《創造神で破壊神な俺がケモミミを救う》第63話
化けでも見るかのような顔でフィアを見つめるパレス。
フィアを見たパレスの中の本能がこの場から逃げろと命令をしてくる。
パレスは背中にじた悪寒の理由もわからずその本能に従い踵を返して逃げ始めた。
「聞いてた話と違うじゃないか! ここは化けの巣窟だ!」
恥も外聞も捨て全力で逃げるパレス。
しかしフィアが逃亡を許すわけがなかった。
フィアは土魔法により巖石の拳を前方に出現させる。
その拳は九尾に溜めこまれた魔力を吸収すると急速に大きくなっていき、巨人の拳へと変化していった。
フィアは魔力を全て吸収した巨人の拳をパレスの背中へと振り下ろす。
「やめろ! 來るなぁ!!」
拳の影が迫ってきているのを知ったパレスは必死に影の外に出ようと走る。
「こんなはずじゃ・・・嫌だ! 死にたくな―――――」
パレスが逃げながら斷末魔のようなびをあげた時、巨人の拳がパレスを捉えた。
パレスのいた場所は大きく凹み、周囲は拳の衝撃により地面が隆起していく。
フィアの一撃により発生した土埃により一時的に周囲は砂嵐のようになっていった。
しばらくして砂嵐が止んだ後、そこにはパレスの姿どころか殘骸すら殘っておらず、中心に大きなの跡が殘っているのみであった。
意気揚々と戦っていたフィアとは対照的にケンプフは相手が自分より挌上である生兵開発局の室長相手に防戦一方になっていた。
「そろそろ諦めなさいよ? そんなにしつこいんじゃにモテないわよ?」
「生憎既に心に決めた相手がいるものでして・・・・」
生兵開発局第四室長であるラネッサはに無數のダメージを與えながらも、いまだに仕留めきれないケンプフに対して呆れた顔を向ける。
第四室長であるラネッサはナーシェンやパレスと同じように基本屬から派生させた魔法の使い手である。
第四室では火魔法の研究を行っており、ラネッサは火魔法から派生させた溶巖魔法を使ってケンプフを攻めたてていた。
ケンプフも負けじと水弾を放って応戦していたのだが、ケンプフが放つ水弾程度ではラネッサの溶巖魔法の熱量によって著弾前に蒸発させられてしまい、全く意味を為していなかった。
本來火魔法の弱點である水魔法の攻撃をものともせず、むしろ水魔法の弱點ともいえる溶巖魔法を使うラネッサにケンプフはたまらず大地に作してもらった武を使おうとするが・・・
『使いどころを間違えるなよ? この武を使えば一時的にとはいえ宮廷魔法師とも戦えるがその分反も大きい。もしタイミングを間違えれば最悪死ぬぞ。』
武に手をかけたケンプフは武を渡してきた時の大地の言葉を思い出し、武の使用を躊躇してしまう。
「なんだ。何もしないの? ならそろそろ死んでくれないかな?」
ラネッサはこの戦いに飽きたと言わんばかりに早々の決著をつけるべく、ケンプフの周囲の地面に熱を加えて溶巖にしていく。
ケンプフの周囲は瞬く間に赤いを放つ溶巖になり、隆起した溶巖に囲まれてしまうケンプフ。
近くにいるだけで火傷を引き起こす高熱の溶巖が徐々にケンプフに迫ってくる。
「これはやばいな。使うべきか使わないべきか・・・」
武の使用について悩んだケンプフであったが、まだ武を使用するべきではないと判斷すると、自に水魔法を何層にも纏わせ始める。
水の鎧をに纏ったケンプフは多量の水弾を放ちながら迫ってくる溶巖へと突っ込んでいった。
水弾は溶巖の熱量によって蒸発していくが、多量に放たれた水弾により徐々にその熱量を下げていく。
「あぁくそ! もうやけだ!」
ケンプフは不快な表を浮かべながら熱量の下がった部分に今度は大きな水塊を放ちながら突撃していった。
熱量は落ちたとはいえいまだ高熱を放つ溶巖。
溶巖に突撃したケンプフを纏っている水の鎧が急速に蒸発していく。
「くそがぁ! 砕けろ!」
ケンプフは雄びを挙げながら水塊を放ち続け、なんとか周囲を囲っていた溶巖の一部にを開けることに功する。
命からがらそのから出するケンプフ。。
「本當にしぶといわね。水魔法の使い手でこれほどまでに粘ったのはあなたが初めてだわ。」
「はぁはぁ・・・そりゃどうも。」
全に軽い火傷を負いながらも気丈に振る舞うケンプフの姿を見て、気に食わないといった表を浮かべ出すラネッサ。
