《ひねくれ魔師が天才魔法使いよりも強い件について》第72話 前進
塡(考えても無駄だ。答え合わせをするには、直接見るしかない。『伝言メッセージ』の応用をしろ、位置の特定を過程で挾むなら正確な座標も分かるはずだ。)
即刻、地図のアプリケーションを起し細かい座標を確認していく。
塡(どこだ・・・どこだ・・・どこだ・・・どこ・・・見つけた。ここは・・・C地區の倉庫地帯?)
C地區の倉庫地帯は周辺のA〜F地區全ての地區のエネルギーを補うための『発魔裝置』がある場所である。
『発魔裝置』とは、その名の通り常に魔點を生み出し続ける裝置である。
倉庫地帯にある理由は公開されてないが、資を裝置に運びやすいためと認識されている。
塡(なんでそんながある所に・・・)
明確な場所が確認出來た塡はいてもたってもいられず、いつの間にか外を走り出していた。
?「旦那様マスター。私達を使って下さいませ。」
き通るようで強く濁ったような聲が塡の頭に直接響く。
塡「・・・玉藻か。」
玉藻「召喚獣の私や狐コンなら旦那様マスターの全速力より早く目的地に著くことが出來ますわ。」
召喚獣
いまだその存在が解明されていないもの。
生かどうかも分かっておらず、魔法會での見解は『魔點に魂(存在は未だに否定されているもの)が乗り移ったもの』との認識にしているらしい。
塡「・・・」
の言葉にし立ち止まった塡は懐から『鍵』を取り出し、何も無い空間に向かって解錠するように『鍵』をかす。
塡「全速力で頼む。」
玉藻「承知致しました。狐コン!」
呼び聲に応じたようにもう1匹の狐が現れるとすぐさま狐は玉藻と瓜二つの姿に変わっていく。
ニコッと微笑んだ後に2人の玉藻が手を合わせ呪文の様なものを唱えると2人の玉藻は1人の玉藻に戻っていた。
塡(・・・そう言えば玉藻って元となった伝説や逸話は『玉藻の前』だが尾は五尾しかないし、狐コンも四尾しかない。だが、この姿は正しく九尾。2人で1人前ってことか?)
ふと塡は以前、「これで『妖力』が2倍になったので旦那様マスターを連れて行けるかと」っと玉藻が言っていたのを思い出しているといつの間にか玉藻は『化け狐』という名が相応しい大きさの狐に変化していた。
玉藻「さぁ!乗ってください旦那様マスター!」
塡「・・・あぁ。」
軽々しく『化け狐』に飛び乗った塡は戦闘の準備をしていた。
玉藻「・・・戦われるのですか?」
塡「俺は基本的に石橋は飛び越して渡る人間だからな、年には念をだ。」
玉藻「その準備が無駄になる事を私も狐コンも願っています。」
著々と準備を進めていく塡に玉藻は寂しそうな口調で言葉を投げかける。
玉藻「・・・旦那様マスター。」
塡「なんだ。」
玉藻「旦那様マスターは石橋は飛び越して渡るとおっしゃいましたね。では、その石橋が飛びこせないくらい大きな橋なら旦那様マスターはどう致しますか?」
妙に刺さる言葉があった。
馬鹿にされている訳では無いことは理解しているがそれでも、しのイラつきをじてしまった。
だから、塡の言葉は暴になってしまったのだろう。
塡「うるせぇ・・・お前は俺が、飛びこせないと思ってんのか?てめぇは黙って俺の言う通りに著いてくればいいんだよ。」
返事もせずにただただ、前を見ている玉藻には分からないだろう、塡が今どんな顔をしているのかを。
を噛み締め、目は潤み、呼吸が荒くなっている姿を見られなかった塡は幸いかもしれない、なぜならその姿はただをこねる子供の様なものなのだから。
C地區・倉庫地帯にて
高さ3メートルほどのフェンスで取り囲まれているそこは、大量のコンテナ、何かの作業場。
そして、中心には異様に広い敷地にはひっそりと『発魔裝置』がそびえ立っていた。
塡「・・・お前らはここで待機。すぐに撤退できる準備をしておけ。」
玉藻「承知致しました・・・旦那様マスター。」
塡「なんだ。」
玉藻「・・・お気を付けて。」
深々と頭を下げる玉藻の言葉に塡が返答することは無かった。
倉庫地帯を一直線に走り抜ける塡の手には普段とは違う『対魔拳銃アンチマジックハンドガン』が強く握られていた。
塡(・・・相手は何もかもが未知數、集団なのか個人なのかも分からない。武は何を使うのか、どんな魔法を得意とするのか、なんの目的のために・・・舞と居るのか。)
もうすぐ答えが分かるというのに塡の頭の中は疑問で満たされていく。
道を阻むコンテナを軽々飛び越えながら段々と舞がいるはずの座標に近づいていく。
20mほど進んだところで塡の足が止まる。
舞がいるはずの座標、そこには世にも奇妙な人間が立っていた。
塡「・・・同萬時・・・徳!」
その聲に反応した徳は振り返って口を開く。
徳「・・・緑青か?」
久しぶりの友人にあったような反応をする徳の傍には意識なく転がされている舞の姿があった。
塡「・・・!」
驚きで聲が出せなかった。
