《創造神で破壊神な俺がケモミミを救う》第64話
ケンプフは手に持った分厚い本のページを開くと、そこに書いてある文字を読み上げた。
「セキュリティ。」
ケンプフが文字を読み上げたと同時にラネッサの放った溶巖がケンプフを飲み込む。
「やっと終わったわ。」
ラネッサはケンプフが溶巖に飲み込まれたのを確認すると、遠くの方で戦闘を続けているナーシェン達に姿勢を移す。
これは私が一番乗りかしらね。
ラネッサは自分が城への一番乗りの栄譽をあずかれると大きな笑みを浮かべながら、ケンプフの後方にそびえ立っていた城壁へと向き直す。
「確かにディシント鋼を加工してこんなを作るなんて創造神を名乗る者は相當な使い手なのでしょうね。でも加工は無理でも溶かすだけなら私の溶巖魔法でも可能だわ。」
ラネッサは城門を溶かそうと城壁に向かって溶巖魔法を放とうと魔力を込める。
その時、いまだ熱を帯びている溶巖流の中から飲み込まれたはずのケンプフが飛び出してきた。
ケンプフは溶巖流から飛び出すと、溶巖流が流れていない場所まで後退し自に掛けていたセキュリティを解いた。
「ぜぇはぁ・・・大地はこんな魔力を喰う魔法をヘキサゴンにかけてやがったのか。」
肩で息をしながら、改めて大地の規格外の魔力量に驚くケンプフ。
「なんで生きている?」
驚いていたのはケンプフだけではなかった。
ラネッサも溶巖に飲み込まれながら、その溶巖からの出を果たしたケンプフを見て驚愕の表を浮かべていた。
後しで城への一番乗りを果たせるところだったラネッサは、苛立った様子を見せると、ケンプフもろとも城門を溶かすために再度大規模な溶巖流を出現させる。
出現した溶巖流は先程までの溶巖流とは違い、追い詰めるようなゆっくりとしたきではなく、波のような速さでケンプフと城門に襲い掛かってきた。
溶巖流が迫ってきているのに気づいたケンプフは再度本を開き、文字を読み上げる。
「タイダルウェーブ。」
ケンプフが文字を読み上げると、ケンプフの前方から大きな津波が発生した。
ケンプフが発生させた大津波は迫りくる溶巖流を飲み込んでいく。
飲み込まれた溶巖流はその熱量で津波を蒸発させようと、ブクブクと津波を沸騰させていくが、溶巖流より遙かに大きい津波の量に、徐々に熱量を奪われていく。
津波により熱量を奪われた溶巖流はそのまま固化し、いびつな丘を形していった。
ケンプフ専用魔法発武「天災」
この本型の武には大地が自然災害である暴風、地震、津波、豪雪等を再現した魔法をプログラミングによって書き込んだ魔導書のようなであり、本のページに書かれた文字を読み上げることでその魔法を任意で発できる代になっている。
実はケンプフはこう見えて、魔力量だけならゼーレよりも高い値を示していた。
しかし魔法のイメージがもの凄い苦手らしく、水弾や障壁等の基本的な魔法しか扱うことが出來ていなかった。
高い魔力を持ちながら、その魔力を生かせていないケンプフを見た大地が、魔法イメージ力の低さを補いつつ、高い魔力量を生かした武を作ろうとして作ったものがこの天災であった。
しかしこの天災には大きな欠點が一つ存在する。
それはその魔法の威力故に消費魔力が非常に大きくなってしまったことである。
人間の兵士達の要により急遽隊長に任命されたケンプフ。
帝國が迫っている中、急ごしらえで作したこの武は、予想以上に使い勝手の悪いになってしまっていた。
もし常人が天災を発してしまえば立ちどころに魔力枯渇を起こし、最悪の場合死に至るだろう。
魔力量が常人に比べ高いケンプフですら全快の狀態でも日に三発の魔法を放つのが限界である。
その為大地はケンプフに使いどころを見極めるように何度も忠告していた。
しかしケンプフは天災の使いどころを見極めようとするあまり、使うことを躊躇ってしまい、結果として連続して二発もの魔法を使ってしまうことになっていた。
それまで水魔法を多數放ち、その後消費の大きい魔法を二発使ってしまったケンプフは片膝を著いたまま、激しく呼吸を繰り返す。
自の発生させた溶巖流を飲み込んだ大津波を見て、喚くように聲を挙げるラネッサ。
