《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》契約と誓約。
――自分の気持ちは固まった。
問題は、自分の気持ちをどうやってアリサ先生に伝えるかだが……。
そう、すでにアリサ先生は俺からのプロポーズをけている。
つまり、再度、アリサ先生に「結婚してください!」と、言うのはおかしい。
俺は、両手で頭を抑え「ああー……。もう本當に、俺ってバカだ!」と、びながら川原の巖場の上で転がり続ける。
自分で自分のした事の重大さが分かるほど、自分が深く考えずに、その場のノリで適當に考えて、適當に答えていたということが分かってしまう。
「どちらにしても、俺のすることは決まっている。きちんと責任を取ることだ! それが社會人としての最低限の禮儀ってもんだ!」
冷たい川の中に顔を突っ込む。
そして、多くのことを考えて熱くなっていた頭を冷やす。
「さて! いくか!」
俺は、自分が起こした問題にケジメをつけるため家に向かって歩いていく。
家までの距離は數分だが、その數分がやけに長くじられた。
シューバッハ騎士爵邸――。
俺は、その正面の玄関の戸を橫にかして家にる。
すると、サンダルを履こうとしていたアリサ先生と視線が合う。
彼は右手に木の杖を持っていた。
彼は一瞬、呆けたあと「アルス!」と言いながら、立ち上がると抱きついてくる。
「どこに行っていたの? すごく心配したのよ?」
涙聲で俺に訴えかけてくる彼の表は、儚く見えて……とてもしい。
それだけに、彼をこれから傷つけるかも知れないという現実は、俺から決意という意志を削いでいくには十分な効果を持っている。
それでも、俺は婚約をするなら、きちんと男らしく自分の意志で彼に気持ちを伝えたい。
自分勝手な一人よがりだって事は分かっている。
それでも……それでも……。
俺は、偶然と勘違いだけで紡がれた縁を利用して、そのまま進みたくない。
婚約というのは結婚だ。
そして結婚というのは契約だ。
俺は、社會人として営業マンをしてきて契約がどれだけ大事なのかを知っている。
いい加減な気持ちで契約した仕事というのは、いい加減な結果しか殘せない。
だからこそ!
俺は、誠実に彼に自分の意志を伝えたい。
その結果が見限られたとしても――。
俺は、その結論をけれてみせる!
「話がある……」
俺は前世の言葉遣いでアリサに話かける。
「――え?」
一瞬、驚いた表を見せたアリサは、「アルス、どうしたの?」と語りかけてきた。
俺は、アリサの言葉に答えず玄関と臺所が面している一室から居間の方を見る。
「お父さん、お母さん……話があります」
「どうしたの? アルス?」
母親が、俺の顔を見て何かを察したのだろう。
俺に何があったのか問いかけてきた。
「わかった。重要な話なんだな?」
「はい」
父親の言葉に俺は頷く。
「アリサ殿。どうやら、息子は貴にも話があるようだ」
父親であるアドリアンの言葉にアリサも頷くと居間には、俺とアリサに父親と母親の4人になった。
狹い部屋だというのに、かなりの人口度だ。
全員が座ったのを見ると俺は正座をする。
「それで、アルス。大事な話とはなん……だと……? それは、何の真似だ?」
「これは、土下座と言います」
「それは、知っている。最上位謝罪をどうして、ここでする?」
「申し訳ありません! 僕は、勘違いをしていました」
「勘違い? 何の勘違いだ?」
「僕は、ずっとアリサ先生とお父さんとお母さんが何に悩んでいるのか知りませんでした!」
「ふむ……」
俺の話を聞いた父親は、思案する表を見せてくる。そして……「続けろ」と話かけてきた。
「僕はアリサ先生との仲を師弟関係……つまり師匠と弟子の関係だと思っていました」
「――何? それは、つまり……お前は、私の問いかけに対しての答えを謀り、アリサ殿に語った文すら噓だった。そう、言いたいのか?」
父親の額に青筋が浮き出た。
一目で怒っているのなんて一発で理解できる。
アリサ先生なんて大きな青くしい瞳から涙を零して「全部、私の勘違いだったのね……やっぱり誰も私のことなんて……」と呟いていた。
そして、母親は「やっぱり! ねえ? やっぽりでしょう! 私の言ったとおりだったでしょう! 小さい頃の好き! 大好きはね! 大きくなったらお母さんと結婚するんだ! ――って言うのと同じだって言った通りだったでしょ! つまり! 小さい頃の好きは本當の好きじゃないのよ! でも、私はアルスが好きだから! アルスもお母さんのことが本當に好きよね!」と、喜びの笑顔をアリサ先生と父親に向けていた。
「どうなんだ! 答えろ! アルス!」
「僕は――いえ、俺は! アリサ先生……アリサが好きです!」
俺の言葉に、父親だけでなくアリサも母親も呆けた表で俺を見てきた。
さて、ここからは俺のターンだ!
