《創造神で破壊神な俺がケモミミを救う》第31話
「ねぇ・・・これどうにかならないの?」
「しの辛抱だ。我慢してくれ。」
防衛用クーポラの口で、赤髪の貓耳娘が大地に怪訝そうな表を見せる。
大地は気不味そうな様子でその貓耳娘を必死に諭している。
二人の後ろでは犬斗が笑いをこらえるのに必死になっていた。
防衛用クーポラにると、一足先に帰ったマヒア達にレイとルルがいた。
「大地さんや。心配しておったぞ! 急に監視カメラが映らなくなった時にはどうしようかと・・・」
「レイさん心配かけてしまったようですまない。カメラはまだ試作段階だったから故障でもしたのかもしれないな。また新しく作するよ。」
実際はカメラは故障したのではなく、大地が故意に壊していた。
メリアの存在がみんなに知られると何かと面倒くさいことなるからだ。
魔族であることを知られればパニックを起こすのは目に見えているし、帝國の宮廷魔法師だとバレれば獣人達はメリアを白い目で最初は見るだろう。
それを防ぐために大地はメリアの存在に気付くと同時に辺りの監視カメラを全て壊し、レイ達防衛用クーポラに居るメンバーからメリアの存在を隠していた。
「あの・・大地さん? その子は?」
ルルは大地の後ろにいる赤髪の貓耳娘を見つめる。
「あぁこの子はさっきの奴らに捕まってた子でな。寄りもないみたいだから、とりあえずここで面倒を見ようと思って連れて來た。名前はメリアだ。」
「・・・・貓人族のメリアよ。」
メリアは大地を橫目で睨みながら自己紹介を行った。
ジョゼ達との戦闘が終わって防衛用クーポラへと戻ろうとした際、大地はメリアに変換魔法で獣人に化けるようにお願いしていた。
魔族の姿のままでれると思っていたメリアは最初は怒って反論していたが、魔族の姿をさらす危険や、クーポラに住む獣人達が混してしまう可能等を聞いて渋々了承していた。
『本當にいつか魔族の姿を隠さなくて良くなるのよね?』
『あぁ。タイミングを見てこいつらにもメリアが魔族であることを話す。必ずメリアの悪いようにはしない。そこは信用してくれ。』
『わかったわよ・・・っていうか何で數ある中から貓人族なの?』
『あぁ・・それについては・・・じきにわかるよ。』
念話で大地とメリアが會話をしていると、ルルが目を輝かせながらメリアの手をとった。
「メリアちゃん! 私はルルって言います! よろしくね!」
「よ・・よろしく。」
「メリアちゃん! ここに來たばかりでよくわからないでしょ? 私が案してあげるから!」
「えっ私は大地におねが――――」
メリアは斷りをれようとしたが、それよりも早くメリアの手を取り、居住用クーポラの方へと走り抜けるルル。
メリアはルルに引っ張られながら、助けを求めるような目を大地に向けるが、大地は助ける素振りも見せずニコニコしながら二人の様子を眺めていた。
『じきにわかるってもしかしてこれ!?』
メリアは大地の発言の意味を理解すると、ルルを見る。
ルルは楽しそうに目をランランとさせながらメリアの手を引っ張っていた。
こんな楽しそうな表をされては、今更斷ることなど出來ない。
メリアはまんまと大地の思通りにルルに居住用クーポラへと連れていかれた。
大地はルルが楽しそうにメリアを連れていくのを父親のような目で眺め終わると、辺りを見渡し始める。
「レイさん。サイラスさんはここに來ていないのか?」
「ルルが呼びにいったそうなんじゃが、領主室にはいなかったそうでな。まだ報告すらできていないんじゃ。」
「そうか。何かあったのかもしれない。報告がてら様子を見て來るよ。」
クーポラの周辺には大地の防犯カメラが設置されており、仮に他の侵者が居ればすぐにレイが気付くはずだ。
防犯カメラに何も映っていない以上心配する必要は皆無である。
しかし急時にも関わらずサイラスが來ていない事になんとなく不安をじた大地は、念のため防衛用クーポラに犬斗を殘し、駆け足気味に領主室へと向かった。
領主室に著くと、大地の心配をよそにサイラスはいつも通りの様子で領主室の革張りの椅子に座って書類仕事をしていた。
大地に気付いたサイラスは書類仕事を一度止め、大地の方を向く。
「大地さんか? どうした?」
「あぁ・・ボレアスに帝國の侵者がいてな。俺と犬斗で対処したから念のため報告をと思ってな。」
「そうか。いつもすまないな。今西側の領主とのやり取りで忙しくてな。ずっとこの部屋に籠りっ放しで、非常事態に気付かなかったよ。」
「ずっと領主室にいたのか?」
「あぁ西側の領主へ出す書の作やいざ戦爭になった際の行軍工程等、東側と帝國との戦いに向けてやることは山積みだからな。」
「・・・・そうか。領主も大変だな。そんな中申し訳ないんだが一つお願いがある。
南側の一部監視カメラが壊れてしまった。後でレイに新しいカメラを渡しておくから、設置場所の指示をお願いしたい。」
「それはお安い用だ。今日中に済ませておくよ。」
「助かる。じゃあ報告は終わったし、仕事の邪魔しちゃ悪いから戻ることにするよ。」
大地はサイラスへの報告を終える領主室を出た。
『ルルが領主室に呼びに行った時にサイラスは領主室にはいなかったんだよな・・・』
