《職に恵まれた年は世界を無雙する》俺の実力
今日は決勝の日。辿り著くのが早すぎてまだ実がしない。張のせいか、いつもより早く目覚めてしまった。時刻は4時半、開始時刻は8時。対抗戦中の鍛錬は認められている。暇だったので、軽く運をするために、街の外へ出た。そういえば、明朝は外へ出るべからず、というり紙がギルドにってあった気がする。その理由は分からないが、気になるので外へ出ることにした。廻を起こさないよう注意しながら扉を開ける。誰もいない付を通り過ぎる。俺が見た景は、晝の賑やかな様相とは打って変わって、人気は無く、街全に高濃度の霧が存在した。
森で魔狩りついでに魔法を試すことにした。森へと続く道は、前が見えないほど霧は濃い。ふと、俺は気が付く。森に邪悪で巨大な魔力をじる。確かかどうかは分からないが、そんな気がする。人々を見下し、畏怖させるとしたら、このような魔力の持ち主でないとできないだろう。俺は、朝の冷え込んだ気溫もあってか、冷や汗が頬をつたる。
「なんだこれは……!?」
思わず口にしてしまうほど、相手の存在は大きかった。相手の存在に圧倒されて、その場に立ち止まっていると、その相手にし距離を置いて話しかけられた。
「そこに誰かいるのですか?いたら返事をしてください。」
俺はこの聲に聞き覚えがある。……秀義か?いや、でも…。迷っていても仕方がない。秀義が強いならばただそれだけ。友には支障がない。それに、こんなに強くなっているんだ、一緒に冒険したりするのは楽しそうだ。
「誰だ!」
俺が聲を発した瞬間、凄い勢いで秀義と思わしき人が駆け寄ってきた。
「…!やはり、カイでしたか!お久しぶりですね。それにしても、隨分強くなったな。」
秀義は基本、誰に対しても敬語だったのだが、俺にはし敬語が混じっているものの、タメで話してくれるようになっていた。そのせいで、すこし々しい所もあるが。
全く……秀義のやつ、元気なかったくせにめっちゃ元気じゃねぇか。いや、何日前の話だったかな。それより。
「それはこっちのセリフだ。なんだよその禍々しい魔力は!今の今まで何があったんだよ。」
秀義はしの間、考えて。
「ああ!この魔力は、け継いだものです。」
俺は眉間に皺をよせる。俺のが正しければ、おそらく―
「それは、この世界の魔王だ。なんとですね、魔王は寂しかったらしいんですよね。ほら、こいつが元魔王のヴァルガリアですよ。そして、現魔王が僕だ。」
俺は思わず息を呑んだ。恐怖からか?それとも、張か?いや、どちらも違うな。今、俺が抱いているのは、単純に俺の心を鷲摑みにするほどの興と興味である。
「へぇー、そうなのか。ところで、何をしにこの街へ?」
俺は今にも腕試しをしたいという闘爭心を無理やり抑え、次の話題をくり出した。
「特に要はないな。強いていえば、カイに會いに來ました。あとは……いえ、なんでも。」
俺?この街にいる報をどこから仕れてきたんだ?
「あぁ、ギルドニュースを見てここへ訪れたんだ。」
ん?
「ギルドニュースなんかあったか?」
「ステータス畫面の右上に四角のアイコンらしきものがあるんだけど、それをタップすると見れるぞ。」
ステータス畫面ってれたのか!てっきり見るだけのものだと思っていたが、意外と便利だな。
「ネットもあるのか。どんな記事が取り上げられていたんだ?」
待ってましたという顔でこちらを見つめてくる。
「やはり一番目についたのは、カイだな。見れば分かるよ。」
俺はちょっと都合がわるい。あまりステータスは開きたくないんだよなぁ。咄嗟に、『理明化』を使い、ギルドウォッチを隠す。
「悪い、ちょっとギルドウォッチ置いてきちまったから、今教えてくれ。」
先ほどとは違った冷や汗が頬をつたる。
「え?さっき、腕にあったよ…うな?気のせいか。」
こちらをチラッと見て、微笑んだ。
