《ステータス、SSSじゃなきゃダメですか?》第三十九話
  吸鬼という種族は他者のを吸うという特上、に干渉する能力を多く備えている。
  それは元來傷口のを凝固させ、吸った相手の命を奪わないようにするという生存戦略上のものだったが、それは吸鬼全が力を付けていくにつけ、獨自の能力として発展する事となった。
  中でも斬鬼のように吸王ほどの高貴な種族となると、その能力は凝固に留まらず、正に『作』と呼べる程に至る。吸鬼の中でも最高峰と呼べる能力、『作』。その技を斬鬼は生まれながらにして手にしていた。
  その効果は『自らのれたを自在にる力』。それが自分であろうと他者であろうと、一度彼のにれたは彼の支配下に置かれる。稱號である『王』に相応しい能力。
  現狀のように武を所持していなかったり、武を失ってしまった際に場所を選ばず力を振るえる事から一際汎用が高く、ある意味彼が最も用しているスキルだと言えるだろう。
  両の手に赤黒い刀を攜え、一気にマギルス國王へと詰め寄る斬鬼。自前の裝備を剝がれ、き辛いドレスを著用していようとも、その剛力は未だ健在。人男一人のであれば、膾の如く斬り伏せられるだろう。
  だが、當然と言うべきかその道中に妨害がる。
「國王を守れ!」
「盾となるんだ!」
「っ、しゃらくさい!!」
  どこに控えていたのか、いつの間にか現れていた鎧姿の兵士達が斬鬼の前に立ち塞がる。當然、一兵卒如きが彼を前にして大した時間稼ぎが出來る筈もない。すぐ様染めの剣閃が鎧と鎧の僅かな隙間をなぞる。
  両斷されたはどうともんどりうって地面へ落下し、彼等の絶命を伝える。噴出したすらも刀の一部となり、よりその刀が鋭く、長く錬鉄されていく。
  周囲の貴族も黙っている訳ではなく、更なる足止めの為か次々と魔法を打ち込む。炎、水、風、土。とりどりの魔法陣がり輝き、その全てが斬鬼へと向けられる。
  が──無駄。その悉くが彼の一刀の下に斬り伏せられ、殘骸となった魔力が空中に散る。正に無力、無為、無意味。ステータスの暴力とはかくも恐ろしいであると、第三者的に見ている者がいれば戦慄した事だろう。
「っ!!?」
  だが。だとしても。當初から裏切る事を考えていたマギルス皇國側が、目下最大の障害である斬鬼に何の対策もしていない筈が無い。
  飛來していたの中に一つ、一際異彩を放つがあった。斬鬼はそれに気付くが、沸騰した衝に突きかされていた彼の腕は止まる事が出來ない。そのままソレ──真っ赤ながった瓶を勢い良く両斷する。
  外側の容が無くなれば、勿論中は噴出する。撒き散らされたは理法則に従い、そのまま斬鬼へと降りかかった。
(ぐ、これは──!?)
  ドクン、と一際大きく心臓が飛び跳ねる音。一気に全の流が活化され、手足の先に至るまで覚が鋭敏になる。そして同時に、頭にがこれでもかと集結する覚。
  これはそう──有りに言えば酩・酊・狀・態・だ。
「き、さま……まさか、酒を!!」
  に酔う事しかできない吸鬼が嗜む酒、それが酒だ。
  通常を摂取した場合、普通は斬鬼のように吸鬼としての力を全開で使えるようになるのだが、それだけでは嗜好品として足りない。故に、一部の吸鬼はを摂取した瞬間著しく高揚する事を利用して、その効果だけに特化させた酒のようなものを作り出した。
  量は生み出せないがその効果は著しく、質的に弱い吸鬼であれば一舐めで足元がフラつくほど。そんなものを一気に被ってしまえば、その噎せ返るような匂いだけで意識が一度に持っていかれても不思議ではない。人間で言えば限りなく純度百パーセントに近いアルコールを被るようなものである。
「ぐ……こ、小癪な……!!」
  だが、それでも斬鬼はフラつく膝を抑え込み、再びの剣を構える。霞む視界の先に、仇敵であるマギルス國王を見據えながら。
「ホ、まだ意識があるか。並の吸鬼であれば數時間は昏倒する代なのだがな……だが、これも追加じゃ」
『『クロック繋ぎ・引き留め・ロック固著せよ』』
  彼の合図と共に、幾條もの魔法で出來た捕縛鎖が斬鬼の元に飛來する。鉄ではなく魔力で構されたそれは、理的干渉を一切無視出來る優れだ。
