《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》4話 健気で清楚な街娘なのです
メトカーフ家の屋敷は街のし外れた所、柵で囲われた場所にある。俺も何回か通る機會があったが、流石は領主の屋敷、凄く大きかった。日本じゃ見かけない西洋風屋敷だったし、し憧れがある。
とまあ、何故こんな事を話しているのかと言いますと、現在俺はメトカーフ家屋敷の見える場所で見張りをしているからだ。
「寒みぃ」
晝間は暖かいとはいえ、朝の冷え込みは凄くし服裝が薄かった。うう、早く出てこいよアレン。
「大丈夫?」
「リディアさんは大丈夫なんですか」
「うん。これくらいなら慣れてるから。だからーー」
ムギュッと抱かれた。人形の抱き上げられる。溫かいしらかいけど、しかし、リディアさん結構力持ちなんだなぁ。俺よりも全然腕力がある。
「むふふ、あったか〜い」
「それはよかったです」
頭におかれたリディアさんの顔はきっとふやけているのだろうが、それもここまでだ。
「リディアさん、出てきましたよ」
「うん、だね」
門が開きそこから出て來たのは質の良い服にを包んだアレン。側には執事も控えており、近づくことは出來ない。
「カナデちゃん、出來そう?」
「とりあえずやってみます。『我寫すは理想の萌えなり』」
し距離はあるが、おそらく視認さえ出來れば俺は理想変化をすることが出來る。まあ確証のないことなので、今こうして確かめている訳だが。
そして、何よりも最大の目的なのが、アレンの理想がどんなものなのかを知るという事だ。
に隠れてバレないように『萌え』を発した俺は、支部長の時同様むくむくと長した。いつもの服だと破れてしまうので、あらかじめ大き目の服を著ている。
「出來たね」
「はい、これがアレンの理想ですね」
「だけど意外だね。あいつ派手だからもっとこう派手な子が好きなのかと思った」
「理想っていうのは自分とは程遠いものですからね。驚くこともありませんよ」
「そうだね。じゃあ、これに似合う洋服を買いに行こうか」
「はい。作戦の決行日は明日。今日は念に準備しましょう」
そして俺とリディアさんは闇夜に紛れて、じゃなくて、朝日に照らされて街へと躍り出た。
そんな紆余曲折ーーストーキングとかショッピングーーを経た翌日、俺は今、開戦を控えてリディアさんと監視をしていた場所に再びいた。
因みに俺、変化は解いているが、対アレン用裝は纏っています。
この件、つまりはハニートラップ作戦なのだが、この作戦に參加するのは俺だけじゃない。お察しの通り、リディアさんも參加している。これはまあ俺のお目付役っていうのと、重要な案件なのでリディアもという支部長命令だ。
だから俺とリディアさんはこれも勤務で、服買って味しいものを食べてなんかをしているけど、これが任務で。まあ何が言いたいのかというと、晝間っからお酒を飲む優越ってこんなじなのかなってことだ。最高っ!
