《現人神の導べ》18 ある日の學園風景
學園に通いだしてそこそこ経つある日のAクラス。
シュテルは休み時間になる度、席に結界をかけてからヒルデと共にクラスにある簡易キッチンに引っ込んでいた。
狐っ娘……清家は何作ってるんだろうと思いつつも、隣にある結界をツンツン……ペタペタしていたらツッコミがった。
「何してんだ楓」
「いやぁ、ユニエールさんが張った結界……《防魔法》が綺麗なんだよね」
「あ?」
「その何言ってんだこいつって目は止めていただきたい」
「いやまじ何言ってんだ」
「魔力の流れと言うか、構? が綺麗なんだよね」
長嶺は清家を真似ペタペタるが……。
「なるほど、分からん」
「おい」
「いや、分かるような分からんような」
「そう言えばお前魔法は微妙だったな……」
「おう」
そしてトイレから戻ってきた宮武が、何やらペタペタ結界をっている2人に聞く。2人してシュテルの結界を前に何かしてたら気にもなる。
「何してるの?」
「ああ、宮武。この結界綺麗だと思わない?」
「は?」
「ブルータス」
「いや、うん。楓が悪いと思うぞ。何か結界の構が綺麗らしいぞ?」
「ああそう言う……。なんか変なのに目覚めたのかと……」
「違うわ!」
一安心? した宮武はとりあえず結界を見てみる。
「むむむ……確かに綺麗だ。そして、やっぱユニエールさんはとんでもないという事がわかった」
「ああ、うん。その防壁やばいよね……」
「解ける気がしない」
勇者達の《防魔法》とは、4番世界の舊式魔法仕様だと《結界魔法》になる。
"理結界マテリアルシールド"や"魔法結界マジックシールド"と言った魔法があるのだが、使い方は大2つだ。
1つは自分の前や、周囲を囲む一時的な防。後は魔道やら何やらで場所に維持させる結界としての使用。前者は戦闘で、後者は拠點などでの使用法だ。
そしてこの結界の解き方だが、結界以上の威力を持ってぶち破る方法と、パズルや絡んだ紐を解くような作業の2パターンがある。
メリットとデメリットは言わずもがな……といったじだが、ぶち破ったほうが早いが超目立つ。解くのは大変だが靜かにできる。
とは言え攻撃を防ぐために出したシールドを紐解くなんて無理だ。どうせ者も防ぎきったらすぐに消す。よって、拠點にある設置型の結界を靜かに紐解く事になるだろう。
ここで清家が言った『防壁』とは『紐解かれないようにする』だ。
設置型で『防壁無し』と言うのは無能確定だろう。
設置型の結界に対する評価は純粋な結界としての効果と、この防壁がどれ程かつ高度であるか……である。
結界自はの繭の様で、効果ごとにが違ったり者の魔力だったりするのだが、々視點を変えてみる―――魔力の流れ自を見る―――と、複雑にり組んだ迷路の様な、魔力の通り道……魔導回路が見える。
當然複雑なら複雑なほど強く、単純なほどしょぼい。
まあ、シュテルの結界は防壁だけではないのだが……。
「なるほど、これにしてたわけね」
「そうそう。それでさ、結界にれると不思議なきしてるんだよね……」
「んん? ……ほんとだ。なんだろうこれ。……と言うか今更だけどユニエールさんは? 怒られないでしょうね……」
「これぐらいじゃ怒らないでしょう。壊そうとしてるわけじゃな……」
「別に怒りはしないが、妾の結界はセンサー付きだ。れた時點で妾には分かる」
「「oh...」」
「ツンツンしおってからに」
「「ゴメンナサイ」」
「壊される気も解除される気もないから別に良いのだが、教えてはやらんぞ。頑張れよ」
「結界のオプションにセンサーなんて無かったよね? ってことは……」
「結界に関しては全て妾のオリジナルだ。誰にでも分かる共通の錠前なんか使うわけ無かろう」
「そりゃそうだ……」
「言葉通りの『全て』だよねこれ。防壁だけじゃなく結界そのがもう全然違う」
に載っている魔法にはオプション機能がある魔法も存在する。
オプションをれるとそれだけ魔力消費が増え、発難易度も々上がる。
"理結界マテリアルシールド"や"魔法結界マジックシールド"なら防壁の設定などがオプションだ。戦闘中に攻撃を防ぐだけなら防壁は不要。
空間の上級の"転移門ゲート"なら、門のデザインを変えられたりなどなど。
シュテルの場合はオプションどころか結界そのがオリジナルである。
オプションで自前の防壁を作り、解かれまいとするのが一般的。
だが最終的に行き著くのは『結界そのをオリジナルで組んで、防壁もオリジナルで組めば良いんじゃね?』である。
防壁を解析され解かれても、結界そのも解析する必要が出るのだ。発想としてはまあ、當たり前と言えるが、それを実際にできるかというとまた別である。
