《神々に育てられた人の子は最強です》一時的な再會
クラスメイトのいる場所に戻って來ると、日下部先生が周りの生徒に囲まれていた。
植の揺りかごプラントクレイドルの中にっている、菜と雫はまだ気絶しているみたいなので、俺の後ろにそのまま連れていきていた。
クラスメイトたちは、俺が帰ってきたのを見て、し警戒し始めた。
俺は、植の揺りかごプラントクレイドルをクラスメイトの元に移させ、魔法を解いた。
「ひ、姫宮さん!」
「星乃さんも!」
球の植の中から現れた、菜と雫の姿を見て、クラスメイトたちが慌てて駆け寄って行く。
「二人は無事だ。傷も癒した」
その言葉を聞いて、中には泣いている奴も居た。
「あの、先生も出來たら治していただけませんか?」
一人の子生徒が泣きながらそう聞いてきた。
俺は何があったか聞いた所、首に蛇が噛み付いていたと言ってきた。それを聞いた俺も、心配なので先生の首を見る。そこには、二つのが空いてあった。これは蛇に噛まれた牙の跡だろう。
「どんな蛇だった?」
「に、いっぱい目の様な模様がありました」
子生徒は、小さな聲でそう言った。
「ヴェノムスネークか」
「ヴェノム?毒ですか?」
「ああ、名前の通り毒蛇だ。しかし、普通の毒ではない、即効の猛毒だ」
俺の言葉を聞き、驚きの表を隠せないクラスメイト。
この顔からして、約10分前に噛まれたか。急がねば死んでしまう。
俺はそう判斷し、近くにいる奴らに離れてもらった。
「ブラッド作オペレーション」
自分の親指を噛み切り、をにれて作する魔法。これなら、終わった後を俺のに戻すことができるから、先生が眷屬になる危険がない。
先生の首にあるから、変わったをしたが徐々に排出される。これは毒が混じっているだ。
これは、先生の中にある俺のを作し、にある毒を今排出しているのだ。
「ふぅ、これで大丈夫だ。毒は抜き取った」
そう聞いて、安心したクラスメイトたち。
「二人や先生を助けていただき、ありがとうございました」
俺の方に歩み寄ってくる秋山が、嬉しそうにそう言ってきた。
「ああ。それじゃあ、俺は行く所があるから」
菜と雫の救出が功に、先生の治療も済んだことなので、ネル達の場所に戻ろうとした俺の手を、秋山が摑んだ。
「その姿、全黒の裝備の人、貴方は、『覇王』と呼ばれている冒険者じゃないんですか」
言葉が出なかった。
『覇王』?誰が?俺が?
いつの間にか生まれた二つ名が、あまりにも恥ずかしい言葉だったことで、言葉が出ない。
秋山の言葉が聞こえたのか、クラスメイトが興味を示し、近づいてくる。
秋山は、沈黙を肯定として捉えたのか、目をキラキラさせて詰め寄ってきた。
本當に魔の大行進モンスターパレードを1人で終わらせてしまったのか、どうしてそんなに強くなったのか、その強さはどうやって手にれたのかなど、んなことを聞いてくる。
俺はそんな秋山の姿を見ていると、ムカムカしていた。
何故だろう。そのがどうして現れたのかわからないが、秋山の態度に腹が立つ。
だが、その理由はすぐにわかった。
「俺にしでいいから稽古をつけてくれませんか?」
秋山がハッキリと、笑顔でそう言い放ち、俺は無意識に秋山の頬を、しっかりと手加減して毆り飛ばしていた。
その様子を見ていたクラスメイトは、秋山が飛んでいった方向を呆然と見ている。
「な、何しやがる!!?」
秋山はどうして自分が毆られたのか、わからないまま、驚きの聲を上げる。
俺は、どうして毆ってしまったのか、わからなくて、自分の拳を見つめていた。
すると、秋山は腰に下げている剣を取り、斬りかかってきた。
俺はそんな秋山を見て、自分がどうしてあんなが生まれたのか、理解した。
秋山が振り下ろす剣を、俺は片手で摑まえる。
それを見て、秋山は驚いた表をした。
俺が理解したこと、それは。
「どうしてそんなに嬉しそうなんだ?」
という疑問だった。
「どうして勇者のお前が、弱く仲間の2人すら守れなかったお前が、そんな嬉しそうなんだ?」
突然の質問に、秋山は何も答えない。
あいつは眷屬だった。しかし、神気も扱えない眷屬。
「あいつは確かに強かった。しかし、魔王ミルフィーユと同等か、それ以上の力だったぞ」
「な、魔王を知っているのか!!」
「ああ、お前たちはこれから、あいつのような強敵と戦うのだぞ。なのに、腰を抜かしていたお前達が、どうしてそんなに嬉しそうなんだ?」