  アレに捕まるわけには行かない──。斬鬼は魔力を全力で回すと、それを一気に掌から放出。衝撃波の様に魔力が放出され、それに押された鎖は勢いを失い地に落ちる。
  數に任せて次々と飛來する魔法の數々を、前後不覚になった斬鬼は半ばヤケになりながら、力任せに処理していく。圧倒的な一対多の狀況でも互角に凌げるというのは、やはりステータスあってこその事だろう。
  これで皇國側は決定打を失い、斬鬼は己の魔力との爭いを続ける持久戦に持ち込まれた──かに見えた。
「やれやれ、猛獣の躾は上手く行かなかったみたいだね。ま、だからこそ俺が出張って來た甲斐があるってもんなんだけど……『ロック・ロック巌よ・引き留め・繋げ』」
「っ!?」
  魔力ではなく、巖石で構された四本の鎖。完全に不意をつかれた斬鬼は、四肢を拘束しようとするそれを回避しようとを捩る。
  一本目、回避。
  二本目、回避。チ、と鎖が頬を掠めた。
  三番目、回──避、は葉わなかった。
  
「ぐっ、貴様、サカグチかぁ!!」
「ハッ、猛獣には鎖がお似合いだ!」
  した男──サカグチはその手から拘束魔法を斬鬼に向けていた。
  それまでの優男然とした雰囲気はかなぐり捨てられ、その顔には獰猛な暗い笑みを浮かべている。斬鬼らが睨んだ通り、彼の本は全く別のものだったのだ。
  強固に固められた巖石は、ちょっとやそっとの力では到底砕けない。それでも斬鬼の力を持ってすれば砕く事は可能だが……
「『クロック繋ぎ・引き留め・ロック固著せよ』!」
「く、この下等生共がぁ……!!」
  次々と襲い來る魔法の鎖が、彼の四肢に巻きつききを縛り付ける。一本、二本、三本と數を重ねられれば、一つだけでは貧弱でも彼のきを止める事が出來るのだ。
(だが、まだ全力を引き出せば……!!)
  引き金となるは、幸い、いや不幸にして先ほどの酒で摂取できている。出來ることならばヴィルヘルムの良質なで吸化するのが理想だったが、背に腹は代えられない。
  斬鬼は目を赤く発させると、その力を解放して──
「ガッ!?」
  しかし、それは腹部に唐突に訪れた衝撃によって妨害される。それまでの溫い攻撃とは違う、一際威力の大きい一撃。肺から空気が全て吐き出され、奇妙なうめき聲が口の端かられる。
「グ、き、貴様……!!」
「そん、な──!?」
「は、ハハハハハハハハハハ!!!  いいぞ、その反応最高だ!!  さあ、かつての仲間に対してその矛を向けろ──ア・ン・リ・!!!」
「…………」
  斬鬼とミミが驚愕する眼前。そしてサカグチの隣。そこには先程まで居なくなっていたアンリが、目のをアメジストに変えて立っていた。
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「世界最初の超知能マシンが、人類最後の発明品になるだろう。ただしそのマシンは従順で、自らの制御方法を我々に教えてくれるものでなければならない」アーヴィング・J・グッド(1965年) 日本有數のとある大企業に、人工知能(AI)システムを開発する研究所があった。 ここの研究員たちには、ある重要な任務が課せられていた。 それは「人類を凌駕する汎用人工知能(AGI)を作る」こと。 進化したAIは人類にとって救世主となるのか、破壊神となるのか。 その答えは、まだ誰にもわからない。 ※本作品はアイザック・アシモフによる「ロボット工學ハンドブック」第56版『われはロボット(I, Robot )』內の、「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」を目的とする3つの原則「ロボット工學三原則」を引用しています。 ※『暗殺一家のギフテッド』スピンオフ作品です。単體でも読めますが、ラストが物足りないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。 本作品のあとの世界を描いたものが本編です。ローファンタジージャンルで、SFに加え、魔法世界が出てきます。 ※この作品は、ノベプラにもほとんど同じ內容で投稿しています。
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