清家と宮武が観察する中、長嶺も頑張ってみようとしていたが、程なくして休み時間が終わり、次の授業が始まる。
その授業の最中、シュテルは何やら四角い金屬の塊を2つ出し、ペタペタと何かをしてからまた空間収納にしまった。隣の席の清家は『なんだろう?』と思ったが、後で聞けばいいかと授業中はスルーした。
そして授業が終わり、お晝休みである。
授業からの開放によりガヤガヤと……はAクラスなのでならないが、それでも空気は緩む。
Aクラスで一番騒がしいのは勇者3人である。勿論清家、長嶺、宮武の3人だ。
シュテルは基本書類仕事をしているし、ヒルデは後ろ隣に控えるため喋らない。
他の者達もエリート達で、特に貴族の子供達はこの歳で既に対面を気にする。
そうなると普通の中2である3人が一番うるさい。悲しきかな勇者。
早速ご飯を食べにぞろぞろ出ていく。
同じ爵位の友人を連れて……もしくは取り巻きを連れて……その辺りは様々だが、ご飯を食べるため他のクラスからもぞろぞろ出て來る。
食堂も中々豪華で、テラスのように外でも食べられるようになっている。
食堂はある意味戦爭だ。席取り合戦が始まる。
とは言え……學年、年齢より分、爵位である……。よって、最早予約席と言うか、固定席じみている場所もあるのだが。主にテラスがそうだ。
そのテラスへと真っ直ぐシュテルは進んでいき……自前のティータイムセット(機と椅子込み)をドンッと出して、陣取る。自前の出すなら席取り合戦も関係ない。
そして優雅にお晝を過ごす。
ちなみになぜテラスかというと、自然神でもあるせいか外の方がいいのだ。
外か中か選べるなら外に行く。下が芝生とか、回りが花畑とかなら尚良い。
まあ、人工言っても世界にある加工しただけだから、大した差は無いのだが……気持ち的な問題だろうか。
そのシュテル専用臨時席に狐っ娘達が料理を持ってやってくる。これがお晝の景である。機と椅子出すならそこに便乗すれば取り合いしなくて済む。
椅子は何個かあるし、機のスペースも問題無いから斷る理由もない。
そしてシュテルは授業中に取り出した2つの金屬の塊を再び取り出し、機に置く。
「それ、さっきも出してたけど何?」
「妾の晝ご飯だ。もうし待てば分かる」
頭に『?』を浮かべながらも、冷える前に自分のを食べ始める清家。
シュテルは學園に來てから今までで學食メニューを制覇済みで、それ以降お晝は飲みだけだ。新作が出たら食べるし、気分によっては食べるが。
しすると、それぞれ金屬の塊から『ちーん』という音がした。
「「「レンジかーい!」」」
3人のツッコミをガン無視して塊の一部……扉を開け、中を取り出す。
中は茶と黃の丸い。當たりにはチーズのいい香りが広がる。
それに反応したのは宮武だった。
「チーズケーキだ!?」
「……ケーゼクーヘンと言えば分かるか? クヴァークトルテでもいいが」
「分かる分かる!」
そしてもう1個から出てくるのは……。
「タルトだ!」
「りんごのタルトだ。ただし……使われているりんごが普通のではないが」
「ん?」
「お前達の世界なら……1個で車が買えるレベルの果実。食べたら最後、他のは食えんぞ」
「「「へっ?」」」
「またまた~。沢山使われてるじゃん」
「そりゃそうだ。妾が売らない限り、余所には出回らん。妾が管理者」
「……そっちのケーキは?」
「安心しろ、それは普通のだ。そっちで我慢しろ」
「むむむむむ……」
宮武が唸っている最中、シュテルの後ろ……つまりヒルデが一言……『そう言えば以前、借金してでも果実をお買いになっていた貴族様がいましたね。まだあるのでしょうか、あの家』という呟きが聞こえた。
食べたら最後、他のは食べれない……果実を食べたくなったらどうするの? 同じの買うしか無いよね? 一種の依存癥である。車と違って食べたら無くなる。果実だから日持ちもしない。
口にした者を天上へとい、しばしの無病を與えるとされる果実。
通稱『楽園の果実』
自然系統最上位の自然神の加護をけ、各霊と妖に育てられた果実だ。
採れるのはシュテルの國、アトランティス帝國のみで、基本的に霊や妖が消費し、殘りがシュテルのところへやってくる。余りではないぞ。あくまで細かな手れをする霊や妖達の給料のようなだ。自分達で育てて食べて、殘りはシュテルのところへ。
『回復効果を持っちゃった果実』なのだ。
生産條件や生産量、味と効果など考えると値段がバカ高くなる。創造神様すら持っていけば喜んで食べる代だ。実際月一でお供え(配達)しているが。
