セリエに頼まれ、資料の整理をする事となった。ほとんどが今回の客の為に用意したものだ。

実に真面目な奴だな。

紹介映像を作したあいつも大概だが、こうして裏でいていたというのも大したもんだ。

「それで奴の転生は無事済むと思うか？」

「あの様子なら大丈夫かと。ですが、流石に全ての世界の報を確認しようとするのはあの方が初めてですけど」

「しかし、今回は穏やかに事が進みそうでなによりだ」

「ええ。ですが彼にいつまでもここに居座っていては困りますね。複數の客を相手にするのはこの人數では大変ですので」

問題は次にいつ客が來るか分からないという事だ。これではいつまでに彼の転生を済ませたらいいのやら。

「となると早く決まるのを祈るしかないな」

こちらから早く決めるように進言するのは野暮というものだ。

「そうですが世界は那由多ほどあります。機械化しているといっても一ヶ月もかかるかと」

那由多……か。

俺も流石にそれほど生きてはいない。それほど気が遠くなるようは數だ。

「気長に待つしかあるまい。しかし、今回は俺の出番はなしか」

戦闘では絶対の自信はあるが転生屋としては新米だ。出來る事は限られてくる。

「それが一番です。代わりに雑務をこなしてくれると有難いのですがお願いしても？」

「無論だ。しかし、一つだけ條件がある。あの本をたまに貸してしい。能力はお前にしか使えないだから良いだろう」

転生屋に來る客の中かれ俺を殺せる可能のある者を探すのは非効率的だ。彼の本を借りればそれは解消される。

自分でも隨分と図々しいと思うが、俺にも譲れないものがある。ここに來て、今もこうしているのは死ぬのが目的だという事を忘れた訳ではない。

「きちんと仕事をしてくれるのなら考えます。まずはあの方が転生先を決めて戻ってくるのを待ってください」

「了解だ。だが、そうなるとジッとはしていられんな」

どうしたものかと考しているとセリエは不思議そうにこちらを見つめていた。

「どうした？　俺の顔に何かついていたか」

「いえ、しリルフィーさんに似ているなと思って」

「あいつにか。この仕事にやり甲斐はじているが流石にあいつには負けるな」

「そうかもね。それでは負けないように努力してみてはいかがですか？　幸いな事に時間はありますから」

「努力……か。それほど俺に似合わない言葉はあるまい」

天才は産まれてから天才なのではなく、努力をした結果だと謙遜した者がいるが俺はそうではない。気がついたらこの強大な力を手にしていた。そのせいで努力とは無縁だった。

「ではこれを機會に努力してみましょう。努力は人を裏切らないと言いますし」

「俺は人ではないが、まあ良いとするか」

資料の整理は済んだのでそれを渡しながらため息をつく。自分で人ではないと言うのは何度目だとしても虛しいのだ。

「どうも。仕事が早くて助かります」

「では俺はこれで。また何かあったら呼んでくれ」

この程度なら分に任せられる。戦闘以外でも役に立てるように努力しよう。

「ルインさん、何処へ？　もしお暇でしたらこの後ご一緒にお食事でもどうですか？」

頼み事を済ませて出て行こうとすると有難いおいをけるがルインは首を橫に振って斷った。

「殘念だが食事は夜のみと決めていてな。その時にまたってくれれば喜んでご一緒しよう」

そうして彼は再び、資料室へと歩を進めた。