「カナデちゃん準備はいい?」
「はい。慣れてますから」
「慣れてるんだ……」
苦笑いされた。
そりゃ慣れてますよ。買いの時、かわいく寄っていくらまけてもらったと思ってるんだ。祭はほとんど奢ってもらえたし金を使わずに堪能してくらいだ。
相手には俺に貢がせ、俺はかわいさで癒しを與える。まさにwin-winで健全な関係だ。
「それはともかくとして、昨日渡したネックレスは持ってるね?」
「はい。ここに」
まだペッチャンコだから取り出しやすい元から、翠をした小さな結晶が1つ付けられたネックレスを取り出した。
これはリディアさんから貰ったもので、なんでも俺を守るためのものらしい。
「危ない時はすぐにそれを握りしめてね。私の持つ親石に反応が來るようになってるから」
「はい」
不安に顔を染めるリディアさん。えぇ、そんなに不安? 作戦容的にそこまで危険な事はないんだけど……。別に暗殺するわけでもないし、だったら大丈夫だろう。そもそもアレンが會うのは俺であって俺ではない理想ーー架空の存在だし。元特定はされんのです。
「大丈夫ですよリディアさん。そこまで危険な事はしませんから」
「そうなんだけど、そうじゃなくて……。カナデちゃんがあいつに汚されてしまうと思うとね」
「汚されるって……」
「きっと直ぐにるだろうし肩を抱いてくるよ! 気をつけて。ううん、気をつけなくても私が絶対に止めるから!」
「やめてくださいね……」
ホント。リディアさんの過保護化が進行している。いい雰囲気になるならいいし、それに、アレンの求める屬のする反応ならそれとなく回避できる筈。
フンスフンスと俺よりも、というか俺とは違う方向に気合いがっているリディアさんを橫目に門に目をやる。毎日同じ時間に出て來るわけじゃないだろうから、気をぬくにも抜けない。
何事も初めが肝心だ。出會いが肝心だ。第1印象に勝ることなど、それこそ半年とか長期に渡るものしかない。一発勝負で、ここが最初の勝負どころ。
「來たっ」
いつの間にかリディアさんも意識が戻っていたようで、考え込んでいた俺はその言葉で現実に戻された。
「カナデちゃん」
「わかってます。『我寫すは理想の萌えなり』」
さてと、行きますか。
みるみるうちに昨日と同じ姿に変化していく俺。それと同時にだぼだぼだった服もフィットして、しっかりと著こなしていく。
「じゃあ行ってきます」
らかな笑顔を浮かべて目線が近づいたリディアさんに言った。もう、役にるのだ。
リディアさんも頷いてくれたところで、俺ーー私はアレンの方へと向かって歩いた。……これだと決闘しに行くみたいだな。まあ私の手にはというか腕の中には決闘には似つかわしくない、リンゴーーみたいな果でいっぱいの籠が抱かれているんだけど。これがベタだけどまだ有象無象な私という理想にアレンの意識を向かせるきっかけだ。
一歩一歩まる距離。まだ、まだ早い……。20メートル、10メートル、5メートル。今だ! さあ、ア◯デ◯ー賞獲りに行くぞ!
「あっ」
わざとリンゴ(みたいな果ってめんどくさい)を1つ落としそれ慌てて拾おうとして籠をひっくり返す。漫畫とかでよくありそうなシチュエーションだけど、よくあることなら不自然ないだろう。……まあ、ないとは一概には言えないけど。大丈夫だ。
その証拠にほら、アレンもこっちを見て近づいてきた。好きのアレン、っぽいがいれば近づいて來るのは自明の理。
「大丈夫か」
「は、はい」
「手伝おう」
「い、いえ。そんな申し訳ないです」
「気にするな」
「ありがとうございます」
思いの外ぐいぐい來るな。まあこれもまだ予想の範疇。
その後落としたリンゴを籠に集めた。そこで手と手がれ合って、なんていう展開まありだが今回は出會うだけ。あくまでも私という理想を認識させる事が目標だ。だからまだそれはあざとすぎる。
地面につけていた膝部分の服の埃を払って立つ。
「本當にありがとうございました」
私は深く禮をした。もちろん笑顔は忘れずに。風が吹いて髪が舞った。
「あ、ああ」
ふっ、どもったぞ。このまま、
「どうかされましたか?」
私はぐいっとアレンに近づいて、目を覗き込むようにした。するとアレンは今までの反応とはうって変わって顔を逸らした。
私はそれに気がついているし、だからそう顔を赤くしてこう言うのだ。
「す、すいませんっ」