本來上級神の中でも上の上……自然系最上位の自然神が地上にいるわけもないのだから、本來生が口にできるではない。
ちなみに3日もすれば特大な実がなる。
収穫するとすぐにプクーっと実を作り始めるのだ。一般的なより二回りほど大きく、早送りのように育っていく。
アトランティス帝國は季節関係なく様々な実がなり、果実の甘い香りが漂う國だ。
ちなみに、勝手に果樹や果実にった時點で重犯罪奴隷へと落とされる法がある。
とは言え、近づいた時點で漂う霊達が集まってきて睨み、無視したらタコ毆りにするので、今のところその法で捕まった者はいない。
霊達にとって、この果実達は自然神直々に頼まれた事であり、育てるだけで食べ放題なのだ。渡すわけがない。
毎日違う果実を収穫しては幸せそうに頬張っている。
「チーズケーキで我慢しよう……」
「そうか、この香りユニエールさんやヒルデさんからする匂いだ……」
「楓、変態っぽいぞ」
「うるせぇ!」
シュテルとヒルデに臭は無い。著ている服に染み付いたものだ。
流石にはあれなので、ある意味シンボルである果実の甘い香りにしている。
「流石獣人、分かるか。果実は我が國のシンボルの1つだからな。管理者が妾だし……焼いたの臭がするより、果実の香りがした方が良かろう?」
焼行った後の臭がすると、果実の甘い香りがする。どちらが良いと言われたら恐らく大半が後者を選ぶだろう。
「焼いたの匂いは好きだけどな! の子からする匂いとしてはちょっと……」
「「まあ、うん。選べるなら果実を選ぶ」」
と、長嶺の意見に賛する清家と宮武であった。
そしてふと苦笑して呟く宮武。
「って言うか、例えが焼いた……」
「妾の大好の1つだからな! 自家製やローストビーフとかあるぞ」
「「マジで!?」」
「果実はやらんが、ぐらいならいいだろう。ここでファイヤーするわけにもいかんので、ローストビーフだな。ヒルデ」
ヒルデが空間収納から取り出し、1人6枚ずつぐらい切ってタレをかけ、それぞれの前にそっと置く。食料系は"無限収納ストレージ"に作り溜めされている。
空間収納には時間停止型の"無限収納ストレージ"と時間経過型の"収納インベントリ"がある。
當然"無限収納ストレージ"の方が高難易度だ。
「「「うんまああああああ!」」」
「が無くなった!」
「溶けるってこういうことか!」
「これ何の!?」
「竜」
「「「……へ?」」」
「ドラゴン。純正竜のは最高級品だ。亜竜でも高級品だな」
「「ドラゴンのは味い。ガチだった」」
「妾は竜のしか持ってないからな」
「「「ぶるじょあー……」」」
「金はあるが、竜は自分で獲ってきてるんだが?」
「「「…………」」」
「生最強種の純正竜に、ただの人間如きが勝てるわけ無かろう。自己調達だ。幸いダンジョンのおかげで生態系ぜつめつを気にする必要がないからな」
「気にするの絶滅なんだ……」
「出されたものなら糞不味くない限り食べるが、自分で作るならドラ一択。毎晩ドラゴンステーキとか夢のような事ができる世界、素晴らしいね。前世じゃ毎晩ステーキすら厳しい……」
シュテルが異世界転生して喜んだのは、もしかしたらこれかもしれない。
自分で狩ってくれば、好きなものを、好きなだけ、好きな時に食べられる。
骨付き……しかも所謂マンガに齧り付ける。
中が生焼けだったりと、食べづらいことこの上なかったが、本人は満足していた。
今じゃマンガもばっちり中まで均等に火を通し、頬張れる。つまり、それだけ回數重ねているということである……。
問題があるとすれば、上手く焼けるようにはなったが、齧り付くとはしたないと言われてしまう立場になったことか。言うのはヒルデだが。まあ、齧り付くけど。
どうせ見てるのは眷屬だけだ。逆側にシロニャンも齧り付くしな。と言うか眷屬騎士達も真似してたし。
やっぱり骨付きには齧り付かないと、切ったらただのではないか。
人の頃にあった三大求……唯一辛うじて生き殘った食。生きるためではなく、ただの趣味となったが味覚はあるのだ。々力がるものだ。
まあそれはともかく。
食後は結局3人がチーズケーキを食べ、シュテルはりんごのタルトを食べていた。
近いうちに魔王が復活するけど、至って平和な勇者達です。
とは言え近いうち、遠征演習するようだ。遠征言ってもそんな遠くはないが、魔との実戦経験や野営経験のためだ。
生きを殺すことができるか、勇者達にとって一つの山場。
シュテルは勇者達を見守るだろう。
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