《異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します》治療、そして自己紹介
「うぅぅぅ!...ああぁぁぁっ、あ、はぁ、はぁ...うあぁっ!あああぁぁっ!」
「頑張れ!頑張れ、ユミナ!」
「あああっ...はぁはぁ、あっ、あああああああっ!」
「おぎゅああぁぁぁっ!おぎゅあああっ!」
「やったぞユミナ!の子だ!」
「おぎゃあああぁぁぁっ!おぎゃああぁぁぁっ!」
「はぁはぁ...ええ、私にも見せてくれない?」
「ああ。...ほら」
「はあぁぁぁ、可い」
「おぎゃあああぁぁぁっ!おぎゃあああぁぁぁっ!」
「ねえ、名前はどうするの?」
「そうだなあ....ユキナ、何てどうかな?」
「ユキナ...ユキナ。良いわね。ふふ、あなた今日からユキナよ」
「おぎゃあああぁぁっ!おぎゃああああぁぁぁっ!」
これがユキナの誕生である。ユキナの母、ユミナは人間の男とをし、ユキナを産んだ。ユミナは人間とをして出來た子がどのような存在なのかを知っていた。しかしそれでもユミナはユキナを産んで育てようと決めたのだ。
「ユミナ!お前、忌子を産んでいたのか!」
「忌子は我々エルフの里に災いをもたらすとされているの忘れたか⁈」
「今ならまだ長老様も許してくださる。さ、その忌子を渡しなさい」
「いやです!私はこの子を、ユキナを育てます!」
ユキナがい頃に見た景。夫が7年で帰らぬ人となったのでユミナはユキナを連れて里へ帰ったが、ユミナはユキナが産まれていることを隠しながら育てていった。しかし5年後、事件が起きた。里のエルフたちがユミナが忌子を産んでいたことを知り、ユミナのところへと集まって來たのだ。
そこからはユキナにとって地獄であった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ....」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ...」
ユミナとユキナは逃げていた。里のエルフたちがユキナを捕まえようと家の中へとって來てユキナを捕まえたが、それをユミナが何とか振り払い裏口から出て森の中を走っていた。
しかし森の中で同じエルフから逃げることはほぼ無理である。追ってはすぐ近くまで來ていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、きゃっ ︎」
「ユキナ ︎ ︎」
だが全く家の外に出ることがなかったユキナが暗闇で視界の狹い森の中を逃げ続けることが出來ず、木のに足を取られてしまい転んでしまった。
「...ユキナ、來なさい」
そう言ってユミナは転んでけないユキナの手を強引に引いてユミナは走り続ける。しばらく行くとし高めの丘に出た。ユミナはユキナを背負って丘を慎重に降りて行く。下には流れの速い川があるので、ここで落ちてしまえばまず助からないだろう。
丘を降りると小さいがが掘られていた。
「これは...子どもたちが作ったのかしら?でも、今はここしかないわね」
ユミナはの中へとる。の大きさは大人2、3人はれるくらいの広さで木箱は3つと中くらいの樽(たる)が2つある。木箱には數個の果実がっていたのでユキナに食べさせる。水はの近くにオクラの葉があったので、折って水が救える形にして川の水を救ってユキナに飲ませてからユミナも飲んだ。
オクラの葉とは紫花(あじさい)の花ほどの大きさの葉である。
しして息を整えたユミナは意を決して口を開いた。
「ユキナ、あなただけでも逃げなさい」
「...え?」
「私が里のみんなを惹きつけておくからその間にこれをに付けてこの川に沿って逃げなさい」
惹きつける
そう言ってユミナは幻を見せるペンダントを渡した。
「...でも」
反論しようと顔を上げたユキナをユミナは靜かに強く、しかし優しく抱きしめた。
「お願いユキナ、お母さんからの最期のお願い」
「お母、さん」
ユミナとユキナは互いに涙を流した。そしてユミナがユキナからし離れ、涙を流しながらもユミナはユキナの目を見ながら言った。
「良いわね?」
「....うん」
