《ひねくれ魔師が天才魔法使いよりも強い件について》第73話 全力

塡(落ち著け・・・まずは報の整理だ。今の一撃であいつの防が絶対ではない事が分かった。そして、あいつの防を掻い潛る方法・・・確信はないがこれに賭けるしかない。)

巡り巡った塡の思考はひとつの可能に賭けることを選んだ後、を全速力で前進させた。

塡(『全速力フルスピード』!)

ダンッ!と地面を蹴った直後、塡のは徳に飛來し、その拳が徳の顔面へと突き刺さった。

徳「グッ!ガァッ!」

人の全重と推進力が加わった一撃を耐えられるはずもなく、徳のは風に飛ばされる紙の様に無慈悲にも宙を舞う。

再び壁に激突した後、完全に力したが地面に落ちる。

塡(やはり!徳の防は絶対ではない!そして、あいつの防を掻い潛る方法は速さ!予想通りだ。)

勝利への道を見つけた塡は20mほど離れた先で全くかなくなった徳など目にもくれず、ただただ次の1歩を踏み出そうとしていた。

?「が、その勝利は偽の勝利でしたーってか?」

背後から聞こえる何者かの聲にすぐさま反応した塡は背後に向かって腕を振るうが、腕は何かに當たること無く空を切る。

塡「誰だ。」

?「おいおい、忘れちまったのか?さっきまで話してたんだろ?」

その言葉に疑問を覚えた塡はさらに頭を巡らせるその聲は徳の聲のように聞こえるが徳は先程ぶん毆り20mほど先で全くかなくなっていることを確認している。

では、その聲の正はなんなのか。

家で舞の場所探知が終わってから今現在までの塡はいつもよりも思考が安定していなかった。

さらに、正不明の防に自の最速を封じられたとなればその防は自分の知らない魔法、いわゆる『自己的式オリジナルマジック』の可能が濃厚だと判斷せざるを得ない。

だから、その防が防ではない可能を考えることを放棄していた。

?「そうお前は初歩的なミスをしてたんだよ。」

不明の聲が言う初歩的なミス。

塡「何を・・・」

?「『幻』の可能を完全に考えていなかった。だからこそ、あの防が『自己的式オリジナルマジック』だと斷定した。」

魔法の初歩中の初歩である、を前に進ませる魔法と並ぶほどの初歩的な魔法。

だが、初歩的で1番簡単に扱えるが故に、1番発達が進んでいる魔法でもある。

その発達が進んでいる魔法であるなら、あるはずの無い防を完全に創り出すことだって可能だろう。

?「お前が『対魔拳銃アンチマジックハンドガン』を持っていた時はギョッとしたよ。ま、お前が考え無しに突撃してくれたおかげで『対魔拳銃アンチマジックハンドガン』は一時的に封じれたんだけどさ。」

塡「じゃああの防は・・・なんなんだ。」

揺で無意識のに聲を出していた塡の言葉に正不明の聲は軽い調子で淡々と言葉を繋ぐ。

?「作業の邪魔されちゃめんどくさいからな、俺を中心とした半徑10mに結界を展開しといた。そしてその結界に幻を蔓延させる。1度目の幻はただ俺とお前の距離をずらしただけだ。その結果お前は壁に激突した。猛スピードで壁に激突した後気絶した。その後お前をちょっと離れた地面まで引きずって行った。」

塡「なるほどな、幻を見てる俺の目線ではお前の前にある何かに防がれ、気が付くと地面に橫たわっているという狀況が完するわけか。」

?「そう、後は適當な言葉並べるだけでお前は俺が正不明魔法を使い攻撃を防いだと錯覚する。その後の幻は」

塡「かさない、だろ。」

不明の聲が自慢げに話す聲を塡の聲が両斷する。

塡「適當な幻像を見せるだけで俺のかさない、夢を見てる時と同じ狀態だ。」

?「ご明察。さすが優等生だな。」

塡「魔法の名家が何言ってんだ。」

その言葉に々沈黙した後、再び正不明の聲は言葉を発する。

?「・・さてと、そろそろ終わりにしよう塡。俺もあんまり暇じゃないんだ。」

塡「暇じゃないくせに俺と対話しようとしたのか、矛盾してんな徳。」

聲が響いた後に周りの景が一気に書き換えられていく。

否、元に戻されると言った方が正しいだろう。

特が転がっていた場所にはコンテナが重ねてあり、舞が居たはずの場所には何も無かった。

そして、何も無い空間から1人の年が姿を現した。

徳「対話しようとしたわけじゃない、ただの好奇心だよ。人が勝利を確信した時、その確信が虛偽の確信だったら、どんな顔するんだろうかってな。」

塡「それはいい趣味持ってんな。俺も全く同じこと試そうと思ってたよ。」

言葉と同時に塡は駆け出す、コンテナの方へ。

徳「させるかよ。」

?「こっちのセリフだ。」

直後、特の手から発された5つの『五芒星ペンタグラム』を徳を中心として発生した巨大な竜巻が悠々と飲み込んでいく。

竜巻が起こす強風は周りのコンテナを撒き散らし人間など軽く飛ばしてしまう。

かのように思えたが、コンテナはピクリともかない、それに加え駆け出した年も無事コンテナ下の『対魔拳銃アンチマジックハンドガン』を右手に握っていた。

塡「・・・風の牢獄?」

見た事もない魔法に対し、々の疑問を抱えた塡の言葉は獨り言ではなく、誇らしげな返答があった。

?「また引っかかったな塡。」

徳「幻だろ。」

橫に腕を振るうと先程まであった竜巻がいとも簡単に崩壊した。

?「なんで分かるんだ!?」

自分で答えをバラしたのにも関わらず相手に向かってなぜ分かったかと問う聲は、ついでに自分の正もバラして塡の後ろに著地する。

塡「あんなバカでかい竜巻起こして何も巻き上げられなかったら分かるだろ。」

満「でも中から外の様子は見えないだろ?」

塡「お前俺にまた引っかったって言ってたろ。俺が引っかかったのは徳の幻くらいしかねぇよ。」

ようやく自分から答えを出したと気づいた満は、は!考えてみれば確かに!と言ったような顔をして固まっていた。

徳「にしても、幻のクセに俺の『五芒星ペンタグラム』をかき消すとはな。」

褒められているのかどうか分からない言葉に対して固まっていた満は、先程よりも誇らしげに「凄いだろ!答えは教えないけどな!」と自信満々に仁王立ちしている満の橫には呆れた顔で拳銃を握っている塡が居た。