「気にするな」
と、気丈に振る舞ってはいるがアレンもし恥ずかしそうだ。アレンの目の前にいる私はそう、アレンの理想の姿なのだから。
シルクのようにらかな、薄い素の金髪は背中までび、時折吹く風にゆらりと揺れる。整った顔には2つの青目がきらりと強く輝き、真っ直ぐさを垣間見させる。背丈は男としてはし高いくらいのアレンの肩ほどで、は普通だが確かならかさがある。そしてそんな姿にアレンは清楚という屬を求めた。
私は、アレンの理想である私は、清楚で健気な街娘なのです。
「では、私、急ぐのでこれで失禮します」
「あ、し待ってくれ」
「すいません! 本當にありがとうございました!」
俺はそう言ってその場を去った。後ろにはアレンのあっというけない聲がしたが、気にしない。
アレンから離し、あらかじめリディアさんと決めておいた待ち合わせ場所に向かった。そして、抱きつかれた。
「ゲフッ」
「大丈夫!? 何もされてない? よかったよー!」
「リディアさん、ギブ、ギブです」
若干の絞め技を決められた俺はなんとか抜けだした。
「ご、ごめんね」
「いえ、心配されるのは嬉しいです」
「そ、それで。首尾はどう?」
「上々です。完璧でしたね」
「そっか。じゃあカナデちゃんの計畫通り、明日はまた接だね」
「はい」
そう、これはまだ作戦の第1段階。まだまだお前の復讐はこれから……じゃなくて、ハニートラップはこれからだ。
まあ、どちらしても最低だな。
6/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
8 193【WEB版】王都の外れの錬金術師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】
【カドカワBOOKS様から4巻まで発売中。コミックスは2巻まで発売中です】 私はデイジー・フォン・プレスラリア。優秀な魔導師を輩出する子爵家生まれなのに、家族の中で唯一、不遇職とされる「錬金術師」の職業を與えられてしまった。 こうなったら、コツコツ勉強して立派に錬金術師として獨り立ちしてみせましょう! そう決心した五歳の少女が、試行錯誤して作りはじめたポーションは、密かに持っていた【鑑定】スキルのおかげで、不遇どころか、他にはない高品質なものに仕上がるのだった……! 薬草栽培したり、研究に耽ったり、採取をしに行ったり、お店を開いたり。 色んな人(人以外も)に助けられながら、ひとりの錬金術師がのんびりたまに激しく生きていく物語です。 【追記】タイトル通り、アトリエも開店しました!広い世界にも飛び出します!新たな仲間も加わって、ますます盛り上がっていきます!応援よろしくお願いします! ✳︎本編完結済み✳︎ © 2020 yocco ※無斷転載・無斷翻訳を禁止します。 The author, yocco, reserves all rights, both national and international. The translation, publication or distribution of any work or partial work is expressly prohibited without the written consent of the author.
8 119ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~美人ヴァイオリニストの橫顔、その陰翳が隠す衝撃の真実
ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生シリーズ6作目です。 兄は……本當は俺のことをどう思っているのだろう? たとえ半分しか血がつながっていなくても、ずっと優しくしてくれた。 その意図に裏なんてないと、ずっと信じてきた。 でも、今はもう真実がわからなくなってきた……。 優しかったはずの異母兄が、本當は自分を疎んじていたことを知った藤江周は、ある日、義姉の口から自分の出生の秘密を知らされることになる。 なんとしてでも義姉を兄と離婚させ、本當に好きな男と結ばれるようにしてやりたい。 そう考えたが、現実は思うようにならない。 