そう言ってユキナはユミナに背を向けて川に沿って去って行った。
「元気でね、ユキナ」
ユミナはユキナの姿が完全に見えなくなってから里の方へと走り出した。
______________
ユミナと別れてから數時間、ユキナは途中で魔獣に出くわしてしまい武もなければ戦う力もないユキナは森の中へと逃げることしか出來なかった。
「はぁ、はぁ、はぁ...っ、はぁ、はぁ、はぁ」
「ギュラガガガガガッ!」
ユキナの背後にはティラノサウルスに似た魔獣、デュランがユキナを追って來ている。
ユキナがこの魔獣に出くわしてから然程(さほど)時間は経っていないのだが、ユキナは數時間ろくな食事もしておらず水のみだったので力がもう殘っていない。
今は火事場の馬鹿力で逃げているようなものなので、いつ走れなくなってもおかしくない。
「はぁ、はぁ、はぁ、きゃっ ︎」
走って逃げるのに夢中で周りへの注意が散してしまい、小石を踏んでバランスを崩して転んでしまった。
「あ、足が」
「ギュラガガガガガッ!」
腳を抱えているユキナのすぐ側にまで來ていた。
「ん...あっ!逃げな、いと」
「ギュラガガガガガッ!」
痛みに耐えながら立ち上がって逃げようとしたが、數歩歩いたところ再び倒れてしまった。
「ギュラガガガガッ!」
「んっ ︎」
ユキナを食べようと口を開いて徐々に近付いて來る。ユキナは目を閉じて覚悟を決めるしかなかった。
「ギュラアアアアアアアッ ︎」
ドォンッ
何か重いが倒れたのか地響きが起こった。ユキナがゆっくりと目を開けると目の前には誰かが立っていた。
「大丈夫ですか?」
その人はこちらを振り返って屈んで手を差しばしてきた。その人はフードをかぶっていて顔は見えないが、聲からしてだと思える。
「ら、ないで!」
「 ︎」
差しばしてきた手をユキナは払いのけた。
「失禮しました。お気にってしまったことは謝罪します」
「...助けても、らったことに、は謝して、る。ありがと、う」
「いえ、私はただ通りかかっただけですので」
「それ、じゃあ、っつ ︎」
立ち上がり別れを告げて立ち去ろうとしたが足に激痛が走り、その場に倒れてしまった。
「足を怪我したのですか?失禮しますよ」
「 ︎ら、ないで ︎っつ ︎」
「々腫れていますね。この近くに小さな村があります。そこで診てもらいましょう」
「いらな、い」
「そうはいきません。失禮します」
「きゃっ ︎」
フードを被った人はユキナをお姫様抱っこする。
「は、離し、て!」
「暴れないでください!」
その時、フードを被った人の周辺の草木が揺れた。不自然に発生した風によって。
「 ︎...」
「あ...すいません。つい使ってしまいました」
フードを被った人はし慌てたがすでにユキナは気を失っている。
「まあこちらの方が運び易いので良しとすることにしましょう。彼には悪いですが」
そう言ってフードを被った人はユキナを抱いたままどこかを目指して進む。
「そろそろ正午ですね。急がないといけませんね」
そう言って歩くスピードを上げた。
「しかしなぜエルフがこのようなところに。エルフの里はここからかなり離れているはずですが」
そう言いながら倒木を軽々と飛んで避ける。すると著地した際の揺れでユキナの首から幻を見せるペンダントが垂れ下がった。
______________
「ん...んんー...あれ?ここは?」
ユキナは目を覚ますと知らないところの知らないベッドの上で寢ていた。
布団を退かし立ち上がろうとする。
「早く、逃げなさい、と、っつ ︎」
足を地面に著いて立ち上がろうとしたが、左足に激痛が走り倒れてしまった。見ると足には包帯がしてあったが今のユキナにはそんなことよりも逃げることの方が重要なのだ。
ギィィィィィィィ
「目覚めたかね?」
するとどこからか扉の開く音と低い男の聲がユキナの耳に屆いた。
ユキナは辺りをキョロキョロ見回して何か武になりそうなを探す。するとユキナが寢ていたベッドのすぐ隣に小さな棚がある。その棚の上に注が置かれていたのでそれを急いで手にれる。
「何じゃ?転んだのか?怪我人なんじゃから無理するでない。ほれ」
「ら、ないで ︎」
