《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》決戦への布石(3)
――翌朝。
久しぶりの実家という事もあり、俺はぐっすりと寢ていた。
「アルス、そろそろ朝よ」
やさしげな聲で俺の名前を呼んでくる母親の言葉に俺は、ゆっくりと瞼を開ける。
まだ、朝早いのかが睡眠をしているのか起きようという気分が沸いてこない。
「まだ、眠い……」
「ふふふ、そうよね! まだ眠いわよね! ほら! アルベルト! 私が言ったとおりだったでしょう?」
「――う、うむ……。辺境伯様から、アルスを連れて來いと言われているのだが――」
「アルセス辺境伯様から?」
「そうだ。さすがに……」
「大丈夫よ! 私が後で息子を連れていくって言えば大丈夫だから! ね!」
「わ、わかった……」
父親は、大きく溜息をつくと部屋から出ていく。
俺は父親の後ろ姿を見ながら眠気に負けて瞼を閉じようとすると、母親が橫になってきた。
そして「あーるーすーぅ」と母親が、貓で聲で俺を抱き寄せてくるが眠気に負けて瞼を閉じる。
すると母親が俺の頭をでながら強く抱きしめてきた。
俺の中に融合したアルスの記憶なのか母親の溫もりが、とても心地いい。
「――んっ……」
何時の間にか寢てしまっていたのか目を覚ますとすでに日は傾きかけているのか部屋の中は暗かった。
そして、俺の隣には母親が寢ていた。
「これは……、所謂、寢坊なのでは……」
そういえば、アルセス辺境伯が俺を待っていると父親が言っていた気がする。
すると、俺が行かないと父親は上司に怒られる部下のごとく責められるのではないだろうか……。
と、いうか……、そもそも俺が行かないと軍として何をしないといけないのかが分からないはず。
すぐに、アルセス辺境伯に會いにいく準備を整える。
幸い説明に必要な資料は、アルセス辺境伯の天幕にあるということもあり用意はすぐに済んだ。
「さて、いくか……」
俺は居間を通り臺所を経由して家を出る。
外に出ると、太は頭上を通り越してゆっくりと山影へ隠れようとしていた。
「まずいな……」
一、どれだけ寢ていたか考えもつかない。
とりあえず、アルセス辺境伯の元へ向かわないと。
騎士爵邸から川の方へと下っていく。
すると川原には何人もの兵士の姿が見えた。
バケツで水を汲んでいる人が多いことから、もしかしたらと言う嫌な予が膨らんでくる。
まぁ、怒られるかも知れないが向かうとするか。
何かあれば父親が手助けしてくれるだろう。
「アールース!」
川を渡ろうとしたところで後ろから抱きしめられる。
「お母さん、いまは遊んでいる場合では!」
「分かっているわ。アルスの寢顔があまりにもね? 可いから起こせなかったの! これはお母さんの失態よね? 私からアルセス辺境伯様には、きちんと伝えておくから!」
「……そうですか」
まぁ、母親が何とかしてくれるなら、それに越したことはない。
ただ、あのアルセス辺境伯が――アリサを使ってまで魔法で寢かせた男が、時間に遅れた原因である母親を許すとは、とても思えない。
そう考えてしまうと俺としては母親には、アルセス辺境伯と會ってもらいたくないんだが……。
「久しいな、ライラ。健勝であるか?」
考えこんでいると俺は何時の間にか持ち運びされていたようで、軍が陣地を展開している広場の前でアルセス辺境伯と出會ってしまった。
「はい、今回はシューバッハ騎士爵領の問題にご盡力くださりありがとうございます」
母親は、俺を両脇から抱き上げたまま、頭を下げた。
目上の貴族相手にずいぶんな挨拶の仕方である。
「よいよい。それよりも災難であったな?」
「いえ、息子が頑張ってくれていますので……」
「ふむ……」
どうやら、母親とアルセス辺境伯は知り合いらしい。
それも相當な……。
「アルスよ、今回はライラに免じて遅れたことは不問に致すが次回から気をつけるのだぞ?」
「……はい」
「息子を苛めないでください! アルセスさんは、それだから奧さんに逃げられるのですよ!」
「――ちょっと待て!」
アルセス辺境伯が、母親の言葉に取りす。
どうやら、アルセス辺境伯にも弱點がある模様。
これはチャンス。
辺境伯をゆするネタになりそうだ。
「アルス、良い事教えてあげるわね。シューバッハ騎士爵家の先代當主――私のお父様の妹は、アルセス辺境伯から求婚をけていたのよ? でも、々とあって想を盡かして王都の法貴族に嫁いでしまったのよ」
俺は々の部分に興味を持った。
貴族同士の求婚は、家同士の結婚であり、そう簡単に破棄できるものではない。
なのに、他の貴族に嫁ぐということは、社界で他の貴族が納得する理由が必要なはず。
「お母さん、々というのは?」
「分かった! 分かったから!」
アルセス辺境伯が慌てて俺と母親との會話を中斷させようと言葉を紡いできた。
そんなアルセス辺境伯を、母親は微笑みながら見た後「ね? 遅れても大丈夫だったでしょう?」と、俺に語りかけてきた。
どうやら、シューバッハ騎士爵家は々と謎が多いようだ。
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