俺がミルフィーユを知っていることがわかったからか、クラスメイトたちが反応する。
しかし、そんなことはほっといて俺は話し続ける。
「自分が助けられなかった仲間が戻ってきて、無事に何も無く戻ってきて、それが嬉しいのはわかるが、どうしてそんなに笑顔でいられるんだ?」
「ど、どう言う意味だ」
「まずは、自分の弱さを再確認しろ、という事だ。自分が勇者だからと沢山の人達を守りたい、とかでも言ってきたのだろう。しかし、お前達は何も出來なかった、その弱さを噛み締め、今の自分を見直せ」
俺はそう言って、秋山の剣を摑んだままポキッと折ってしまう。
秋山は自分の折れた剣を見て、目と口を大きく開けていた。
「お前は、いや、お前たちは弱く、愚かだ。生きる道すら選ぶ事もできない、ただの弱者だ」
「ッ!!」
クラスメイト全員が言葉を詰まらせる。
「俺がここに來たのは、その2人に縁があったからだ。それがなければ、ここには來ていない」
そう言い放ち、立ち去ろうとしたその時。後ろの方で菜と雫が起き上がっている気配がした。
振り向けば、何があったのかわからない様子で、戸っている二人。その二人は、先程まで固まっていたクラスメイト全員が囲っていて姿が見えない。しかし、元気な聲が聞こえたので安心した。
「【創造】発。スキル念話を創造」
『了解。あなたとスキル念話の適合率を測ります』
ん?頭の中に突如聞こえる聲。それは俺がよく知っている聲だった。
「何やってんだよ、母さん」
『あれ?やっぱりわかりました?神夜』
俺が母さんと言った聲の主は、俺を一番最初に見つけてくれた生命神セラ様だった。
「母さん」
『なんですか?』
「もしかして、レベルアップとかの時にも聞こえてきた聲も、母さんなのか?」
『さすが神夜!』
頭の中で嬉しそうな母さんの聲と、パチパチと拍手のような音が鳴る。
今思えば、子供の頃も頭の中で聲が聞こえ、その聲も母さんの聲だった。
「なんで母さんがこんなことしてるんだ?」
『それは、私が生命神だからですよ』
「なるほど」
恐らく、母さんが言っているのは、自分が生命を生み出す神だから、レベルアップやスキル習得など、人の長に関することをすべて自分が行っていると言うことなんだろう。
『では、改めて適合率を測ります』
母さんが、もう一度言い直す。
すると、俺の目の前に突如ゼロが二つ現れ、徐々に數字が増えていく。
そして數秒後、現れた數字は84という數字だった。
『適合率84%、創造可能範囲を超えているため、創造を開始します』
そう言われると、脳に弱めの電流が走る覚、伝子に新たなものが刻まれたイメージ、そんなものをじた。
『念話の創造に功しました。創造を終了します。では、また何かあれば聞きに來るので、神夜』
プツンッという音が最後に鳴り、いつもの狀態に戻る。ステータスを開いてみれば、スキル欄には、『念話』という言葉が付け加えられていた。
──────────────
【念話】(効果)伝えたい相手の顔を思い出し、言葉を伝える。念話中は、相手からも言葉を伝えられる。また、範囲は10km以に相手がいれば可能
──────────────
念話の効果を見て、すぐに菜と雫の顔を思い出す。
このままネル達の場所に戻ってもいいが、一言挨拶をしていきたい。
【念話】発。
スキルの【並列思考】で片方は菜と雫、二人の顔を思い出して、もう一つの思考で會話する。
こちらの方が、やりやすい。
『菜、雫、聞こえているか?』
「わっ」「なっ」
菜と雫の驚きの聲が聞こえてきた。それを聞いていた周りのクラスメイトたちは、二人を不思議そうに見ている。
『菜、雫、俺は神夜だ。返事は聲に出さなくても大丈夫だ』
『し、神夜くん!?』『黒瀬くん!』
『ああ、そうだ』
『神夜くん、どこにいるの!?』
『あっ、もしかしてあそこにいる真っ黒の人ですか!?』
『どこっ!どこっ、雫ちゃん!』
『あっちです!あっち!』
二人の元気な聲が頭の中に響いてくる。
『二人とも、正が俺ってことは誰にも言うなよ』
『なっ、なんで?』
『注目されるのは苦手なんでな。それより、俺はまた、旅に行く』
『えっ!そんな、まだ全然話せていないじゃないですか!』
