《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》時のオカリナ
「アリサ――?」
俺は、聲が聞こえてきた扉のほうへと反的に視線を向けていた。
アリサと、話をしたことや、彼に告白したときの事が脳裏に駆け巡る。
その都度、心臓の鼓が早まっていく。
「はぁはぁはぁ――」
――とても息苦しい。
俺は自分の元を摑んで呼吸を整えようとするが、息遣いは早まるばかりで意識が朦朧としてくる。
そんな俺の様子に「アドリアン、すぐに隣の部屋にアルスを連れていけ」と言う、會われたアルセス辺境伯の聲が聞こえてきた。
「アリサに……、アリサに會わないと――」
そう、アリサは魔王を倒すために必要な人だ。
話を通しておく必要がある。
だから――。
そこまで思考したところで、床の上に倒れこむと俺は意識を失った。
いつからだろう。
誰かを信じられなくなったのは。
いつからだろう。
自分の価値観や考えを人に押し付けるようになったのは。
――最初から理解していたはずなのに。
人間というのは分かり合えないということを。
それでも、大切なモノを守りたいと思った。
だから僕は彼と約束した……。
彼が代償を払うことで、僕は――。
頬をでる風が心地良い。
ゆっくりと目を開けると、すぐに目に映りこんできたのは彼だった。
青い瞳は僕を真っ直ぐに見てきている。
その瞳は、どこか寂しげで――。
「ひさしぶりね」
「君は……」
……誰だ?
どこかで出會ったことがあると思う。
でも、どこで會ったかまでは覚えていない。
「やっぱり……全部、忘れてしまっているのね?」
「忘れてしまっている?」
金髪碧眼の子高生くらいのは、寂しそうな瞳を俺に向けてきている。
その彼の瞳を見ていると心が揺れた。
何故か分からない。
分からないが、何かを話さないといけない――違う、何か言いたいことがあったと思う。
でも、それが思い出せない。
「創造主の世界は、どうだったの?」
「創造主の世界?」
「神代文明を作り上げた場所で何か摑めた?」
「――どうして君がそれを……」
「だって…………」
彼の聲が遠のいていく。
聞きたいことは……。
――そうじゃない。
彼に僕は……俺は……言わないといけない。
自分の名前を呼ぶ聲が聞こえてくる。
ゆっくりと瞼を開けていくと「アルス、アルス」と言う音も耳と通して聞こえてきた。
この聲は……俺の父親――。
「お父さん……」
視界がハッキリとしたところで、俺は自分の名前を呼んでくる父親を見ながら語りかけた。
俺の様子に、父親は安心したのか大理石の床の上に膝をつく。
「ここは……、それに何か夢を見ていたような――」
誰か、親しかった人と話しをしていた。
それが誰かは分からない。
もしかしたら、俺がアルスと記憶や知識を統合する前の、アルスの記憶だったのかもしれないが、詳しいことは何も分からないが――。
「そ、そうだ……」
俺は、寢臺から立ち上がる。
「お父さん、アリサは?」
「アルセス辺境伯と話しをしたあとに魔法師団員が寢泊りする宿舎に戻ったようだ」
「そう……ですか――」
父親の言葉に、俺は一瞬ホッとした。
それと同時に、俺はアリサと今後の関係についてどうやって構築していけばいいのか、まったく分からなくなっていた。
魔王を倒すことを重視するなら、一週目と同じようにアリサと同じように関係を作ればいいだけだ。
――でも、それは俺を裏切ったという現実から目を背けることに他ならない。
「アルス。私は、今後のことをアルセス辺境伯と相談してくるから、し離れるが大丈夫か?」
俺は、父親の言葉に頷く。
正直、今は自分の考えを纏めることに集中したい。
父親は俺の言葉に頷くと頭の上に手を載せてきた後、「あまり無理はするなよ」と語りかけてきた後、 部屋から出ていった。
おそらく、全てをアルセス辺境伯と両親には話をしているから、俺が倒れた原因も父親やアルセス辺境伯も察しているのだろう。
「どうすればいいんだろうか……」
一度、自分を裏切った人間を許すことが出來るのか?
裏切った人間に対して俺は、笑顔で話すことが出來るのか?
たしかに、以前とは違ってアルセス辺境伯は、俺の味方だ。
だが、それは同じ結末を求めているから味方というわけであって、打算が無くなれば敵になる可能だって――。
「こんな考えではダメだ」
俺は、誓ったんだ。
どんな手を使ってでも魔王は殺す。
そしてフィーナや、お母さんを今度こそ助けると――。
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