大地はルルの発言とサイラスの発言の食い違いに気付いたが、あまり深く考えずに監視カメラの作のために自室に戻った。
その頃メリアはルルに連れ回されながら、各クーポラの説明を聞かされていた。
各クーポラを見るたびにメリアが驚愕していたのは言うまでもないことだ。
驚愕の連続にさすがに疲れてしまったメリアは現在食堂の角で、ルルが飲みを持ってきてくれるのを待っていた。
「メリアちゃん! はいこれ飲んでみて!」
「ありがとう。・・・・これ何?初めて飲んだわ!」
「これはシェイクって飲みだよ! 大地さんが無に飲みたくなって作ったんだけど、みんなが気にっちゃって、ここのドリンクメニューになったの!」
「また大地なのね・・・本當にとんでもない男ね。」
メリアは大地の規格外の発想力とそれを実現させてしまうこれまた規格外の力に呆れてため息をつく。
それを見たルルはメリアが疲れてしまったのだと勘違いして慌て出す。
「メリアちゃんもしかして疲れちゃった?」
「確かに疲れたけど、それはルルのせいじゃないわよ。」
「そうなの? 良かった! 私同じぐらいの歳の貓人族の子に會えたの初めてだったから、しテンション上がっちゃって。」
同じ貓人族に會えたと喜ぶルルの姿を見て、メリアはルルを騙していることにの痛みを覚えた。
「そっそうだったの。貓人族は他にはいないの?」
「爺様とライラっていうの子以外は見たことないかな。両親も私がい頃に林の魔獣殺されたんだって。」
「林で生活を・・・・。なんか変な事聞いてごめんなさい。」
「メリアちゃんが謝ることじゃないよ!」
メリアは自分と同じ様にルルも種族のせいで人間から迫害されていた事を聞いて、ルルに対して妙な親近を覚えていた。
「でも辛い事ばかりでもなくて、大地さんに會って、何不自由なく暮らせているし。こうしてメリアちゃんにも會えたしね。」
「そうなの。 話は変わるんだけどここの人達は本當に獣人の國なんか作れると思ってるの?」
「う~ん難しい事だと思うし、今後も大変な事っていっぱいあると思うけど・・・。大地さんならきっと獣人が安心して暮らせる國を作ってくれると信じているから。」
「大地は本當にあなた達に信用されているのね。」
「メリアちゃんも大地さんを見てればきっとわかるよ!」
大地を信頼し獣人の國を作れると心の底から信じているルルの姿を見て、勵まされるようにメリアも魔族の國の再建を心に強く誓った。
その後、話の流れでルルが嬉しそうに大地の自慢話や大地とのエピソードについてメリアに話し始めたのだが・・・
大地の話をするルルは留まることを知らず、大地が部屋の案のためにメリアを探しに來るまでの間、メリアはルルの喜々として話す大地自慢を延々と聞かされることになった。
ルルの話を苦笑いで聞きながら、メリアは今後ルルに大地の話を二度と振らないことを心に決めた。
翌日、早朝から大地は犬斗と領主室に來ていた。
ミッテへの諜報依頼についての話があるとサイラスに呼ばれていたからだ。
「急に呼んでしまってすまないな。」
「いえ。それより話とは何だ?」
「実は先日話したミッテへの報収集についてだなのだが、大地さん一人で行ってきてしい。」
「先日の侵者の件か?」
「あぁ。これまでこのボレアスに外部の人間がってきたことはなかった。
多分大丈夫だと思うが、念の為に犬斗をクーポラに殘してしいのだ。
大地さんに全て任すことになってしまうが大丈夫だろうか?」
「じゃあ何人か連れて行きたい奴がいるので、連れていっても大丈夫か?」
「もちろん大丈夫だが、誰を連れていくつもりなのだ?」
「先日の侵者が連れていた貓人族のの子とルルを連れていくつもりだ。」
「そうか。わかった。しかし他の領地の獣人に対しての認識はわかっているだろ? くれぐれも注意してくれ。」
「バレないように気を付けるよ。いつ頃出発すれば?」
「出來れば早い方が良い。最近東側のきが活発だという話だからな。」
大地はサイラスからのミッテへの諜報活依頼を承諾する。
大地から承諾を得たサイラスは満足そうな顔をしながら二人にお禮を述べた。
ゆっくりしていってくれと言葉を殘した後、サイラスは自のデスクに向かい書類仕事を再開する。
サイラスは最近忙しそうな様子を良く見せてはいたが、今日は特に忙しいみたいだ。
文書を手掛けながら、使用人に指示を出している。
大地と犬斗はあまりに忙しそうにするサイラス達を見て、同じ空間で紅茶を飲んでいることに気まずさをじると、そそくさと領主室から退室した。
「サイラスさんここ最近忙しそうにしてるな。」
「もしかしたら、戦爭が近いのかもしれませんね。」
「そうだな。でも戦爭が近いのなら何故このタイミングで俺をミッテへの諜報活に?」
「近いからこそ報がしいんじゃないですか?」
「まぁ確かにそう言われればそうだが・・・。」
何となく中に不安を抱えながらも、犬斗が殘るのであればよっぽどの事が無ければ問題はないだろうと考える大地。
大地は漠然とした不安を抱えながらも気持ちを切り替え、ミッテ行きの準備を始めた。
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