「そんな大規模な水魔法なんて聞いたことも見た事もないわ!? あなた一何をしたっていうのよ!?」
しかし魔力消費の激しいケンプフはラネッサの問いに答えることが出來ない。
ラネッサはケンプフの魔法に一時戸った様子見せたが、ケンプフの辛そうな様子を見て、すぐさま魔力枯渇を起こしていることに気付くと余裕を取り戻す。
「さっきの水魔法には私も驚かされたけど、もう放てないみたいね。」
「はぁはぁ・・・それはどうかな?」
ケンプフは苦し紛れにラネッサに返答するが、どう見てもケンプフは憔悴しきっていた。
実際にケンプフには天災を発させるだけの魔力は殘っていない。
もし次、天災を発すれば魔力枯渇を起こし、最悪の場合死に至るであろう。
しかしケンプフはその事を理解してなお、天災から魔法を発させるつもりであった。
ラネッサの溶巖魔法を喰らっていたケンプフは、溶巖魔法の熱量を持ってすれば、いくらディシント鋼で作られた城壁だろうと溶かしてしまうことが分かっていた。
ここで自分がラネッサを止めなければ、立ちどころに城門は溶かされ、ペンタゴンに帝國兵がなだれ込んでくるだろう。
そうなればペンタゴンにいるリリーナ達も無事では済まない。
自の命を懸けてまでも魔法を放つ覚悟を決めたケンプフは天災を片手に発する魔法のページを靜かに開く。
ケンプフの覚悟を知らないラネッサはすでに勝利を確信したように大きく笑みを浮かべると、先程と同じ大規模な溶巖流をケンプフに向けて放った。
「はぁはぁ・・・これで終わりよ!」
ラネッサも連続で大規模な溶巖魔法を放ったことで、大部分の魔力を消費しており肩で息をし始める。
迫りくる溶巖流を見つめながら覚悟を決めていたケンプフは迷わず、文字を読み上げた。
「タイダルウェーブ!」
ケンプフが殘った魔力の全てを込めながら聲を挙げると、前方に先程より大きな津波が発生する。
「噓でしょ!? もう魔法は使えないはずじゃ!」
ラネッサはケンプフが先程よりも大きな津波を発生させたことに、浮かべていた余裕の表を徐々に驚愕の表へと変化させていく。
ケンプフが発生させた大津波はラネッサの溶巖流を簡単に飲み込むと、勢いを落とすことなくラネッサへと向かっていく。
ラネッサは自の前方に何層にも溶巖流を作りだし、津波の勢いを削ごうとするが、殘存魔力のないラネッサには大規模な溶巖流は出現させる力は殘っておらず、出現させたそばから津波に飲まれ固化していく。
津波は速度を緩めることなくラネッサを飲み込もうと迫ってくる。
焦ったラネッサは目の前に溶巖流を山の形にして出現させる。
ラネッサが溶巖流の山を目の前に形したのと同時に津波がラネッサに襲い掛かった。
出現させた溶巖山にぶつかり二手に割かれる津波。
ラネッサは溶巖山のすぐ後ろで両膝をついた狀態で呼吸を整える。
溶巖山を出現させたことでラネッサの魔力はとうとう底をついてしまった。
もしこの溶巖山が崩壊してしまえばラネッサに抵抗する力はもう殘っていない。
神にでも祈るかのように溶巖山を見つめ続けるラネッサ。
しかしその祈りは屆くことはなかった。
ピキッ! ビキッ!
ラネッサの耳に嫌な音が響き渡った。
「噓!? 嫌! 耐えなさいよ!」
溶巖山の至る所にヒビがっていき、その隙間から水が流れ落ちていく。
ラネッサは必死に出來た隙間を溶巖魔法で埋めようとするが、魔力の殘っていない狀態ではそれも葉わない。
ヒビのった溶巖山は遂に津波の量に押しつぶされるように崩壊していった。
「いやぁぁぁああ!」
び聲を上げるラネッサを津波が飲み込み、津波に削られた溶巖石と共に荒れ狂う水流に巻き込まれる。
その水流の中で全に溶巖石を打ち付けられたラネッサは意識を飛ばしていった。
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「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
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