そんな折、義姉の実家が経営する溫泉旅館『御柳亭』が廃業の危機に追い込まれていることを知る。なんとか経営を立て直すことができないだろうかと、周が和泉に相談したところ、知り合いの會計士を紹介してくれる。 その會計士は旅館従業員の中に橫領犯がおり、その不正が経営を圧迫していることを突き止めるが、真相に迫るにつれ、命を狙われるようになる。 一方そのころ、宮島の紅葉谷公園で白人男性の他殺體が発見される。被害者は結婚詐欺師として捜査2課がずっと追っていた人物だった。 警察は詐欺被害者の內の誰かが犯人だと考え、捜査本部を設置するが、判明している詐欺被害者達には全員、アリバイがあった。
8 131俺の得能は「平凡」だった。
この世界には1000人に一人「得能」を持つものが生まれる。 「得能」すなわち得する能力のことだ。サッカーが圧倒的に上手くなる得能や足がめちゃくちゃ速くなる得能、種類は様々だ。 その得能を所持して生まれてきたものは高校から得能を育成する學校、「得能育成學校」に行くことになる。 俺、白鳥伊織はその一人だった。だがしかし! 俺の得能は「平凡」であった。 この話は平凡な俺がある出來事で成長する話。
8 149あなたの未來を許さない
『文字通り能力【何も無し】。想いと覚悟だけを武器に、彼女は異能力者に挑む』 運動も勉強も、人間関係も、ダメ。根暗な女子高生、御堂小夜子。彼女はある晩、27世紀の未來人から大學授業の教材として【対戦者】に選ばれる。殺し合いのために特殊な力が與えられるはずであったが、小夜子に與えられた能力は、無効化でも消去能力でもなく本當に【何も無し】。 能力者相手に抗う術など無く、一日でも長く生き延びるためだけに足掻く小夜子。だがある夜を境に、彼女は対戦者と戦う決意をするのであった。 ただ一人を除いた、自らを含む全ての対戦者を殺すために。 跳躍、打撃、裝甲、加速、召喚、分解、光刃といった特殊能力を與えられた対戦者達に対し、何の力も持たない小夜子が、持てる知恵と覚悟を振り絞り死闘を繰り広げる。 彼女の想いと狂気の行き著く先には、一體何が待っているのだろうか。 ※小説家になろう、の方で挿絵(illust:jimao様)計畫が順次進行中です。宜しければそちらも御覧下さい。 https://ncode.syosetu.com/n0100dm/
8 183あの日の約束を
人はとても不安定で不確かな存在だ。同じ『人』でありながら1人1人に個性があり価値観の相違があり別々の感性を持ち合わせている。 十人十色。この言葉は誰もが知っている言葉だろう。同じ人間でも好きなこと、考えていること、やりたい事は皆別々だ。 あるところに1人の青年がいた。彼は幾度となく失敗を繰り返していた。どれだけ努力しても変わらない自身に苛立ち、焦り、絶望し、後悔した。 しかしその度に支えてくれる人たちがいた。辛い時に側にいてくれる家族、何も聞かずいつものように明るい話題を振ってくれる親友、不慣れな自分をフォローしてくれる仲間。そんな優しい周りの人たちに言葉では表せない感謝を感じていた。 これは1つの願い……1つの願望だ。自身のため、周りの人たちの支えを忘れないために彼は心の中の想いを一冊のノートに書き並べる。いつかその想いを言葉にだすことを思い描いて。自分自身へ、そして自分を助けてくれた人たちへの約束を。 しかしある日、彼は願いを果たす前にこの世を去ってしまうのだった。 これはそんな青年の葉わなかった願いをある少女が受け継ぎ、果たすために日々を奔走する物語である。 堅苦しい概要はここまで! 最初の注意事項でも觸れていますがこの作品が自分が初めて書く小説1號です。 まだまだ失敗や思い通りにいかないことも多いので今後投稿済みのエピソードに修正や作り直しをすることがあるかもしれません。 內容こそ大きな変更はしないものの言葉遣いや文章そのものなど、表現の仕方が大きく変化する可能性があります。 それでもいいよ! という方は是非ゆっくり見ていってください(。・ω・。) ちなみに自分はコメントを見るのが好きなのでどんどん書いちゃってくれて構いません。 厳しい意見を書くも良し、コメ投稿者同士で會話をするのも構いません( ´∀`) 他の人同士の會話を見るのも楽しみの1つなのでどんどんどうぞです ( ・∇・)
8 166