そう言ってユキナは注を屈んで手を差しばしてきた60代くらいの白にを包んだ白髪で白髭を生やした男の腕目がけて注を刺した。
「ぐっ ︎」
「うっ....」
「待ちなさい!」
痛がっている男の橫をユキナは足の痛みを耐えながら逃げようとしたが腕を摑まれ逃げられなくされた。
「ん、ん、離し、て」
「怪我人が何を言っておる。さっさと寢ないか!」
「んがっ ︎」
男はその見た目よりも力が強く、ユキナの手を引いてベッドへと叩きつけるように寢かせた。
「全く若い者は禮儀を知らんな。ほれとっとと寢ておれ」
「 ︎」
そう言って男は白のポケットから注を取り出して摑んでいるユキナの腕に刺し、中にっている薬を流し込んだ。
「う...な...にを...すぅー、すぅー...すぅー、すぅー」
「はあー。面倒なのを押し付けられたようじゃな」
そう眠ったユキナに掛け布団をかけながらため息をつく男。
ユキナが再び目を覚ましたのは男に薬を注されてから8時間後である。窓から見える外の景は先ほどユキナが目覚めた時とは打って変わってはすっかり明るくなっていた。
次にユキナが気が付いたことは「寒い」だった。
「ん...んー、ううぅ...早く逃げ、ないと」
ユキナはまだはっきりとしない意識の中、自分のにかけられている掛け布団を退かす。
橫にある棚の上にユキナが持っていたペンダントが置いてあるのでそれを手に取り、まだ痛む足の痛みに耐え、汗だくになりながらもユキナは扉を目指して1歩1歩進む。
早くここを去らなければ里のエルフたちが追ってくると思い違いを抱きながら。
扉までようやくあと1メートルほどと行ったところでふと橫を見ると高さ3メートルくらいの姿見に映る自分の姿が目にる。
「 ︎」
全汗だくになりながら苦しい顔でこちらを見ている一糸纏(まと)わぬ自分の姿が目にる。
のあちらこちらに傷版や包帯が巻かれている。捻って今でも痛む足にも包帯が巻かれている。
しかしユキナにとってそんなことはどうでも良い。普通ならば自分が全であれば驚き、を何かで羽織ろうとするだろう。
だが人とほとんど接することのなかったユキナは自分は自分が全でいることに驚きはすれどもあまり恥ずかしくはない。なのでユキナは特に気にすることなく扉を目指して再び歩き始める。
ユキナは息を切らしながら何とか扉までくることが出來た。時間にしてみればほんの3分ほどなのだが、ユキナにとってはその何倍も時間が経過したように思えた。
ユキナは重い扉を殘り僅かな力を使って開ける。
扉を開けた先には長い廊下が続いている。ユキナが開けた扉は奧の扉から見て左の3つ目で、1番奧の部屋だったようだ。向かい側も同じ構造だ。
壁には奧の扉近くまで手すりが取り付けられている。ユキナはそれに捕まって重たくなったを無理矢理起こし、奧の扉を目指して進む。
廊下の長さは20メートルくらいで扉から3メートルくらい離れたところで手すりは終わっている。
ユキナは何度もその場に倒れては起き上がって1歩、また1歩と進み続ける。無理にをかし続けているので傷口が開き、が滲み、木の廊下には點々と痕が殘る。それでもユキナは逃げようとする。
ようやく扉の前に著いたユキナのからは完全に開いてしまった傷口から大量のが流れ落ち、ほぼ全が塗れ狀態だ。
「はぁ...はぁ...早く、逃げな、いと...」
そう言ってユキナは扉を押すが全く力がらず、ユキナは意識が薄れていき膝が崩れその場に膝を突いてから倒れた。そして次第にユキナの意識は闇へと沈んでいった。
3分ほどしてユキナが開けようとした扉が開き、あの老人が驚いた顔でってきた。
「おい!嬢ちゃん ︎大丈夫か⁈しっかりせい ︎」
倒れているユキナを抱きかかえて大聲で呼びかけるが返事が返ってこないことに男の表がさらに険しくなる。
「これは急がねば!間に合うてくれ」
男はそう言って倒れているユキナを擔いで醫務室へと連れて行く。こちらの世界にはあまり手といったことはないので基本は薬だけである。
男はユキナを大きなベッドの上に仰向け寢かせると綺麗な布を綺麗な水で濡らしのを吹く。それが終わると男は、何やら薬が大量に並んでいる棚から數個の薬と包帯を持って戻ってきた。