「そうだな。まず、カイは対抗戦に出場してるだろ?新種の魔法とか勇者の再來とか々と書いてあるよ。」
「そんな事が!?補正かかりすぎだろ。ちょっと魔法使っただけだぞ。」
秀義は目をぱちくりさせ、「ふっ」と笑った。
「そうやって、鈍いところとかカイらしい。以前と変わらずで良かったよ。僕はもう行くよ。カイは勇者。僕は魔王なら、いずれ決著をつけないといけない時が來るかもね。」
そう言って、秀義は踵を返し、森の奧、霧の奧へと消えていった。あっという間の出來事だった。秀義が魔王になったのは非常に都合がよかった。これで心置きなく戦える。ブルッ、とが震えた。汗をかいたせいか、余計に寒くじる。とりあえず炎魔法を活用して、熱風をに纏わせた。
「はぁ〜、あったまるな。」
そこで、1つ疑問が脳裏をよぎる。
俺は、どうやって『理明化』や炎魔法を意識せずに使えたのだろう。
ここで考えても落ち著かない。一旦、部屋に戻ることにした。部屋に戻ると、廻が起きており、部屋中を歩き回っていた。
「カイ、急にいなくなるから心配した。」
俺が扉を開けたと同時に、廻が詰め寄ってきた。
「ごめん、ちょっと試したいことがあったんだ。結局やれてないけど。」
「そっか。怪我してないなら安心。また寢るね。」
廻はそう言ってベッドに橫になると、すぐに寢てしまった。
「うーん、一応レベルを確認するべきか?無雙してみたいってのは確かだが…。そろそろ新しく職にもつきたいし、レベルだけ見とくか。」
ヴォンという音を立てて、目の前にステータス畫面が現れる。そこには。
レベル ∞ムゲン
と、書かれていた。
「わかってはいたが、無限って……ありえないだろ、普通。スキルも見ておきたいが、まぁ大丈夫だろ。」
大丈夫と思った理由は一つ。戦っている最中に気づいたことがある。それは、攻撃系の技なら魔法や理関係なく、生み出すことができるということ。ただ、付與魔法や回復魔法はある程度、知識がないとダメなようだ。おそらく、『攻撃創造』のようなスキルがあるのだろう。前の戦いで使った『絶壁封印』、『命存放棄』はオリジナルだ。『炎獄拳』は、似たような魔法があるらしい。
「暇だし、ギルド行ってジョブつきにいくか。そういえば、廻にもギルドウォッチ持たせないとな。國の時必要らしいし。」
決まったとなれば、即行に移す。
俺は、廻をゆさゆさと揺らしながら、「廻、ギルド行くぞ。」と、言う。いつもならすぐには起きないが、寢始めて數分しか経ってないため、すぐ起きてくれた。
「んぅ?ギルド?行く。」
寢起きで重そうなを素早くかし、ささっと出かける準備をする。
「まだ決勝まで時間あるし、廻のギルドウォッチ作りに行くぞ。」
こくっ、と頷き、部屋を出る。扉を開けた瞬間、見知らぬ人が部屋の前に立っていた。そいつは、一瞬驚いた顔をすると『瞬間移』でどこかへ行ってしまった。だったか、男だったか。見分けがつかないほどの中的でしい顔だった。得の知れない人のことを考えても時間の無駄だ。気にすることなく、ギルドへ向かった。ギルドは、酒場でもある。俺の予想以上に今日は盛り上がっていた。外からでも中のどんちゃん騒ぎの音が聞こえてくる。なかなかにりにくい。こんなことを言っていてはことが進まないのでし遠慮気味に中へる。すると、俺の顔を見た冒険者たちは、先ほどまでの騒音とは打って変わって、驚くほど靜かになった。
「おい、あれって……。」
「だよな、魔法がも涙もないやつだろ?」
なんか……々と言われてる。流石に傷つくぞ。俺にも思いやりや慈悲はあるぞ。そんな輩の言葉を無視して、オルナの元へ向かう。あれ、オルナって一日中ギルドにいるのか!?聞いてみるか。
「あの……。」
「はい、なんでしょう!カイさん!」
満面の笑みをこちらに向けてくる。これには俺も頬が緩む。
「もしかして、オルナって一日中ギルトで働いてる?」
「??それがどうかしたんですか?」
人間の常識が通用しないだと!?