徳「・・・『対魔拳銃アンチマジックハンドガン』か。」

満「な!なんで分かったんだ!?」

徳「塡が握っているからな。」

満「なんで握ってんだよ!」

ずれたツッコミをしている満の顔に塡の拳がクリーンヒットする。

満「・・・何すんだ!痛いだろ!」

塡「お前はし黙ってろ!噓ブラフってもんを知らねぇのかてめぇは!」

満「そんなエビピラフみたいな名前のものは知らん!」

塡「お前もう帰れ!」

直後、2人の年の間に発が起きた。

だが、その発は決して塡が満にイラついたから腹いせに破したわけではない、第三者からの攻撃、つまり徳からの攻撃である。

満「・・・あっぶねぇ。おい!人を発させるならまず斷ってから発させろよ!」

塡「だから、そこじゃねぇよ。」

煙から覗かせた青白いが2人を覆うようにして佇んでいた。

徳「今のでやれないのか。」

満「俺は油斷なんてしないからな!そう簡単に俺はやれないぞ!」

仁王立ちしている満の腰には先程まで無かった長剣が刺さっていた。

徳「いいから早く來い。時間が無いんだよ。」

塡「おみ通り行ってやるよ。」

ドンッ!という発音が響いたあと、徳の目の前にナイフが飛び出してきた。

避ける暇も防ぐ暇もなく、ただただナイフは徳の顔を貫通した。

塡「幻か!」

徳「遅い!」

を展開しようとした塡の顔面に徳の拳が突き刺さる。

塡「グッ!」

徳「踴り狂え、『五芒星ペンタグラム』!」

毆られた反で怯んだ隙にすかさず追い打ちをかける。

満「『風エアロ・ブラスト』!」

上空からの突風によって飛來する『五芒星ペンタグラム』はかき消される。

徳「どんな魔力してんだよ。」

満「魔力ってなんだ?」

小學校で學ぶはずの事を真剣になんだ?と問う満が著地した直後、追い打ちの『五芒星ペンタグラム』がさらに飛來する。

塡「『波流防・波紋』」

水面に水滴が落ちたような波紋が塡の突き出した手を中心に広がっていく。

『五芒星ペンタグラム』と波紋が激突し、白い発音が広がった。

徳「さすがに2人はきついな・・・」

塡「とぼけてんなよ。さっきからまともな魔法すら使ってないくせに何がキツいだ。」

満「そーだ!そーだ!」

塡「時間がねぇなら本気で來いよ、全力で相手してやるから。」

満「サイダー!サイダー!」

訳の分からないことをほざく口を塞ぐため塡の拳が再び、満の顔面にクリーンヒットする。

徳「・・・後悔すんなよ。」

塡「いいから來いよ。」

その聲が合図となり徳の手から無數の『五芒星ペンタグラム』が飛び出す。

満「『盾シールド』!」

飛來する『五芒星ペンタグラム』の発を満の手を中心に広がっている青白いが2人のを防する。

塡「『波流加速・全速力フルスピード』」

その言葉と同時に音もなく塡のは姿を消した。

塡「『鉾ジャベリン』」 

一瞬で徳の背後まで移した塡の手には衝撃音の鉾が乗せられていた。

徳「『急急如律令にて我がを守れ』」

言葉が塡の耳に屆く前に、衝撃音の鉾は徳の顔面を突き破ろうと発される。

だが、徳の顔面は無傷だった。

徳「踴り狂え『五芒星ペンタグラム』?」

発する五芒星が発される前に、徳のは地面へと橫たわった。

 

徳「な、んで。」

視界に映り込んできたニヤッと不気味な笑いを浮かべた塡の口は、初めて出來た友達と遊んだ事を楽しそうに話す子供のように言葉を発する。

塡「殘念でした。」

徳「な・・・」

塡「二重攻撃。」

そう、確かに徳が発した魔法は塡の放った衝撃音の鉾を蟲を払うように防いだ。

だが、それはあくまでも鉾としての機能を停止させただけであり、衝撃音は殘った。 

塡の『自己的式オリジナルマジック』である、『波』は魔點と塡の神狀態が許す限り波の発生から細かな作まで行える式である。

音の伝達は空気の振だが、その本質は質の振である。

その振が大きくなればなるほど音は大きくなり、音が大きくなれば衝撃を起こすことだって可能である。

つまり、衝撃音の鉾は接すればにダメージを與える事ができる。

に大ダメージを與えようとする衝撃音の鉾が本質の音として襲いかかるなら、鼓だけでなく三半規管、衝撃音の強度によれば脳震盪まで起こせる。

そして、この攻撃はその二重攻撃を利用したものである。

塡「本気で來いと言ったはずだぞ。」

徳「・・・・・・そうだな、正直なめてたよ。」

塡(もう回復しやがったのか。)

徳「出し惜しみはやめるよ。こっからは全力だ。」

ゆっくりと立ち上がる徳の拳は強く握られ、戦いは加速をはじめる。

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