《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》アイテムボックス。
「ア、アルス」
「――ん? どうしたんだ?」
フィーナとアレキサンダーの元へ戻ろうとするとジャイガルドが話かけてきた。
振り返ると、神妙そうな顔つきをしている。
「お前、本當に……アルスだよな?」
「何を言っているんだ? 俺はアルスだ。それ以外の何に見えるんだ?」
肩を竦めながらジャイガルドの問いかけに、間を置かずに俺は答える。
相手は子供なのだ。
適當にあしらっておけば問題ないだろう。
それによりも、今の俺に必要なのは村を構している人員と、村人がどのような職についているのか、それと外部への連絡手段と移手段だ。
「まぁ、俺は普段は、あまり家から出ないからな」
「……」
「とりあえず、そんなことはどうでもいいだろう? アレクサンダーとフィーナを待たせているんだから行こうぜ」
俺は、ジャイガルドの手を取り歩きだす。
こんなところで時間を費やしている余裕はない。
二人の元に戻ると、フィーナもアレクサンダーも驚いた表をしていた。
まぁ、アルスの癖に生意気だと暴力を振るってきた人間と、すぐに仲良くなって戻ってきたのだ。
拳で語り會えば仲間になるというのが子供だったはずだが、あまりにも仲直りが早すぎるからな。
まぁ、このへんは喧嘩で勝った方が折り合いをつけて相手を持ち上げれば案外簡単に仲直りできるものだ。
ただ、本當にアルスだよな? と問いかけられた時には驚いたが……。
「ジャ、ジャイガルド……」
「なんだよ」
「アルスの旦那とは仲直りしたので?」
「おう、コイツも今度から俺達の仲間になることになったんだ」
「アルスの旦那は、それでいいんで?」
アレクサンダーがジャイガルドに語り掛けたあと、俺に話題を振ってきた。
俺としても子供同士の狹い世界で天狗になるつもりもガキ大將になるつもりもない。
そもそも、こちらとしてはタイムリミットは魔王復活までの3週間――。
いや、魔王の力がどのくらいなのか想像もできない。
下手をしたら一國が一瞬で焦土になるかもしれないし……。
そうすると2週間くらいで村を捨てて王都に逃げたほうが……。
まてよ?
それなら別の國に逃げたほうがいいのでは……。
やっぱり報は必要だな。
「俺が一番、年下だからな。年長者を敬うのは當然だろ?」
「「「……」」」
3人が無言で俺を見てくる。
何かおかしなことを言ったか?
「なんだか……アルスって雰囲気がすごく大人っぽい……」
フィーナが首を傾げながら俺に語りかけてくる。
やはり、中が47歳の中年だからなのか、あふれ出すカリスマは隠しきれないか……。
「気のせいだ」
「……そう……なのかな?」
フィーナが疑いの眼差しで見てきたが、俺は彼の視線から目を逸らした。
3人に案されて村の中を一通り見回った俺は川原の巖場の上で一人座っていた。
転生してから、川原の巖場が俺の定位置になっている気がする。
俺は懐から羊皮紙と黒檀を取り出す。
「まずは報整理からだな……」
村を見て回って分かったことは、シューバッハ騎士爵が治めているハルス村の人口は242人。
思ったよりも、人口が多い。
産業は、小麥や野菜の栽培。
淡白質などは、川で魚を捕り山でイノシシや熊や鹿を狩っている。
もちろん、全て日本語で書く。
どこで報が洩れるか分からないからな。
「しかし、フレベルト王國はローレンシア大陸南西に位置するとは、アレスの知識から知っていたが……」
隣國3國の報については初めて知ることが出來たのが大きい。
東にヘルベルト國、南にアルゴ公國、そして西には商業國メイビスが存在している。
「一応、シューバッハ騎士爵は、フレベルト王國から騎士爵の爵位を貰っているからな……。他國に亡命するときに王政の國家であるアルゴ公國とヘルベルト國に向かうのは、あまり良くないよな……。そうすると、商業國メイビスが良いじか?」
商業國メイビスは、シューバッハ騎士爵領から西に向かい國境を隔てている山脈を越えれば國することが出來る。
問題は、その山脈の高さが2000メートルほどあることだ。
そして商業國メイビスと、シューバッハ騎士爵の間に存在するカタート山脈には、高さだけではなく魔も巣食っているという話もあった。
おかげで、道がまったく整備されていない。
「こまったな……」
それに問題は他にもある。
馬がシューバッハ騎士爵領には居ないのだ。
大量の金銀財寶があっても商業國メイビスに持ち運びれることが出來なければどうにもならない。
「アイテムボックスみたいな魔法があればいいんがな……」
そんな都合よく行くわけもないよな……。
「アルスくん!」
「……ん? どうして、ここにフィーナがいるんだ?」
巖場から下を見ると、フィーナが下から俺を見上げるようにして「アルスくんに、話をしたいことがあって……」と語りかけてきた。
俺は黒檀を羊皮紙の懐にしまうと巖場から降りていき、フィーナに近づくと「どうしたんだ?」と話かけた。
「――あ、あの……」
「――ん?」
俺は首を傾げる。
彼が俺とどんな會話したいのか想像もつかない。
「あの! ごめんなさい!」
突然、謝られたことに俺は首を傾げることしか出來ない。
そもそも俺の記憶の中には、フィーナというの記憶どころか子供たちと會話したという記憶がないのだ。
ただ、それを言うと不審に思われるかもしれないな。
「気にすることはない。當然のことをしたまでだ」
子供相手だ。
それに、一緒に居るとしても別の國に移する俺にとって2週間程度の付き合いになるだけの相手。
適當に、む言葉を掛けておけば問題ない。
それに、一度でも別の國に移すれば通網も発達してない世界では會うこともないだろう。
「それでも! アルスくんが、狼から私のことを助けようとして魔法を使ってくれたのに……、私……魔法を使うのは魔王やその眷屬、それに魔って教えられていたから、あの時は怖くて、ありがとうも言えなかったから……」
なるほど……。
アルスは、元々から魔法が使えたということか?
それも狼を魔法で退けるほどの力を持っていたと……。
「だって! 私、貴方が怖くて化けって言って――。だって、アルスくん……私達の中では一番気弱だったのに……まるであの時だけは別人みたいだったから……」
「気にすることはない」
「――で、でも! 今日のアルスくん、変だったから! まるで、私達なんて……どうでもいいみたいな……そんな目で見てきたから……」
「……そんなことない」
俺は、彼の言葉に苛立ちを覚えていた。
まるで俺じゃなくて、アルスだけを見ているような言い方に腹が立って仕方ない。
ただ、ここで怒っても仕方ない。
「あ、あのね!」
「そろそろ帰ったほうがいいんじゃないか? 日もそろそろ沈むぞ?」
これ以上、このと話をしているのが辛い。
「わ、私ね!」
俺の中では、もうフィーナのことは、どうでもいいと思っていた所で、彼は川原に落ちていた石を手に持つと、手のひらに乗せていた石を目の前で消して見せた。
「アルスくんに助けられてから、アイテムボックスの魔法が使えるようになったの!」
「……そうか……。フィーナ、しだけ話があるんだが……」
俺はフィーナのアイテムボックスの魔法を見て利用価値があると心の中で微笑んだ。
俺に引け目があるのなら、フィーナは俺に協力するはずだ。
それにアイテムボックスが使えるなら、これ以上便利なはない。
それに魔王の存在は言わなくても、村よりも良い暮らしが出來ると提案すれば、簡単に乗ってくるに違いない。
人間っていうのは利己的で打算的な生きだからな。
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