《現人神の導べ》16 視點の違い
クラスの者が聲の方に顔を向けると、そこには紙が積み重なった機に向かって黙々と作業をするの姿が……。
當然、シュテルの発言だ。これまたド正論である。まさに授業真っ只中だ。
でも、ああいった者に正論は逆効果だったりする。
「小僧!? そっちの方が子供ではないか!」
「馬鹿を言うな。小さいだけでこの中で最年長だ」
「『へっ?』」
「あれ、言っちゃって良いの?」
と……清家が聞いてくるが、別に年齢は隠している訳でもない。
「勝手に見た目で判斷して聞いてこないだけで、別にではないぞ?」
「あ、そうだったんだ……」
「まあ、お前達には割と適當に言ったが……」
「「「えっ?」」」
「400歳ぐらいと言ったが、正確には506歳だ」
「って106歳違うじゃん!」
「大した差ではあるまい」
「大した差だよ! 人間死んでるから!」
狐っ娘が凄い突っ込んでくる。
「ちなみに、この世界や勇者達の世界に換算すると1012歳だ」
「『は?』」
「妾がいた世界は非常にでかくてな。1日が24時間とするのは変わらんのだが……1分が120秒でな。お前達の2年が妾達の1年だ。だから倍だな」
「1012歳を400歳ぐらいって雑過ぎでしょ!?」
「我々の業界では新參者だ。大した事あるまい」
「いやいやいや……どんな業界よ……」
我々の業界は億とか萬単位が普通です。……黙っておくか。
當然この間も手は止めないし、顔も向けていない。
「そもそも小僧、貴様中々いい度をしているな。まぁ、ただの馬鹿な可能もあるが……」
「Aクラスにいる俺がバカだと!?」
「『頭が良い』にも種類がある。『勉強ができる』と『頭が良い』は決してイコールではないのだよ。第一貴様の行がバカ丸出しではないか」
「どこがバカ丸出しだというのだ!」
「……やれやれ。まあ教えてやろう。他の者にも牽制になるしな」
まず、學園に行けと言ったのは『國』である。つまりこいつは『國』が決めたことに文句を言っているんだ。『國が決めた』という事は『國王』の指示でもある。
「つまり、文句があるなら我々に言わず城に行って來い」
そして、我々は『勇者』である。
魔王を倒すために呼ばれた、人類と魔王との戦いを背負っている奴に喧嘩を売っているんだ。
「貴様、我々が『なんでお前達見たいな奴らの為に命かけて魔王と戦わねばならんのだ』って言ったらどうするつもりだ? しかも見ての通り貴様らと同じ年齢の年達だ。親から引き離されたどころか、異世界転移。しかもこちらに一言も無く強制拐だ。挙句に魔王と戦ってこい。貴様ら、できるか?」
「そ……れは……」
「だからバカだと言っているのだ。自分達の世界の問題を他世界の者を拐して押し付ける。挙句に耳と尾が付いているだけで獣と貶すか恥知らずが」
吐き捨てるように言うシュテルに言葉がない。教師すら返す言葉がないのだ。
だってシュテルが言ったことが事実であり、全てだからだ。
なんて一方的な押し付けであろうか。
靜かなAクラスに宮武の聲が寂しく響く。
「ねぇ、ユニエールさん。私達ってさ、魔王を倒せば帰れるのかな?」
「妾に聞くということは、覚悟ができたのか?」
「皆口に出さないだけで分かってるよ……。召喚の原理を聞いたもん。『魔王復活まで毎日魔力を込め、予兆が見えたら溜めたエネルギーを使って召喚する』ってさ。召喚後はすっからかんになるらしいじゃん?」
「そうだな。そもそもあの召喚システム自が送還する事を考えていないふざけただ。呼び出すだけの魔法陣だからな」
「だよねぇ……。もう逢えないのかぁ……」
「そもそも清家は帰るという選択肢すら無いしな」
「えっ、帰れるなら帰りたいんだけど!?」
「……その容姿でか?」
「…………」
恐る恐る自分の頭に両手を持っていき、自分の頭にある狐耳をふにふにした後……機に伏せ轟沈した。
「そうか、楓はその容姿で帰れても、親に認知されないか……。面影がないってレベルじゃない」
「ちくしょう……誰だ狐っ娘にしたやつ…………これが殺気か」
「「どうどう」」
フフフフフと笑う清家を2人が宥めているのを目に、変わらず書類の処理をしているシュテルである。
「別の世界から來たのだから、この世界の常識が通用しないのは當たり前の事だ。まあ、何はともあれ授業中だ」
「おおっと、そうだった……。どこで止まってたっけね」
「ちなみに魔法の実験、開発を行っているところはランテースだ。容が容だけに、王都でやるには危険だからな」
「「「なぜユニエールさんは習っていない事も知っているのか……」」」
「ハハハハハ」
「と言うか、やっぱちゃんと聞いてるんだね……」
「書類を処理してるが、聞いてるぞ」
年も大人しくなり、授業が再開した。
まだ學園にり2日目だ。クラスの者は一悶著もあり距離が摑めずよそよそしいが、同い年だから時間の問題だろう。と言うか、普通に接すればいいだけだ。
前の魔王は約370年前。
370年前とか最早伝説、伝承の類と言えるだろうか。よって、現実味が薄いのかもしれない。伝承にあるし召喚しとこうでされるのもあれだが。
まあ何にせよ、召喚された側は拐されたことには変わりない。
召喚された側が素直に従うと思っている時點でそもそも甘いのだ。シュテルは魔王放っといて観する気満々である。6番世界の學生達がいなくて、自分達だけだったらとっくにこの國にはいないだろう。
今いるのは學生達に合わせているだけで、書類仕事してればいいし別に良いかと思っている。一緒にいた方が面白そうだし?
何だかんだ學園生活が続き、お城と學園を往復する日々。
ある日の朝、擔任から選択授業の話が出る。
が……勇者達は戦闘一択である。文を目指す訳もなく。國としても戦って貰わねば困るだろうからな。選択肢がない。
10~13の方は冒険者を目指す者達もいるのだが、13~16となると文が多く、戦闘系も騎士を目指す者が大半だ。だが、今回は勇者達がいるため教える方も大変だ。
ちなみにマナー講座というのも始まるが、これは選択式じゃない。つまり強制である。13~16はエリート達の通う學園だ。マナー講座は必須だろう。
私とヒルデからしたら何の問題もないが、どちらかと言うと勇者達はこのマナー講座に震えている。
頑張れ、中2共。
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