「ですから、誤解のまま生じた噓で、そのまま婚約をしている狀況は嫌だ! 本當は、俺が倒れた時に、お父さんとお母さん、そしてアリサが婚約の話をしていたのを、そのままけいれてれば楽だったと思うし、アリサを泣かせることは無かったと思う。それでも、婚約は結婚であり、結婚は契約だと俺は思っています! だから、中途半端な気持ちのままで、そのまま婚約話を進めたくない。俺はアリサが好きですから!」
「そうか……」
父親は両腕を組んで、まっすぐに俺の瞳を見てくる。
俺の父親の瞳を真っ直ぐに見返す。
「なるほどな……、噓はついていないようだな。むしろ、昨日、アリサ殿との関係を問いただした時よりもいい目をしている。ふっ……本當に長したのだな。これだけ急激に長されると親としては、些か寂しいものがあるな……」
父親は一人事を呟くとアリサの方へ向き直った。
すると、父親も土下座をしていた。
「バカ息子の非禮、本當に申し訳ない。今回は、こちらが全て悪い。気にらないようでしたら、このような辺境の村からお帰り頂いて構いません」
アリサは父親の言葉を聞いたあと、俺の瞳をまっすぐに見てきた。
泣きはらした彼の瞳から、彼がどれだけ傷ついたのか手に取るように分かる。
俺は本當に最低の人間だ。
自分の事だけしか考えていない。
人の気持ちなんて、お構いなしに行した、
その結果がこれだ――。
俺には、彼の瞳から目を逸らす資格なんてない。
アリサの瞳を真っ直ぐに見続けること。
それこそが俺の決意の表れであり、贖罪。
アリサと俺は、しばらくお互いの瞳を見つめあう。
そして、気がつけばアリサは、小さく微笑むと父親に「素直な子ですよね? そして誠実な方ですよね? アルスさんが良ければ私を娶って頂けませんか?」と、話かけている。
「本當によろしいのですか? このバカ息子を、それでも支えて頂けるのですか?」
「はい、だって――。彼は、私のことを好きだと。自分の気持ちをハッキリと伝えたいと責任を取りたいと言ってくれましたから……」
「そうですか……」
父親は、アリサの言葉に小さく溜息をつくと、俺の方を睨んできた。
「アルス、今回はアリサ殿が許してくれたからこそ、話し合いで済んだのだ。だが、お前も將來はシューバッハ騎士爵家を継ぐなのだ。お前には200人の領民の命が掛かっているのだ。今後、軽はずみな行や言は控えるように!」
「わかりました」
俺は父親の言葉に答える。
そして、立ち上がりアリサの近くまで寄って彼の右手を摑むと、彼は俺を上目遣いで見ながら「アルス?」と語りかけてきた。
すごい破壊力だ。
「俺は……じゃなくて私、アルス・フォン・シューバッハは、アリサを一生幸せにすると誓う。だから俺と婚約――結婚を前提としたお付き合いをして頂けますでしょうか?」
自分で言っていて恥ずかしいを通りこして、俺は何をしているのだろう? という気持ちが浮かんでくる。
だが――これは俺の契約と誓約だ。
そして覚悟だ!
もちろん、それを彼に押し付けるつもりはない。
一方的な自分への契約。
「はい、わたし……アルスが人するまで待っています。よろしくお願いします」
アリサが、花の咲くような笑顔で俺に語り掛けてきた。
ちなみに、母親はいつのまにか真っ白に燃え盡きていた。
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