらず、迷いなく紙に何かを書き込む。

行だってそうだ。歩みに一切の迷いがない。

紙に書かれている事が分かるのか？　何がどこにあるかも分かるのか？　いったいどうやって？

の一部を除き、年相応の細いをしている作りのようなだが、計り知れない。他の勇者の子供達と同じように遊んでいる事もあるが……突如雰囲気が変わる事もある。まさに今だが、とてもじゃないがには見えない。

本當に、いったい何を召喚したのだろうか……。

「む？　ファーサイスからか。……妾の加護がしい？　大きく出たな。無理に決まってるだろうに」

「水の都からジャングルに転ですか？」

「我が國ですら霊達と妖達が調整してやっとだと言うのに…………あー、これあれか。ディーボルト家からか」

「ふむ……。という事は、黙らせるためですか」

「だろうな。上層部が妾の加護を求めるとは思えん。と言うか、地の霊皇グノームの加護が定期的にけられるだけでも破格なのだ。それが分からぬ無能ではあるまい」

神々の加護、霊の加護……加護と言っても種類がある。

どんな加護がかかるかも神々による。

大きく分ければ土地にかけるか、生個人にかけるかだ。

穣神の加護なら當然土地だろう。そして霊達は屬による。水と地の霊の加護が土地には重寶されるだろう。

そしてそれらを凌駕する、穣系の上級神に位置するのが自然神だ。當然自然神の加護はかなり強力だが、強ければいいという訳でもない。

ヒルデ言った通り、水の都と言われるファーサイスの王都が速攻でジャングルへと早変わりすることだろう。すくすく育ちすぎて。

「と、言うことで……答えは決まりだな」

でかでかと『ことわる』とだけ書いて空間収納へ放り込む。

あまりにもふざけた、話すまでもない容に返すお決まりの狀態である。

格式張った挨拶も何もない、でかでかと『ことわる』の文字だけを紙いっぱいに書いただけのである。ふざけた事言ってきてるんだから、ふざけた返しでも問題あるまいという主張であった。これほど突っぱねたという証拠は無いだろう。

どうせ向こうの事だ、これをバカ貴族共にちらつかせて散々ビビらすのに使うんだろうよ。

『お前らの要求通り送ったらこんなの來たんだけど、どうしてくれんだ？　お？』

っていい笑顔で言うんだろうよ。絶対目が笑ってないだろうけどな。

ちなみに、ヒルデの生前の名前はブリュンヒルデ・ディーボルト。

そしてディーボルト家は代々ファーサイスで農産相やってたりする。今回の當主は外してるようだが。重鎮には変わりない。まあ、ヒルデは４で侍に目覚めてたようだが。流石に４００年とか経つし、既にあまり気にしてはいない。

せっせと書類を片付けているうちに、宮武が話しかけてきた。

「ユニエールさん、何してるの？」

「仕事だ仕事」

「え、なんの？」

「……言ってなかったか？」

「言ってないですよ」

ヒルデに確認したら速攻で返された。そうか、言ってないか。

「城に出りする程度の立場にはいた……と言ったな？」

「あ、うん。聞いた」

「召喚の魔法陣が見えた瞬間に対策はしてきてな。今向こうの、転移前の仕事を継続している」

「魔法陣出てから転移まで早かったような……」

「３秒ぐらいだったな。それだけあれば十分だ。伊達に生辭めてない」

「まじかー」

対策も何も、もう１人の自分……分を置いてきただけだがな。

私のは《多重存在》というだ。

《幻影分》や《多重分》という似たようなスキルもあるが、《多重存在》は全く別だ。

《幻影分》は喋れないしれない。スキルや能力も使用不可。

《多重分》は喋れるしれるが、スキルや能力は半分以下。

《多重存在》は文字通り複數の自分を作る。まあ、この能力は創造神様に貰っただから、私専用だ。仮に私用じゃなくても生が使ったら脳が死ぬんじゃないか？

分系は自分の人形をったりするじだが、存在はそうじゃない。

《多重存在》は『あぁー、自分がもう２人ぐらいしい』という願をそのまま再現した様なだ。パソコンならパソコンがもう１臺増えるわけだ。

やれることが増える、考えられる事が増える、ただしそれらは全て共有される。

３人とかになって全員別々の行したらまず脳が死ぬだろう。

まず処理仕切れない。処理しきれないならやるだけ無駄である。

折角２人になったのに、２人の自分が同時に思いついたことを行し、処理しきれず同じことをしようとしてロスをする。

同時に思いついた事を被らないように振り分けて……とかの処理が必須なのだ。

『お前あれ、俺こっち』『おｋ』というやり取りをどこにいても脳で処理する能力が。この間にも當然それぞれの５から様々な報もる。

まあ、流石に《多重存在》については緒。

「お城でやるようなことって言うと……見ない方がいいのかな？」

「そもそも世界が違うから見たところでな。ちなみに重要なだから汚さない自信がないなららないのが正解だ」

「……やめとこ。それは？」

「こくｚ……見ましたよーという印だ」

「へぇー、判子か」

『國璽！？　今國璽って言った！？』

やべぇ、騎士達にバレたかも。國璽こくじは普通王しか使わん。

多の差はあれど、國璽を持つの許されるって相當だからな。

素知らぬ顔しとこ。國璽なんて私は知りませんよー。口ってないよ？

めっちゃこっち見てくる。

我々のポーカーフェイスは完璧です。一柱になってちゃんと普通に表くようになったけどね。表筋を切り離す事も可能なのさ。ピクリともかんぞ。

……別にバレても問題ないのか。王族ってのは國のトップだからこそ、重要なんだ。王が命令すれば兵がく。兵がけば戦爭だ。それを避けるのもあって、例え他國であろうとも王族は自國の王族と同じような対応をする。

召喚されて私の國がない狀態なら恐れるも無いと判斷するだろう。

まさか１人で國落とすとは普通思わんだろうからな。

私とシロニャンは國落とし余裕。造作もない。２人して一撃で終わる。ヒルデも……時間はかかるが普通の國なら余裕だな。この國なら問題なく落とせる。

……可哀想に。まさに相手が悪いとしか言えん。

宮武を訓練に戻らせつつ……。

ベン！　ベン！　ベン！　ベン！

む、學園か…………まあ、いいだろう。

ベン！

押したからぽいぽい空間収納に放り込む。

「ふむ、ひとまずこんなもの……」

増　え　た。

がっくりしながら束を取り出す。

ヒルデがいれたモモとミルクを混ぜたペルシアオレを飲みながら片付ける。

氷はっていない。我々からすれば溫度調整は片手間でできる。楽でいい。

ちなみに時空神ならではの共通の空間収納を作ってある。勿論眷屬用だ。

それを使えば離れていてもけ渡しが可能になる。

まあ、主な用途はヒルデ用なのだが。ほら、飲みとかお菓子とか。ヒルデが出せるように共通化したのだ。私が個人のにれてると、ヒルデが侍としての仕事ができないんだよ。飲みいれたり、服を著せたりとかとか。

そういうわけで、ヒルデが重寶している。

炭酸水とか作る魔道もってるから、眷屬騎士達も使ってるな。

炭酸水の魔道は相変わらずペンギン型である。変えてない。

訓練している隅の方で、ひたすら書類という魔と格闘するシュテルであった。