「人間じゃないですよね。」
「まぁ、私純のエルフなんで1ヶ月は寢なくても大丈夫ですよ?」
し、知らなかった。エルフだなんて。エルフといえば、超がつくほどの長生きで中には不老不死もいたり。耳が長かったり。エルフの的特徴である、長い耳はオルナには存在しなかった。理由を聞こうかと思ったが、耳にある傷跡のようなものを見てからその気が失せた。おそらく、過去に相當辛い思いをしてきたんだろうな。これは流石に聞けないな。
「エルフだったのか。それより、この子のギルド登録をお願いします。」
「かしこまりました!10萬DGになります!」
金が必要なのか!?知らなかったぞ。
「俺の時は金必要なかったよな。」
「ああ!それは海希様がVIP客として指定されているからですよ!本來ならば、大金が必要なのですが、いかんせん未來を守る勇者様ですからね!サービスしない訳にはいかないのです!」
ふふん!と、を張って言葉をどんどん紡いでいく。
「そ、そうなのか。じゃあ優勝したらまた來る。」
また周囲がざわめき始めた。「優勝宣言しやがった!」「余裕だなぁ。」「だが、相手はあいつだぞ、きついだろ。」次々と言葉が発せられる。その中で気になる発言があった。俺は1人の男に迫る。
「おい、今日の決勝の相手は誰だ。教えろ。」
外見からしてひ弱そうな人だ。し強くいえば教えてくれるだろ。そう考えた俺が甘かった。
「あ?俺はこの國でもTOP10にる魔法使いだぞ。誰にもの言ってやがんだ。立場を弁えろ!」
流石の俺でもこれはイラッとくるものがある。俺は小回りが利かないタイプだし、無難に勝負でも仕掛けるのが一番の策だろう。。
「あっそ、じゃあ俺と勝負して、俺が勝ったら報を貰おう。」
「へぇ~!この俺が勝ったら、俺にその武をくれよ。」
「いいだろう。移するぞ。」
どうせ、俺が勝つし。
オルナが実況しようと、こちらに移してくる。俺は無理をしてしくないので遠慮することにした。オルナは、「せめて観戦だけはさせて下さい!!」これの一點張りで、気持ちを揺るがすことは出來なかった。今回、彼には魔法の実験になってもらいたい。とてつもない威力の魔法が一帯を埋め盡くすだろう。オルナに怪我はさせたくない。五重防ファイブバリアをオルナにだけ張っておくか。他の男どもはいいだろ。
「早く仕掛けてこいよぉ~。まさか怖気付いたとか?はっは、ねぇなぁ~!俺が勝つし?ぱぱっと終わらせるぞ~!『イグニメトゥオ』!」
凄い轟音が響く。鼓が死ぬので、『聴覚拒絶』をオルナと俺に発する。今戦っている名も知らぬ男も耐え切れないのか耳を塞いでいる。…………アイツ馬鹿だろ。まぁいい。『聴覚拒絶』が出來たってことは、防系の魔法なら創造できるってことだ。存在するかもしれないが、それはそれでいつの間にかスキルが手にっていたということで、得じゃないか。そうと決まれば…だな。
「ハハハッ!!!これで終わりだァァァァァ!」
俺がこんなチンケな魔法で沈むはずもなく、俺が張った防壁で完全に威力は0に等しかった。
「なんだと!?この俺の魔法をたった1枚の防壁で!?」
まぁ……予想通りの反応だな。次はこちらの番だ。
「なんだ、大したことないな。これでTOP10?はっ、笑わせてくれる。」
トドメをさすために、とりあえず煽る。煽る。煽りまくる。さすがの相手も最初は耐えていたが、耐えきれなくなったのか、連発で々な屬の魔法を直徑1mほどの玉にして撃ってくる。俺には効かないというのに。この防壁はただ防するためだけのものじゃないんだ。これは、相手の魔力を吸収し、放出する防壁面魔法だ。だいぶ、俺の防壁にダメージが蓄積されただろう。これを、相手にぶっぱなす。自分の魔法で自滅をう。うむ、ウザイやつにはぴったりの祓い方だな。
「さぁ、そろそろ魔力切れなんだろ?威力が落ちてきてるぞ。もうめんどくせぇから、これで終わりな。」
相手も防を張る。耐えられるかなぁ。まぁ無理だろうな。俺は、防壁である、『魔力吸収壁ドレインバリア』を掌の上に乗るほどの小さな球狀にする。それを、相手に投げる。相手は當然それを攻撃してくるだろう。だが、おみとうしだ。事前に防壁を展開しておいた。これで壊されることなく、相手にたどり著ける。球狀のそれは、俺を包んだ時のように相手を包む。相手は壊そうと必死に攻撃している。だが、逆効果だな。さらに、ダメージが蓄積され、自分に帰ってくるだけだろう。俺は、指をパチンっと鳴らす。と同時に、蓄積されたダメージが相手を蝕んでいく。當然、それに耐えられるはずもなく、相手は意識はあるものの、に力がはいらないようだ。場に靜寂がやってきた。靜寂を壊したのは、オルナの拍手だった。
「わぁ!やっぱり海希様はお強いですね!激です!」俺と戦った相手を見て、紙に何かを書き出した。そして、それを相手の額にって、告げる。
