バセルダは犬斗と同じ姿になると一瞬で犬斗の目の前に姿を現す。

「なっ！」

「おいおい。すぐにくたばるなよ。つまんねぇからな。」

急に目の前に現れたバセルダに犬斗は驚きながらも拳撃を繰り出す。

しかしバセルダは犬斗の繰り出す拳撃を最小限のきで躱しながら、さっきのお返しと言わんばかりに犬斗の腹部へと拳を突き立てた。

「うわぁ！」

犬斗は聲を挙げながら後方へと凄い勢いで吹っ飛んでいき、地面へと著地するとそのまま転がっていく。

「いって・・・」

腹部を抑えながら何とか立ち上がる犬斗を見て、バセルダは心した様子を見せる。

「ほぉ・・・お前すげぇじゃねぇか！　さっきのは上半の骨を砕くぐらいの勢いで毆ったんだが、あれを喰らって立ち上がるなんて大したもんだ。」

「いや・・・これは僕が凄いんじゃなくて、大地さんの防が凄いんだけなんですけどね。」

やや興気味に犬斗を褒めるバセルダを見ながら、自が裝備している陵に手を添える犬斗。

悪食魔法により姿を変異させているバセルダの打撃にはどうやら魔力が込められているらしく、魔法ダメージを魔力に変換する効果を持つ陵により、けたダメージを魔力に変換した犬斗はその魔力を自の治癒に回すことが出來ていた。