『ごめんな、菜、雫。俺はし、やることがあるんだ。でも、今度また再會した時は、一緒に旅しよう』
『『それはほんと!?』』
『ああ、だから今はお別れだ。だが忘れるな。俺は、いつでも二人を見守っている』
『うん!』『はい!』
二人の聲から喜びをじ、俺はマフラーの下でし微笑んだ。
『じゃあな、二人とも』
『うん、またね!』
『はい、再會した時はよろしくお願いしますよ』
元気な聲の中に喜びと、しの寂しさをじられた。
最後に二人の聲を聞き、俺はもう一の従魔を召喚する。
目の前の地面に黒い魔法陣が出現し、そこから一匹の真っ黒な烏が現れた。
「どうした、主君」
その烏は鳥でありながら人の言葉を喋り、俺の肩まで飛んでくる。
「八咫やた、これからあそこで囲まれている二人のの子を守ってやってくれ」
「なんだ?主君の想い人か?」
「違うよ、ただ大切な人だ。よろしく頼む。あと、俺の名前は出すな」
「了解した」
八咫やたと呼ばれた烏は俺の願いを聞きれて、菜と雫のもとに飛んでいく。
俺が召喚したのは、日本神話にも出てくる、『八咫烏』だ。彼は導きの神とも言われており、中級神の神の1人だ。彼なら眷屬相手でも、勝つことができるはずだ。
俺は八咫が菜と雫のもとに行ったのを確認し、ネルたちの所に転移した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
神夜がいなくなった後のクラスメイトたちは。
「な、何この烏!?」
「きゃー!」
気配をじず、菜と雫の間に降り立った八咫を見て、またも騒ぎ出すクラスメイト。
「儂は主君からお主らを守るよう言われて來たのだ」
「しゃ、喋ったー!?」
菜と雫を見てそう言う八咫。
クラスメイトは突如現れた烏に驚き、その上、その烏が人の言葉を喋ったことに、またも大きく騒ぎ出す。
そんな騒ぎの中でも、まだ眠っている日下部花蓮は「んにゃ〜」といった可い寢言を言っている。
「って、あれ?覇王さんいなくなっているよ?」
クラスメイトの一人が、神夜がいなくなったことに気づき、周りを見回す。だが、見えるのは草木が吹き飛び、抉られた地面などの戦いの後だけが殘っていただけだった。
「いいよ、あんな人。確かにあの人は強いけど、この世界を救うために呼ばれた勇者の俺たちにあんなことを言ったんだ、どうでもいい」
誰かが言ったその言葉には、怒りと嫉妬のがわっていた。そして、その言葉に同意する者もなからずいた。
「そ、そんな言い方やめようよ、あの人は私たちを守ってくれたんだよ!それに、多分その烏さんもあの人の従魔だよ!ね、烏さん!」
「ああ、そうだぞ。名前は言うなと言われたが、確かに儂は主君の従魔だ」
「ほ、ほら!」
怒りと嫉妬を持った者達とは反対に、の言葉を伝えたいと言う者が半數以上いる。その他にも、憧れ、興味、ちょっとした好意などもあった。
そしてしの間、クラスメイトの中で口論が始まっていた。
“今度あった時はお禮を伝えるべきだ”“いや、あんな人はほっといていい”そんな小さな口論。
だが、それが始まって數分後、「ふわぁ〜」と言った聲がクラスメイトの耳に屆く。全員がその聲の方を向くと、日下部花蓮が目を覚ましたのだ。
クラスメイトはほんのついさっきまで行っていた口論をやめ、すぐに日下部花蓮のもとに走っていく。
しかし、そんな中、菜と雫は最初に八咫を見た時から、すぐに神夜からの従魔だとわかっていた。そして、今まで以上の安心を持ち、笑みを浮かべていたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ネルたちの所に転移した神夜は、今見ている景にちょっとした幸せをじていた。
「むにゃむにゃ、ご主人様〜」
「ご主人、スゥスゥ」
ネルに膝枕をされながら、可い寢息を立て、自分のことを寢言にまで言っている、ハクとルナ。
「あっ、シンヤおかえり」
膝枕をしながらハクとルナの頭を優しくでていたネルは、俺が帰ってきたのがわかり、そんな優しい言葉をかけてくる。
俺はその景を見て、一つ決めたことがあった。
それは、『こいつらや菜や雫が笑顔でいられるように、自分が持っている力は大切なものを守るために使おう』、ということだった。
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