《村人が世界最強だと嫌われるらしい》理不盡な戦爭 9
「ねぇ、ファイアさん、本當に大丈夫かな?」
『心配するのも分かる。だが、烈毅は大人しく待っててくれと言った。なら、あいつを信じるのも、弟子の務めだ』
「そうだけど……」
「まぁまぁ。ルノが心配するのも分かるわ。でもさ、あいつが殺されるなんて萬に一つも無いわ。安心して待ちましょ!」
「……うん、そうだね!」
――それは約三十分前に遡る。
「……決めた。ちょっくらメルクリアに潛してくるわ」
「えぇ!?」
烈毅の突然の一言に、一同は聲を揃えて驚愕の表をして聲を上げる。
「あああ、あんた何言ってるか分かってるの!? 殺られに行きますって言ってるのと同じ事だよ!?」
「いや、変裝はするよ……それに、ちょっと気になる事があるからさ」
「気になる事?」
「ああ。今回ばかりは、お前らは連れてけない。言い方は悪いけど、俺一人の方が々ときやすいからさ」
「そうね。それは一理ある。だけど、本當にバレない変裝なんて出來るの?」
「そこは一か八かだ。バレたら死ぬ気で逃げる」
烈毅はニコッと笑ってピースサインを送る。その様子を見て、四人は一斉にため息を付く。
「わかった。じゃあ、私達はファイアさんと一緒に巣に隠れてるわ」
「おう、サンキュな! って事でファイア、メルクリアの近くまで飛んでって!」
『もう真下だ。著陸するから待っ……』
「あ、わざわざ降下しなくてもいいぞ! ここから飛び降りるから! じゃあ行ってきまぁーす!」
『はぁ!? 高度三千メートルは超えてるんだぞ!? 死にたいのか!?』
かの有名なドラゴンでも、ここからの飛び降りは自殺に等しいと理解しているため、必死に烈毅を止めようとするも、既にそれは遅く、聲をかけた頃にはもう腹の下にいた。
「ぎゃぁぁぁぁあ!! おしっこチビりそうぅぅう!」
などと言って時速三百キロくらいのスピードで急速降下していった。
「烈毅、多分明日には片になって見つかりそうね。葬式の準備をしておきましょう」
「埋葬はしなくていいよね? 勝手に死んだだけだし?」
「ちょっと、まだ烈毅が死んだとは決まってないわよ!?」
「ルノ、落ち著いて。ここから降りて死なないわけが無いわ」
「大丈夫だもん! 絶対足骨折くらいで済むもん!」
「「「あっ、怪我するのは前提なのね」」」
『まぁ、お主らは先に我の巣に戻って大人しく待っているとしろ。それが烈毅にとって、一番安心していられる事だと思うからな』
――そして、今に至る。
『あいつが、何を思ってああ言ったのかは正直わかりかねん。でも、きっと何かしらの策はあるんだろうから、そんな心配もいらないとは思うが……』
「いや、烈毅ならきっとこう言うわ。――」
「やっべ。何の策も考えてねぇ。ま、いっか」
烈毅は、メルクリア町へ徒歩で向かいながらそう呟く。正直、気になってしまったから後先考えずき出してしまったというのが現狀だ。変裝道など、怪我の時に使うようの萬能アイテム、包帯しかない。これを顔にぐるぐる巻にして、顔を隠すつもりだ。
「これに、ちょっとを付けとけば怪我をしたと思われるから大丈夫だろ」
そう言いつつ、ユニークスキル、"異次元アイテムボックス"を使用し、その中から包帯を取り出し、頭全を覆い隠し、目にはガーゼをって、目の前に見えてきたメルクリアへと向かう。
メルクリアへると、中は冒険者の集団が列になって綺麗に揃っていた。國王が話している最中で、皆はその話を真面目な顔をして見ている。
列に並ぼうとすると、遅れてやってきた烈毅の元へ、二人の門兵が近寄ってきて、「どうして遅れた?」と鋭い目付きで、槍を向けながら尋ねてくる。
「あ、すいません……し傷を負ってしまい、この包帯を巻くのに手間取ってしまったため、遅れてしまいました」
「そうか……なら、今すぐ並べ。もう國王様はお話になられている。しっかり聞くように」
「はい。すいません」
烈毅はそう言って、スタスタと歩いて列に加わる。メルクリア町中心部には城があり、その城のテラスに王と、その橫にフードを被った付き添い人が立ち、冒険者を、見下ろしながら話している。
そして、聞きたくもない國王の話を聞くために、列は耳を済ませて聞く。
『さて、次の話だが、我々がベルム國と和解し、強力関係になったかを話そう。急連絡紙にも書いたと思うが、これは我らが崇拝する神よりの導きなのだ。信託でそうお告げがあり、そのお告げは全世界の王に同じ容で伝えられている。神のお告げは絶対だ。だから、我らはそのお告げに従い、ベルム國との和解をしたのだ!』
「うわ……ちっさい理由だな。神の言葉で戦爭が終わるなら、最初から戦爭なんてしなきゃよかったんだよ」
そんな事をぼそっと呟き、呆れるほど容が薄い話に、烈毅は溜息をつく。
『さて、最後の話となるが、人村烈毅及び、その者に手を貸す輩の処遇だが……』
その話になった途端、烈毅の目つきは鋭いものに変わり、王を睨みつけながらその次の言葉を聞く。
『全員だそうだ。更には、かなり顔の知れた冒険者もいるらしい。それにお顔の方もよろしいそうだ。さて、男冒険者の諸君限定の話になってしまうが、その魔王の使いに手を貸す人など屑も同然。どのように扱っても我らは目を瞑ろうと思うがどうかね?』
その提案に男冒険者は歓喜の雄びをあげる中、烈毅だけはその提案に殺意を覚え、さらにこれまでに無いほどの殺気を側に溜め込む。
「お前らは……全員敵だ」
烈毅のその一言は、周りの歓喜の雄びでかき消され、誰の耳にも屆きはしなかった。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
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