《俺が斬ったの、隣國の王様らしい……》選抜戦第1試合――ウィリアム
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そして……翌日、ついに選抜戦が開幕した。
王立魔法學院の広大な敷地にあるアリーナで開かれる選抜戦……その開會式は盛大に執り行われた。この選抜戦は、今はまだ魔法使いの卵である學生達が切磋琢磨して互いを高め合うことを名目にした一種のお祭りだ。國の一大行事として、多くの屋臺が立ち並び、商人が稼ぎ時だとばかりに奔走する。
選抜戦の選手である俺は……一回戦第1試合ということで、既にアリーナの待機所で準備していた。肘や膝にしっかりプロテクターをに付け、急所を守るための防を裝備する。
王立魔法學院の制服の上に來ているため、々不恰好かもしれないが……まあいいだろう。
やがて、定刻となり……俺は舞臺へと足を進めた。舞臺に近づくに連れて人々の歓聲がより大きく聞こえてくる。そして、いよいよ俺が戦いの舞臺へ上がるとそれは発的なものになり、俺の鼓を震わせる。
『さぁ!皆様お待たせしました!ただいまより、選抜戦一回戦第1試合を始めます!選手の紹介に移りますね〜。まず、この學院では知らぬものがいない我らが生徒會副會長……三年ウィリアム・アルバ・アルベルト様です!』
実況の選手紹介が行われ、ウィリアムにどっと拍手が送られる。ウィリアムを見ると、ウィリアムは特に防をにつけておらず、余裕な笑みを浮かべて立っている。さすがに、去年も參加しているだけはある。
『続いて……今年の選抜戦で異彩を放つは平民出にも関わらず、現在學年首席を獨走する期待の新星!リューズ・ディアーだぁ!』
獨走って……フィーラも同率だろうと思ったが、盛り上げるための演出なのだろう。俺の紹介には王立魔法學院の一部の生徒と殘りの一般客が拍手をしてくれたが、ウィリアムよりはないものとなった。
ふと、観客席の方にフィーラがチラリと見えた。フィーラは小さく俺に拍手を送っており、まるで勝って當然だとばかりの表だった。これでもウィリアムはたしかな実力者……あまり期待されても困るというもの。
さらにミラが見えたのでそちらにも目を向けると、テキラファミリーが揃いも揃って俺の応援をしていた。
おいバカやめろ……ファミリーと繋がり持ってるなんて知られたらどうする。
『では……これより第1試合を開始致します!両者、所定の位置についてください!』
俺とウィリアムは指示通りに所定の位置まであるいていき……ウィリアムとの距離がまる。遠距離魔法なら確実に當てられる距離……初手ははたしてどう出るか。
『では……尋常に……始め!』
実況の合図と共に、まず最初にウィリアムは『創造魔法』を展開し、自らの防をコンマ數秒で構築……そして現れたのは銀に輝く鎧だった。おそらく『付與魔法』の併用で、『無効魔法』〈解除〉の【キャンセル】が掛けられた鎧だ。つまり、炎や氷といった攻撃は無効化されてしまうため無意味ということだ。
俺も合図と共に『創造魔法』で刀を創り出す。
対してウィリアムは、鎧を作った後に『防魔法』を発する。自らのさそのものと、治癒力を高めている。つまり、この時點で二つを同時に継続使用することになる。
『付與魔法』は一度付與してしまえば、解除しない限りその効果を対象に與え続けることができるが……無論、一定の條件が存在する。『付與魔法』で付與できる対象は一つのみだ。無論、『付與魔法』の適……つまり、素質にもよるが大抵の人間は一つくらいしか付與できない。
それはウィリアムにも當てはまるからこそ、『防魔法』の〈防〉系に屬する【ディフェンス】と、〈回復〉系に屬する【リジェネイト】を継続使用しているのだろう。
ここでもしもウィリアムが中級の魔法使いなら、攻撃手段がないとタカを括るのだが……まさか三年の実力者が中級なずもなく……容赦なくウィリアムは『創造魔法』で剣と盾を想像すると『攻撃魔法』の【ブースト】で強化を施し、俺に向かって駆け出した。
ここまでの數々の魔法の併用や発に掛かった時間は……一秒になるかならないか。その速さは並大抵ではなく、鎧やら盾で重くなったも【ブースト】で軽々とした足取りで俺に接近戦を挑んできた。
俺も【ブースト】で能力を強化し、創造した刀で持ってウィリアムの剣をけ止める。
ズンッと重低音の衝撃が走り、僅かながら石造りの舞臺に亀裂が走る。ウィリアムは間を空けず、俺との鍔迫り合いを避けるように距離をとって今度は下から上へ斬りあげる一閃を放つ。
俺は一歩を引いて紙一重の隙間で躱す。ウィリアムはそれを見て薄く笑うと、俺から十分な間合いをとって口を開いた。
「さすがだね」
「いえ。それほどでも」
「僕ももうし……本気を出すよ」
ウィリアムは宣言通り、今までが噓のような速度で俺に接近……舞臺が抉れながら、一歩二歩と高速で俺に衝突する。
キィィィッと金屬と金屬がり合わさる音が會場に響く。ウィリアムは、今度は鍔迫り合いを避けるようなことをせず強引に押し込んでくる。俺は後ろに引いてある左足を、軸足を中心に後ろへ運んでを回転……ウィリアムの前に行こうとする力を利用してウィリアムを前のめりに倒れ込ませる。
「っ!」
だが、ウィリアムは空かさずを捻って勢の悪い狀態から剣を振るう。俺はまたもや足運びにて、紙一重で躱してウィリアムから距離を置いた。
ウィリアムは崩れたバランスをすぐ様立て直し、剣と盾を構え直す。そして、ようやく気が付いたように眉を顰めた。