「う～ん。これはどうしよう・・・勝てるイメージが浮かびません。」

犬斗は速さ、技、経験と全てに勝るバセルダに対して勝てるイメージが全く沸いてきていなかった。

厳に言うと一つだけ勝ち目のある方法が浮かんでいたのだが、犬斗的にはその方法は極力取りたくなかった。

どうしたら優位に戦えるのか犬斗が思案に暮れていると、痺れを切らしたようにバセルダから怒號が飛ぶ。

「おい！　いつまでその場でじっとしているつもりだ！　こっちは久々に全力を出しても良さそうな奴に會えたんだ！　早く殺り合おうやぁ！」

バセルダは大きな雄びを挙げると犬斗へと凄まじい速さで真っ直ぐに迫ってきた。

あっという間に距離をめたバセルダは炎熱を纏わせた拳を上から振り下ろすように犬斗へと放つ。

犬斗もそれをけ止めようと両手を差させて待ち構える。

バセルダの炎熱の拳が犬斗の差された両手にぶつかった瞬間、犬斗の足場から大きな地割れが発生する。

「うぐぐぐ・・・」

「お前最高だよ！」

バセルダは自の拳をけ止めた犬斗に対して稱賛の言葉を告げると、すぐさまがら空きになっている犬斗の橫腹へと蹴りを放つ。

犬斗は放たれた蹴りを片腕を使ってガードするが、蹴りの勢いまでは抑えることが出來ず、真橫に飛ばされる。

飛ばされた犬斗を追いそのまま追撃を加えようとするバセルダ。

犬斗は飛ばされた反で勢を崩しながらも必死にバセルダの拳撃を捌いていく。

「いいねぇいいねぇ！　こんなに楽しめたのはいつ以來だぁ！」

「全然楽しくありません！」

まるで新しいおもちゃを手にれた子供の様な顔をしながら拳撃を繰り出してくるバセルダに対して、犬斗は苦しそうな顔をしながら何とか拳撃を捌いていた。

「ぐわっ！」

犬斗の左腹部にバセルダの蹴りがめり込む。

そのまま右方向へと飛ばされた犬斗にバセルダは炎の羽をする。

「がはっ！」

全に炎の羽を浴びた犬斗はその痛みから片膝を著く。

「おいおい。魔力はまだ盡きてねぇんだろ？　早くの再生済まして続きをやろうぜ！」

バセルダは楽しそうな表を浮かべながら戦闘の再開を急かす。

「まだ足りないか・・・でもこれ以上痛い思いはしたくないなぁ・・・」

立ち上がりながらボソボソと獨り言をつぶやく犬斗。

「もしかして何か狙っているのか？　それがお前の奧の手って訳か。いいじゃねえか！　早く見せてみろ！」

バセルダは犬斗の表を読み取り、何か企んでいることに気付くと、それを早く披するように急かし出す。

「戦闘狂なんて人本當に存在するんですね。」

犬斗は先ほどからバセルダが見せている愉悅に満ちた表を見て苦々しい顔をすると、両手を広げて急かし続けるバセルダに向けて炎の羽を出する。

「ちっ・・・面白くねぇな。だったらその奧の手を使わざるをえない狀況にしてやるよ！」

バセルダは犬斗の放った炎の羽に対して同じ炎の羽をぶつけ相殺させると、再度犬斗との距離を詰める。

距離を詰めてくるバセルダに対して後方に下がりながら炎の羽を出していく犬斗。

しかしバセルダは自に迫りくる多數の炎の羽をギリギリのラインで躱しながら最短距離で犬斗との距離を詰めてくる。

「小細工なんてつまらん真似するなや！」

後方へ下がりながら遠距離攻撃を仕掛けてくる犬斗に対して若干苛立った様子を見せたバセルダはその速度をもう一段階上げると瞬く間に犬斗の隣へと現れた。

「え！？　いつの間に！」

さっきまで後方にいたバセルダが急に隣に出現したことに驚く犬斗。

バセルダは驚く犬斗の顔に拳をくらわし、犬斗の足を止めるとそのまま犬斗の全に拳撃を繰り出す。

速度を一段階上げたバセルダの拳撃の速さに対応出來ず、犬斗は全に拳撃を喰らってしまう。

ベキッ！　ボコッ！　バキッ！

バセルダの繰り出す拳撃による無な音が広野に響き渡る。

「おらおら！　どうした！　もうおしまいか！？」

バセルダは攻撃の手を休めることなく犬斗のへと拳撃を當てていく。

楽しそうな表を浮かべていたバセルダも犬斗が全く抵抗を見せなくなったのに気づくと、しずつ退屈そうな表へと変化させていった。

「ちっ・・・お前も俺を楽しませてくれる程の奴ではなかったか。」

バセルダは何処か悲しい雰囲気を漂わせると、拳撃を浴びて顔をうつむかせている犬斗の腹部へと魔力を込めた渾の一撃を放った。

後方へとこれまでとは比較にならない距離を飛んでいく犬斗。

「はぁ・・・こうなりゃ創造神を名乗る奴に期待するか。」

バセルダは犬斗の強さが期待外れだったことに殘念そうに深いため息をつくと、ペンタゴンの城門の方へと向いた。

そしてバセルダが創造神を名乗る男を探そうと向かおうとした時、自の後方に大きな魔力が発生していることに気付く。

「やっと溜まりました・・・これなら使えそうです・・・」

後方を向いたバセルダが見たのは、痛みに悶えながら立ち上がった犬斗の姿だった。

「あれだけの攻撃を喰らっておいて、まだ再生するだと？」

「はっはっは・・・まさに大地さんさまさまですね。」

バセルダによって喰らっていたダメージは朱雀スタイルの再生能力により完全に回復していた。

驚きながらも自然と笑みがこぼれるバセルダ。

こいつとなら全全霊をかけた戦いを楽しめるかもしれない。

バセルダは犬斗の方へとを向き直すと、期待にを膨らませ、愉悅に満ちた表を再度浮かべる。

待ちきれなくなったバセルダが犬斗との距離をめようと走り出した瞬間。犬斗の周囲に大きなが発生した。

「なっ！？」

目がくらむようなに思わず距離を詰めようとする足を止めるバセルダ。

放たれた眩いは徐々にその度を弱める。

が止んだ先に現れたのは、炎と雷を同時に纏った犬斗の姿であった。