「この薬はあんまし若い者にはきついんだが、頑張ってくれよ」
そう言って男は緑の瓶の蓋を開けて中に大量にっている黃のクリームを次々と傷口に塗っていく。
「ん ︎」
「耐えろよ、嬢ちゃん!」
意識を失っているユキナにそう勵ましの言葉をかけながら男は薬を塗っていく。
「...ん...んん...はや、く...逃げな、いと... ︎」
目を覚ましたユキナは再び逃げようとしたがすぐに異変に気がついた。
「、が...かな、い」
必死にこうとするが首から上と指がしくだけで、他はほとんどかない。
「何で?早く逃げ、ないといけな、いのに」
ギィィィィィィィ
必死にこうとしているユキナの耳に鈍い扉の音が聞こえた。
「そろそろ栄養剤をっと何じゃ、目を覚ましたのか。全く、怪我人なんじゃから大人しくしておれ」
「ん!ん!...何でけ、ないの?」
「わし特製の痺れ薬じゃ。には響かんから安心せい」
「何てこと、するの!私は早く、逃げないと、ダメなの!」
「....理由はどうあれ、わしはおまえさんを頼むと言われたんじゃ。だから嬢ちゃんをこれ以上無理させる訳にはいかん」
「そんなこ、と私には関係、ない!早くその薬、を解いて!」
「ダメじゃ!」
「.....」
「.....」
2人はしばらくの間睨み合っていた。
グギュルルルルル
ユキナの腹の蟲が大きな音を立ててこの沈黙に広がった。ユキナは里を出てから約6日間數個の木の実しか食べておらず、あとはずっと逃げ回っていたのでかなりの限界もきていた。
「そういやあ栄養剤しか摂取してないもんな。なんか食うか?」
「いらない!」
「ふん、そうか」
ユキナの本気で嫌そうな顔を見て男は部屋を出て行った。
「...ん!、ん!ダメ、やっぱり、けない」
ユキナはくことが出來ないのを認めざるを得なく逃げることを諦め、捕まることの覚悟を決める。
「...お母さん...ごめんなさ、い」
ユキナは涙を流して母親に謝罪をする。
ギィィィィィィィ
それからも母親への謝罪をしていると再び鈍い扉の音が聞こえた。
「テリスタンでいいかなって、何で泣いているんだ?」
男が両手で土鍋のようなを持って近付いてきたがユキナの泣き顔を見てし驚いた顔でユキナを見つめる。
「べ、別に泣いて、なんか...それにいら、ないって言ったのに」
涙を拭きたくてもがかないので拭くことが出來ない。
すると男が悪戯小僧の顔になる。
「ああそうじゃな。だからこれはわしが食うために持って來たんじゃ。おまえさんの前で食べるためにの」
「....」
ユキナは聲には出さなかったが思ったことはただ一つ、「最低だ」である。
「あー、ん、んん、んん、ん...ゴクン。あー、味しい」
「.....」
こんなじで男はどんどんスプーンで土鍋の中の野菜やや卵を赤ちゃんが食べるような離食くらいにまで小さくドロドロにしたを食べまくる。
グゥーギュルルルルル
「やっぱり食いたいんじゃろ?」
「そ、そんなのい、らない」
「そうか。じゃああーん」
「あ」
「ふふっ」
「う!」
ユキナが強がりでいらないと言うと口を大きく開けて食べようとした男の姿を見て、思わず聲を出してしまった。
すると男はまたしても悪戯小僧の顔をしてユキナの方を振り返る。
「ほれあーん?」
「ん...あーん、んん、ん。ゴクン。...味しい」
「それは良かった。ほれ」
「うう...あーん、ん、んん、んん...」
こんなじでユキナは頰を赤らめながら男にご飯を食べさせてもらい続け、土鍋にっていたテリスタンを完食し、コップ1杯の水をゆっくり飲み干す。
「結局全部食べおって。これだけ素直なら良いのじゃがなあー」
「ううぅぅぅ」
ユキナはさらに頰を赤らめる。今すぐ布団で顔を隠したいにも関わらずがかないのでどうしようもないので余計に恥ずかしい。
「わしはトロール。村のみんなからトロジーと呼ばれとる。おまえさんは?」
「...ユキナ」
「そうか。よろしくの、ユキナ」
「ん...」
ユキナは首を橫にずらして男、トロールから視線を外す。それでもユキナの頰は赤いままである。
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