その顔を見た徳は自分の事に驚いたと思ったのだろう、見當違いな言葉を発する。
徳「気になるか?何故、『問題児』の俺が平然と歩き回っているのか。何故、夜に外で活しているのか。何故、藤原舞がここに転がっているのか。」
その言葉で塡の思考は停止する。
徳「・・・あぁ、『伝言メッセージ』を発させたのはお前か。でもなんでここが分かった?『伝言メッセージ』には位置の探知機能は無いはずなのにな。」
塡「・・・・せ。」
徳「なんだって?」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
塡「舞を・・・」
それほどまでにが荒ぶっていた。
徳「何言ってんだ?」
塡「舞を・・・返せ!」
瞬間、衝撃波が迸る。
瞬足とも言える速度で走った塡のナイフは徳の元に突き立てられる・・・はずだった。
塡「グぁ・・・かはァ!」 
何をされたのかわからなかった。
『全速力フルスピード』で徳を切りつけようとしたはずなのに、気がついたら地面に叩きつけられていた。
徳「おいおい、いきなり飛びかかっておいて押し負けてんなよ。」
その衝撃であばら骨が折れた、その衝撃で意識がとびかけた、その衝撃で『対魔拳銃アンチマジックハンドガン』がコンテナの下にり込んでしまった。
塡(だが・・・)
その衝撃で、塡は完全に冷靜になった。
塡(まずは再生式の展開だ、『式魔法』じゃだめだ、『魔式』で展開する。)
頭の中で瞬時に式を組み立て、発する。
その間、約2秒。
塡「再生式発『超速再生ベンヌ・レプリカ』!」
さらに、正不明の徳の攻撃を防ぐため防式を組み立てる。
その間、約1秒。
塡「防式『王の鎧ウィガール』!」
徳「あ?なんだそれ?そんな魔法聞いた事ないぞ。」
魔には大きくわけて2つの種類がある。
世界に存在する魔法を魔の手順で発する『式魔法』。
霊やら神様やらの力を借りて魔法の様なものを発する『魔式』。
基本的に世に存在する魔師は小學校を卒業してから魔を使う事はない。
それに加え魔師が魔を使用するとしても99%『式魔法』しか使用しない。
さらに、塡の様に自分で式を組み立てるという行為をした魔師は昔々から今の今まで両手の指で數えられる程しかいない。
つまり、必然的に徳は「緑青塡は魔師だが、本質は魔法。」と言うふうに結論づけてしまう。
だからこそ、大きな遅れが生じた。
塡「『全速力フルスピード』!」
再び徳にナイフが振るわれる。
が、やはり、気がつくと地面に叩きつけられていた。
塡(ただ、ダメージの軽減は出來てる。)
徳「おいおい、意味のわかんねぇ魔法唱えても結局なんの意味もねぇなぁ。それともなんだ?元々噓ブラフだったってことか?」
やはり見當違いな事を言っている徳の言葉を軽く聞き流し、塡は頭を回転させる。
塡(報を整理しろ。徳の能力値ステータスは平均と同じぐらい。魔法の威力だけなら満の方が高い。徳の『自己的式オリジナルマジック』は『』と言う仮定を立てるとしてあんな攻撃ができるのか?『』と言っても元來伝承されているじゃないはずだ。)
頭を回転させる。
塡(元々あるじゃないなら、徳の『』は徳が思い描くのはず。そんなもの解明できるのか?)
回転させる。
塡(正が分からない以上迂闊に近寄れない、徳は「押し負けてんなよ」とは言っていたがそれが噓である可能は拭い切れない。)
回転させる。
塡(だいたい、気が付けば地面に激突しているなんて攻撃わけがわからない。)
回転させる。
塡(早すぎて衝撃が後から來る攻撃なんて避けられるわけが無い。)
回転させる。
塡(そんな攻撃が何度もできるなんて勝てるわけが無い。)
回転させる。
塡(徳に、勝てるわけが無い。)
絶が塡の中を侵して行く。
勝てないという思考が塡のきを停止させる。
舞を救うという目的も忘れ、ただただ絶していく。
當たり前だが塡が絶しているなど知らない徳は塡に疑問の言葉を投げかける。
徳「お前何のために來たんだ?」
飛來する問いかけに塡は答えない。
答えられない。
徳「俺の『計畫』を知ってんのか?」
答えない。
徳「それとも舞を助けにでも來たか?」
答えない。
徳「どちらにしろお前じゃ俺を止められないよ。『魔法使い』と『魔師』の絶対的な差はどう足掻いても埋められない。」
答えない。
徳「さぁどうする?また馬鹿みたく突撃でもしてくるか?」
答えない。
徳「なぁおい!」
言葉と同時に徳の足が舞のに乗せられる。
直後、徳のは壁に叩きつけられた。
肺に溜まった空気を吐き出した後、徳は口を開く。
徳「な・・・んだ?!」
自分でも何をしたか分からなかったが何をするべきかはわかった気がする。
そんな言葉が自然と頭の中に流れたあと、塡は再びき出す。
宣戦布告の言葉を呟いて。
塡「二度と立てねぇようにしてやる!」
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