《俺が斬ったの、隣國の王様らしい……》中間試験
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フィーラ・ケイネス・アグレシオの編からまた暫くときは経ち……中間試験が始まった。中間試験は二年になって學んだ魔法理論や基礎、応用を中心とした問題が出題される筆記と、それらの習度を見る実技がある。
筆記試験は問題なく、かなりの手応えをじていた俺であったが……まさか実技で躓くことになるとは思わなかった。周りには、二人組・・・を組んでいる。
今回の中間試験の実技は、二人組を組んだチームごとに対戦する形式だ。勝敗の有無よりも今まで學んできたことを行えば、及第點。で、俺も勿論二人組を組んでいるわけだが……俺が組んだ相手が最悪だったのだ。
「あ……あの、よ……宜しく」
「あ、あぁ……」
でっぷりとしたお腹と丸渕眼鏡……彼の名はレイモン・バクヤード。男爵家の三男坊であり、筆記は平均くらいで実技は常に赤點ギリギリ……つまり、我がクラスの最底辺の績を持つ人。
や、やられた……!
今回の中間試験容は既に実技の講義で予告されていたらしく、そこで大方組む相手をクラス連中は決めていたらしかった。で、普段の講義から恐らく俺と同等くらいに優秀なフィーラにワラワラと群がりフィーラは直ぐにペアを組んだらしい。
フィーラは俺を見てし申し訳なさそうにしているが、同時に俺と戦うこともんでいるらしい。クソがアマが……。
そんなわけで、俺は実技試験……いきなり不利な狀況に立たせられることとなった。先ほどは勝敗の有無より……と答えたが、この実技試験……ペアのどちらかが戦闘不能になれば、その時點で試合終了。つまり、俺がどれだけ頑張っても及第點以下の評価しか得られないということだ。開幕早々にレイモンがやられてみろ……一貫の終わり、學年首席が維持出來ない!
冗談じゃない……。
ふと、視線をじてそちらを向くと実技擔當の貴族講師が俺を見て嘲笑っていた。その直ぐ隣には、同じようにクラスメイトの男子ペアが俺を嘲笑っている。たしか、先日俺を追っかけ回していた男子生徒三人のの二人だ。
この野郎。
俺は苦いものを食べた顔で奴らを睨み……レイモンはそんな俺を見て悲しそうに目を伏せた。
「ご、ごめん……ぼ、ボクなんかとペアで……。リューズくんは、平民なのに學年首席……ボクのせいで績が下がったらっ……ぼ、ボクッ!ご、ごめん……っ!うぅ……」
「ちょ……おいおい、泣くなよ……。レイモン、お前男だろ?男は簡単に泣いちゃアカンって」
「で、でも……」
「いいから……こうなりゃあとことんやってやるさ。俺がお前を守ってやる。だから、お前は自分のことだけ考えろ。自分のできることを考えろ」
的には俺の後ろで頼むから大人しくしていろ。絶対に勝手なことをするな……と、安易に伝えたいつもりだが、レイモンはどこか頬を赤らめて照れながらも「分かった!ボク、頑張るよ!」と力強く答えた。
伝わっているんだろうな……。
で、それから間も無く実技試験が始まった。案の定、俺たちの対戦相手は例の男子生徒達……。
リューズ、レイモンペアVSカリスト、ティアマンペア
お前ら、そんな名前だったのかと思いながら戦いの火蓋は切って落とされた。
やはり……というべきか、開幕早々に『攻撃魔法』の〈三屬〉による遠距離攻撃の嵐が、レイモンに向けて放たれた。
俺は『創造魔法』で質を創造……己の手に白刃の長刀が顕現し、さらに『攻撃魔法』〈強化〉より【ブースト】を発。が青白い魔力のに覆われ、己に超常の力が與えられる。
俺はまず、飛來してきた炎と氷の塊からレイモンを守るためにレイモンの襟首を片手で摑んで跳躍……その場から離する。レイモンの重は見た目通り重いが、【ブースト】狀態ならお手のである。
俺は奴らの攻撃を避けながら、【ファイア】を奴らへ向かって放つ。しかし、奴らは二人組である利點を上手く使って俺の攻撃を防いだ。
奴ら、片方は初級だがもう片方は中級らしい。初級の方が【ディフェンス】を使って味方の盾となり、さらには俺の魔法攻撃をかき消す為に中級の方が『攻撃魔法』を使いながら『無効魔法』の〈解除〉に屬する【キャンセル】を使っていた。
対してこちらは、足手纏いを擔いでの戦闘になる。【ブースト】を外して攻勢に出れば、忽ちレイモンは蜂の巣だ。レイモンを庇って【ディフェンス】を使っても同じことになる。むしろ、俺は『防魔法』の〈回復〉の適がない。けたダメージは回復出來ない。
レイモンを擔いだまま、突っ込んでも同じだ。つまり、今のところ選択肢としては【ブースト】でを強化して奴らの攻撃を避ける以外にない。
「どうだ!調子に乗ったな平民風が!これが格の違いというものだ!」
「分かったらフィーラ様とは今後関わらないと誓え!」
いや、どちらかというと突っかかってくるのは奴の方なのだが……と、そんなことを言っても嫉妬に燃える愚かな貴族は聞く耳持たないだろう。
醜悪醜悪、稽稽。
俺はザッと立ち止まり……瞬時に『付與魔法』〈付與〉の【エンチャント】を発し、己の刀に『無効魔法』の【キャンセル】を付與する。
そして、レイモンへと迫る火だるまを切り裂き、打ち消す。
「き、斬った!?」
対戦相手の二人が驚愕に表を染めるが、分かる人には分かるらしい。はたから見ていたフィーラが、クスクスと笑っていた。
「さてさて、お手並み拝見」
「うっせ……」
ニマニマと変顔するフィーラは、俺の太刀筋をジッと観察している。足の運び、使用している魔法、俺の視線……全てを見かす月の瞳が俺を抜く。
俺はさらに【ファイア】【サンダー】【フロスト】と続いて飛んできた魔法を斬り払い、一歩一歩だが歩を進める。
全く……この程度の力量差、理不盡を乗り越えられなければ平民の俺が魔法使いなるなど夢のまた夢。いくら、績が良くとも周りを認めさせなければ意味がない。飽くまで、績はこいつらを納得させるための材料でしかない。
真に納得させるには、認めさせるには圧倒的な力の差を示す必要がある。だからここは……小細工なしで、ただ力任せに、完無きまでに叩きのめす・・・・・。
「…………っ!!」
俺は一気に地面を踏みしめ、全に力を伝える。レイモンへ向かう全ての攻撃を斬り払い……そして、攻撃の中の一瞬の間隙を見つけて奴らの懐にり込み、その腕を切り落とした。
「いぎぃぃ!?」
「ぎゃあぁぁあああ!?う、腕ぇ!?」
『防魔法』の〈回復〉系統の魔法を使えば、腕を切り落とされた程度なら直ぐに治る。そして、完全に戦意喪失したらしい間抜けな貴族子息達は、俺の前で蹲り、落ちた腕を何とかくっつけようと接合部を激しい痛みの中で繋げていた。かなりパニックしているようで、〈回復〉を使うことに考えが至っていないようだった。
これにて……勝負有りと、実技講師の苦渋の判決が為された。
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