《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》5話 純度100の悪意で癒します
異世界生活2日目。目覚めの朝はリディアさんの腕の中。初夜ってわけではなく、単に抱き枕になっていただけだ。上質なクッションもなかなかむふふだ。
そして昨日決めた通りに、俺は働く。そう、冒険者協會での初仕事だ。
「今日からみなさまといっしょにはたらかせていただくカナデといいます。これからよろしくお願いします」
俺は今、協會の職員室で行わらる朝禮にて職員へと自己紹介をしていた。どの職員も目を瞬かせ疑っていた。だって「こど、も?」とか「ちょっと、アレ雇って大丈夫なの? 犯罪じゃない?」とか言ってるし。安心してください! この世界じゃ人してるらしいですし犯罪じゃありません! 合法です!
まあ俺がいくら言おうとも疑いは晴れそうにないから、リディアさんが代わりに言ってくれる。
「カナデちゃんはしっかりと人しています。昨日魔道で私と支部長同伴で調べましたから間違いありません」
それでもまあ半信半疑といった合だが、とりあえずその場は保たれた。
そのまま朝の打ち合わせやらなんやらをして、そんでもってようやくお仕事の時間だ。
と、思っていたのだが。職員に囲まれてしまった。
「かわいいー。ねぇ、カナデちゃんっ呼んでもいい?」
「ど、どうぞ」
「きゃー! 著せ替えしたいっ!」
「それは休日にどうぞ」
めるめる……じゃなくてまれるまれる。いやぁ、予想はしていたけどここまでとはね。これはみなさん、職場に癒し、もとい萌えが足りてませんね? いいでしょう! この神にも選ばれた萌えのエキスパートたる俺が、みなさんに癒しを與えましょう! 
てか、あなた達仕事始めなくていいの? 後ろにいる男職員が恨めしそうにこっちを見てるよ? 仕事しろって。
「はいはーい開けて開けてー」
パイの森の奧からやってきたのは、つい姉っ! と言いたくなってしまう雰囲気を持つ茶髪のだった。パイの森の大樹とも言える立派なものをお持ちのは俺に用事があるようで、森をかき分けてきた。
「はじめましてカナデ。あたしはホール責任者のフレンシス。あんたの上司ってわけ。よろしくね」
「はじめましてですフレンシスさん。カナデです。至らない事があるかと思いますが、よろしくお願いいたします」
「ははっ! 禮儀正しいね。じゃあ早速、制服に著替えてもらおうか。更室に置いてあるから著替えてきな」
「わかりました」
と言って向かうのは男子更室だ。だって、男の子だもんっ! の子みたいだし男の娘だけど、男の子だもんっ! 
などとふざけてみたものを、當然だが男子更室にる前に止められた。だから俺は、誤解を解くために言ってあげるのだ。間違いを教えて差し上げるのだ。
「あ、わたし男なので」
それはそれは大きな反響がありました。ええ、パイの森以上の。
仕方がないので子更室にって(許可は貰った)、むしろれられて著替えた。もちろん用意されていたのはホール擔當子用制服だ。これについては勘違いではなく、俺が頼んだことだ。
だって男子制服だと一番小さくてもブッカブカになるし、何よりも子用制服の方が俺には似合う。別とかそんなの関係なく、やっぱり似合うモノを著るべきだと思うのだ。
著替え終えて、一番小さいサイズの筈がそれでもなお若干袖が長い制服を著て(下はスカートだから違和はない、むしろばっちり)、ヘレンさんのいた場所に戻った。
何やら聞きたそうな顔をしているが、なんか頭が痛そうだが、俺は元気に挨拶をした。
「し大きいですけど、大丈夫そうです」
「あんた、更室の件というか別をわざと隠していたね?」
「はい! びっくりしましか?」
「したわ! そりゃするわ! あんた意外と格悪そうだね」
「何を言いますか。わたしは純度100の悪意を以って癒しを與えますよ! ええ、それが一番大事です」
「最悪じゃないか!」
「えへへ」
「可く誤魔化した! ?」
姉がツッコミキャラだとは……。いい見本になる。それ以前に案外この世界でもセルフ漫才が続くことに驚く。
おかげで思わずかなりの素を出してしまった。いかんいかん。プリティーでキュアするんだからねっ! 