「遊んで……いるのかい?」
「…………そのようなつもりはありませんが」
今、バランスを崩したウィリアムを追撃していれば確実に一太刀浴びせることは出來た。もしかすると、それで勝負が決まっていたかもしれない。その程度のこと、この數度の立ち合いでウィリアムはじていたはずだ。どれだけ強力な防でを固めても、その隙間をうように刃をり込ませる技が俺にはある。
ウィリアムはその點で、怪訝に思ったのだ。どうして今、攻撃しなかったのかと。
俺としては、まだまだ本気でもない相手を斬るつもりはない。だから俺は目で訴えかける。出し惜しみするなと。
すると、ウィリアムは小さく笑い……そのに纏う魔力のを一層濃くさせる。淡い青の幕が、濃い青へと変化する。
「君がその気なら……僕も全力で相手しよう!はぁ!」
ウィリアムは俺に突っ込むのと同時に『無効魔法』【インビジブル】により、その姿を消す。それは恰も瞬間移したかのような錯覚を相手に與え……俺が【キャンセル】を放った頃には、ウィリアムは俺の側面で剣を振るっていた。
そして俺は――
☆☆☆
生徒會副會長……職を得ることは並大抵ではない。多くの魔法使いの卵達の中から選りすぐりの魔法使いが集まる生徒會……王立魔法學院の生徒らを統括するのだからそれ相応の実力は必要だ。そして、見事下記の上がり……副會長となったウィリアムの実力は疑う余地もなく強い。
ウィリアムは『防魔法』や『創造魔法』の資質が優れていた。守りにられると、誰も彼を傷つけることは葉わない。彼の鎧は、それだけいのだ。まさに生徒會副會長としての意志の強さの表れだろう。そのさを突破できないものは、それより先に進むことを許さないというウィリアムの真。
誰もがウィリアムの勝利が確実だと信じ、所詮は平民の咬ませ犬をどのように倒すのか……それだけが第1試合を見に來た観客達の楽しみだった。
が、
「がっ……!?」
ウィリアムの両腕は肩からなくなっており、傷口からドバドバとが溢れ出る。【リジェネイト】の効果で即座に傷が治癒され、腕も徐々にだが戻りつつある。しかし、両腕となると時間はかかるだろう。
そう、ウィリアムが鎧の隙間をって振るわれたリューズの刀によって両腕を切斷されたのだ。あまりにも速い剣技に、會場中を探しても今の一瞬……何が起こったのかが見えていたのはごく僅かだ。
そのごく僅かの中に、フィーラ・ケイネス・アグレシオはいた。しっかりと、リューズの神速とも呼べる早業をその目に焼き付けていた。
「さすが……」
思わずそう口に出す。
あの神速の一太刀はフィーラですらも避けることができない。あれはもはや、中級だとか上級だとか……そういうこと関係なしに、純粋に剣士・・としての素質だ。故に、魔法使いが剣戟を挑んでもあのように返り討ちにあってしまう。彼はもはや、剣聖の域にいる存在だ。その上で魔法すら極めようとしているのだから、リューズ・ディアーという男は張りだ。
「たしかに……さすがですね」
「……?」
と、フィーラの嘆に続くように……フィーラの隣の席に座った人がそう言った。驚いて、フィーラがその人を見ると……その人は青と赤のメッシュがった肩口で切り揃えられた銀髪のだった。
スレンダーなと、しさの殘る顔立ち……なによりも目立つのはその褐のであろう。
メッシュと同じ青と赤のオッドアイがフィーラに向けられ、フィーラは思い出したように口にする。
「これは……生徒會長エリーザ様」
エリーザ・カマンガ……現王立魔法學院生徒會長だ。つまり、この學院最強の魔法使いということになる。
「生徒會長様もご観覧でしょうか?」
「はい。フィーラ王はどちらの応援を?」
「ウィリアム様に見えますか?」
「なるほど……」
エリーザは苦笑しつつ、ウィリアムの回復をぼけっと突っ立って待つリューズに目を向ける。
「あれはあれは……ウィリアムも舐められたものです」
「リューズくんには……彼なりなり信念があるようですから。あれは舐めているというよりも、本気の相手じゃないと斬れないのだと思います。今のも、おそらくですけれど……『思わず斬った』程度のことなのですよ」
「それはまた……不用な方なんです」」
「ええ、それはもう……」
暫くして、腕が完全に生えたウィリアムは再び防をにつけて剣と盾を構える。リューズはようやくかと刀を構え、仕切り直す。
「全く……僕も舐められたものだね」
「舐めてるのはどっちだ。固有魔法も使わず、それで本気だって?笑わせるな」
固有魔法とは、いくつかの魔法を同時に使用して組み合わせ、自分オリジナルの魔法……まあ、言ってしまえば必殺技みたいなものだ。
中級魔法使いでは、同時に二つの魔法しか使えないために組み合わせがなく、固有魔法は使えない。しかし、上級ともなれば組み合わせは一気に増える。だからこそ、固有魔法が使えるようになるわけだ。
そして、ウィリアムはそれを隠していた。リューズはそれをしかと見抜いていた。
ウィリアムはなるほどと頷き……ようやくその気になったようだった。
「なら……僕の固有魔法を見せよう。それで決著だ。だから、君も今度は本気で……」
「もちろん」
リューズとウィリアムの間で魔力が高まる。もはや盛り上がっていた會場はシンっと靜まり返り、観客は固唾を呑んでこの景を見つめていた。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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