《転生屋の珍客共〜最強の吸鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜》第37話 前進
分斷はされたもののこちら側の有力に変わりはない。それでも誰も油斷をしていないのは敵が手にしているという兵のおかげだろう。
急ぎ足で奧へと進んで行くとルインは一人でその場で立ち阻む者がいるのを視界に捉えた。
「おい、ニッグ。誰か待ち構えているぞ。しかもドラゴンではない。人間だ」
「いや、見えないぜ」
人型では視力も低下しているのかと思ったが、リルフィーも首を傾げているところを見ると俺の視力が良すぎただけのようだ。
「そうか。だが気を引き締めろ。相手は人間だが人質の類ではなさそうだ。むしろ敵の幹部か何かだろう」
普通の人間からはじられない殺気が放っている。その立ち姿だけでも相當な実力者と見てとれる。ここにいる連中で勝てるかどうか……。
「人間……もしかして剣とか持ってる奴か?」
「ああ、橫幅の広いやつを。知っているのか」
「ドラゴンの間では有名な人間だ。その剣で多くのドラゴンを殺し、俺らとの共存が決定してからは行方をくらましたってファフナーから聞いてたんだけどよ」
「皮なものだな。かつては英雄扱いされていただろうに今では共存を阻む敵になるとは」
どれだけの力量があろうとも時代の流れには勝てない。それが一人の限界だ。
「でもラッキーだぜ。まさかこんなところでやれるなんて」
「戦爭中だというのに呑気なものだな」
この狹い道では本來の力が発揮できないどころか數で押し切れないとなるとかなり厄介な相手だ。
「別に仇を討ちたいとかじゃねえけど、強い奴と戦えるなんてワクワクするだろ」
戦いの楽しみなどとうの昔に忘れてしまったが、今でも強い者と出會うとつい嬉しくなってしまう。もしかしてはこいつは俺を殺せるのではーーと。
「それについては同意するが後ろの連中はどうだろうな」
何ものドラゴンを葬った実力者、それも彼らの間で有名ということはそれ程恐れられている存在ということだ。
誰もそんな奴を相手にはしたくないだろう。
「どっちだろうが構わねえ。俺が勝てばいいだけの話だろ」
安直な考えだが、確かにそうだ。
この道が正解か不正解か定かではないが奴を倒さないと先には進めない。ならば倒せばいい。
そうなれば後ろの連中の士気も上がるだろう。
「では楽しんでくるのだな。俺たちはここで監視をしている」
複數人で行っても道が狹すぎてお互いに邪魔になるだけだ。まだ手を貸すには早いだろうし、ここはこの軍の大將であるニッグに任せるとしよう。
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