個的な奴というのは大抵好かれない。好かれるのは空想の語の中だけだ。

というのもどの世界にも個的でない者が多いからで、自分よりも違う者に警戒してしまうからである。

そして今回の珍客は個的な部類にるのだが、し妙だった。

「我は闇の住民。者共、狀況を説明せよ」

「何かルインみたいに偉そうでムカつくわね」

「俺はこれと同等に思われていたのか。それはまた」

「だ、大丈夫です。ルインさんはこんなのじゃありませんから」

客に対してこんなのと斷言してしまうのも如何なものかと思うがこのベルの一言には救われる。

「勿論ですよ。師匠はもっと崇高ですから」

更に追い討ちをかけるアズリエ。

一この年に何の恨みがあるのやら。

「ここは転生屋です須藤 隼人様。貴方は他の世界で記憶をけ継いだまま生き返る権利を得たという訳ですが招待狀はお持ちですよね」

「転生？　つまり我は死んだというのか」

「いえ、ここに來る方達は死の直前に集められ神の力で生き殘されている狀態にあります。ですので死んでいると聞かれると回答に困ります」

俺としてはどちらも羨ましいが。

「元の世界には帰れぬのか？」

「はい。特別な事がない限りは」

あの勇者の時の様な事がない限りは。

「マ、マジかよ……」

と小さな聲で呟いたのは先程まで偉そうな口調だった今回の珍客。

あまりもの変わり様で一瞬、誰が言ったのか分からなかった程だがすぐに彼の態度は元に戻る。

「ならばここは運命に従うしかあるまい。だがし休憩させてはくれないか？　この右腕が疼いて仕方ないのだ」

「構いませんよ。転生先等を決める時間も必要ですから。では部屋に案します」

セリエが案をして転生屋の中へと消えていくとアズリエは疑問を吐き出した。

「師匠はどう思います？　今回の客は態度はあれですけどそれ以外は普通っぽいですけどやっぱり強いんですかね」

「いいや、奴からは特に何もじなかったな。普通の人間と変わりはないように見えたが」

と言っても俺の能力は萬能ではない。

前回、ニッグの中に終焉に導く竜がいる事を見抜けなかったのが良い例だ。しかし今回ばかりは斷言出來る。

あいつは普通の人間だ、と。

「という事は今回は前みたいに問題は起こりそうにないですね」

「それはフラグというものだ。まあ、流石にあれが問題を起こすとは思えんが」

などと一頻りフラグを立てたところで特にする事もないので各自部屋に戻った。

同時刻、とある小さな世界で一人のが薄暗い部屋で呪文を唱えていた。

「さて、これでどうかのう」

彼は形容しがたいをしたがった大きな壺の中に一滴、自分のを流した。