「あなた、ガジー・モンド様は、1ヶ月間のギルド出り止を與えます。準備が調いましたら、すぐにお帰りください。」
そう、ギルドにはギルドならではの法律的なものがある。
その8、ギルドで戦いを申し込んだ場合、負けた方には1ヶ月のギルド出り止を命ずる。
とある。ギルドで金を稼いでるものにとっては、まさに命取りだ。俺には関係の無い話だ。
「それより、海希様。この方のギルド登録もそうですが、他にまだ用件はありますよね?」
さすがは、オルナ。長年、ここで働いているだけある。察力がかなり優れていると見た。
「あぁ、そろそろ新しくジョブにつきたいと思ってな。」
オルナがぎょっとした顔で尋ねてくる。
「もう300までいったんですか!?す、すごいですねぇ…。まぁ、そういうことならこちらへ案しますね!」俺は、前の更新の時と同じ部屋に案された。一度れば部屋の分析が完了し、張から開放されるのだが、この部屋は分析以前に部屋そのものが張の素だ。謎の仕掛けが施されたこの部屋。『鑑定』を発しても分からないことはたくさんある。これは、『鑑定』のレベルにもよるだろうが、異界特有のはごく一部しか鑑定することができない。そういうことは『鑑定』のレベルを上げてから考えるとして。
うん、やはりを抜かれるのは慣れないな。不良時代はを見るのなんて當たり前だったのだが、俺も丸くなったな。そう考え込んでいると、オルナが前回と同じように言う。
「では、お手元のプレートへギルドウォッチをはめ込んでください。」
また、カチッと気持ちの良い音がする。スクリーンに映し出されたのは、一つだけだった。それは、テイマー。所謂、魔使いだろう。一つしか映し出されなかった理由は考えられる。おそらく、勇者は理全般を。賢者は魔法全般を扱うジョブとなっているのだろう。最強職だな。だが、テイマーは魔法のようで魔法ではなく、自の人柄が試されるのだろう。つまり、テイマーには、魔を使役するだけと、魔が者にんで使役されるの2パターンがある。當然、後者の方が、魔の力を発揮しやすい。推測だが、きっと自分のレベルより高い魔は使役できないだろう。
「テイマーですか!なるほど、理と魔法をコンプした海希様は魔を使役する力だけしか殘りの能力がないのですね!」
オルナのこの言い草、やはり最強職に就いてしまったな。困ることは何一つないんでいいんですけどね。
「テイマーについては説明されてませんでしたよね?でしたら、この《テイマーの魔導書》でも読んでおいてください。海希様ならすぐマスター出來ますよ!」
期待を抱いてくれるのは嬉しいが、俺はそれを裏切る形になってしまうだろうな。たしかに、は好きだ。は人の面を見るという。好きなのに、嫌われていた。全く懐いてはくれなかった。當時はとても居た堪れなかったが、もう慣れた。
「あぁ、全力を盡くすよ。」
俺は、オルナからもらった魔導書を持って、その場を後にした。
部屋の前まで戻ってきた。道中、また何かしら起こると思っていたが、全く何も起こらなかった。々と考えて、気づいたことがある。
俺は確か、龍央の部屋を借りてるんだよな…。龍央ってどこで寢ているんだ?外で寢ているわけないしなぁ。まぁいいか。そろそろ外が賑やかになる時間だ。そういえば、顔を洗っていなかったな。そう思って、廻を座らしといて、洗面所へ向かう。中にろうと、ドアノブに手をかけた瞬間、中からき聲のようなものが聞こえてくる。今までに聞いたことのないような不気味な音。とても低く、唸るような聲。その奇妙さに、背筋が凍る。恐る恐る、ドアノブを回し、扉を開ける。悪霊だった場合の時のために、右手には『解呪 phase2』を溜めておく。
深呼吸をした後、扉を勢いよく開ける。気づかれてからでは遅い。俺は、そこに誰がいるかを確認せずに、魔法を放った。俺の右手から放たれるり輝く文字が相手に纏わり付く。眩しすぎて相手を確認出來ない。結果を待つ。り終えたあと、そこに居たのは、先ほど話題に出ていた龍央だった。さらに付け足すと、酒の飲みすぎで、完全に潰れている。
「……俺を驚かせた罪、でけてもらう。覚悟しろ!」
1発魔法をぶちかまそうと思ったが、ここは部屋の中だ。被害のことを考えると頭が痛くなる。ということで、魔法はやめだ。怒りが抑えられないので、とりあえず蹴ることにした。傍から見れば、ただのイジメだな、これ。さて、これからどうするか。まだ時間はあるな。龍央は洗面所でうずくまっている。そうだ、せっかくテイマーになれたんだ、森に行ってその能を試そうかな。…………さすがにもういないよな。俺は意を決して再び森にることを決めた。
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