ケンプフは実力の違いに加え、相の悪さからラネッサには敵わないと考え、ガランやフィア等の助けが來るまで時間稼ぎをしようと考えていた。
「ねぇあんたさ。私にまだ勝てるとか考えてる?」
「さぁな。でもここであんたを止めないとうちの大將に怒られるからな。」
「面白くないわね・・・あんた追い詰められているのよ? もっとこう命乞いするとかない訳?」
「いやすまないが質問の意味がわからない。」
ラネッサは絶対勝てるはずのない狀況にありながら、取りす様子を見せないケンプフに睨みをきかせると、先程とは比べものにならない規模の溶巖をケンプフの周囲に作りあげていく。
「さぁこれでもまだあんたは私に勝てると思っているのかしら!?」
ケンプフは周囲に出現した津波のように迫ってくる溶巖流を見ながら、今度こそ大地の武を使わなければ死ぬと確信する。
自の防衛の為に武を手に取ろうとした時、ラネッサがケンプフの恐怖心を煽ろうと話を始めた。
「これでも絶しないの? 面白くないわね。初めて溶巖魔法の実験した時の獣人はいい聲で泣いてくれたのに。」
「獣人?」
ケンプフは獣人という言葉を聞いて思わず聞き返してしまう。
「そうよ。能を試す為に奴隷の獣人の姉妹に溶巖魔法使ったのよ。丁度今のあなたと同じ狀況だったわね。」
「・・・それでその子達はどうなった?」
「何言ってるの? 死んだに決まってるじゃない! 姉の獣人はあんたと一緒で面白味に欠ける反応だったわ。自分のを燃やしながらも最後までに妹に優しい聲をかけ、死ぬ間際まで妹を溶巖から守ろうとしてたんだから・・・」
実験で使用した姉の獣人の反応についてつまらなさそうに話すラネッサだったが、妹の獣人の話になると途端に恍惚とした表を見せはじめた。
「その代わり妹の反応は素晴らしかったわ! 姉が自分の前で死んでいった時の絶のび聲、そして自分が溶巖に焼かれている時の絶の顔。今思い出してもあれほどの興を覚えたことはないわ。人は死の間際・・・いや。絶をじた瞬間に最も素晴らしい顔を見せてくれる。」
天を仰ぐようにその時の景を思い出すラネッサ。
余程その時の景を気にっているのだろう。
ラネッサは急に気がれたような高笑いを見せる。
ラネッサの狂気的な様子を見たケンプフは帝國での獣人の扱いに改めて嫌悪を抱きながら、実験で命を落とした獣人の姉妹をリリーナ達と照らし合わせて考えていた。
もしここで俺が負け、帝國兵の侵を許してしまったら?
もし帝國兵にリリーナ達が捕まってしまったら?
もし生兵開発局の実験に使われてしまったら?
ケンプフの頭の中にはするリリーナと教會の子供達が帝國の実験に使われ苦しむ様子が浮かんでいた。
もし俺が負けても大地や犬斗やガランがいる。
他の奴らがなんとかしてくれる。
ケンプフはこの戦いにそんな安易な考えを持って臨んでいた。
マルタにいた頃はリリーナ達を守る為に、どれだけ不利な狀況でも決して引くことなく自分一人で戦ってきたケンプフ。
しかし自分より大きな力を持ち、同じ志を持つ大地達に出會い、ペンタゴンでの平和な生活を経験するうちに自分が守らなくても大地達が守ってくれるという甘えがケンプフの中に生まれていた。
俺はどれだけ甘い考えをしていた・・・
時間を稼げば大地達がなんとかしてくれる? そうじゃないだろ・・・!
リリーナ達を守るべきは大地達じゃなくて俺だろ・・・
ケンプフはマルタで戦っていた時の覚悟を忘れていた事に気付いた。
これまでの自分の平和ボケした不甲斐なさに苛立ちを覚え、額に青筋を浮かべるケンプフ。
「あんたはやっぱり面白くないわね・・・もういいわ。あんたを殺してあの城にいる獣人達に期待しましょう。」
ラネッサは溶巖に飲み込まれようとするケンプフに興味が失せたような冷めた目を向ける。
既に溶巖はケンプフの頭上にまで迫っており、今にもケンプフを飲み込もうとしていた。
「ペンタゴンにいるリリーナ達には指一本れさせない。」
そう靜かに口を開いたケンプフは大地から授かった武を手に持った。
その手に持っていた武は辭書のような分厚さを持つ一冊の本であった。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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