「まあいいよ。仕事さえしてもらえればね」
「そこは任せてください」
「期待しておくよ。で、やることは簡単。注文を取って伝える、配膳する、片付けるだ」
「はい、了解です」
「あとは、そのなりだから言っておくけど、セクハラには気をつけな。特に酔っ払い連中にはね」
「きゃーこわーい」
「が急に消えたね」
「怖しっ」
「怖くなさそうだね。はぁ、あんたといると疲れる。さっさと行ってきな。やりながら覚えてくればいいから」
「了解でーす」
あー楽し。フレンシスさんとはいいお友達になれそうだ。
てこてこ。石タイルの床を歩いていると支給され履いているブーツがいいを音鳴らす。若干大き過ぎる制服の袖を捲り上げ、注文がないか小さい育館ほどのホールを見渡す。で、新人だからなのか、とあるテーブルに固まっていた冒険者と思われる集団にお呼ばれした。
「嬢ちゃん新人さんかい?」
「はい。カナデと言います。よろしくお願いしますね、冒険者様」
「ははは! 冒険者『様』か!かわいいお嬢ちゃんだな」
「いいじゃねぇか。様付けってのもよ」
「様付けられるような高尚な仕事してねぇだろうが」
「ちげぇねぇな! ってことみたいだお嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんじゃりません。しっかり人してます。それに、カナデです」
「わるいわるい。で、カナデちゃん。注文いいいかい?」
最初に話しかけてきた男だ。もちろん了承する。
「はい」
「ビール!」
見事にシンクロ、ハモったな。誰か一人ひもりにいっただろ、明らかに一人聲が高かったんだけど。注文で遊ぶな。蕓織り込むな。
「6つですね」
「おうよ」
「わかりました。々お待ちください」
頭を下げてその場を去り向かうのらカウンター。カウンターといっても依頼の注カウンターではなく、わかりきっているだろうけど、酒蔵になりつつある廚房のカウンターだ。
そこでビールをけ取り(魔道でキンキンだ)、再びあのテーブルに戻る。6つ同時に持つことくらい出來るのだ。が、それだと可さに欠けるので、2つずつエッセらホイと三往復をした。
「ビール6つです」
「おうありがとな!」
「座っていきなよカナデちゃん」
ポンポンと、一人が自分のを叩いて俺を招く。……だから人してるんですがね。とはいえ流を持つことは大事だし、しくらい話しをしたい気もする。しかしながらまだ仕事を始めたばっかだし、サボるのも気がひける。……人もないしいっか!
「じゃあ失禮しまーす」
「うお」
俺は近くにいた冒険者の膝の上に座った。
酒くさっ! ? え? なんで? まだ酒渡したばっかだよね? なんでもうこんなに臭えんだよ。
が、それを表に俺ではない。ぽてんと座れば癒す俺。だからこそ今は言わん。もうこれだけで金取りたいくらいだ。
「本當に座るとはなぁ」
「いいじゃないですか。どちらにせよ、座るところなかったですし」
「まあ俺は役得なんだけどな。にしても軽いなぁ。ちゃんと飯食ってんのか?」
「食べてるんですけどね。全く大きくならないですよ」
「それはそれでかわいいと思うぜ」
「ああ本當にな! ボンキュボンもいいけど嬢ちゃんみたいなのもいい」
の話じゃねぇよ、長あるいは重の話しだよ。それ俺が男じゃなかったら鉄拳モノだし、セクハラだし、ロリにそれを言ったらマジで変態じゃねえか。男だけど。
「ちょ、カナデちゃんの目付きが」
「え?」
おっと。あまりにも酷いのでつい蔑みの視線を向けてしまった。いけねいけね。ドSキャラも好きな奴はいるけれど、これは接客。そこまでディープなキャラだと人気が偏るし、もっとメジャーに可く行かなければ。
「ところで、皆さんはお仕事には行かないんですか?」
「行かない行かない。金はまだあるし、酒が飲めなくなったら適當に行くよ」
「行き當たりバッタリが俺たちなんよ」
「だな!」
ガハハと笑ってはいるが、はて? ということはぐーたらここに居座るつもりか? チャージ料金を取りたいがここにはない。客回りが悪くなるだけだし、こいつらがここにいるとめんどくさそう……。なんとかして追い出せ……仕事に行かせ……行ってもらわなければ。
うーん。何かいい方法はないものか。
「カナデちゃんみたいな可い子もいるしな」
「目の保養になるな!」
エロオヤジどもめ。だがまあ、つまりは俺って結構気にられてね? まあ可いから當然だが。
ここは、懐したはいいけど付き纏いが鬱陶し時に使った別のことにやる気を向けさせたあの手法でいこう。
「ねえねえ冒険者様」
「ん? どしたカナデちゃん」
「頑張ってる方が、カッコいいな」
「え?」
「頑張ってる冒険者様達が見たいな……」
し恥じらって言えばあら不思議、冒険者様達が次々と立ったではありませんか。
「カナデちゃん」
「どうかしましたか?」
「俺、行ってくるよ迷宮」
「俺もだ!」
「おうよ」
「わあ素敵! 頑張ってください!」
「おう!行くぞ野郎供!」
「おお!!」
酒を一気に飲み干しダンッと置くと、凜々しい顔つきで出て行った。その様はやや異質な雰囲気を放っており、ホールでし視線の的になっていた。
「いってらっしゃーい。ーーふぅ、行ったか」
「あんた、何したのさ」
手を小さく降って見送りをしていると、いつの間にかフレンシスさんが立っていた。呆れた顔をしているが何かしてしまっただろうか?
「あ、フレンシスさんお疲れ様です。って、何をしたって失禮な。ただかっこいいところが見たいですーって言っただけですよ」
「それで働くのかいあいつらが? 無労働で有名な奴らだったんだがね」
「まあそこはテクニックっやつですよ」
「本當に怖いねあんた。まあ仕事は大丈夫そうだしね、このまま続けておくれ」
「了解です!」
俺は元気よく返事をした。してまたしても「お嬢ちゃんいいかー」と言われたので、「カナデですよー」てな合で接客をしに行った。
その日、異様に依頼の注率が高くなったのは余談だ。
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